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幽霊人間と殺人鬼  作者: 真知コまち


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10/26

10話 彼は踊る

~登場人物~

 主人公~~ベル

 貴族の息子~~ルイ

 村人~~キャシー

 村人~~ヘレン

 幽霊~~ルイン


_(〘キャシー〙)「彼は、いい人でした…」

    お茶を啜り、思い出に耽る、キャシー。

_(〘キャシー〙)「彼との出会いは、彼が村に移住して来た時でした」

_(〘キャシー〙)「私と同じ外から来た人間なのに、持ち前の人の好さで、すぐ村に溶け込んでいました」

_(〘キャシー〙)「そんな彼を…私は好きになった」

_(〘キャシー〙)「だけど、彼は優しすぎた」

    顔を顰める、ルイ。

_(〘キャシー〙)「彼は、誰にでも優しかった。別に私は、彼の優しさを、独占したかった訳ではありません」

_(〘キャシー〙)「ただ…自分を犠牲にしてまで、人を助ける彼が、嫌いだった」

_(〘キャシー〙)「この村の男に、碌な奴はいない。村の男達は、彼の優しさに漬け込み、金をせしめていた」

_(〘ルイ〙)「だから…村に火を点けたのか」

_(〘キャシー〙)「はい。あの時、村に火を点けて回ったのは、私です」

_(〘キャシー〙)「ヘレンさんの家が燃えているのを見て、今しか!村人あいつらに、復讐する機会は無いと…」

_(〘キャシー〙)「だって!何で、夫だけが、死ななきゃいけなかったんですか!こんなの…おかしいですよ…」

    感情を剝き出しにして、泣き出すキャシー。

_(〘ルイ〙)「・・・夫を死なせたのは、”あなたの意思”だろ」

_(〘キャシー〙)「はい?何を仰っているのですか」

_(〘ルイ〙)「あの宝石は、唯の村人が、簡単に買える物では無い」

_(〘ルイ〙)「ましてや、村人に金を取られていたあなたの夫が、宝石の付いたネックレスを買えたとは思えない」

_(〘キャシー〙)「いいえ。あのネックレスは、私の誕生日のために、夫が行商人から買った物です」

_(〘ルイ〙)「ネックレス自体は、そうなんだろう。しかし、ネックレスに付いていた、あの宝石は違う」

_(〘キャシー〙)「・・・」

_(〘ルイ〙)「あの夜、あなたは、夫に忘れ物を取りに行かせた。そして、人狼に襲われるよう願った…」

_(〘キャシー〙)「…ふふふ。そうです、私が殺したんです」

_(〘キャシー〙)「あれは、私への誕生日プレゼントではありません」

_(〘キャシー〙)「私の家系には、代々受け継がれる宝石を、誕生日に身につける決まりがあります」

_(〘キャシー〙)「結婚する時、夫からは、宝石を身に付けるための飾りを贈る。ネックレスは、その時に貰いました」

_(〘キャシー〙)「あの夜、『決まりを破れば、災いが降りかかる』と伝えると、彼は、慌てて取りに向かいましたよ」

_(〘ルイ〙)「夫が死んだ時、あなたは、あれほど悲しんでいた。順風満帆な生活を捨ててまで、なぜ死を願った?」

_(〘キャシー〙)「金!お金が無いんですよ!」

_(〘キャシー〙)「村人に、騙されていると忠告しても、彼は、聞く耳を持たない」

_(〘キャシー〙)「あなたには到底、理解できないでしょうね。貧しい村人わたしの生活なんて…」

_(〘ルイ〙)「貧しい?この家のどこが、貧しい生活なんだ?」

    新築の家に備え付けられた家具、棚に飾られた異国の食器、備蓄された食料。 

_(〘キャシー〙)「暮らしに困っていないだけ十分じゃないかと、言いたいんでしょ?この村の中では、貧しい家なんですよ」

_(〘キャシー〙)「外を歩けば噂され、周りから白い目で見られる。そんな生活が、もう嫌だった…」

_(〘ルイ〙)「被害妄想では…」

_(〘キャシー〙)「違う!この村の奴らは、自分達の利益になることしか、興味がないのよ」

_(〘キャシー〙)「18年前の事件のことだって・・・ヘレンさんの話しを、誰も相手にしなかった…」

_(〘ルイ〙)「・・・彼女は、村人に真実を訴えていたのか?」

_(〘キャシー〙)「知りませんよ。18年前、私は、村に居なかったんだから」

_(〘ルイ〙)「・・・そうか」

   席を立ったルイは、扉を少し開き、外の様子を窺う。

_(〘キャシー〙)「ねえ…私の罪は何?」

_(〘ルイ〙)「…村から出て行かなかったことだ」

_(〘キャシー〙)「・・・村はずれにある家の林道からなら、見つからずに村を出れると思います。あそこは、村人が近づきたがらないから」

_(〘ルイ〙)「分かった。一つ、頼みがある」

_(〘キャシー〙)「?」


_(〘ベル〙)「・・・帰って来ない」

   まさか…置いて行かれた?

   幽霊だから、何日待たされても、飢え死にしないけど…  

   いつまで待たせるつもりなの!

 _(〘村人1〙)「こっちだ!」

  ドタドタドタ。

   複数の足音が、地下室の天井を揺らす。

_(〘ベル〙)「こ、これは…見つけられたかも」

 _(〘村人2〙)「ここだ!」

   村人の一人が、地下室への扉を開け、恐る恐る中へ入って来た。

 _(〘村人2〙)「なんだ、ここは⁉」

 _(〘村人3〙)「おい。暗くて見えないぞ」

 _(〘村人4〙)「もっと、前へ進んでくれ」

_(〘ベル〙)「み、見えていないはずよね。わたしの事は…」

   ゆっくりと、地下室の扉へ戻ろうとする、ベル。

  コロンッ。

 _(〘村人4〙)「ビクッ。な、何か居るぞ!」

 _(〘村人3〙)「おい!これ、人の骨じゃないか」

 _(〘村人2〙)「骨って、誰の?」

   村人が、祭壇の人骨で驚いている間に、ベルは、外へ出た。

_(〘ベル〙)「ふーびっくりした。何で、村人達がこんな所に居るの?」

_(〘ルイン〙)「おい!」

_(〘ベル〙)「はい!ってあなたは…」

_(〘ルイン〙)「あいつは、どこへ行った!」

_(〘ベル〙)「ルイなら、ここには居ないよ」

_(〘ルイン〙)「ちっ。せっかく村人を嗾けたのに…」

_(〘ベル〙)「あなたは、ルイに復讐するつもりなの?」

_(〘ルイン〙)「・・・復讐がしたい訳じゃない。ただ…約束を破られたことが、許せないだけだ」

_(〘ベル〙)「ルイと、どんな約束をしたの?」

_(〘ルイン〙)「それは…いや。その前に、取引をしないか」

_(〘ルイン〙)「僕が、ルイに与えた情報を、君にも教える。その代わり、ルイとの約束を、君に果たしてもらう」

_(〘ベル〙)「わたしに出来る事なら、構わないけど…」

_(〘ルイン〙)「じゃあ、取引成立だね…」   

   後ろへ回り込んだルインによって、ベルの視界は奪われた。

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