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サッと終わった卒業式と卒業パーティ。


そうして迎えた卒業式。朝からベル様が張り付いていたけれども、膝の上での朝ごはんの後は一緒に歯を磨いて、そしてそれぞれが準備のために一旦離れた。午前中は制服を着て、学園のホールで行われる一般的な卒業式をしたら、その夜に卒業生とそのパートナーや家族のみが参加出来るパーティが開かれる。


久しぶりに人前で踊らなければならない私はとにかく緊張していたけれども、熱心にベル様が練習に付き合ってくれたのでなんとかなりそうだ。ちなみにアンディも手伝ってくれた。踊る姿はまさに天使で、思わず見とれたのは言わずもがな!!!だけど途中からベル様に引き剥がされた事によって2人が大喧嘩したので困っていたら、マイヤー先生が一喝して落ち着かせてくれた。くっっっそ怖かった!!!そりゃあベル様が怯えるわけだ……。


なんて思い出しながら2人で向かった学園のホール。さすが日本人が開発したゲームを元にした世界という感じで、馴染みのあるものだった。卒業証書は大切に部屋に保管しよう、筒じゃなくて高そうなリボンなのが惜しいけど!!


あと正面玄関のところで、魔道具を使って写真を撮った。これはアンディが開発した素晴らしいもので、まだあまり普及していない。というかさせていない。ベル様曰く、「俺のサラ撮られたら嫌だから。」との事。貴方とアンディ以外は誰もしないわ!!!


やいのやいのしながら戻った王宮のベル様の私室で、膝の上に座りながら急いでお昼ごはんを食べると、また並んで歯を磨いた。そして渋るベル様を引き剥がして、ヤナがパーティの準備をテキパキとしていくけれども、それは相変わらずの神業である。時間が無いのにお肌のクリームをサッと塗り、そしてベル様が用意した夕日色のドレスを着せて、オニキスの装飾品をパパッとつける。それから鏡台に座らせると、お化粧も髪も誰もが見とれる程の美しさにしてくれた。そしてもちろん私の意識が回復したその時には既に、彼のチョーカーがあったのでそれを忌々しそうにしつつも、お粉が付いたらしく丁寧に布で拭いてくれる。さすが出来る専属侍女さんだ!!


最後に薄紅色の口紅を丁寧に塗ってくれて完成らしい。立ち上がってクルッと回ってみせると、「お嬢様!!最高にお美しい!!!」と叫んでちょっと泣いている。なんて優しんだろうか!!と思って微笑みながら、ヤナにギュッと抱き着いた。残念な事にお化粧がつくためにぽよぽよおっぱいは堪能出来なかったけれども、それでも温かい気持ちになれたので幸せである。



「……サラ、俺がいながら何をしてるのかな?」



そんな2人のHappyな空気を切り裂くような、地獄の底から響き渡るその声の主はとんでもなく不機嫌らしい。しかして怯える私とは対照的に、やっぱりヤナは勇者だった。



「勝手に入ってくるなんて!!殿下とはいえダメだと何度も言ってるでしょうが!!!お嬢様は優しいから何も言いませんけれどもねえ、私は違いますよ?!それに間を引き裂くような事をするのはやめてください!!まったく、お嬢様の事となると、本当に器がティースプーンの先っちょレベルに小さいんですから!!」



わああああっっ!!!最後の台詞はさすがにまずいのでは?!?!と思って慌ててヤナを守るように前に立つと、オロオロしつつベル様を見たけれども。その顔は何故か怒っておらず、しかし海に沈んだ夕日色の目をしてニヤリと口角を上げていた。え、こわすぎない……??



「さすがサラの専属侍女だ、よく分かっているじゃないか。だから早く俺のサラを返せ。」



そう言うと同時に彼は強引に私を奪うと、ブチ切れて怒鳴るヤナを放って指を鳴らし、パーティ会場の王族専用控え室に問答無用で転移したのだった。だから突然転移するんなら先に言ってって言ってって言ってるのに!!びっくりするでしょうが!!



「ああ、俺のサラはなんて美しいんだろうね?こんなくだらないパーティなんて出るのをやめて、今すぐ俺達専用に建てた離宮に行かない?そうしようよそれがいいよサラもそう思うよね?」



ほとんど息継ぎをしないで言われたけれどもさあ、専用離宮っつった???えええ……、聞いてない聞いてない!!!いつどのタイミングでそんなの造らせたんだよ!!!やめてよ本当に閉じ込めるつもりなんじゃないの?!嫌だよせめてヤナも一緒ね?!そうじゃないなら今後一生お膝の上に座ってやんない!!!


といつものようにごちゃごちゃと考えていたけれども、スッと真顔になって目を細められたので、これは危険すぎる!!!と思考を放棄した。そしてしぶしぶ口角を上げると、「ダンス、したいんですけどね……?」と身長差のせいで上目遣いでボソボソと言う。すると瞬時に拉致されそうになったところで、エルヴィスさんがサッと現れて止めてくれたのである。彼はやっぱりすげー!!!


どうにか始まったパーティで、ベル様にエスコートされて入場する。学園での卒業パーティなので、両陛下は参加されない。だから割と気軽に過ごす事が出来るのがいいよね。なんて思いつつ、口火を切るためのファーストダンスを2人だけで踊った。



「サラ、俺のサラ。美しいね、本当に輝いているよ。俺だけのサラ、見ている人間全ての目を潰してしまいたいよ。」



おっかねえ……!!!そんな事言って、皆さんが見てるのは私じゃなくて、貴方だって分かってます?!シルバーのジュストコートに深紅の装飾品はいつもの事だけど、普段はミディアムセンターパートのサラリとしている髪を、今は後ろに撫で付けるように固めていて、惜しげも無く形のいい額と美しい瞳を晒しているのだ。そりゃあ老若男女問わず感嘆の溜息を漏らして見とれるに決まっている。当然私もその一人だから、見とれつつアホな事言ってんなあ、と思ってヘヘッと笑ったのだった。


まあその瞬間にまたしても真顔になって転移されそうになったけれども、ちょうど曲が終わるところだったし、アンディがサッと迎えに来てくれて難を逃れた。さすが我が愛しの弟!!!勇者は2人いたのだ!!!


そしてそのまま小声で喧嘩していたけれども、生徒達がそれぞれのパートナーと一緒にホールに出てきた事によって終息した。そして全く手を放さないアンディによって一緒に踊る事が出来たのである。いやー、踊れないかと思った!!やっぱりかわいいアンディとは、2人で踊りたいよね!!!と美しい弟を見ながらうっとりしていたら、途端にバラ色に頬を染めて「……サラ、綺麗だよ。」と言ってくれた。こらこら!!お姉ちゃんを呼び捨てするなんて!!と思ったけれども、今はパーティだしいいか。と受け流した。


もちろん我が最愛の弟も大変美しい。服装はほとんどベル様と同じだけれども、少し長めの髪はハーフアップにしていてなんと麗しい事か!!!!弟じゃなかったらやばかった、心臓全部持ってかれたかもしれん。本当に弟で良かった!!!私の弟最高!!!変な女性は寄ってこないように!!もちろん変な男性も!!お姉ちゃんは許しませんよ!!!なんて考えつつも、うっとりしているアンディを私も微笑みながら見つめたのだった。


ずーーーーーっと恐ろしい程の視線を感じていたし、実際このホールが冷えてしまっているけれども、とにかく頑張って踊り続けた。アンディは自分自身にはもちろん、チョーカーを作り直させられた時に、私にもベル様の魔力に影響を受けないようにしてくれたのである。なんて仕事の出来る弟さんだ!!!サラさん、私達のアンディは最高よっ!!


そして曲が終わると同時にパッと現れたベル様に拉致され、王族席に戻って膝の上に座らされたのだった。周りはチラチラ見ているが、これが当たり前になるのか……。と思って羞恥に耐える私を誰か褒めてほしい!!!


なんとなく見渡したホールでは、ディーン様と婚約者のマリー・ジェネロ伯爵令嬢が踊っていた。しかし顔はお互いに真顔で、ちょっと首を傾げたらベル様に、「彼らは完全に政略的婚約者なんだ。」と耳元で囁きながら教えてくれた。それは嬉しいけれども囁くなや!!!


ちっ!!と舌打ちしたいのをビビッて出来ず、大人しく視線をホールに戻した時。ルーク様が婚約者ではない女性と踊っているのが見えた。あの女生徒は誰だろうか??確か彼の婚約者さんはものすごくヤキモチ妬きだったはずだから、これを見られたらまずいのでは……?と眉毛をハの字にしていたら、又してもベル様が囁きながら教えてくれたのである。くそっ、くすぐったいわ!!!



「ルークはねえ、あまりにもナンシー・マクレーン子爵令嬢の悋気が激しすぎると疲弊したらしくて、隣国の王女が起こした事件に協力した事をきっかけとして、婚約破棄したらしいよ。もちろん大変な修羅場になったみたいだけどね、なんとか収束したらしい。枷が外れたルークは、楽しそうに女性達と遊んでいるよ。全く、あれを専属護衛にするのは気が引けるなあ。」



まじかあ……。きっとお互いに息苦しかったのではないだろうか。ルーク様は論外だけれども、ナンシー・マクレーン子爵令嬢も今はきっと、しがみつく必要が無くなって安堵しているかもしれない。気が休まらない相手というのはしんどいものだよね。新しい婚約者さんが決まったら、その人はしっかり向き合ってくれる性格であれ、と思わずにはいられないのだった。


そうやっていつものように思考の海に潜っていたら、近付いてくる人に気が付いてふと顔を上げる。すると愛おしい弟と目が合って、ニヘッと笑うと後ろから耳を噛まれたではないか。こらこら!!


そして真っ赤になりながら目をアンディの隣に移すと、めちゃくちゃ微妙な顔をした父、反対にクスクスと楽しそうに笑っている母がいた。婚約の手続き以来、会えていなかった2人に思わず微笑みながらも、涙がせり上ってきた。


だって分かるのだ、一つに溶け合ったからこそ強くわかる。サラさんが泣いている。嬉しそうに、幸せそうに泣いているのが分かって、一心同体となっている私ももちろん涙を抑えられない。温かく、優しい目で見つめてくれる事がこんなにも嬉しいなんて。再び娘として、愛してくれるようになるなんて。きっと絶望していたサラさんは、諦めてしまっていたために喜びもひとしおなんだろうな。そんな私を、後ろからギュッと抱きしめながら、よしよしと頬を撫でてくれるベル様のお陰で、少し落ち着いた私は微笑んで家族を迎えた。しかし立ち上がらせてほしいのに、させてくれないのは大変困ったものである。立たせろや!!!



「サラ、貴女が幸せそうで本当に良かったわ。それから、卒業おめでとう。とても綺麗よ!まあ、私の娘なのだから当たり前んだけどね?」



いたずらっ子のように深紅の瞳を細めて微笑む母は、相変わらず年齢不詳で美しかった。それから、ずっと微妙な顔をしているナイスミドルの父も、「……幸せそうで良かった。くっつきすぎだと思うがな。」と言ってくれたのでちょっと笑った。この表情は父親として、娘の幸せを喜びつつも近すぎるベル様に、ムッとしていたという事のようだ。娘として受け入れてくれたという、それが嬉しくて今度こそ泣いた。我慢していたけれども、これは耐えられるわけがない。家族がこうして受け入れてくれるなんて、夢に思わなかったんだから。



「あ、父上!!俺のサラを泣かせたな?!許さないぞ!!!もう会わせてあげませんよ!!」



怒ったようにアンディがそう言うと、父が慌ててオロオロしている姿が目に入って笑った。どうにか必死で、嬉しくて泣いたのだと伝えると、誤解は解けて場の空気が元に戻ったのだった。しかしそれをぶち壊したのは、ずっと頬を撫でて、心を落ち着かせくれていたはずのベル様で。



「……おいアンディ、どうして俺のサラを呼び捨てにしている?」



それはもうホールが一気に寒くなる程の魔力を放って、低すぎる声で訊いている。こんな修羅場を察したら、通常なら混乱を極めてしまいそうだが、むしろ何かを察したらしい生徒達とその家族は、変わらず踊ったり談笑していて強いな!!と思うのだった。慣れちゃったってコト?!適応力が凄まじいですね!!


なんて現実逃避していても、ベル様の魔力は漏れ続けている。これではダンスで火照った身体が急速に冷えてしまって、体調不良になり兼ねない!!と慌ててベル様の頭を撫でた。そして「魔力を抑えてくださいません?」と囁いてみる。途端にバラ色に頬を染めて破顔すると、パッと暖かくなったので安心したのだった。いやー、油断も隙もないなあ!!!



「殿下、大人気ないですよ?もう3日後には正式に発表なさるわけで、そしたら俺の姉でありながら姉ではなくなる。それなら名前で呼んでも問題ないのでは?俺のサラだって嫌がっていませんし。」



うわわっ!!!さすがの母も困ってる?!と思ってチラッと見ると、全然楽しそうだった。いやいや、母TUEEEE!!!だってお父様は顔面蒼白になって、冷や汗ダラッダラなのに!!アンディの強さは母譲りか……。と納得したのである。



「……くそ、ここで氷漬けにされない事に感謝するんだな。俺のサラがいなければ、お前はとっくにこの世にいられないんだぞ?」



という恐ろしい事を言う。思わずグリンッと振り向いて、驚愕の表情をする私を愛おしそうに抱きしめながら、頬にちゅっちゅして「大丈夫、サラが嫌がるからしないよ?」と耳元で囁いた。いやいや、そういう問題?!


この状況をアンディが面白がるわけもなく、「俺のサラを放せ!!」と言って掴みかかろうとした瞬間にベル様が指を鳴らし、私と2人で彼の私室に転移したのだった。えええっ?!家族に挨拶もさせて貰えなかった!!!そうやって慌てつつ落ち込む私に、うっとりしながら魔王が口を開いた。



「サラ、大丈夫。エルがしっかり対応しているはずだ。だから問題ないよ?ご家族ともいつでも会えるようにしておくし、これからは好きな時に呼んで?もちろん俺も同席するから。」



と、とんでもねえぜ……!!まあここで文句を言ったらやぶ蛇になるから、無理やり口角を上げておいた。あーもう、もっと親子の会話をしたかったんだけどな!!でもいつでも呼んで良いっていう許可をくれたし、会いたくなったら手紙を出して、都合が合えば来てもらうことにしよう!!アンディとはほぼ毎日会っているから寂しくないけれども、たまには両親とも会いたいしね。とニコニコし始めた私を、愛おしさ爆発という感じでスンスンスリスリギュッギュにちゅっちゅしているベル様(魔王)が、うっそりとしながら何か呟いていた内容は聞かなかった事にしよう。



「……3日後、本当に俺のものになるね。まだ婚約者だとしても、そんな事は関係ない。すぐにでも俺のものにしてやる。誰がなんと言おうとも、絶対に。」



ほらほら、ね?!聞かなかった事にしよう!!!うんうん、それがいいよね!!!ハハッ、貞操を守れる魔道具を開発してほしいって、アンディに頼んでみようかな???いやそんな事したら、シスコンを極めているあの子は暴走してしまいそうだし、ヤナに相談するか……。


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