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私がブラコンなばっかりに。


結果から言うと、アンディは手紙をすごく喜んでくれたようで、返信が翌日の朝に届いたのには、吃驚しすぎてヤナと2人で笑ってしまった。 “近々会いたい、絶対会いたい。姉さんと話したい、会いたい。” と熱烈に書いてあり、入れ替わったとはいえやはり弟とは、姉が好きなものなのかなと思ったりした。


しかしベル様はもちろん 、家に行くなんて許す訳もなく。だからアンディを呼んで、私の部屋として宛てがわれている部屋ではなく、応接室でお茶をしたのだけれども。当然のようにベル様の膝の上に座らされているのが本当につらい!!弟のシラケた目を見て?!私と同じ顔をしてるのに、あんなに冷たい表情されたら心が痛いよ!!しかしどんなに動いても小声で伝えても、断固拒否で現状維持だったのでもう諦めるしかない。ああ悟りを開いてしまいそう。


そしてそんな謎トライアングルのお茶会も、数をこなすと私も弟も慣れてしまって、ベル様をあまり気にせずにふつうに会話出来るまでになった。きっとアンディも悟りを開いたのではないだろうか??さすが弟!!!



「それにしても、卒業と同時に第一王子殿下が王太子になられるために、立太子するのは分かりますが、更に姉さんとの婚約を発表するなんて正気ですか?殿下がそのように気を配って面倒をみていただなかくても、俺がしっかり守るので別にいいんですけどね?というかそろそろ返してくださいよ。」



今日も我が弟は勇者である。果敢に魔王に立ち向かい、その二重で切れ長の美しい赤い瞳の目を細めて、ギッと睨む姿はさながら勇者そのもの!!しかしてこちらもまさに魔王であるわけで、そんな睨みが通じる訳もなく。



「はは、笑わせるなあ。そんな事を俺が許すわけないだろう?俺のサラを手放すなんてしたら、国だけでなくこの世界が滅ぶと何度言ったら分かるんだろうね?それが理解出来もしないのに、俺のサラを養えるなんて烏滸がましいな。そんな心配をする暇があるなら、第一王子の力を使って婚約者を宛がってもいいんだよ?」



ゴゴゴゴゴゴ……!!という文字が背景に書かれていそうな程の圧を出し、アンディにそんな事を言うベル様(魔王)は本当に怖い。学園卒業まであと3ヶ月となった今、すっかり打ち解けた2人は仲良く会話をしているところなのだが、最近の内容はもっぱら学園卒業後の私の話であった。意外にもアンディは私に家に戻ってきて、そしてずっと補佐をしてほしいと思っているらしく、なんて姉思いの優しい子!!と感動していたのだけれども、ベル様は当然そんな事を許さないと、婚約者にするために本気で動いているらしい。


確かに私もベル様のそばにいたいと思っているけど、現実問題それが難しいのならば、アンディを支えながら発展していくこの国と、そしてベル様をひっそり見守っていきたいのだ。アンディが結婚したら、田舎に移ってそこで悠々自適に暮らしたい。何がなんでも付いてくるというヤナと一緒に、ワイワイ楽しく暮らしていくのも悪くないのではないか。



「サラ、なにか良くない事を考えているね?ダメだよそれは。俺は絶対に君を手放さないし、もし勝手に離れていったとしたら、問答無用で世界を滅ぼすからね?ふふ、そんなのサラは嫌だよね?」



うわっ!!!考えている事がバレている?!最近よく見透かされるため、本当に頭の中を覗ける魔道具でも開発したのかと不安になるけど、そうではないらしい。単純に毎日毎日観察していたら、思考回路を読めるようになったとうっそりした笑顔で言われた時は鳥肌が立ったものである。だがしかし、世界を壊すという脅しを何回したら気が済むんだろうか?!気安くそんな事を言わんでほしい!!心臓がもたないよ!!!だから必死でヘラリと口角を上げるしかないが、溜め息を吐いたアンディがその美しい目を優しく細めて私を見た。



「大丈夫だよ姉さん。俺がしっかり面倒見るから、何も気にしないで今すぐ帰っておいで。両親も入れ替わって、その通り別人になった姉さんに会いたいって言ってるんだ。俺も結婚なんかする気は無いし、ずっと2人で頑張って領地を支えていこう?後継は養子をとればいいしね。」



ニコッと最後に最高の笑顔を振りまきながら、何を言うんだ我が弟は!!えええ?!と吃驚しすぎて言葉が出ない私の代わりに、ベル様がものすごい魔力を漏れさせた。それはもうこの部屋がすっかり寒くなってしまい、せっかく暖炉でポカポカなのに一気に極寒だ。ああ!アンディだけじゃなくてヤナも寒そう!!大慌てでベル様の頭を撫でながら、「魔力を抑えてほしいです!!」と必死伝えた結果、どうにか止めくれたし部屋も温めてくれた。あー良かった!!



「アンディ、この話し合いは平行線のようだね?それならば俺は権利をフルに使って、お前に婚約者を何がなんでも宛がってやる。そうしたら嫌でも結婚せざるを得ないし、俺のサラに執着している暇もないなあ?」



また言ってる!!無理やり婚約者だなんて、どっちも幸せになれなくない?貴族社会は得てしてそんなもの、と言われたらそれまでだけど、こんなに殺伐としたものもあるの?!弟だから幸せになってほしいし、お姉ちゃんとしては嫌だなあ?!ムッとしてベル様を見ると、途端に蕩ける笑顔になって私の眉間をグニグニと押して笑っている。やめろや!!



「まあこうして、サラが嫌がるから無理に婚約者を、今は宛てがわないから感謝するんだな。もちろん俺のサラに。」



恍惚とした顔を私に向けながらも、アンディに冷たい声でそういうベル様は、本当に私を婚約者にするんだろうか。聞いた話だと、今は隣国に留学されている第二王子殿下はあまりよく思っていないらしいし、もしかしたらベル様を説得して止めさせるかもしれない。未来なんて分からないんだから、期待して待つなんていう愚かな事はしないようにしなければ。


とにかくこんな風に、週一で行われるお茶会は話が平行線のまま終わるのである。帰り際にハグしてくれながら、名残惜しそうに耳元でクソデカ溜め息を吐いて帰る弟がかわいくて、眉毛をハの字にしつつ見送るのが恒例行事なんだけど。すぐベル様の私室に拉致されて、消毒と称したスンスンスリスリにペロペロが加わって本当に恥ずかしい!!なんなの?!大型犬じゃん!!!ハウス、ハウスよ?!無理だろうけどね!!


学園生活も、罰された女生徒達が戻ってきて日常を取り戻している。謝りたそうにこちらを見ている、という状況だったのだけれど、宣言通りにベル様が私に近づけさせないせいで、全く交流出来ないのが悲しい!!あわよくば仲良くなれそうなのにな。友達とカフェなんて、憧れちゃわない?!城下町のカフェ巡りとか小物屋さんとか、女の子と巡るの絶対楽しいじゃん!!立場上、ヤナはしてくれないって言うしさ。「俺と行けばいいでしょ?」って笑顔で言われたけど、そうじゃないんだって言ったら、地獄を見そうだから黙って頷いた私は偉いよ!!


あと3ヶ月で卒業とあっても、変わらずマイヤー先生の授業は続いていて、なんなら王宮の超細かいマナーとかも組み込まれてきた。嫌でも気づいちゃったけど、やっぱこれ妃教育ってやつじゃないの??そんな気は薄々してたんだけど、確定じゃね?って思ったのは各国の王族に対するマナーを教えてもらった時。そして王妃様とお茶をした際に、王太子妃として開くお茶会の詳細を楽しそうに言われた時である。ベル様の本気が怖くて震えていたら、ヤナが察してギュッとしてくれた。優しいし、何よりぽよぽよおっぱいが温かくて泣いちゃうかと思った!!


どうしようかなと思いながら残り2ヶ月となった頃、遂に隣国から第二王子殿下が戻ってくるという。これは本格的にベル様を説得にきたな?!ついでに私に圧力をかけて、追い出そうという魂胆でしょう?!そうね、きっとそう!!だって漫画とかラノベでそうだったもん!!!わあああ、オリーブ殿下以来の修羅場だー!!!


おかしなテンションではしゃいでしまったけれど、きっとそうなる予感がしている。ちなみにオリーブ殿下はその後、必死で隣国の王太子殿下の謝罪と懇願、そして私の頼みのお陰で修道院行きを免れた。しかし女生徒達と同じように軟禁されて、改めてギッチリと厳しくマナーを叩き込まれて鍛え直され、別の国へ嫁ぐ事が決まったらしい。王太子妃ではあるものの、お相手はかなりの女好きらしいのできっと他にもたくさん女性がいるその王子に、オリーブ殿下は耐えられるのだろうか。どうなろうと私に何も出来ないけれど、少しでも彼女が幸せになれたらいいなと思うばかりである。


そしてジュリア様も、結局再婚約する事がないままだ。カデンさんはそれでも北の辺境に希望通りに行ったようで、彼女は追わなかったという。そんな気はしていたけど、本当にそうするなんてちょっと悲しくなった。ベル様を幼少期から裏切っておいて、それなのにその愛を突き通さないなんて。当然彼女も罰されているので、半年間修道院で生活していたのだけれども、貴族の令嬢が学びに行く場所なのであまりつらくもなく、考え方が変わるなんて事もなかったらしい。


今後彼女が現実としっかり向き合った時に、後がない事に気付いたらどうするのだろう。ベル様に縋るのかもしれない。その時に彼がどうするのか私は分からないが、私を捨ててジュリア様をとったとしても別に構わない。そういう人を好きになった私が悪いのだから。それこそ田舎に移って、深い心の傷を癒しながら悠々自適に暮らせばいいしね!!


それから、肝心の私の心だけれども。実はほとんどサラさんの気配は無くなっている。というよりも、一体化しているなと感じるのだ。チグハグな感情ばかりだったけれど、今では抱くそれが一つしかない。叶うならば話してみたかったな。どうして私がサラさんの身体に入ったのか、理由を知っているならば教えてほしかった。


さて話は戻って、近々帰ってくるらしい第二王子殿下だけれども、年齢は私とベル様の2歳下で、魔力は劣るが頭は悪くないらしい。だから補佐としてずっとベル様に付く予定であり、外相としての活躍を期待されている程の秀才くんだ。そんなにすごければ第二王子派とかいそうなんだけど、本人にそんなつもりが微塵も無いことに加え、何よりベル様は魔王なので誰も逆らえないというのが大きのである。さすが絶対王者にして魔王!!そこにシビれる!憧れるゥ!!


ヤナには寝る前にこっそり相談しているが、やはり彼女は何がなんでも付いてきてくれるらしいので、本当に嬉しくてぎゅっとしてもらった。もともと向こうの世界では働いて、自分の事は自分でするのが当たり前だったのだから、ヤナと2人で暮らしていく事も何も不安も不満も無い。いざとなったら本当にそうしようと、ぽよぽよおっぱいに癒してもらいながらそう思ったのだった。


そんな時に開かれたアンディとのお茶会で、彼は迷いなく第二王子殿下の話を振った。お姉ちゃんは胃が痛くなったけど、弟のために耐えるよ!!



「そろそろ第二王子殿下が戻られるそうですね。俺の姉さんをよく思っていないそうではないですか?そんな人が近くにいるなんてより一層安心できませんし、早急に返してください。それが嫌ならば、何がなんでも安全だと保証して頂かないと。」



勇者が今日も勇者ですごいなあ。お姉ちゃんは怖くて、今日まで直接第二王子の話は避けてたっていうのに!!わわわ、ベル様はなんて言うんだろう??ブチ切れちゃってアンディになにかしようものなら、私が盾になって守らないと!!と意気込む私に対し、彼はただ鼻で笑うと強ばっている私の体をギュッと抱きしめて、蕩ける笑顔を向けてくれた。



「馬鹿な事を言うな。この俺を前にして、あいつが何か出来ると思うか?他の者達が良くない噂を流しているのは俺も把握しているから、しっかり手を打たせてもらったよ。直におさまるだろう。それよりも何がお前の姉さんだ、俺のサラだよ。まったく、油断も隙もないな。」



いやいやどっちのでもないわ!!私は私のだよ間違えないで?!怖いから言えないけどさ!!それにしても手を打ってあるって怖いし、第二王子殿下に対してもなにかしてるんだったら、さすが魔王としか言いようがないな。抜かりないというか、ブラコンらしい第二王子殿下を泣かせるなんて事をしたら、同じブラコンとしてかなり落ち込んでしまう。しょぼんとしていたら、何かを察したアンディがちょっと頬を染めて「姉さんったら…本当に俺の事が好きだね。」って言った。いや確かにそうだけどどうして今?!このタイミングで?!ほらほら魔王が魔力漏れだしちゃってるよ!!どうするの我が愛しの弟くん!!



「サラが好きで愛してるのは俺だよ。お前の事はあくまでも弟、家族として好きなんだ。間違えるなよバカたれが。」



うわー……、目の前で勇者と魔王の戦闘が始まってしまった!!睨み合いながら言葉で戦う、まさに貴族の喧嘩という感じ??しかしてアンディも家族愛だって分かってるはずなのに、どうしてベル様はいちいち釘を刺すんだか。独占欲おばけは全てにおいて許せないらしいから放っておこう。大丈夫よアンディ、口に出せなかったとしても、お姉ちゃんは貴方が大好きだからね!!という熱い視線を送っていたら、途端にボンッと赤い顔をして「俺も大好き。」と言ってくれたのである。あらあら、なんていい子なんだろう!!言わなくても目線で思いが通じるなんてすごいし、しかも大好きだなんて!!立派なシスコンになってしまったけど、かわいいから問題ないよね!!


そしてそんな見つめ合う姉弟を、ベル様(魔王)が邪魔しないなんて事はなく。勝手に頬や耳にちゅっちゅして、チョーカーを撫で回したり舐めたりされた私は真っ赤になって慌てるしか出来ず。弟の前でなんて事を!!と涙目で睨んでるのにむしろ喜んでる感じがするベル様は、強制でお茶会を終わらせようとしたので慌てて止めた。


そして今度は猛烈に怒っているアンディを宥めようと、おいでおいでとベル様の膝の上にいる私の隣に呼んだ。すると光の速さで来たので思わず声を出して笑いながら、男の子にしては長めの、サラッサラのシルバーブロンドを撫で撫でしたのだった。嬉しそうに頬を染めて、目を閉じるアンディはまさにネコちゃんのようで、顎の下をくすぐりそうになるのを必死で我慢したのだった。そして魔王の怒りのオーラも凄まじいので、彼の頭も撫で撫でした。おお、これぞまさに両手に花!!


なんて浮かれていたのは私だけで、ベル様とアンディはお互いに圧を出して静かな戦いをしていたようだ。うふふとはしゃぐ私は気付かず、まったく本当に随分と図太くなったなあなんて呑気に思ったのだった。


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