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終わるの早いなあ。


顔面蒼白で今にも泣き出しそうなオリーブ殿下は、プルプルと震えていて庇護欲をそそる。だがしかしそれはもちろん、ベル様には通じないわけで。不敵な笑みを浮かべたまま、何故か私を愛おしそうにギュッ抱え直して頬に唇を当てている。え、なんで今?!いいからとにかく、オリーブちゃんをなんとかしてあげてよ!!!という思いで見つめたのに。決して蕩けた視線を返してもらうためではないのだよ?!



「さて、早くサラと2人になりたいから終わらせよう。オリーブ、お前に渡したブローチを今日も着けてくれてありがとう。」



突然の感謝の言葉によって、この世の終わりのような顔をしていたのに、瞬時にバラ色に頬を染めてうっとりしている。いやだから、オリーブちゃんって強いわあ!!



「はい、もちろんですわ!!私はベオウルフ様にいただいた時から、肌身離さず持っていますの!!だっていつも一緒にいたいですから!!」



うわあ、めっちゃ乙女じゃん!!少女漫画のヒロインみたいにキラキラしててかわいい!!なのに私を抱っこしたままのベル様は、相変わらず魔王ムーブなのが恐ろしいな。



「そうかそうか。お前がそうやって肌身離さず持っていてくれたお陰で、俺は証拠を全て手に入れる事が出来たんだ。だから感謝しなくてはなあ?オリーブ、改めてありがとう。」



うっそりとしながらも、本当に嬉しそうなその顔はまさに魔王!!怖い怖いっ!!確かにオリーブ殿下にあげたブローチに、魔力を込めたとか言ってたけどさあ!!え、こんな事がありそうな予感がしてたの?!ヒェッ!!



「そ、そんな!!どういう事ですの?!これは私とベオウルフ様の愛の証拠なのであって、私が何かしたという罪の証明にはなりませんわよ?!」



めっちゃポジティブ!!2人の愛の証拠なのかー、そうかー、きっとそうに違いないなー。と思わず頭の中でさえも棒読みになってしまうけれど仕方がない。だってベル様が本当に愛を込めて渡すのならば、ブローチなんかでは済まないのだから。私が強制で身に付けられているこのチョーカーが、その証拠なんですけどね?!図らずも張り合うような事を思ってしまったけれども、決して自慢したい訳じゃない。恐怖をお伝えしたかっただけなのだ。



「それが私とお前の愛の証拠?ははっ、本当に笑わせてくれるなあ。それは確かに私が魔力を込めたが、サラに危害を加えようという悪意を感じた場合に録音する機能になっているんだよ。オリーブ、ブローチを寄越せ。」



え、チートじゃん!!そんな便利な能力を付けられるんですか?!王族以外は魔力はあっても、それを扱う事が出来ないというのに!!ホイホイ使いやがって羨ましいな……。そんな思いで眉間に皺が寄ってしまっていたが、何を勘違いしたのか、「俺が愛してるのはサラだけだよ、あれは本当に証拠集めのために渡しただけだからね?」と耳元で囁かれた。いやいや違います!!と顔を赤くして必死で首を横に振ったのに、蕩けた笑顔のベル様は何度も頬や耳にちゅっちゅしてきて只管怖かった。話が通じねえ!!



「い、嫌ですわ!!これは私がベオウルフ様からいただいた、大切な物なのです!!これを例え貴方であろうと、渡す事は出来ませんわ!!」



金切り声を上げて、必死に胸元に輝いていたブローチを両手で守っている。しかしそんな事はベル様(魔王)に通じないって、いい加減に学ぼうよオリーブちゃん。ああほら、既にエルヴィスさんの手の中にあるよ?!気付いて!!オリーブちゃんの両手で守ってる胸元には、きっと何も無いよ?!と慌てて彼女を見ていたのに、ギッと睨まれてしまった。かわいいけど!!



「オリーブ、では再生するからな。その前に自ら罪を認めて自白するならば、お前の処遇を少し軽くするように考えてやってもいい。どうする?」



出た!!ちゃんと聞いてないと痛い目見る交渉!!オリーブ殿下、ちゃんと冷静に判断出来るであれ!!しかしそんな応援も虚しく、胸元にあったはずのブローチが本当に消え、それがエルヴィスさんの手にある事に気付いた彼女は、顔面蒼白になって冷や汗をかいている。そしてそんな状態で、正常な思考回路をしているわけもなく。あれよあれよと自分の罪を、小声ながらも告白したのだった。涙を流しながら情に訴えかけるようにして、上目遣いの彼女は気付いていない。ここにいるのは情なんて無い魔王であると。そして本当に泣きたいのは私であると!!



「私はただ、ただずっとずっとベオウルフ様をお慕いしていただけですわ。だからこそ貴方の愛したジュリア・キャンベル公爵令嬢との仲を引き裂いた挙句、図々しくもその座に着こうとしているその女が許せなかったのです!!逸早くベオウルフ様の目を覚ましたいという思いから、少々大袈裟にソレの罪をここに書き記しましたけれども、それは本当に貴方への愛ゆえなのです!!」



胸の前で両手を組んで、上目遣いでポロポロと涙を流しながら悲痛な声で言う。それは通常ならばかわいいな、守りたいな、と思わせるようなものなのだろうけれども。ずっと好きだったと宣うわりに、彼の本性を全く見抜けていなかった時点で、彼女の負けは決まっているのだ。ああもう、魔王がうっそり笑ってて怖い!!



「オリーブ、あい分かった。詳細はお前の専属護衛に託したから、そのまま祖国で待て。もちろん自室で大人しくな?自由なんて無い事を覚悟するんだ。」



とても楽しそうに言うと、エルヴィスさんに目で合図する。そしてスッとオリーブ殿下の専属護衛さんに近付くと、仰々しい封筒を手渡して何かを囁いていた。すると途端に顔を青くして、必死に首を縦に振っている彼が不憫に見えてしまう。けれどもそれが彼に託された仕事ならば、全うしないときっと命が無いからね、頑張って!!と応援するしか私には出来ないのだけれども。


そして未だに情に訴えようと、必死でベル様に愛を叫んでいたオリーブ殿下は、うっそり微笑む魔王によって、専属護衛さんと共に国に強制送還されたのだった。彼女が最後に見たのは、ベル様が恍惚とした表情で私の頬に何度も口付けをする姿で。きっと心にいろいろと大きな傷が出来てしまったのだろうな、と思って少し可哀想な気がした。


そして全てが終わったらしく、ホールを見回したベル様は温かな魔力を放出した。ずっと空気が冷えていて、恐ろしさもあって生徒達とその親が震えていたが、これで大丈夫だろう。アンディは?!と振り返ると、彼も無事なようで微笑んでくれた。良かった!!あと私の弟かわいい!!後ろを見たまま途端にニコニコしている私を、ベル様は抱え直して視界を自分に向けさせてしまった。いいじゃん弟なんだから!!という講義の目は当たり前に無視される。悲しい!!



「さあ、失礼したな。これにて無駄な余興は終了した。もう少しこの場を楽しんでくれ。飲み物も食事も、最高のものを出そう!踊るなり食べるなり、好きなように楽しんでくれ!!」



魔力でホール全体に声を通るようにして、彼は高らかに宣言した。すると空気を読んだ王宮楽団の方々が、美しくも明るい音楽を奏で始めてくれて。それは心が踊るようなもので、誘われるようにして数組が真ん中に出てきて踊り出す。


わ、楽しそう!!と見ていた私の手を取り、甲ではなく手のひらに口付けながら「サラ、俺と踊ってくれるね?」と言う彼は王子様然としている。見とれてしまう程に美しく、赤い顔をして頷くだけの私はどう見えているんだろう。チラッと振り返って確認した弟の顔は、とんでもなくシラケたものだった。しかしその目はベル様に向いていて、やっぱり彼も勇者なのでは?!と思いつつホールに2人で向かい、軽快なステップを踏んだのである。


そしてベル様に挨拶に来る貴族達を、ガッチリ腰を押さえられている私も強制で対応させられたけれども、マイヤー先生の授業のお陰で全員の名前が分かって、どうにか乗り切れたのだった。それをベル様が海に沈んだ夕日のような目で、幸せそうに見つめていた事に気付いたのは、マイヤー先生と我が弟だけだったのである。


漸く部屋に戻ったわけだけど、ベル様が放したがらなくて大変だった。すぐにヤナが引き剥がしてくれたから、今はゆったりとお風呂に入ってるけど、そうじゃなかったらより一層疲れていたかもしれない。あー、ヤナのマッサージ最高!!うっとりしちゃうし眠くて仕方ないなあ。


そして髪からつま先まで、しっかり保湿して丁寧にケアをしてもらった後は、自分で入念に歯磨きして天蓋付きクソデカファンシーベッドに向かったのだった。しかしその前に、問答無用で勝手に転移してきたベル様(魔王)が、ヤナが目を離した隙に私を私室に攫ったのである。うわぁ……、もう疲れたから寝たいのに!!



「ああサラ、サラ!!疲れたよ、俺はもう疲れた。でもサラのために頑張ったんだよ。褒めて?たくさん褒めて?」



後ろから膝の上に抱きかかえ、スンスンスリスリしてそう甘える彼は、本当に疲れているように見える。だからちょっと口角を上げながら、「いいこですね、いいこですね。」と言いながら頭を撫でたのだった。それに嬉しそうに目を細めながら、「んふふ♡お風呂上がりのサラいい匂い。食べたいなあ。」と呟いている声は聞かなかった事にしよう。そう聞こえなかったんだ!!



「今日はサラも大変だったね。初めてのパーティだったのに、それに加えてあのバカ女達がやらかしたからね。ちゃんと後始末をするから安心して?許せないよね、サラをつらい目にあわせるなんて。ふふ、容赦なんてしないから大丈夫だよ。」



なんにも安心できないし大丈夫ではない!!それにやっぱり罰を軽くする事は考えても、実際に減刑するわけじゃないのね?!知ってましたけど怖いです!!どうしよう、どうやったら軽く出来る??いや、ちゃんと嘘をついた罰は受けるべきだけど、それでもその行動の原因は熊谷萌さんとはいえ私なわけだし。なんだか切なくなってくるなあ。と思って眉毛をハの字にしていたら、うっそりとして微笑むベル様が、暗い目をしたまま口を開いた。



「……サラが何を考えているのか知りたいなあ。きっとあいつらの罪が軽くなるようにとか、そんな事じゃないの?うふふ、それはダメだよ。だって俺のサラを傷つけたんだから。例え中身が違えど、サラはサラだからとか思ってるならそれは間違いだよ。あれはサラだけどサラじゃないんだから、背負おうとしなくていいんだ。俺のサラは君だけだよ、大丈夫だから安心して何も考えないで?俺だけを考えていてね。ふふ、サラ大好き。」



一から十まで怖い事しか言われなかった!!だけどそれでも、嬉しいなと思ってしまった。木内紗良()が背負わなくていい、という言葉は、きっとずっと欲しかったのだろう。だけど許されないと思っていたから、どうにか償おうとしていたのに。それを見抜いた彼は、欲しい言葉をくれた上で、更に私自身を好きだと言う。うわー、ドキドキする!!これが恋というものか!!忘れていた感情を思い出して、顔が赤くなったのが分かる。



「サラ、真っ赤だねえ?正面から見せてよ。ほら、ああやっぱりかわいい!!食べていいね?食べるよサラ。うふふ♡大好き、愛してる。」



そう言いながらベル様を両足で跨ぐようにして膝の上に座らされ、逃げられないようにガッチリ押さえつけながら、容赦なく深い口付けをされたわけだけども。抗議しようとした思考は、すぐに巧みな舌使いによって放棄せざるを得なくなり、ただ只管に翻弄されてクッタリと力が抜けたのだった。恐るべしベル様のテクニック……!!他に知ってる人がいると思うとモヤモヤするけど、彼は王子様だから仕方がないよね。そばにいると決めたのならば、受け入れるしかないのだ。



「サラ、サラ、かわいいね。ああ、向こうの世界で他に君の身体の味を知っている男がいると思うと、腸が煮えくり返るなあ。俺の魔力は異世界にも影響出来る?それならそいつら全員葬り去りたい、いや葬り去るべきだな。だって俺のサラを知ってるなんて許せないし。そうだそうしよう、ちょっと魔術師や魔道具師と相談しなければ。」



わー!わー!!ダメダメ!!!本当に本物の魔王になろうとしてる!!!やっべ、発想がやっべ!!!とにかく説明しなければ!!説明というか、説得というか……!!



「あの、ベル様?それはいくらなんでも危険では…?それに確かに向こうの私の身体では、そのぉ、いろいろと経験があります。ですがしかし、サラさんの身体はベル様以外、誰も知りません……よ?」



言いながら、だんだん見るからに機嫌が急上昇しているのが分かり、最終的には破顔したベル様(魔王)に嫌な予感が光の速さで脳天に駆け抜けた。これはちょっと、押してはいけないスイッチを押したのでは……?!だって他になんて言えば良かったんだ?!本当に向こうの世界に魔力で干渉出来るなら、リアル魔王として討伐される可能性もある。きっと討伐隊は返り討ちに遭うんだろうけどさ!!だから濃厚な口付けのせいで酸素が足りず、思考回路が上手く働かない状況ながらも頑張って考えて言ったのに、起爆スイッチだったらしい。



「あはは♡確かにそうだね!!俺しか知らないんだ、サラの事。そうだね、そうだよ俺しか知らないし、今後もずっと一生俺だけなんだ。向こうのサラの事も俺のものにしたいけど、ここにサラ本人がいるんだから我慢するね?かわいいねえ、かわいい。大好きだよサラ。あは♡愛してるよ。ほらおいで?」



そうして赤く染った頬に、今にも溶けてしまいそうな程の熱量を含んだ目をした彼に、ソファーに押し倒されそうになってワタワタしてしまう。食べられる……!!まだダメでしょうよ!!王子様とはいえちゃんと手順を踏まないと、世間の反感を買うのでは?!と焦る私を他所に、本当に幸せそうに何度も名前を呼びながら、耳や首を舐めたり噛んだりするベル様に為す術もなく。真っ赤な顔で目をギュッと閉じて諦めの境地に入った時。



「こぉぉら殿下ぁぁぁぁ!!!!!」



という地を這うような低い怒鳴り声がして、その瞬間に彼は後ろに倒れていた。そして抱えるようにして私を守ってくれたのは、ヤナ(勇者)だったのである。やだイケメン///♡とトゥンクしつつも、すぐに立ち上がったベル様(魔王)と私を守るヤナ(勇者)が激しい攻防を開始し、疲れた私はそれを微笑んで見つめながら、寝落ちしたのは許してほしい。


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