表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/33

美しい弟と、断罪劇の気配。


それからもオリーブ殿下はすごく頑張っているが、しかし全くベル様が靡かないのでどうしたらいいのか分からない。同じ学年のお友達と一緒に、なんとか私とコンタクトを取ろうとしてくれているらしいけど、一人になる事がまず無いので話が出来ないのも困っている。


彼女がこの国に留学という体でいられるのはあと1ヶ月。お互いに焦っているのは目に見えて分かるが、ベル様に隙が無いのは逆に怖い。私を当て馬にしようとした過去があるから、オリーブ殿下の事も同じようにするのかと思っていたけど、私がそれは嫌いだと知ってから絶対にしない。だからその点においては信頼しているのだけれども、だからと言ってベッタリ張り付いてほしいとは思ってなかったんだけどな?!


そして近々、オリーブ殿下の留学終了と隣国との仲良しアピのために、王宮でパーティが開かれるらしいのである。これはあれでは?!憧れのダンスパーティー!!マイヤー先生の授業にも学園の授業にも相変わらずダンスは組み込まれているが、実践した事は無いのでちょっと楽しみすぎるのだった。まあそこで、何があるのかは分からないけどね。もしかしたらよくある設定のように、私を断罪する計画もあるのかもしれない。そうなったらなったで、なるようになるしかないのだけども。


今日も無事にマイヤー先生の授業が終わり、ベル様に拉致されて彼の私室にいたら、当然のようにドレスも装飾品も用意してあると言い出した。怖い!!



「サラ、どうして自分で用意するなんて言うの?もうずっと前から、君の衣服も装飾品も全て俺が作らせて管理しているというのに。心配しないで?大丈夫、サラにだけだからね。他の誰にもしていなんだ。キャンベル公爵令嬢にだって、こんなに細かく管理したり、しようとも思わなかったんだから。」



蕩ける笑顔でお茶菓子を私の口元に運びながら、そんな怖い事を平然と言う。管理ってなに?!確かに私の身に着ける物は衣服から装飾品から、香油や化粧水に至るまでベル様のお勧めというのを使ってるけど、食べ物まで全て口を出し始めたというのはさすがに冗談だと思っていたのに。本気だったんだ?!どうりでヤナがいつも、悔しそうにお茶を淹れてくれると思った!!こわっ!!!


無言でいるとまた頭の中を覗かれそうな気がしたので、「…そうなんですね。」とだけなんとか答えたのである。なんかすんごく楽しそうだし、とりあえず任せておくしかないかなあと諦めて、差し出されたクッキーをもぐもぐした。


それから、一応ほとんど毎日ベル様とオリーブ殿下と3人でお昼を食べている。膝の上にいる私に対抗して、ベル様の右隣に座って食べさせようと頑張る彼女は、やはりかわいいし友達になりたい。絶対に断られるけど!!



「ベオウルフ様、本日のビーフサンドには、私のお勧めのグレービーソースがかかっておりますの。とても芳醇な香りと味わいですのよ!さあ、お口を開けてくださいな!!」



うっわ、かわいい!!そんなウルウルした瞳で見つめられて、あーんしてくださいなんて!!思わず私が顔を寄せて食べてしまいたくなるじゃないの!!かわいいって罪ね。美ももちろん罪だけど!!



「そうか、いや自分で食べるから置いておいてくれ。サラ?君には俺がシェフに頼んだこのテリーヌを食べてね。」



仔猫ちゃんにシレッと塩対応したのに対し、私には火傷しそうな程の熱を持った視線を送ってくるベル様が怖い。だがしかし羨ましそうに見てくるオリーブ殿下がかわいいったらもう!!最近は前よりも心も身体もサラさんと同化してきていて、ベル様が他の女の子と話しているのを見るとちょっとモヤつく事が増えたのである。これはいい傾向なのではないか?特に紗良である私からしたら、きっと良い変化な事に違いない。



「ベオウルフ様は本当に、その女がお気に入りですわね。確かに見た目は悪くないと思いますが、聞いたところによりますと、一途ではないのでしょう?」



ああ、ほらまたすぐ地雷踏む!!どうして簡単に踏むの?!と慌てている私を他所に、ベル様(魔王)の機嫌が急降下したのが分かる。底冷えするような魔力を漏れさせているのに、オリーブ殿下は平気そうにサンドイッチを食べていているではないか。強い!!



「……オリーブ、誰に聴いたのか知らないが、それは間違いだよ。サラはあの時のサラとは別人だからな。それにあまり俺を怒らせないでくれ、また期間より早く国に戻りたいか?」



こっっわ!!!そんな睨みつけて言わなくてもいいじゃん!!仔猫ちゃんもムッとするだけとか、けっこうハート強いよね?!まあ、熊谷萌さんが起こした問題は、粉を掛けられていた攻略対象の2人と、その婚約者さんに根強く残っていても仕方がないのだから。実は早々に彼女達に謝らせてもらったのだけれど、当然のように無視だった。ちょっと傷ついたけれども仕方がないのだ、これは私が背負わざるを得ない罪である。


とにかくそうやって日々は過ぎていき、頑張る仔猫ちゃんを応援しつつも、自分自身の気持ちとも向き合っていた。きっと紗良()だけだったならば、ベル様の事は絆されはしても好きにはならなかったはずだ。それでも彼を好きだなあ、と思い始めているという事は、サラさんと同化しているのだろうね。まだまだ引きこもり生活を諦めたくない思いが強いけども、きっと逃げられない。あーあ、囚われちゃった!!



「ああサラ!!なんて美しいんだろう!!俺だけのためにこんなに着飾って!!たまらないよ、本当に。閉じ込めてしまいたいね?!」



めちゃくちゃ鼻息荒く捲し立てるベル様は、今日のパーティのために着飾った私を舐める様に見つめて、ずっと怖い事を言っていてもはや無視するに限る。だって朝からすんごい時間と手間を掛けて、私は今どうにかここに立っているんだから!!こんなに大変なんだ?!冗談かと思ってたわ!!嬉々として楽しそうなヤナと数名の侍女さんに、問答無用でお世話してもらったんだけども、お風呂だけで2時間ぐらいかかったし、その後のお手入れも念入りだったから1時間ぐらいかかった。ちょいちょい軽食はつまめたけど、休む時間なんて無かったから本当はゆっくりしたい。歯磨き出来た事とコルセットが無い事は救いかな、あんなの装着したら死んでしまう!!



「君をエスコート出来るなんて光栄だよ、本当に。他の誰にも譲らない。もちろん一生ね?嬉しいでしょう?俺もだよ、サラ。かわいいかわいい!閉じ込めよう!!」



ああもう、怖いし疲れてるし何も言い返す気力が無い!!パーティはこれからだっていうのに、どんどんメンタルを疲れさせようとしてくるのを本当にやめてほしい。



「…エスコート、宜しくお願い致します。」



閉じ込める発言は全て無視して、どうにかそう言うと口角を上げた。本当はオリーブ殿下をエスコートしてほしいのだけれども、それを言ったらゴッソリと顔から感情が抜け落ちた挙句、本当に閉じ込められそうになったので二度と言わないようにしたのである。だって一応ではあるけどオリーブ殿下のためのパーティなんだらさあ、彼女の望み通りにベル様がエスコートすべきなんじゃないの?!言ったら怒られるから言わないけども!!


まあとにかく、そういう理由でベル様が私をエスコートするらしい。ドレスは上から下まで夕日色に、装飾品はオニキスという全身ベル様(魔王)カラーに包まれた私は、誰がどう見ても彼の愛を信じざるを得ないだろう。こっわ!!!


ベル様にエスコートされて、王族用の登場口に立つ。今日はそこまで大きなパーティーではなく、どちらかと言うと学園に通う生徒とその親がメインらしいので、国王陛下と王妃様は参加されないという。たまにご挨拶に会う事があるけど、やっぱり緊張してしまうので今日この場にいらっしゃらないのは、ちょっと助かったのだけども。


超ご機嫌なベル様に後ろから抱きしめられつつ待機していたら、オリーブ殿下が専属護衛にエスコートされて現れた。彼もなかなかの美丈夫であるが、それでも彼女の視線はベル様にまっすぐ向いている。着ているドレスも、夕日色とまではいかないが明るい橙色で、装飾品は恐らくブラックダイヤモンドであろう事が分かる。すげー、ほとんど被ってる!!まるでお揃いみたいで嬉しい!!そうワクワクしている私を、ムッとしたベル様がクルりと回って隠してしまった。くっそ、もう少し見ていたかったのに!!



「ベオウルフ様、素敵ですわ!!色以外は全て完璧ですわね!!」



そうなのである。彼はとんでもなく美しく、私でさえ疲れ切っているのに見とれてしまう程であった。しかしオリーブ殿下の言うように、シルバーのジュストコートとパンツ、そしてボタンから何から、全ての装飾品が深紅という恐ろしい程に私の色なのであった。敢えて触れなかったのに、彼女は我慢出来ずに言ってしまったようだ。気持ちは分かるよ、怖いもんね!!


やいのやいのと一生懸命話し掛ける仔猫ちゃんのお陰で、あっという間に入場時間になったのは嬉しい事だった。緊張のあまりガチガチだったけれど、いい感じにほぐれてくれたので落ち着いて歩けそうだなと思う。



「ベオウルフ・クラーク第一王子殿下、サラ・ロバーツ伯爵令嬢、オリーブ・フィッツクラレンス第一王女殿下、ご入場です!!」



という声が聞こえたと同時に、登場口が大きく開いた。うわーー!!緊張が戻ってきてしまった!!バクバクと鳴る心臓がうるさく、笑顔がガッチリと固まった私を、ベル様が優しく微笑んでエスコートしてくれる。あまりにも王子様然としたその姿に、なんだか勇気が湧いてきて微笑むと、足を前に動かして歩き出す。たった数歩ではあるが、とんでもなく長くて遠いような気がしたその場所は、他の参加者よりも高いところにあって見渡せるのがすごい。逆を言えば向こうも私をよく見ているというわけで、だからこそしっかり背筋を伸ばして、マイヤー先生に褒めてもらえるような毅然とした態度で立ったのである。


そして始まったファーストダンスの時間は、当然ベル様と一緒に踊った。オリーブ殿下は専属護衛と踊り、2組しかいないので口から心臓が出るかと思う程に緊張したが、「サラはやっぱり閉じ込めたい程かわいいね。大丈夫だよ、俺だけ見て?」と耳元で囁かれた事によって真っ赤になり、良い意味で緊張がほぐれて無事にステップを踏めたのだった。広いホールで、しかも音楽も豪華で楽しい!!踊り慣れたとはいえベル様のリードは完璧で、やはり彼は王子様なのだな、と改めて思わされたのだった。


そして無事に終わったファーストダンスの次は、ベル様とオリーブ殿下が踊る事になる。これは分かっていた事だし覚悟もしていたから、微笑みながら離れていく彼を見送った。そして作り笑顔でオリーブ殿下の手を取ると、ダンスの輪に加わっていく2人が眩しくて、チクチク痛む胸を見ないようにして王族席で待たせてもらう事にしたのである。だってベル様に、他の誰とも踊ったらダメだって言われたし。従わないと怒られて、本当に閉じ込められそうだしね?!


ここから見える2人のダンスは、さすが完璧だった。とても楽しそうだし、何よりどちらも美しい。私だってこの世界の一応はヒロインだから、見た目はストロングだけどオリーブ殿下もストロングである。友達になりたかったなあ、とボンヤリ眺めていたら、果敢にも私に近付いて来る者がいるではないか。ファッ?!と思って二度見したが、やっぱりこちらに来る。死ぬからやめな?!と強い視線で訴えたが、彼は止まらない。そしてなんだか見た事があるような、そんな気がするのだ。だから私も自ずと立ち上がると、彼をじっと見つめた。



「……やあ、姉さん。久しぶりだね。って言っても分からないか。俺は弟のアンディだよ。ヤナから俺達に手紙がきていたけど、本当に別人なんだね。魔力が違うからすぐに分かったよ。」



そうまっすぐにこちらを見ながら言う彼は、サラさんの弟であった。どうりでなんか見た事あると思った!!少し長めのシルバーブロンドに、私と同じ深紅の瞳。身長は既に抜かれているが、きっと13歳くらいではないだろうか。かわいい!!なんて美少年なんだろう!!さすがヒロインの弟!!



「ふふ、初めまして、ですかね?私は確かに中身が違います。貴方のお姉様は、私が入る前に既に別の人間と入れ替わっていたようですよ。」



そう言うと驚愕の表情をしていたが、やがて何か納得したように頷いてこちらを見た。ヤナも言ってたけど、人が変わったようだったというのは本当のようだね。家族との仲も悪くなっちゃったらしいし、これからは少しでも話せるような関係になれたらいいな。



「姉さん、貴女はなんだかすごく穏やかな雰囲気だね。第一王子殿下が夢中になってるって噂は本当のようだし、そんな貴女に興味があるよ。良かったら俺と踊らない?」



そう微笑みながら手を差し出してくれた。かわいいかよ!!断る理由なんて無いし、その手を掴んでもうすぐ終わる曲に合わせて、次のダンスの列に一緒に並んだ。弟だし、ベル様も許してくれるだろうと思ってルンルン気分でホールに立つと、初めてベル様以外と一緒に踊ったのだった。さすが弟、ダンスが上手!!リードが素晴らしいわ!!将来はとても優秀な美男子になるわね、お姉さんが保証しちゃう!!もう楽しくて楽しくて、満面の笑みをアンディに向ける。するとちょっと照れた顔をしつつも、彼も微笑んでくれたのだった。そして2人して、激痛な程に突き刺さるベル様(魔王)の視線には敢えて気付かない振りをした。だって見たら絶対に怖いもんな!!姉弟だから許してくださいよね?!


そうして楽しく終わり、向かい合ってお辞儀をしようとした時。ニュッとお腹に手が回ってきて問答無用で王族席に拉致された。サッと転移してきた魔王は、またしても瞬時に転移してここに戻ったらしい。しかも有無を言わさず膝の上に座らされるという羞恥!!生徒達に加えてその親、そして弟に見られているー!!!恥ずかしいったらないわ!!!


真っ赤な顔でワタワタとしている私を、ちょっとムッとしつつもギュッと抱きしめてスンスンスリスリし始めてしまった。なんだよこの罰は!!とさすがに抗議しようとした時、「…恐れながら殿下、姉を放していただけますか?」という声が聞こえた。おぉう、救世主!!我が弟よ!!とキラキラした目で見つめると、それが気に入らないベル様に更にガッチリ抱えられてしまった。



「やあアンディ。君が弟だから大目に見たけど、本当はあまり関わってほしくないんだよね。サラには私だけがいればいいのだから。君達だってそうだろう?そんなに仲が良くないというのは、調査済みだよ。」



うわぁぁああ!!!魔王が怖い!!!グッと悔しそうに眉間に皺を寄せる弟がかわいそうだ。せっかく仲良くなれそうだったのに、それを阻止されそうで悲しい!!



「へえ、噂は本当なのですね。しかし姉が大変恥ずかしがっておりますよ?赤い顔をして焦る姿は、我が姉ながら実にかわいいです。そんな姿をその他大勢が見ているのですが、それはもちろんお分かりですよね?」



果敢にも食ってかかる弟すげー!!まるでヤナのようだ!!なんて感動している私を尻目に、サッと周りを目で確認したベル様はしぶしぶ納得したようで、私を隣に降ろすと腰に手を回した。「これならいいだろう?」というベル様に、こちらもしぶしぶという顔をして頷いたアンディが強くてすごい。ふつう、第一王子っていうのは怖いもんじゃないの?!お姉さんは嬉しいよ!!なんてたくましくてかっこいい弟なんだろう!!ひゅーぅ!!


そんな無言の睨み合いをぶちかますベル様とアンディ、そして弟をキラキラした目で見つめる私というカオスな空間に、良く通る声が聞こえてきた。ああ、やっぱりあるんですね?!これはあれなんですね?!始まるんですね?!?!と大興奮してホールの真ん中を見ると、オリーブ殿下と攻略対象2人の婚約者、そして数名の女生徒が立っている。



「サラ、大丈夫。すぐ終わるよ?」



彼女たちをチラリと視界に入れたベル様が、私の耳元でそう言うけれども、すぐ終わるとは?!もう少しこのスリリングなドキドキ感を楽しませてほしいのだけれども?!なんていう願いが叶うわけもなく。彼がすぐと言ったからには、本当にすぐなんだろうなあと遠い目をしながら、これから始まるであろう断罪劇にワクワクしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ