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好きとはどんなものだったかしら。


その後、本当に反省したからどうかもう一度頼むと懇願されたらしいベル様は、私の説得もあってしぶしぶオリーブ殿下が戻ってくる事を許可した。


どうにか向こうの王太子殿下の魔力で、無事にこちらの王宮に宛てがわれている部屋に戻った彼女は、真っ先にエルヴィスさんを捕まえてベル様にアポを取るように要請したという。これは確かに成長では?!王女様然として我が物顔で突撃する事を反省出来るなんてすごい。聞いた話ではけっこう甘やかされているらしいのに、えらいぞ王女殿下!!


しかし当然のようにベル様は会う事を嫌がったが、「貴方が行かないと、いたちごっこになり兼ねないのでは?」と怖々ながら言うと、とんでもない渋面をしつつも頷いてくれたので安心である。これでどうにかオリーブ殿下が頑張って、2人の距離が近づいてくれればきっと、いろいろと変化があるはずだ。


どんなドキドキを胸にやってきた週末、「サラが言うからしぶしぶ城下街に出掛ける約束をしてやった。」と不貞腐れ気味に言うベル様と、世界一着飾ったどう見ても貴族にしか見えない平民の衣装もどきを身につけたオリーブ殿下が、数名の護衛を連れてデートへ出かけて行ったのだった。それを「行きたくなくなるから見送りに来ないでほしい。」と仔犬のような雰囲気で言われた私は、窓からそれを見ていたわけだけども。



「お嬢様、なんだかとても楽しそうですね?」



ウキウキと窓の外を見ていた私に、ヤナがちょっと遠慮がちに声を掛けてきた。ベル様とはいつも敵対している彼女だが、私が絆されてきているという事を分かっているらしく、とても気にして心配してくれるんだなと思うと、なんだかすごく嬉しい気持ちが溢れてくる。やっぱりヤナは優しいな。



「そう、すごく楽しい!!これでベル様がどう動くか気になるでしょ?フィッツクラレンス第一王女殿下には、出来るだけ頑張っていただかないと!!」



なんかこう、オリーブ殿下の特殊魔法とかで、魅了があればいいのにな。そしてそれにベル様が引っかかってほしい。その方が盛り上がるでしょう?それに、私への愛がその程度のものだったのだとしたら、これからも絶対に私の心を動かす事は出来ないと学んでもらわないと。ふふ、楽しい!!



「さあ2人は行ったよ、一緒にお茶にしよう!!ベル様がめちゃくちゃこっちを見てたけど、手を振ってあげたらかなり喜んでた。面白いね!」



そうなのだ。じーっとこちらを見ていたので、面白くなって手を振ったら、まるで大型犬のように喜んでいるのがよく分かったのである。見えない尻尾が時速100km程でブンブンされているような錯覚がして、高速道路のすれ違いかよ!!と思う等した。そしてそれに気づいたオリーブ殿下が、威嚇する仔猫のように睨んできたのもテンションが上がった。漏れ出た魔力でツインドリルの先がフワッと浮いてて、かわいいの暴力じゃん!!以外の感想が無かったのだけれども。



「準備が出来ましたよ。本日は殿下がシェフに直々に頼んだという、チョコレートとバニラのマカロンタワーでございます。」



そう言われてファッ?!と高速でテーブルを見ると、確かに茶色と白色のマカロンが交互に層のようになったタワーがあった。嘘でしょ?!こんなに?!確かに私はこの2つの味が特にお気に入りだけどさ!!それにしたってやり過ぎでしょうが!!全部食べたとしたらおデブまっしぐら……!!この世界はボディサイズが固定であるものとしてドレスとか新調するんだから、体型変えられないというのになんて仕打ち!!!


しかし抗えずにソファに腰を降ろすと、我が儘を言ってヤナに向かいに座ってもらった。そしてこれもベル様がブレンドしたという紅茶を飲み飲み、一応セーブしつつ2人で美味しくマカロンを食べたのである。ひゅーぅ!!すんごく美味しい!!でもこれ残ったのどうするんだろう……。もったいないよね?え、どうするんだろう。状態保存の魔法とかあるわけ?食べないで棄てるなんて事は、絶対に許したくないんだけどな。



「サラ嬢、そんなに難しい顔してどうしたの?まさか残したその後の行方が気になる感じ?」



あまりにも思案しすぎた結果、眉間に深い皺が寄っていたらしく、ベル様が絶対に話し掛けるなと猛烈に釘を刺して置いていったうちの1人、ルーク・ドレイパー伯爵令息がクスクスしながら声を掛けてきやがった。それに逸早く反応したのは、同じくこの部屋にいたディーン・セルデン侯爵令息である。



「おい、殿下との約束を破るのか?そんな事は許されない。すぐに口を慎め。さもないとお前も辺境に行く事になるんだぞ。」



慌てつつも怒りの感情を隠そうともせず、片目にかけたモノクルを忙しなく触っている。まあ十中八九ルーク様だけじゃなくて、ディーン様もお咎めを受けるから怖くてしょうがないんだろうけど。それにしてもゲームが元になっているからか、宰相候補である彼は本当にインテリ風にモノクルをかけていて面白い。最初はどうやって装着しているのか気になって、じっと見つめすぎていたためにベル様に怒られてしまったのだけれども。



「悪かったって。だってあまりに必死で見てるからさ、気になるじゃん?あ、大丈夫だよサラ嬢。それはちゃんと保存されてメイドとかが食べるからね。それじゃあ本当に怒られちゃうし、黙ろうかな。」



ああ良かった!!ちゃんとこのマカロン達は捨てられずに済むらしい。というかサッと聞き流してしまったけど、辺境に行くはめになるとはどういう事なんだろう??気になるから訊いてしまおう!!ベル様に訊いても教えてくれるか分からないからね。



「先程の発言ですが、とても気になるので質問させてください。辺境に行く事になるとはどういう事ですか?誰か既に行かされたという事ですか?」



強い視線でそのまま話し掛けると、「向こうからだからいいんじゃね?」というルーク様の言葉に後押しされ、しぶしぶディーン様が答えてくれた。



「……カデン・ベイリー侯爵令息が、自ら志願して北の辺境へ配属異動になったんだ。ジュリア・キャンベル公爵令嬢との婚約がまだ何も決まっていないが、それでも本人は異動を強く望んでいた。もうすぐ出立する予定らしいが、今のところキャンベル公爵令嬢がどうするのかは分かっていないね。」



そこまで言うと、これで終わりだという雰囲気をダダ漏らしにしてきたので、「ありがとうございます。」とお礼を言って大人しくマカロンを食べた。あの2人がその後どうなったのか気になっていたけど、婚約の話は進んでいないらしい。それにきっとジュリア様は、北の辺境には付いていかないのではないだろうか。日本ではどうだか分からないけど、この世界に生まれて17年、貴族のご令嬢として生きてきた彼女は、きっとその矜持も高いはずだし。それでもカデンさんは行くんだろうか。まあ、2人の事は2人にしか分からないから、私がここでどんなに思考を凝らしても答えなんて出るわけもないんだけどね。


とにかくヤナと空気と化した2人と、ベル様が戻るまでの間、いつも通りに刺繍の練習をしたり読書をしたりしてまったり過ごした。違うのはベッタリ張り付くベル様がいないだけ、それ以外はいつも通りの出来事。そういつも通り。なんとなく寂しいのは、当たり前のようにそこにあった温もりが、今は無いからそう感じるだけ。それにきっともうすぐ、欲しかった温もりは火傷しかねない程の熱を伴ってここに来る。



「……サラ!!!」



ほらね。私でも寂しいと思うのだから、ベル様はその何倍そう感じていたのだろうね?声がしたと共に、思いっきり抱きしめられて背骨が鳴るけど、そんな事はお構い無しに耳の後ろを強く吸われる。鼻でだけじゃなくて、絶対に口でも吸ったな?!と思うけど許してあげよう。だってちゃんと、私の元に戻ってきてくれた。エスコートしたであろうオリーブ殿下の匂いなんてさせずに、戻ってきてくれたのだから。これで少しでも彼女の匂いがしたんなら、きっと耳の後ろに赤い痕なんて付けさせなかったけどね。



「ふふふ、ベル様おかえりなさい。そんなに寂しかった?」



ちょっと意地悪な気持ちが出てきてそう訊くと、彼は何度も強く頷きながら私を抱えてようやくソファに座った。もちろん膝の上に座らせる事を忘れずに。



「……寂しかった、会いたかった。離れる事がこんなに苦しいなんて。何度もアレを強制送還しようと思ったよ、でもサラが頑張ってって言ったから、なんとか耐えたんだ。褒めてくれるよね?サラ、たくさん褒めてくれるよね?」



ここに2人きりではないのに、彼はすっかり疲れきっているようでそう言うと、いつもの様に甘えてくる。そんなスンスンスリスリされている私を、愕然とした表情で見ているのはディーン様とルーク様で。いつもの事だとベル様を睨んでいるヤナは、2人を誘導すると部屋から出ていったのである。まったく、優秀な専属侍女さんだ!!



「ベル様、さすがですね。私なんかのために、頑張ってくれてありがとうございます。ふふふ、いいこいいこですね。」



自分からちょっと向きを変えて、横乗りの状態になるとベル様の頭をよしよしする。それに嬉しそうに蕩けた顔をした彼は、スリスリと擦り付けるようにしていて面白い。本当に大型犬じゃんか!!子どもの頃に友達の家にいたラブラドールちゃんが、こんな風に友達に甘えていたのを思い出す。「大きいわんこって怖くないの?」と訊いた私に、「癖になるよ、大型犬はさ。飼ってみ?」と言われたけど、確かに癖になるなあこれは。かわいいもんな、魔王だけどさ!!



「サラ、サラ。大好きだ、愛してるんだ。アレの相手を一日頑張ったんだから、もういいよね?送り返そう?向こうの王太子も俺には頭が上がらないんだ。だから送り返そう。もう2人だけで生きていこう?俺の魔力はこの世界で1番だから、誰も勝てないんだよ、知ってた?ふふふ、2人だけで生きていこうね。」



うわぁぁああ!!!ちょっとかわいいと思ったのにすぐこれだ!!簡単に国というか、世界を棄てる発言をするんじゃないよ!!しかもそのトリガーを握ってるのが私って、重いー!!責任が重いーー!!!オリーブ殿下が帰るまでの最低2ヶ月間は、ベル様がどうするのか知りたかったけど、やっぱ重いって!!世界の平和のためのトリガー握らされるのは恐怖以外のなにものでもない。魔王の考えてる事が魔王すぎてもはや魔王そのもの!!



「…ええと、ベル様?せめて2ヶ月、一緒に頑張りましょう…?世界を壊すのは嫌ですし!!」



どうにか頑張ってそう言うと、ムッとした顔のベル様の頭を、着火するのではないかと思う程の速さで撫で散らかしたのだった。


頼むよベル様(魔王)、もう少し耐えてちょうだい。そうしたらきっと、その間に貴方自身の気持ちも、私の気持ちも分かるような気がするから。急かさないで待ってほしい。紗良()とサラさんの心が完全に融合したら、きっと全ての答えが出ると確信してる。


だからほら、いくらでもスンスンスリスリしていいから。今は少し我慢してね?でもジュリア様の時みたいに、当て馬なんか作ろうとしてはダメだよ。私にそれは通じない。むしろきっと、簡単に離れてしまうから。昔からね、わざと嫉妬させられるのは嫌いなの。サラさんはどうか分からないけど、木内紗良はそれが大嫌いだって事、どうか忘れないで。



「……仕方ない、サラを完全に俺のものにするためだからね。嫌で嫌で仕方がないけど頑張って耐えるよ。でもお願いだ、よそ見なんてしないでね?今日だって身を引き裂かれる思いであの2人を置いていったんだから。君が誰かと話していると思うだけで、こんなにも胸を焼かれるような痛みに襲われるなんて。」



スンスンスリスリしながら、勝手に右耳にちゅっちゅして耳元でそう言う。イケボだって分かってやりやがってさあ!!だから耳は弱いからやめろって!!右耳が妊娠してしまうでしょうがよ!!!



「大丈夫ですよ。私は誰も見ていませんから、ご安心ください。それに一生懸命、ベル様に口説かれている最中ですしね?」



いたずらに微笑みながら、仕返しのつもりでそう言ったのに。とんでもなく恍惚とした顔をしたベル様は、耳だけじゃなくて顔中に許可なくちゅっちゅしたかと思うと、勢いなのか唇にも熱すぎる唇を当ててきたのである。これはダメでしょうが!!ちょっとキッとして睨むと、文句を言う前に今度は唇を舐められた。おいこらっっ!!!



「サラ、何を言うかと思えば。俺達は相思相愛でしょう?他の誰も入ろうとする隙間なんて無い程に、お互い大好きで愛してる魂の片割れなんだから。ふふ、俺のサラはかわいいね?」



なんか唐突に怖い事言うじゃん。え、私達って両思いだったんだ?!確かに嫌いではないし、絆されてはいるけども。これって好きっていう感情だったんだ??正直に言うと、申し訳ないけどこれからオリーブ殿下を巻き込んで、ベル様自身が向き合う事と、私が私と向き合おうと思ってたのに。あれ??


頭の上に「???」を浮かべながら思考の海に潜っていた私は、上機嫌に蕩けた顔をして、どさくさに紛れて唇を奪い続けているベル様(魔王)にようやく気付いて逃げようとするが、当然逃がしてくれるはずもなく。



「サラ、はあ、かわいいかわいい。鼻で息をするんだよ。上手だね、かわいい愛してるよ。甘くてたまらない、ああこのまま食べてしまいたいな。」



と言われながら、ガッチリ固定された頭と身体のせいで逃げられなかった。窒息死するかと思ったわ!!!あとサラさんには刺激が強いよおバカさん!!手加減してよね!!それにまだ食べちゃダメです!!!


そうぷんすこしつつも、巧みな舌使いに木内紗良も危うくノックアウトされそうになった事は黙っておこう。やっぱり王子様というのは、閨教育?を受けるから上手なんかな。大変そうだなー!!と思ったけど、胸の当たりがモヤモヤしている事には、見て見ぬふりをする事にしたのだった。


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― 新着の感想 ―
怖っ( 」゜Д゜)」やっぱ怖っ! 大型犬?ちゃうし!殿下(魔王)ゎアナコンダでしょ! 今回も恐かった!じゃなくて……サラちゃん絆されて来たね♪ 面白怖い《いちごあめ様ワールド》次回も楽しみです♪ …
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