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もしかして。


とにかく学園で私に睨みをきかせてきた女子を捕まえて、引き合せるから頑張ってって言おうと思ったのに。なんならヤナにも協力を仰いで、お手紙をサッと渡してもらおうと思ったのに。学園に復帰して早一週間、私の作戦は成功の兆しを一切見せない。それもそのはず、予想の1億倍ベル様が私に常に張り付いていて動く事が出来ないのだ。



「サラ、どこに行くの?ちゃんとここで待っててって言ったでしょう?もう帰ろうか?」



ちょっと教員室に一瞬行ってくるから、ここで待っててと言われた王族専用エリアの廊下で、チャンスとばかりにヤナに声をかけようと思った瞬間、すぐ真後ろから声がして鳥肌が立った。え、一瞬の一瞬が本当に一瞬すぎない?!こんなに3秒ぐらいで戻ってくる事なんてあるんだ?!逆に気になりすぎる用事で呼ぶなよ先生!!!



「あ、いえ、えーと、一人でこんな豪華な廊下に立っているのは不安だったので、隅っこに寄らせてもらおうかと……。」



必死で言い訳を考えて、魔王と化して目が怖いベル様に噛みつつ伝えると、パアッ!!という効果音が顔の横に書かれていそうな程、光り輝くように破顔したので逆に驚いた。少女漫画じゃん……!!



「ああ、サラ……!!そんなに俺が恋しかったんだね?嬉しいなあ、俺もだよ。さあおいで、抱っこしようね。俺のかわいいかわいい愛しのサラ。」



いやちがくない??そうじゃなくて、豪華すぎて気が引けるって言ってるのにどうしてそうなる?!ポジティブだわあ……。まあ機嫌が直ってくれたんならいいけども、蕩ける笑顔を向けながら腰に左手を回して、私の右耳の後ろあたりをスンスンスリスリするのやめろやー!!くすぐったいし恥ずかしいんだって!!香水つけるのやめたから、たぶん私自身の匂いがするんだろうし、やーめーろー!!



「殿下、大変申し訳ございません。マーキング中に失礼致します。マイヤー侯爵夫人が、本日の授業が始まるとお待ちしておりますので、早急に向かわれるようお願い致します。」



サッと現れたエルヴィスさんが、侍従のお手本のような美しい礼をしながらそう言った。ちょっと、マーキングって何?!怖い怖い!!そして何故かマイヤー先生による特別授業は未だに続いていて、週に3回行われるらしい。今日はその2回目で、王宮にある教室で待っているから早く来いという呼び出しを受けたところなんだろう。ちなみにどうして週に3回なのかと質問したら、「時間が無いからだよ。」と素晴らしい笑顔で言われた。はい??


盛大に舌打ちをしたベル様も、「マイヤー侯爵夫人は怒ると母上より怖いんだ。」と呟いたので相当なんだろう。そんな感じするもんな!!努力する人は認めてくれるだろうけど、そうじゃない人間にはめっちゃ厳しそうだなって雰囲気ダダ漏れだったもん!!早く行こう、私は絶対に怒られたくない!!!


そんな焦りが通じたのか、いつの間にか近くにいたヤナの勝ち誇った顔に触発されたのか、思いっきり不服そうではあるがなんとか転移してくれたのでホッとした。そして教科書を片手にキレ気味フェイスをしていたマイヤー先生に、大声で挨拶して練習していたカーテシーを披露したところ、ちょっと微笑んでくれたので機嫌が直ったのかもしれない。努力って素敵!!!



「では、終わるまで殿下は別室でお待ちください。2時間程で終わりますので。」



冷たくそう言い放った先生に、ベル様(魔王)がここから動くわけないじゃんと思っていたら、「そうだな、重要な用事がある。」と言って大人しく出て行くようだ。え、意外!!ちゃんと空気読む事が出来るんだ?!そんな風に吃驚したから目を見開いて見ていただけなのに。



「ふふ、サラ大丈夫だよ。すぐに戻ってくるからね?すごく大切な用事なんだ、俺達にとって特に。だから良い子で待ってるんだよ?すぐだからね。」



うーわ……。違うって言ったら死ぬやつじゃんこれ。だって至近距離で私の髪にちゅっちゅしながら、目が暗いもんな。「…お待ちしております。」頑張って口角を上げつつそう言うと、大変満足したという顔をしてどこかへ転移して行った。正解を言えて良かった!!と安堵していたら、マイヤー先生がとんでもなく呆れた顔をしてこちらを見ていたので、苦笑いしておいた。はは、困っちゃいますよね本当に!!


今日の授業も大変興味深いものだった。この国の貴族達を覚えているかのテストと、それに加えてお嬢様方との会話のやり取りの仕方を学んだ。遠回しの嫌味に対して、どう対応するかというものが面白すぎて興奮し、マイヤー先生がちょっと引いていたけどお構いなしに質問しまくった。こういうの漫画やラノベで憧れていたのだ!!ツンツンしたお嬢様方に遠回しの嫌味口撃を受けた場合、きっと私はニヤニヤしてしまうけれども、扇子で口元を隠す等してなんとか流さないといけないらしい。かわいい女子が一生懸命に威嚇してくるのって、かわいいじゃんね?!ヤナが魔王にするドヤナ顔だって最高にかわいいのに!!威嚇されたとして我慢出来るかな…。


いやー楽しいなあ!!という思いが溢れ出して学んでいたのに、終わった瞬間にベル様が転移してきて私を抱っこしたかと思うと、再び転移して彼の私室のソファーに座らされていた。もちろん膝の上に。マイヤー先生に挨拶してないのに!!しかし何故かとんでもなく上機嫌のベル様の圧に負けて、やっぱり脳内でしか文句を言えない私は大人しく出してもらった紅茶を飲んだのである。美味しい!!



「サラ、お待たせしちゃったね。漸く完成したんだ!!ほら、これを付けて?ああやっぱりかわいいね、かわいいよサラ!!」



何かを待っていた記憶も無いし、何でそんなにも楽しそうなのか説明してほしいのに、問答無用で首にチョーカーを付けられたのである。チラッと見せられたそれは、黒色のベロアのような生地に、直径1cm程の夕日色の宝石が真ん中にあるのが見えた。当たり前のようにベル様(魔王)カラーのチョーカーを首に付けるとかさあ、もはや首輪じゃんかよ!!いいし別に、夜になったらヤナに外してもらうからね!!!そう思っていた私に、恍惚とした表情をしてほんのり頬を染めているベル様が、地獄に落とす発言をしたので白目になったのは仕方がないだろう。気絶しなかった事を褒めてほしい。



「サラ、これは俺の魔力が無いと絶対に外れないから安心してね?つまり着脱出来るのは俺だけ。嬉しいでしょう?嬉しいよね、俺もだよ。そしてこれはサラの位置が分かるようになっているんだ。どこにいても何をしていても、常に俺には分かるんだよ。ふふふ、まるで一心同体だね?はあ、嬉しい!!」



おぁぁぁ?!?!開発してもらうとか言ってたけど、本当に作ってもらったの?!怖い怖い!!どうして私が縛られて嬉しいと思ってんだろう!!違うし自由が欲しいし自由でありたいし!!!蕩ける笑顔で首を撫でるな!!冷や汗が止まらんよ!!!どうしようどうしよう、なんとかしないと……。



「……わー、すごいなー。でもこれでは入浴時や就寝時に気になってしまいますね?自由に外させてほしいのですけれども。」



どうしたって表情筋は仕事をしてくれずに真顔だったけど、なんとか頑張って伝えた。常に装着してるって怖いでしょうが!!他の女子に接触する事も難しいしさ!!それはもう熱い思いを視線に込めて魔王を見ていたのに、彼はなんて事ないという風にニコニコして言った。



「ああ、大丈夫だよ。生地は常に清浄魔法が発動しているから、サラの大切な肌もチョーカー自体も汚れる事はない。それに苦しくないように出来ているから、実際いま苦しくないだろう?ああ嬉しいなあ、常にサラと一緒だなんて!!」



こっわ!!!そんな気遣い出来るんだったら着脱も可能にしといてよ!!しかも位置が分かるのってベル様だけで、私は貴方がいつ近くに来てるとか分からないんですけどね?!これは完全に逃げる事も、私が他の誰かと接触する事も阻止されたという事か。言われてないけど絶対に位置が分かるだけじゃないんだろうな。下手したら会話も聴かれてるかもしれない。やりかねないよ、だって魔王だからね!!



「…ははは。これは本当に位置だけが分かるんですか?こう、会話が聞かれてしまったりとかしませんか?それはさすがに恥ずかしいのですけれども。」



引きつった顔をしつつもそう訊くと、「それは大丈夫だよ。」と笑顔で言われた。え、魔王のくせにその機能つけなかったんだ?!良かったー!!そういうところの常識はあるんだな!!疑って悪かったよ!!なんて思っていた矢先。



「本当は会話も聴けるようにするつもりだったんだ。でもそれはやめた方がいいって全力で言われてね、しぶしぶ我慢したんだよ。それにそのチョーカーにはサラの魔力を固定する機能もつけたから、万が一入れ替わりが発生したとしても、入れ替わる事がないようにしたから安心してね。ふふ、サラはどこにも行かせないよ。ずっと俺といるんだ、嬉しいね?」



誰かー!!男の人呼んでーー?!やっぱり面倒な事になりそうだから呼ばなくていい!!でも私を早急に元の世界に戻してーー!!!ああ、誰か助けて……。何も嬉しくないのに、どうして私が喜んでる前提で話してくるんだろう?!囲い込みが尋常じゃないって!!本当に雁字搦めじゃんかよ!!!既成事実を作ってないだけで、それ以外はもう逃げ道が無い!!


その日はもう何も考えられなくなって、とにかく休みたいと主張して部屋に逃げてきたのだった。そしてチョーカーにブチ切れたヤナが、なんとかして外すために鋏とかペンチで千切ろうとしてくれたんだけど、何をどうしたって外れないどころか、傷一つ付けることが出来なかったのである。魔王の本気が怖い、怖いよ本当に!!もう寝る!!!すっかり落ち込んでさっさと薄桃色の天蓋付きファンシーベッドに入ると、夢の中に旅立ったのだった。


そうして本当に全く外す事も外してもらう事も出来ず、諦めの境地に至らざるを得ない私はそのまま2ヶ月程が経った。ほぼ常に張り付いているベル様と、どうしても仕事で離れなければならない時は、エルヴィスさんが監視しているという窮屈な生活を送っていたけれども、そんな中でも果敢に接触をしてくる人物がいた。そう、攻略対象である宰相候補のディーン・セルデン侯爵令息と、もう一人の護衛騎士であるルーク・ドレイパー伯爵令息の2人である。


ベル様(魔王)がいようがいまいが、中身も見た目もすっかり変わった私を警戒しているようで、ちょくちょく様子を見に来るのだった。特にディーンさんは見た目通りの堅物で、正直面倒臭いので適当に無視しているけれども、ベル様を誑かそうとしてもそうはさせないという事を遠回しに言ってくる。バカかよ!!どう見ても捕まってるのは私ですけど??あんたにはベル様が本当に輝かしい善良な王子様に見えてるってわけ?!ほらほら、魔王の機嫌が急降下してるから話し掛けるのやめて離れなさいよ、死ぬのはあんたよ?!という感じで、めちゃくちゃ迷惑しているのだった。



「おいディーン、そろそろ行こう。殿下のお気持ちは固いようだし、俺達が口を出せる事ではないだろう?サラ嬢も悪かったね。」



はい出ました、いい人ぶってるチャラい護衛騎士!!いろんな女子と浮気してるって知ってるんだからな?!いくら婚約者さんがちょっと苛烈で嫉妬深いからって、していい事と悪いことは分かるでしょうが。それに見た目が変わった私がタイプだとか言って挑発するのもやめなね、本当に死にますよ?!放っておいてくれよ2人とも!!そんなに私が嫌なら、魔王が気に入りそうな女子を連れてきてくれ!!そしたら私は大人しく引き下がるから!!!まあそんな願いは当然叶わないわけで。



「……お前達、誰の許可を得て私のサラに話し掛けているんだ?早く戻れ。」



マドラーの先っちょ程も無いぐらい、私に関する器が小さいベル様が底冷えする声を出す。この場にいる全員がブワッと冷や汗をかいたのが分かるし、2人はそそくさと去っていった。私も逃げたい!!!ああもう、どうして怖いくせに果敢に接触してくるんだろう!!彼らの婚約者さん達が睨んでくるのも面倒だからさあ、関わらないようにしてほしいのに!!



「…まったく。これだからサラを外に出すのは嫌なんだ。その他大勢の男どもも、いつも汚れた目で俺のサラを見やがって。さあほら、帰ろう?早く2人になろう。」



そうして強制抱っこ、からの転移という流れがお決まりになってしまっており、他の女子を宛てがうという私の作戦はそれを知ってか知らずかのベル様(魔王)の手によって、未だに何も出来ていないのだった。もう本当に逃げられないのかもしれない……。


しかしそんな私に、まるで神様が救いの手を差し伸べてくれたかのような事が起こったのである。それは入れ替わったあの日から4ヶ月経ったある日、いつものようにベル様の膝の上で食後のデザートを食べさせてもらったいたら。珍しく表情が曇ったエルヴィスさんが入室してきて、銀のお盆に乗ったかわいらしい薄桃色の封筒を差し出した。それを片手で雑に開いて眉間に皺を寄せながら読んだベル様が、怒りのあまり瞬時に燃やしてしまったわけだけど。


いつもより強めにスンスンスリスリしながら教えてくれた内容は、兼ねてよりベル様の事が大好きで猛烈なアタックをしていたという隣国の第一王女様が、ジュリア様と婚約解消したときいたらしく我慢出来ずに留学してくるらしいのだ。何度も何度もベル様は断り続けているようで、それでも諦めずにしつこくて嫌いだと言っていた。おっと、クソデカブーメランでは?!



「……嫌で嫌で仕方がないが、俺が相手をしないとサラに何かされるかもしれないな。ただでさえうるさいのに、大切なサラとの時間も奪うというのか。ふうん、そうか……。」



めちゃくちゃ怖い独り言を呟く魔王を尻目に、私はちょっとドキドキしていた。だってこれは、これはもしかして……!!!



「言っておくけど、俺はサラだけだからね?不安になるし嫉妬もするだろうが、少しの我慢を頼むよ、俺のサラ。ああ本当に腹が立つな。すぐに解決するからね、すぐに。愛してるよサラ。」



右の耳朶を勝手に噛みながらそう言うベル様に、真っ赤な顔でやめて!!と睨みつけつつも、「はい、わかりました。」と答えた。これは早いとこ戻ってヤナと作戦会議をしないと!!もしかしたら、私は魔王から逃げられるかもしれない!!!隣国の第一王女がどんな人か知らないけど、吉と出るであれー!!!と強く思いながら、ベル様がくれるチーズケーキをもぐもぐしたのだった。


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― 新着の感想 ―
はい!出た!《迷子防止機能付首輪》(*≧∀≦)笑♪ 愛(闇)が深いな?殿下(魔王)(*≧∀≦)笑♪ そして((( ;゜Д゜)))怖っ! 更に(距離感縮まる?)事件な予感?……と…もはや通常運転な給餌…
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