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体育祭へ向かう道

こんばんは~お休みなさいまし

(+.+)(-.-)(_ _)..zzZZ

「あっ、」


(げ...)


「おはよ。翠」


「...おはよう」


「お前も今から行くの?」


「見れば分かるでしょ?てか、私急いでるからもう行っていい?」


瑠依はあからさますぎる態度に少し眉をひそめた。しかし、翠は自分の事で手一杯で瑠依の感情を読み取ることができなかった。

なぜなら瑠依の背中越しに見える100m先の女子との接触を避けたいという強い思いに支配されてしまっていたからだ。


「じゃあね」


いい?と聞いときながら翠は答えを待たずに走り出した。先ほど見た女子は、前に瑠依との帰りを翠が邪魔してしまった生徒だと記憶している。あれから何かと学校で敵意に近い視線を感じる事が多々あるがそれは先程の女子で間違いないと推理している。何せこの9年間、さまざまな視線を感じ取ってきた。推理の根拠はその副産物である。


(ここまで来れば...)


きっと瑠依はあの女子に捕まっている頃だろう。そう考えながら赤信号を待つ。ほんの20秒ほどで信号が青にかわり、普通に歩いて渡ろうとする。しかし背後から、それを遮るかのような激しい呼吸が聞こえてきた。翠はこれまで培ってきた経験から直感した。


(瑠依が来る...)


走らなければこのまま追い付かれて学校まで一緒に登校する羽目になる。そして体育祭だからこそめんどくさいことになる。そう翠の勘は言っているのだ。

走ろう。そう思い安全確認をしてから素早く横断歩道を渡りきり全力ダッシュを試みた。しかし、


「__何で急に走るんだよ、」


流石サッカー部エースとしか言いようがない。息切れしつつも陸上部の翠に追い付き、尚且つ垂れる汗までもがエフェクトのようにキラキラしてイケメン度に拍車を掛けている。


「腕、放して。」


「そしたらお前、また走って逃げるだろ?」


「そうだけど...。」


行動までも見透かされているようで翠は不服に思った。しかし、嫌な顔を向けても手を放す気がない為、結局諦めて逃げる意思はないと両手をあげ、降参のポーズをとる。こうなると折れるのは大体、翠の方なのである。


「よし行くか。あっ、歩きながらどうして逃げたのか理由をじっくり聞かせてもらおう」


そう言うと翠の手を放さずに前を向き瑠依は歩き始めた。翠は遅れながらも隣に慌てて並び、質問に答えた。


「瑠依といると目立つから。しかも女子から刺すような目線で見られるし...それがヤなの。」


「ふ~ん。で?」


「で?...で、さっきは瑠依のすぐ後ろにこの前の女の子が見えて。私前に邪魔しちゃったじゃん?だから今回ももし私が接触したら流石に色々面倒くさいと思ったの...。」


勿論逃げたのは悪いと思ってる。ごめんなさい。そう、翠は素直に隣を歩く瑠依を見ながら謝った。

そこには俯く少女と先程より明らかに機嫌がよさそうな少年がいた。


「...何で笑ってんの」


「いや、翠。それってヤキモチでしょ?」


「っはぁ!?そんなわけないじゃん!!」


「いやいや~アレでしょ?『瑠依は私の幼馴染みなのに~』ってことでしょ」


「いったい私の話の何を聞いてたの?」


一周回ってアホらしくなった。そうしたところで正門にたどり着いた。翠はそれに気がつき、急いで繋がれたままの手を引き剥がした。そして走ってグラウンドに向かう。


「今日、頑張ろうなー」


その時、背後から瑠依の声がした。翠は一旦立ち止まってから小さく


「....お互いにね」


頷き、また走り出した。

体育祭はまだ始まってもいない。

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