ある日の放課後
「じゃーねー!」
「うん!また明日〜部活頑張ってね」
「おうともよ!」
1日6限の授業が全て終わり放課後になった。各々がその後の時間を部活や塾、趣味に費やすなか、翠は部活を選択した。ちなみに陸上部。種目は長距離走だ。
「300mダッシュ一本目。よーい初め。」
顧問の掛け声と同時に陸上部が一斉に走り出す。これはアップであり、どの競技を専攻していても行う。そして一番キツい。
(_あと100m...)
常にトップスピードを保つというのはなかなかに大変なことで、何度も言うがキツイ。
「30秒後二本目行くぞー」
(うげ...)
今日はどうやら顧問にとっていいことがあったらしい。機嫌の良いときはいつもそうだ。二本目があり三本目、四本目がある。逆に機嫌が悪いと自主練。と言うよりまず部活に来ない。それでいいのか雅功よ。
「ほら位置につけー」
「はーい。」
イヤイヤながらも返事をしスタートラインに立つ。三年間も同じだと、こういうときは諦めるしかないことを知っている。
□□■□
「よし、終了だ。各自昨日決めたメニューに沿って練習を進めるように。解散!」
四本を全て50秒で走りきった足でベンチに向かい座り込む。冷たくて甘いスポーツドリンクが喉を下っていくのが分かる。
「よし。10分休憩!」
そして一息ついてからそう宣言する。宣言すると自分の戒めになる気がする為、休憩する際はいつもこうしている。まだ夏には程遠いが既に練習着はビチョビチョ。風が心地良い。
「先輩、お疲れ様です。」
「あっ、お疲れ様。」
「ここ涼しいですねー!そうだ、本当に今日の顧問、機嫌良かったですね。俺達が走ってる中ずっとニタニタしてましたよ。隣のクラスの奴に聞いたんですけど念願の新妻弁当作ってもらったらしいですよ。」
「そうだったのか〜。道理で。」
隣にさり気なく座ってきた一つ年下の後輩からこちらもさり気なく距離を取りつつ会話をする。
汗臭いとか思われたらイヤだし...好きとか嫌いという事ではなく自分自身が気になるから嫌なのである。
「そろそろ私行くね。」
「あっ、はい。俺はもう少しここにいます。」
「ん。じゃーね」
座っていたい気持ちを押し込めて立ち上がる。あと一分で宣言した時間になってしまう。
(今日は4kmタイム走か、)
翠は事前に決めていた練習内容を再度確認し学校周りの外周を走るため正門に向かった。