表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/12

ある日の授業間

こんばんは~。

「あっ。それ取ってくれない?」


「へっ?」


授業が始まり()()うとうとしていた時、後ろから肩を叩かれた。


「あぁ、これね。」


彼の指さした方向に目を向けると椅子の下に白い消しゴムが落ちていた。座ったそのままの体制で頭を下げてそれを拾う。


「はい。」


「ありがとー」


「んー」


その言葉を聞き、また授業に戻る。お陰で眠気は吹っ飛んだので良かっただろう。


そうこうしていると授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。眠気が覚めてから5分と経っていないことから一体どのくらい内容が頭に入っていないのかが伺える。体感時間と実際の進みに違いがありすぎて驚きである。


「起立 礼、「「ありがとうございました。」」」


号令も終わったことだし次の用意するか、と廊下にあるロッカーに荷物を取りに行こうと立ち上がろうとしたら


「るいく〜ん!!」


(痛っ...)


どこのクラスかわからない。いや3クラス編成なのでそんなことはないが。確か隣のクラスだった気がする。イケイケな女子の肘が私の立ち上がろうとした際の肩に直撃した。しかしまぁ、あんなにフリフリして疲れないのか甚だ疑問である。


「ねぇ〜さっきの授業、すごーく眠くてもうヤバかったんだけど!!」


「うわ〜あの先生でしょ?眠いよね。」


勿論その女子生徒は謝ることはなく話を続けている。きっと私の後ろの席の男子生徒しか世界にいないのだろう。


これも毎年のことなので気付かれ待ちをすることなくもう一度席から立ち、廊下へ向かう。そして三段になっているロッカーの一番下の扉を開き、次の教科の資料集だけを取り、教室に戻った。


(席が占領されてる...)


これもほぼ毎日のこと。いちいちアタフタしない。手に持っている資料集をそのままに廊下側の一番端の席にいる紗菜の方へ向かう。


「また占領されちゃった。」


「すごいねー柳田(やなぎだ)君。未だ小学生の頃からのモテ期継続中っと。」


そう言いながら紗菜は見えない空の日記帳にメモを取る仕草をした。


「感心してる場合じゃないって。もうアイツのせいでホント迷惑被ってんだから!しかも何で_」


「『毎回私の後ろの席なのー!』でしょ?」


「...そう。」


「それ毎回言ってるね〜。もう覚えちゃったよ。」


親友は先の言葉までお見通しらしい。言葉を奪われた感じがすごい。


「まぁ、しょうがないんじゃない?だって(すい)の名字が湯河原(ゆがわら)だからさぁ。」


「そうだけど...でもイヤなものはイヤ!」


「はいはい。でも多分、今年で最後だよ?翠がイヤイヤ言えるのも。だって中学最後だし、」


そう。ここまで柳田瑠依(やなぎだるい)と私、湯河原翠は世間一般で言う腐れ縁という関係を構築しつつある。流石に保育園、幼稚園は違うもののなぜこういう言い方をするかというと9年間連続で同じクラスだからである。ちなみに瑠依以外でここまで長い付き合いのひとは家族以外思いつかない。紗菜は別として。


「我慢しろってこと?」


「そうそう。あと、席替えすれば終わりじゃん?」


「そうかな...」


(そんな単純な問題じゃないんだけど...)


紗菜と話しながら、ふと教室の前方にある時計に目をやった。気づけば授業開始まであと2分になっている。


「じゃぁ、戻るわ」


「うん。」


そうして未だ、隣のクラスのイケイケ女子がいる自席に向かった。正直こういうのは得意な方ではない。しかし毎日続けていると抵抗はなくなるものである。


「ちょっとごめんね〜」


翠は半ば強引に席を奪還した。

どうでしたか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ