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ささくれファンタジー

作者:

 ささくれ魔王の手により世界はささくれた。

 具体的にいうと、指先にささくれが出来てなんか嫌な感じ。


「指先が気になる!」

「痛いけど触っちゃう!」


 苦しむ人々は神殿に集まり、奥にたたずむ神像に悲痛な声をあげながら祈りをささげた。


「神様、どうかこのささくれを治してください……!」


 人々の声は願いとなり、空の向こうの天に届いた。

 神殿に厳かな光が差し込み、威厳のある声が人々の耳を震わせる。


『お願い了解! いいこと思いついた! ささくれひっぱってみよう!』


 神殿に安置されている神像は瓦礫と化した。

 息を荒くして肩を上下する人々のもとへ、なんかきらきらとした光が差し込んできてぼんやりとした声が響く。


『ごめんごめん、じゃあそうだね……ひっぱってダメなら押してみな、ってね!』


 神殿は瓦礫と化した。

 瓦礫撤去作業の休憩中、作業員のみなさんの耳に雑音が聞こえてきた。


『いやいやごめん、マジ反省! ササクレ村の若者に勇者の力を与えておいたから! そいつに魔王を倒してもらってよ!』


 作業員のみなさんは顔を見合わせ、解体留保、と書かれた看板を立て、この国の王様へ報告に走り出した。



 ササクレ王国の中心地である王都ササクレのササクレ城の玉座で、王様が渋い顔をしている。

 王が見下ろす先に跪いているのは、一人の妊婦。

 付き添いでそばにいる村長が言うには、突然空から光が妊婦のお腹に差し込んできて


『この若者を勇者にするからあとヨロシク!』


 という声が聞こえたという。

 とりあえず神殿跡地は更地にすることが決定した。

 王様は渋い顔のまま、隣に控えている側近に話しかける。


「どうするの、これ」


 側近は少し困ったような顔をして答えた。


「どうしましょうか……」


 基本的にどうしようもないので、妊婦の方には村に帰ってもらい出産に専念してもらうことになった。

 あと更地に失業した神職者を派遣して


「おまえマジふざけんなよ。あれを若者とは言わねーんだよ!」


 という内容を出来る限り丁寧な形にして奏上させたところ、ちかちかした目障りな光とかすれたような耳障りな声で


『えっ? ごめん。人間の歳ってよく分かんなくて。次はちょうどいいのにするからまかせといて!』


 という返答があったという。

 その後、ササクレ村のおじいちゃん(89)に光が降り注ぎ、びっくりしたおじいちゃんが倒れて寝込んだので、とりあえず更地はゴミ捨て場になることが決定した。


 打つ手がもうなんにも無くなったので、しょうがないからみんなで保湿に気をつかってたら、勇者が5歳の時にささくれ魔王が寿命で死んで世界に平和が訪れた。

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