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初の裏切られ

「それはさすがにないよ〜。あの人とも結構前から付き合ってるんだ〜」


こいつは何を言ってるんだ?


梨樹人の心臓の鼓動は昼に絶望的な光景を見たときよりも更に早くビートを刻む。


「ぇ?え?結構前って?え、いつくらいからなんだ?てかなんで?」


「えっと、前にりっくんと喧嘩したときに慰めてもらって。それからかな」


「前って......昨日のことじゃないよな?」


「そりゃあそうだよ!えっと、あれって4ヶ月くらい前だっけ?」


梨樹人の目の前は真っ白になった。ポケモンセンターに運び込まれればどれだけ幸せだろう。人生そんな甘くない。そういえば人生は甘くないからコーヒーくらいは甘くてもいい、みたいなことを誰かが言ってたな。


走馬灯のようなものを見た。柚津との楽しかった日々の記憶が一気に駆け巡る。

元来、死の直前に訪れる走馬灯とは、生存本能が活性化してそれまでの人生経験の中から生き残る術を検索しようとしているという節があるのだとか。今見ているのはなんだろう。

怒りが高まりすぎてこの怒りを収めるための材料を検索してくれているのだろうか。結構なことだ。ただし俺の怒りを収めるにはまるで足りないようだが。


「はぁ!?どういうことだよ!俺と付き合ってるときからアイツとも付き合ってたってことか!?」


「そ、そうだよ?」


今度は梨樹人の剣幕に柚津が少し怯みながら説明をする。


「で、でもね?そのときは寂しさとかでどうしようもなかったの。それに身体を許してたのはりっくんだけだったの!」


「だけ...だった?」


梨樹人の問いに柚津は少しうつむく。表情はわからないが、公園を照らす街灯の光だけでも、頬が紅潮しているのがわかる。


これ以上聞きたくない気持ちと、聞かなければならないという気持ちが梨樹人の中で渦巻いて葛藤する。また、なにも言葉にできない、動けない。


そうこうしている内に柚津から聞きたくなかった言葉が発せられる。


「さっき......してきたんだ///」


横隔膜が異常に収縮するのがわかる。胃がムカムカしてわずかに液体が逆流して来ている。酸性の液体が喉を焦がす。が、かろうじて飲み込んで何事もない風を装った。


「そう...なんだ」


「うん...別れたら、そういうことするって約束してたんだ。ごめんね?こんな話聞きたくなかったよね?」


当たり前だ。こんな話聞かされて嬉しいやつは......まぁそんなにいないだろう。


「いや、うん、まぁ...」


「でも、りっくんもすぐ新しい彼女できるよ!その時は教えてね♫」


「......まぁな......」


いや、教えないし、もう合わねぇだろ。なんだこいつ?

てか昼はあんなに喋るのも嫌がってたのに、なんでいまはこんなに緩いんだよ。

俺への嫌がらせか?いや、そういう雰囲気じゃないよな..."普通に"言ってるんだ...。

こんなにイカれた子だったのか!?

まぁいいや、もうホントにいろいろ疲れた。帰って泣こう。いや、ちょっとどっか旅に行きたいな。

でも明日は学校なんだよな...休んじまうか?

いやいや、それより部活に行って、皆とバカやってわすれよう。そうだそうしよう。


「うん、まぁ、じゃあ、これまで...ありがとな。それと、改めて悪かった。じゃあ、帰るわ。ばいばい」


数刻前とは打って変わって、この感謝と謝罪は心にもないことを形式的に伝えただけだ。

一応、自分に非があることは否めないので、言いたくない気持ちを堪えながら、なんとか口にする。


「うん、それじゃあね。ばいばい」


梨樹人の心情とは対象的に、柚津の表情は割と明るい。本気でこれからも普通に交流できると、疑っていないのだろう。


その言葉を最後に、梨樹人は1度も振り向くことなく帰路を急いだ。




帰宅してすぐ、梨樹人は手洗いに駆け込む。


「おぇっ...」


心臓が痛い。柚津があいつとヤッたって?

想像なんてしたくもないのに、勝手に頭の中をよぎりやがる。


つーかおかしいだろ。


俺と付き合ってる間にもあいつと付き合ってた?ただの浮気じゃん。

それも俺のせいなの?俺が構わなかったから浮気されてもしかたなかった?

そんなことないだろ!浮気はだめだろ!

いやでも俺も悪かったのか...?もうわかんねぇ!!!!!


この夜は意味もないことを繰り返し頭をよぎったせいで朝まで眠ることはできなかった。

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