魔道具
前の世界での経験を生かして魔道具をザッツに作らせてみる。
ブォオオッ
「天才だな」
少しドライヤーについて話しただけで魔道具を作り出してしまった。
「それほどでも無いです。魔王様に与えられた仕事が楽しくてですね」
モンスター狩りから帰ってきた連中に魔石の採取を頼みザッツの部屋に運ばせている。
この世界では魔石に魔紋を刻むことで効果を生むそうだ。
「これが魔弾試作品です」
銃弾の形をした物が出て来た。
「完成・・・したのか?」
「いやぁ、大きくなりました」
拳ほどに大きい弾丸がゴロリと出て来た。
「親方に頼んで銃も大型にしてもらいました」
ズンッ
リボルバーを大型化した奴が出て来た。
「グレネードランチャーか?」
「と言いますと?」
銃の名称からその効果を言う。
「では、弾の中にも爆発する魔石を入れましょう」
「一つ作るのも大変だろ?」
魔弾に組み込まれている爆発魔石は6個だそうで更に組み込むとなると1発がとんでもなくコストが掛かっている。
「試作品なんだ。当初の目的物を作るんだ」
とりあえず試射をしに中庭へとやってくる。
ここなら多少の音は軽減できるだろう。
部屋の中で絶対防音すれば事足りるが俺も外に出たかったという事が大きかった。
ドラードが大半はやってくれているが事務手続き系は俺にも回ってきて一日の殆どが城の中だ。
「一定の衝撃で中の爆発魔石が同時に爆発します」
「暴発しそうなんだが」
「親方に頼んで鋼鉄製で頑丈にしましたから強度は大丈夫ですよ」
その代わりに重そうなんだが・・・俺のステータスだと重さはさほど感じないが一般的な魔族が持てるのかは分からないな。
「安全装置を外して、引き金を引くだけです」
ガチンッ
予想より重い撃鉄が音を鳴らした。
ドォンッ
手元でビリビリと衝撃波が伝わった。
ガラガラガラッ
銃自身が壊われず大きくなった弾が城の壁を崩した。
矛盾なんだが、小型の大砲と言った感じだ。
「と、こんな感じですね」
バサバサバサッ
「魔王様、今の音は!?」
執務室にいた筈のドラードが空から降りてきた。
「魔道銃の試射だ。思いのほか大きな音が出てしまったがな」
「あの件でしたか・・・他の者にも伝えて参ります」
ドラードが城へと戻っていく。
「これを小型軽量化は出来るか?」
流石に重すぎて使い物にならんだろう。
「畏まりました・・・改良点はありますか?」
「重心が重くてフラフラするな」
弾の重さと合わさって照準を合わせるのも一苦労しそうだった。
「改良してきます」
「あぁ。頼む」
・・・
ジャバジャバッ
気分転換に城を散歩していたら水音が聞こえてきて足を向ける。
「キャハハッ!」
「ヤダ、もぅ」
女魔族達が水場で洗濯をしている姿が目に映る。
「あ、魔王様」
「なぜ、この様な場所に?」
一瞬で空気が緊張へと変わってしまった。
「いつもご苦労だな」
「コレが私達の仕事ですから」
「魔族の為に動いてくれる魔王様のお役に立てるのはコレ位しかありませんし」
他の魔族と違って力も能力も殆どないホビット達が城中の洗濯物を総動員で洗ってくれている。
時には泥で汚れた装備を持ち込まれる事もあって数人係でやっているそうだ。
「ハハハッ、その気持ちはその内解消されるぞ」
「「え?」」
「一人でも戦力が欲しいからな。女子供でも扱える武器を開発中だ。ボウガンと違ってな」
ホビットの力では弓も剣も戦の力となりえない。だから炊事洗濯などの雑用がメインとなってしまうのは仕方がない事だ。
しかし、俺が開発させている魔道銃はホビットでも扱える手軽に殺せる道具だ。
「・・・お前達、手先は器用か?」
「はぁ、ホビットですから。力の要らない作業でしたら」
「何人か付いて来てくれ」
「キャー。魔王様に呼ばれたわ」
「遂に私達にもね」
どうやら俺に呼ばれた者は出世できるというジンクスが噂で流れている。
数名のホビット達をザッツの研究室へと案内する。
「魔王様、彼女達は?」
「ホビット族だ。手先が器用だと言ってな」
「それは助かりますね」
「キャー、美形よぉ」
「美男子ねぇ」
少女の様な容姿をしているが40歳くらいのホビット達が黄色い悲鳴を上げている。
「この文様を魔石に掘ってください」
「「「はぁい」」」
ホビット達は図面通りに魔石へ魔紋を掘り始めた。
小さな手が滑らかに動いて魔紋が掘られていく。
「皆さん、筋がいいですね」
「アタシ等はこういう事しか取り柄が無いからさ」
「殆ど使えないけどねぇ」
「これだけじゃ食っていけないしねぇ」
「魔王様、良い人材を見つけ出して頂き有難うございます」
「たまたまだ。それとコレを早急に作ってくれないか?」
「コレは?」
長方形の箱型の魔道具設計書だ。
「洗濯機という魔道具だ」
アッチの世界でも重宝している洗濯機。
「外装は親方に注文しているから、この動きを再現してほしい」
「なるほど、これはやり甲斐がありますね」
「洗濯が楽になる魔道具だからな」
「承知しました。早速手伝ってもらいましょう」
ザッツの指導を受けてホビット達の新しい働き口が決まった。
これでアイツの負担も減るだろう。
オンリーワンだとしわ寄せが一人に来てしまうからな。
数日もすれば給水、洗い、すすぎ、脱水を自動的にする形にしてきた。
ゴウンゴウンゴウンッ
洗濯場に設置して試運転すると他のホビット達が集まってきた。
「これは凄いな」
「洗濯が楽になるな」
毎日大量に集められる洗濯場には大勢のホビット達が見学している。
「さすがに鎧用は無理だな」
「傷つきますね」
ビックバッドの羽で作られた日傘を指しながらザッツが言う。
薄暗い部屋でなくても日傘があれば外には出れるらしい。
鎧を洗うのはホビットたちの役目に変わりなさそうだ。
洗濯機の登場でザッツへ手伝いが出来るホビットが増える事となった。
・・・
キャリキャリキャリッ
「麦刈りが楽だモゥ」
「腰が痛くならずに済むモォ」
ザッツに頼んで作らせた小麦刈り車。
横に伸びた刃を魔石で回して刈り取り、一束に纏め上げて後方へと捨てる押し車だ。
主に力の強いミノタウロス達に押させて回収は他の種族に任せている。
なにより押すだけで10人分の役割を一台で賄う事ができる魔道具で生産速度を格段に上げた。
来年の春用に畑を耕す魔道具も開発中であった。
広範囲に渡る大規模農場を少ない人数で回す事が出来て大量の製粉が作られ始める。
ヒュォオッ
空を飛び、刈り取りの風景を見て順調に進んでいる事を感じる。
パパンッ
パァンッ
ライフル銃による狙撃音が秋空に響く。
秋の入り始めに完成した魔道ライフル銃の試射が行われていた。
バァンッ
隣ではホビットでも扱える魔道リボルバーでの試射も行われている。
スタッ
「調子はどうだ?」
「はい。従来のボウガンよりも飛距離も貫通力もでていますねぇ」
ザッツが満足げに答えた。
「魔道ライフルは戦争を一変させますよ」
「量産には向かないがな」
一発一発の魔弾のコストは抑えられなかった。
遠距離からの一撃必殺であれば使いどころはあるだろう。
「魔道リボルバーも至近距離なら負けませんね」
「ホビット達も戦いには出せそうか?」
「コスト面が掛かり過ぎですね」
魔道銃の銃弾を低コストで作れれば戦争形式を変えるとザッツは言う。
「まだまだ、課題はありそうか。まだ火縄銃の方が使えそうだ」
威力や飛距離ではライフルには適わない物のボウガン以上の威力は出る。
玉込めの時間が掛かるのがネックだな。
「魔王様、僕は故郷に帰ろうと思います」
「突然何を?」
「僕は魔王様に沢山の恩を受けました。ですから故郷に帰って、僕と同じ魔族を見つけようかと思います」
魔族領にはザッツのように埋もれた者が居るとは思っているがソコまで手が出せない。
「お前を失う訳には」
「この数ヶ月の間、魔道具のイロハを彼女らに叩き込みました。魔力は少ないですが問題ないでしょう」
ザッツの下で働いていた女ホビット達が胸を張る。
「彼女らの意見はとても参考になりますよ」
「分かった・・・出来るだけ早く帰ってきてくれ。お前は責任者なんだからな」
「えぇ」
こうしてザッツは新たな才能を埋もれさせている者を見つけるために魔王領へと戻っていった。




