探索
今日から周辺の探索に出かけようと思う。
どこに何が居るのか、脅威となる生物は何なのかを把握する必要があると感じからだ。
拠点としている泉を中心して動いてみる。
泉周辺はノーブルウルフが生息している様だ。
東側にはホーンラビットの生息地、北側に向かうとロックボアの生息地だった。
南側には飛竜が飛びかう草原だ・・・迂闊に出ない方が良いと思う。
最後に残ったのは未確認の西側だ。
ドシンッドシンッ
ドッドッドッ
体長5mはある熊型モンスターが歩いていた。
飛竜や巨猪より恐怖感は薄いが強者である事は雰囲気で分かる。
グルゥアアア!
ブヒィイッ
暫く木の上から様子を伺ってみたら熊の縄張りに入ってきたロックボアが一撃で殺されて食べられている。
今までの動物系モンスターと違って、本能剥き出しに襲っているように感じなかった。
シュォオッ
それに常時あふれ出ている魔力量だ。
ロックボアを仕留める時に魔力が放出した事を感じた。
何らかのスキルを使って固い鼻すらも切り飛ばした様だった。
つまり、目の前にいる熊はスキル持ちで少なくても知性を持ち合わせていると思った方が良い。
【スキル持ちの野生動物をモンスターは危険です。魔力を持ち身体を強化している個体もいます】
「目の前の熊がそうだろう」
スクッ
グォオオオ!
ロックボアを食べていた筈なのに俺の事を見つけ出して立ち上がり咆哮を放った。
「俺に気づいた」
木の影、15m程離れた場所で見ていたのだが居場所がバレた。
ドシンドシンッ
四足歩行に戻り、真っすぐ俺がいる木へと向かってくる。
「くっ!」
近くの木へとジャンプして乗り移る。
ドシィインッ
俺が居た木に熊が突進して大きく揺らす。
グルルッ
熊は唸り声を上げて俺を見上げている。
「さらば」
俺は木々を伝って熊の縄張りから出ていった。
暫くは地上から追いかけてくるが、木が熊の進行を邪魔して距離を開かせる。
自重が軽い事も相まって簡単に逃げる事に成功する。
西と南に行くのは諦めて、北にいるロックボアでレベル上げをする事に決める。
5m~10mくらいのロックボアを相手に1週間ほど戦い続けた。
【レベルが上がりました】
幾度かのレベルアップで自分が強化されて行くのを感じた。
【メイジのレベルが5になった事によりシャドウワープが発生します】
「シャドウワープ」
【影から影へと移動する事が出来る魔法です。隠れている時間や距離に応じて消費魔力が変動します】
「なるほど。シャドウワープ」
トプンッ
木の影でシャドウワープを発動すると下に落ちる感覚に襲われた。
「これが影の世界」
地面の下から地上を見上げていた。
影が落ちている場所にしか移動出来ないようで太陽が当たっている場所は白い空間が広がり近づけなかった。
パシャッ
影から出る時はスルッと出て来れた。
「影移動か・・・緊急回避とかに使えそうだな」
草原の様なだだっ広い所では使えそうにないが、影がある森の中では使いたい放題だ。
夜とかなら制限解除されたような物だ。
新たに手に入れた魔法は一部制限はあるが使い勝手は良さそうだ。
それからシャドウワープについて探ってみる。
移動距離1m対して魔力を1消費し、1分待機するだけで魔力を1消費した。
移動している時は待機時間も含まれるのかと思ったが同じ場所に留まらなければ移動とみなしているようだ。
現在の魔力は200程、移動距離は200m、影に潜んでいられる時間は200分(約3時間)も隠れられる。
なぜ、移動距離と時間では大差があるのかと疑問に思ったが同じ場所に留まっているのと移動するのとではリスクが違うと理解した。
影に潜み続けていても魔力や匂いは水とは違い漏れているらしくノーブルウルフが中々離れてくれなかった。
影の中を移動すれば戦闘を優位に進める事が分かった。さらに移動速度が地上と違い無重力空間の中にいる様で早く動ける。
一瞬にして木の上へと移動して、頭上から攻撃する事も可能となった。
影さえあれば俺の攻撃パターンは大幅に増えた。