表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/85

婚約破棄①(後編)

「って、事だ兄貴」


「馬鹿な! 父上が魔族と同盟だと!?」


「あぁ。そこに居るアリア陛下と1週間前に調印式も執り行われたんだぜ」


「それを知っておきながら何もしなかったのか?」


「陛下が決めた事に第二王子の俺が口を挟む訳ないだろう? 王太子の兄貴なら挟めたかもしれんがな」


「ぐぬぬぅ。父上まで取り込んでいるとはルーデシア! 貴様はどこまで卑劣なのだ!」


「そこまでにせぬか」


バァンッ


扉が開いて国王が王妃を引き連れて姿を現した。


「父上、母上!?」


「グラムよ。全ては私の耳に届いておったぞ。よもや同盟国との約束を反故にするまで落ちぶれたか」


「父上! ルーデシアはこのルーン嬢を」


「黙れ!」


「息子達が集めた証拠には何の根拠がない事は私達が証明します」


「まさか、ここまで落ちぶれたなんて思わなかった」


「陛下には多大なるご迷惑をお掛けしてますよ」


ベイクラム王国宰相、ベイクラム王国将軍、ベイクラム王国魔法省の人間達が部屋の中に入ってくる。


「父上!?」


「親父!!?」


「父さん」


3人の子息たちは狼狽した。


「ルーデシア嬢よ。我が息子が大変な事を仕出かしたことを心よりお詫び申し上げる」


「いえ、陛下が頭を下げるなんて」


「そうです、父上! ルーデシアが悪いのです」


「グラム、お黙りなさい」


口元を扇で隠しながら王妃は静かに言う。


「既に婚約破棄の件を宣言されておっては取り消す事は至難のわざ・・・取り消したとしてもルーデシア嬢の経歴に傷を付けてしまっている」


「貴族の女性、王女となればこの傷は癒えぬ事でしょう」


王妃が涙ぐみながら言う。


「この件は私が持つ。おって沙汰を出すまで待つのだ。皆の者解散だ」


王の声で貴族たちは帰路に立つ。


婚約破棄の件、魔族との同盟の件、戦争の件等が混ざった噂が王都へと流れ込んでいく。


たちまち、ベイクラム王都はその噂で持ちきりとなる。


「何故です、父上! 私は悪くない」


「少しは頭を冷やせ」


牢獄(と言っても要人用の)に放り込まれたグラム王太子は自身の待遇に不満を漏らす。


「全ては貴様が仕組んだ事だな! 私は知っているんだぞ」


国王の後ろで見ていた俺を指さして叫ぶ王太子。


「黙らんか! ルーデシア嬢がいなければアリア小国と戦争になっていたやもしれんぞ」


「たかだか、ベアリアルの森周辺に作られた小国であろう」


「近衛兵の精鋭達がたった一人の魔族に圧倒されたのだぞ」


「は?」


「それすらも知らなんだか・・・婚約者の事に興味はないと聞いていたがここまでとは・・・すまんな」


「いえ・・・その、アリア様は凄い方なのは分かるんですが、そんなにも?」


一緒に聞いていたルーデシアが疑問に思う。


「あの竜魔王ハムートと繋がりを持つ魔族だ・・・」


「「竜魔王!?」」


結構有名だな。


「馬鹿な、あの竜魔王が聖大陸に来たのか?」


「そんな怪物がベイクラム王国に・・・」


ガタガタと震える2人。


魔王の名前は伊達ではないようだ。


「アリア様、仲良くしましょうね?」


「危害を加えられなければそれでいい。俺はあの場でノンビリしたいだけだ」


「そうですわ。陛下もそうした方が良いと思います」


「うむ。近々、ベアリアルの森周辺をアリア小国と認めて不可侵条約を結ぶ手はずだ」


着々と話が進む。


「それで、この茶番に何時まで付き合えばいい?」


「有力貴族の連中にアリア殿の姿を見せられたからな。帰っても良いぞ」


「そうか」


「おい、魔族! 私を助けろ。対価は用意するぞ」


この後に及んで王太子は空気は読めないらしい。


「俺が助けるメリットはない」


「貴様、王族の血を欲しているそうだな。私の血を分けてやろう」


「なんか勘違いしているな?」


「何を言う。高貴なる血だぞ」


「兄貴、俺も断られた。男は臭いって」


「なっ!?」


「女の王族の血限定らしいぞ。しかも浄い乙女の血だそうだ」


それを聞いてルーデシアは顔を真っ赤にする。


「なら、ルーンも一緒に助けてくれ。彼女も少しは王族の血が流れている筈だ」


「え? あの女の血は要らない。もう臭いし」


「王家の血が薄いって事か?」


「あぁ、そうか。知らないか・・・知る由も無いか」


俺は王太子の後ろにいた女について少しだけ知っていた。


「そのルーンって女、純潔じゃないぞ」


俺の発言にシンと静まり返る。


「だから臭いって言ってる訳だ。どこの誰かとは知らんが交わり済みだな」


「馬鹿な、ルーンがそんな事がありえるはず」


「まぁ、調べてみればいいんじゃないか? 自分が騙されていた事に気づくだろ。じゃぁ、俺は帰る」


バサッ


翼を広げて俺は塒へと帰路に就く。


こうして、ベイクラム王国内部で大きな変動が起こった。


ベイクラム王からベアリアルの森周辺がアリア小国として立ち上がった事の発表があり進入禁止地区に指定された。


また、アリア小国との同盟が結ばれたことが同時に発表された。


瞬く間にその情報は隣国へと伝わっていく。


・・・


「アリア小国への同時攻撃か」


サーペンティンからの使者から魔族が住まうアリア小国を攻め滅ぼす親書が送られてきた。


「親父、どうするんだ?」


「そもそも、サーペンティン王国との同盟は無くなったしな」


サーペンティン国王と王妃が反乱軍に打ち取られて5年が経過しようとしていた。使者も反乱軍の一人である事は明白。


「この親書も効力が無い」


「あの計画を進めるんだな?」


「うむ」


兼ねてより計画していたルーデシアとの約束を果たす時が来た。


既にアリア小国とのやり取りもすべて終えている。


サーペンティン王国の奪還作戦が始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ