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婚約破棄①(中編)

「クラム様、大丈夫でしたか?」


「大丈夫な訳ないだろう」


扉の外では侍女とクラムが話している。


「アレが近くにいたと知らなかっただけで恐怖だ。ルーデシアが橋渡ししていなかったらこの国も危険だった」


クラムは内面では恐怖して演技をしてアリアと対等の話をしていた。


ブルブルブルっ


だが、気が抜けて押さえていた恐怖が蘇っていた。


「アルフォンスを呼べ」


「はい」


4年前に戦った事のあるルーデシアの近衛騎士隊長を自室に呼ぶ。


当時13歳程度しかなかった少女に倒された事、半年前に再会したが護衛兵全員が圧倒された強者になっていた。


「そうか・・・護衛に戻ってくれ」


「はっ」


アルフォンスは退室していき。テーブルに乗せてあったアリアの飲みかけのワインを見る。


「薬は効かないか」


致死量の毒薬を入れたワインだったが体調に変化は全く訪れなかった。


「伝承通り化け物だなこりゃ。気合いれていかないと俺もこの国も不味いな」


クラムは決断を下して翌日に備える。


・・・


翌日、俺はクラムに連れられて王城の奥へと案内される。


城に働く者たちに気取られない様に全身を隠すフード付きのローブを身に纏う。


コンコン


「入れ」


威厳のある声が返ってきてクラムが先に入室し、俺も入る。


小ぢんまりとした部屋で王と王妃以外の人物は居なかった。


「お前が、密談の要件があると聞いた時は驚いたぞ」


「陛下、この度はご機嫌麗しゅう」


「よい。私達は親子だ」


「外部の物もおります故」


昨日とは違った口調で話をするクラム。


「その者が私と王妃にだけ会わせたい人物であるか・・・顔は見せんのかね?」


王家の物にフードを目深に被った俺をみて怪訝な顔をする。


チラッ


クラムに目線を送るとフードを取る。


「お初にお目にかかる。ベイクラム王」


「その眼、魔族か!? クラム謀ったか?」


「彼女は魔族でしょうが、伝承の魔族とは違います」


「どういう事か」


チラチラと俺を見て王はクラムに説明を求める。


「私達の知る魔族とは違うという事でございます。彼女はあのベアリアルの森周辺の支配者です。ルーデシア様に行軍の許可をした人物です」


「・・・」


王の目が大きく開いていく。


「では、あの話は本当だったのか」


「我が国、すぐ近くにアリア小国が出来ています。アリア女王殿下です」


「魔族の女王か・・・少し待て」


突如として渡された情報を整理する王。


「ゴホンッ、改めて。オルトネス・デル・ベイクラムである。こっちは」


「リーン・デル・ベイクラムです。以後お見知りおきを。アリア女王殿下」


「アリア小国、女王アリアだ。口調の方は勘弁してほしい。生まれたばかりの魔族だからな」


「生まれたばかり?」


「俺は生まれてまだ7年しか生きていない」


「「「7歳!?」」」


見た目に反して幼子と呼ばれる年齢に3人は驚いた。


「たったの7歳なのか・・・魔族は成長が早いのか?」


「俺の他の魔族は竜魔王くらいしか知らない」


ブッ


「「「竜魔王!?」」」


とんでもない名前が出てきて驚愕する3人。


「竜魔王とは、魔大陸に住む8大魔王のハムートの事であるか?」


「それで合っている。この名前もハムートから授かった」


「親父、非常に不味い」(ヒソヒソ)


「分かっておる。一歩間違えば我が国も滅ぶぞ」(ヒソヒソ)


「ここは穏便に話を」(ヒソヒソ)


「うむ」(ヒソヒソ)


2人が小声で話し合うが聞こえている。


「ゴホンッ、アリア殿下。詳しくは腰を落ち着けてからにせぬか?」


今まで立ちっぱなしだった。


「遠慮しよう・・・その高価な椅子を傷つけるのは忍びない」


バサバサッ


竜の鱗が生える翼を見せると3人の表情が曇る。


「背もたれのない椅子を用意しよう」


クラムが奥から背もたれやひじ掛けのない椅子を引っ張り出してきた。


ギッ


それに腰を落とす。


「して、わが国に何用で?」


「それはクラムに呼ばれたから・・・詳細は今日話すらしいが」


「ばっ!?」


ベイクラム王はクラムを怒鳴ろうとしたが取りやめる。


「それは失礼な事をした」


「構わない。クラム、話をしてくれないか?」


「あぁ。まだ確証はないんだが」


クラムはルーデシアの立ち位置や危機的状況の要因を話す。


「近々、婚約破棄を言い渡すだと?」


王としての発言ではなく父としての怒りが声に出ていた。


「兄貴はリーン嬢にお熱だからよ」


すでに王と王子の会話ではなく父子の会話をしていた。


「俺なりに調べた結果、リーン嬢はルーデシアに変な扱いを受けた事は無いが証拠を揃えているようだ」


証拠が無いのに有るというクラム。


「捏造か?」


「たぶんな。有力貴族たちを抱きかかえて証人に仕立てれば信憑性が増す」


「ルーデシア嬢は知っておるのか?」


「知らんだろう。この大事な時期だから周囲に疎くなっている」


「ルーデシア嬢本人の希望で戦線に立たせる約束もしておると言うのに」


「あなた、婚約破棄をさせるつもりですか?」


心配になったリーン王妃が問う。


「させる物か! ルーデシア嬢とはこの国の未来繁栄を約束をしているんだぞ」


「親父、それはそれだ。問題は兄貴の暴走を止める事だろ?」


「ううむ。ルーデシア嬢はグラムと関係は進んでいるのか?」


「仮面夫婦?って奴かな。互いに会わないしな」


「そうか・・・お前はどうだ?」


「俺? まぁ嫌いじゃないぜ?」


「・・・」


「親父、なんか変な事を考えてないか?」


「うぅむ・・・その婚約破棄を利用しよう」


「「!?」」


王の発言に2人が驚愕する。


「この際、わが国にも火の粉が降りかかるのも時間の問題じゃ。アリア小国が侵攻を防いでいるからこそ話し合えるのも事実。であれば内部の不穏分子は早急に片づける他はない」


「兄貴を降ろすのか?」


王太子の座からという事は言わなくても分かった。


「私の許可も出してもいない状態で婚約破棄する王太子の処遇を決めるのは私の責務だからな」


「まさか、次は俺にするんじゃないだろうな?」


「安心せい。お前にはお前の役割がある」


「で、俺は何のために呼ばれたんだ?」


一区切りついて俺は呼ばれた理由を問う。


王が出張ってくるなら俺の居る理由は無い。


「ルーデシアは魔族と繋がりがあるという噂が流れている。それを材料にするだろう」


「うむ。格好の材料ではあるな」


「で?」


「我が国とアリア小国で同盟国の調印式を行う。それでルーデシアの噂は晴れる」


「そんな事したら国王が糾弾されるだろう?」


「長年この国で王をやってはおらん。貴族連中も一枚岩ではないが根回しなら得意とする」


「それなら良いが・・・」


「決まりだな。準備してくる」


殆ど秘密裏に決まって行ってベイクラム王国とアリア小国間で同盟の調印式が執り行われた。

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