支配領域拡大③
キキィ!
キィ!
ここは北側にある山だ。
空を飛ぶことが出来るようになった俺は山へ向けて飛んでいた所、上半身は女性、手足が鳥のようになっているモンスターの群れに襲われていた。
「飛刃血!」
バババッ
複数魔法で一度に大量の飛刃血を群れに向かって飛ばす。
ズバッ
キィイイヤアア
何羽が飛刃血によって墜落していく。
【ハーピー(Lv27)、ハーピー(Lv25)を倒しました】
キィイアアア
グラァッ
「くっ」
超高音の衝撃が俺に襲い掛かる。
ヒュォッ
ビシッ
見えない斬撃が俺の腕にかすり傷を負わせる。
竜鱗に覆われている所を傷をつけたのだ。
ペロッ
小さな鱗が剥がれて出血している血を舐める。
「この数・・・群れでの戦闘が前提か」
視界に映る群れは100羽を超えている。
幾ら強くなったからと言って数に差がありすぎる。
キィイイヤアァ
「くっ」
急加速、急旋回にトリッキーな動きをして俺を翻弄する。
「広範囲攻撃を持っていないしな」
基本単体攻撃手段しか持ち合わせていない。
まてよ・・・なにも何かを経験しなくても自身で作り出す事も出来るだろう。
ビチャァッ
血操術で血の形を変える。
魔力を混ぜ込んで威力を底上げる。
「ブラッドクレセントムーン」
極薄にした三日月型をした血の刃を群れに突っ込ませる。
ギャァアアッ
今の一撃で数十羽のハーピーが地に落ちていった。
【ブラッドクレセントムーンを習得しました】
魔法として認識されたようだ。
飛刃血よりも血を使うが遠距離範囲魔法は有難い。
それから血と魔力が続く限りブラッドクレセントムーンを放ってその数を減らした。
「もうすぐ日の出か」
山頂に朝日の光が差し込み始めた。
日中だと活動がし辛くなる。
キィイイヤアッ
「ブラッドソード」
空中で避けて、カウンターで切り返す。
翼の大部分を切り落とされて錐揉みしながら落ちていく。
「ブラッドアロー」
単体遠距離魔法で少なくなったハーピーの群れを減らしていく。
「撤退をしないのか」
残り20羽になっても追いかけてくる。
朝日は既に顔を出して、俺の素肌が焼かれ始めていた。
「撤退するのは俺か」
ハーピーの数と粘り強さに俺は撤退する事にした。
咄嗟の思い付きで遠距離範囲魔法を覚えたが戦闘中では血の補充が難しかった。
休む間も無く襲い掛かってくるハーピーから血を奪うのは余裕が無さすぎる。
それから何度もハーピーの領域に侵入するが数で押されてしまう。
「魔力を纏って撃ち込む、マナインパクト」
ドォンッ
木々に向かってマナインパクトを使用して俺の拳ほどに抉れる。
「なんとか広範囲殲滅系がないと勝てないな」
遠距離広範囲魔法だけでは勝ち目は無いと感じ、別の案を考えている。
血魔法での再現では血が枯渇する恐れがある・・・つまり魔力消費だけに抑えたい。
魔力消費の魔法は無属性のマナインパクトのみ。
コレを如何にか出来ないか模索中だ。
ジィッ
木の破壊された部分をみると抉れかたに特徴が見えた。
拳の部分は抉れて消えているが残った部分には波の様な文様が残っていた。
「衝撃痕ってやつか」
衝撃というのは波として周囲に伝わると聞いたことがある。
木への衝撃は波として周囲へと伝わる、耐えられなければ吹き飛び、耐えても衝撃が伝わった部分に跡が残っているようだ。
「マナインパクト」
ブワッ
空中に放ってみれば衝撃波は周囲に分散されて髪の毛が後ろに持っていかれた。
「これ、指向性を前に向けられないか?」
周囲へ伝播する衝撃ではなく、一方向へ向かって放てないか考えてみる。
「大砲のように魔力で周りを包んで・・・マナインパクト」
ドッ
メキメキメキッ
魔力の衝撃は一方向へ収束して木の半分を吹き飛ばし倒れた。
【インパクトカノンを取得しました】
「これだと単体攻撃用なんだよな」
一撃は強くなったが単体用の魔法だ。
今度はすり鉢のように魔力の筒を広くしてみる事にする。
「インパクトカノン」
ドォオオン!
バキバキバキバキッ
一瞬にして魔力が持っていかれて目の前の木と周辺の木々が幹もろとも吹き飛んでいった。
「・・・どういうことだ」
予想外の威力に俺は目が点だ。
【ショックウェーブを習得しました】
「ソレはなんなんだ?」
【魔力衝撃を限定した一方向へ拡散した魔法です。主が求められた魔法では?】
「・・・つまり、俺が新たに作り出した魔法なのか?」
【効果などは類似した魔法を元に作り出しました】
完全ではないが、ある程度は魔法が再現してくれるのか?
【是】
それを先に言って欲しかったな。
【前にも仰りましたが】
それは前にも聞いた。
「とにかくコレで挑戦だ」
その日の夜にハーピーの群れに挑む。
「ショックウェーブ!」
ドンッ
俺に近づいてきたハーピーから始まって周囲のハーピー諸共吹き飛ばす。
流石に遠くにいたハーピーへの影響は少ないが威力も範囲も申し分ない。
「たったの40でか・・・」
今の魔力総量は1700近くだ。
魔力消費だけであれば勝機は見えた。
それからショックウェーブを使い続けてハーピーの群れは朝日を待たずして殲滅を完了する。
「さてと・・・」
次は山頂へ目指して飛ぶ。
散っていたハーピーが次々に襲い掛かってくるが全て返り討ちにする。
ギェエエエエ!
山頂に近い場所から耳を塞ぎたくなるような声が聞こえてきた。
ドシィンッ
体長は10m程の巨大な鳥だ。
ただ2つ頭が1つの胴体から伸びている。
バサッバサッ
「あの巨体が浮くのか」
恐らく魔力で浮いているのだろう。
飛竜だって飛べるんだからな。
俺と同じ位置まで上昇してくると大きさがハッキリとする。
ギョエエエエ!
「ブラッドクレセントムーン」
問答無用で魔法を放つ。
ヒョイッ
ハーピーと同じでトリッキーな動きで軽く範囲魔法を避けた。
「この山のボスで間違いないな」
こうして領域の争いが始まる。
「ブラッドアロー!」
バババババッ
何本ものブラッドアローを放つが、その固い翼で弾かれてしまう。
防御力はバサルリザード並みなのか・・・
「飛刃血」
シュンッシュンッ
今度は飛刃血を飛ばすが、軽く避けられてしまう。
「魔力の流れを読み取っている?」
でなければ、あんな巨体が紙一重で避けるなんて芸当が出来るか?
カカカカッ
片方の頭が笑っている様に見える。
「・・・頭が2つか」
という事は考えられるのも2つ同時・・・脳の処理機能が単純に分担できる。
1つは戦闘、1つは補助用として。
「ならば! ブラッドソード」
ブラッドソードで頭を切りかかる。
カアァアアア!
ブワッ
「うわっ!」
両翼から強風が放たれ進行を阻む。
ヒュンヒュンヒュンッ
!!?
見えない刃が次々に飛んでくる。
ブシュッ
ビシュッ
至る所から出血して空中にポタポタと流れ出る。
「勿体ないな」
グジュッ
流れ出る血を操作して新たな魔法に使う。
自分の血であれば出血してても利用できるのが血魔法だ。
「ブラッドクレセントムーン」
範囲魔法に血を使い放つ。
キョエェエ
奴は再びトリッキーな動きで避ける。
バッ
「隙がデカいんだよ」
ギョエッ!?
避けるのに大きく動くコイツは無防備になる瞬間がある。
「その首貰った!」
ガキッ
「なっにぃ!」
ブラッドソードを狙った頭の方が嘴で挟んで止めた。
ギェエエ
ドッ
グザッ
残った頭が嘴で俺の脇腹を突き刺す。
「掛かったな。ブラッドクレセントムーン」
至近距離から放った範囲魔法。
ギョェエエッ
ブシャッ
俺の脇腹を突き刺した頭が首から切断して地に落ちていく。
バサバサッ
残った頭が体を動かして離れていく。
ブシュッブシュッ
脇腹に大穴が開いて出血が止まらない。
【状態異常:出血(大)が発生します。継続ダメージが発生します】
「血操術」
出血を無理やり止める。
【状態異常:出血が収まりました。止血(Lv1)を取得しました】
フラフラッ
思った通り2つの頭で戦闘と補助を分担していた奴は同時に行おうとして飛び方がふら付いている。
「複数魔法、ブラッドクレセントムーン」
5倍の魔力を使用して5つのブラッドクレセントムーンを発動する。
ギョえぇええ!!
逃げ場を失った奴は空中でジタバタとした後に5連撃のブラッドクレセントムーンの餌食となり山頂へと落ちていった。
スタッ
ギィエエエッ
「複数魔法、ブラッドハルバード」
5本のブラッドハルバードを地面から生やして瀕死の奴を突き殺す。
【ファントムバード(Lv30)を倒しました。レベルが上がります】
【山の王を倒した事により、ファントムバードの山を支配領域にします】
【主の領域名をアリアの支配領域に変更しますか?】
「そうだな」
【森、岩場、山の支配領域名をアリアの縄張りと変更しました】
【ファントムバードのスキル:風魔法を取り込みますか?】
「あぁ」
ファントムバードの血を飲んで新たな魔法が手に入った。
【風魔法のウィンを取得しました】
「ウィンとは?」
【生活魔法に分類される風属性の魔法です。送風の魔法となります】
使えるかは微妙な魔法だな。
【3つの領域を支配した事によりレベル上限を解放します】
「レベル上限の開放か」
これまでパッシブスキルのレベルは3が上限で一向に上がらなかったが理由がここに来てハッキリした。
【魔王への道が解放され、領域に住まうモンスターは下僕になります】
「魔王への道?」
【3つ以上の領域を獲得した種族に発生する物です】
「魔王にもなれるのか」
竜魔王ハムートもこの道を辿って成ったのかもしれないな。
残りは湖の領域だ・・・