改訂版 ジニちゃんのみずさし
今日は、おひさまがポカポカして、とってもいい天気ね。
おやおや?
お庭をポテポテあるいているのは誰かしら?
「ジニって言うんだよ。ジニは、ウサギぞくだから、あしのうらにニクキュウがついているの~」
ああ、それで、ポテポテ音がしていたのね。
「あう、あう、おう♪」
お世辞にも上手くないわね(音痴)。
ペッタ、ペタペタ。
「おそとであそぶのは、とってもたのしいの~」
シュルシュルシュル~。
あら、岸壁から遊びに苔スライムが来たみたい。
ジニちゃんは、気がつかないで土コネに夢中ね。
でも……。
ポイ、ポイッ、ポイポイ。
遊んで欲しくて苔を投げつけてきたわよ。
「あう、あう、やめてほしいの~」
土に苔が混ざって、やっと気づいたみたい。
「いろがまざっちゃうの~」
と、大きなタレ耳をピロンピロンと上げ下げして、抗議しているわ。
でも、ひとつの色よりも、他にもあった方が綺麗よね。
そう思ったジニちゃんは、また、楽しく土コネをしていたわ。
「あ~、できたの~」
苔スライムと仲良く作った器が出来たみたい。
少し個性的だけど、上手くまとまったわね。
「かわかさないとやけないの」
ポテポテポテ。
歩き出したジニちゃんは、布を敷いてから、お庭にある大きな木の影に置いたのよ。
きっと、大切な物なのね。
しばらく見ていたけど、お家に帰るみたい。
「またなの~」
苔スライムに手を振って別れたようよ。
ポテポテ。
「ジニ、帰ったよ~」
あら、感心だわ。手足を洗って、うがいもしている。
前に、家を汚して反省したのかもしれないわね。
それから、カラフルなクッションのある自分の部屋に戻って行ったわ。
「あうあう~、くもさんがあつまってきてるの~」
窓からお外を眺めたジニちゃんは、どうやら、お空を気にしているようね。
突然、小さな鼻をヒクヒクさせたと思ったら……。
「うにゃ! ケーキを焼いてるの」
飛び跳ねて行っちゃったわ。
窓外から、スポンジを焼く美味しい匂いがしたのね。
□
今日はまた、さらに澄んだ青い空が広がっていたわ。
「おそとにいるの~」
ポテポテポテポテ。
ジニちゃんたら、昨日、作った器を早く見たいのね。足取り軽く跳ねているもの。
「『みずさし』さん、おはようなの……?」
どうしたのかしら、フワモコのタレ耳が、頭の上にネジネジされていってるわ。
「うにゃあ! ないの!」
ああ、ビックリした。
ジニちゃんたら、随分、高く飛び上がったのよ。
「おとしものだとおもわれちゃったかもなの~」
ジタジタ、あうあうと忙しそうね。
ん?
どうやら、お家の門の方に探しに行くみたい。
「ん~、これじゃないの~」
ふにゃ目を細めたりして確認しているようだわ。
「もんのはしらにのっているのは、いろがちがうの」
次は、花壇を探すのね。
こんな時は、動きが素早いから追うのが大変よ。
「これもちがうの~」
今度は、葉っぱに隠れていたマイマイツムリさんのお家を確認したのね。
「ちょびっとちいさいの~」
自由自在に動くタレ耳と尻尾で、ジニちゃんの感情は、わかりやすいわ。
そのまま歩いて、お隣りに行ったみたいだけど……。
「あう、イーグ、おはようなの」
ジニちゃんのお友達のイーグが居たわ。
でも、大丈夫かしら……。
イーグは、可愛いジニちゃんに嫉妬しているから、少し、辛くあたるのよね。
「ジニがつちでつくった『みずいれ』がなくなっちゃったの。そとにおいておいたんだけど、イーグしらな~い?」
ジニちゃんの頭は重いから、首を傾げると身体がグンニャリ曲がって、少し残念になってしまうのよ。
「きのうのよるは、あめがふったんだぜ。くずれるにきまっているじゃん、ポンチョコリンだなあ」
あらら。
やっぱり、言われちゃったわね。
「あう、あめがふっていたの? ジニ、しらなかったの……」
タレ耳が頭を抱えているから、何かを我慢しているのかもしれないわ。
プイッと家に入ってしまったイーグ。
「あうぅ、ジニは、ぽんちょこりんじゃないもん」
逆立てたタレ耳をぶんぶん振って、膨れ面のジニちゃん。
それから……。
「ジニの『みずさし』……つちになったゃったかもなの」
ポテポテ、ポテン。
まぁまぁ、しょんぼりして、つまずいちゃったみたいだわ。
下を向いていたから、悪い事が続いたのかしらね?
「ただいまなの」
お家の中は、何だか甘い匂いがしているのかしら。
あらあ? 急いで手足を洗ったみたいよ。
「あう、あう、あう~♪」
ふふっ。
どうやら、清潔になって機嫌が良くなったみたい。単純ね。
ピョピョピョンと食堂に跳ねて行っちゃったわ。
「お帰りジニ」
おやつの時間だったから甘い匂いがしていたのね。
テーブルには、一本角兵の形をしたケーキや、固めたグルトに甘いソースがかかった物が用意されていたわ。
「オーリー、ちゃんとあらってきたから、みてほしいの」
まあ。
早く食べたくて、叔父さんに可愛い肉球を見せたみたい。
「そうだ、昨夜あめが降っていたから、コレを預かっておいたよ。はい、大切な物なんだろう?」
ジニちゃんたら、被さる勢いで差し出された物をガン見しているわね。
「うにゃ! ジニの『みずさし』なの!」
まぁまぁ、わかりやすいこと。
フワモコのタレ耳がピンとなって、手のひらをニギニギしているもの。驚いているんだわ。
「うちにいれてくれたの~? ありがとうなの~」
テーブルの周りをピョンピョン跳ねちゃってるのよ。
「それならよかった」
オーリーも、ニコニコして嬉しそう。
「オーリー、ジニ、コレをさがしにいってたの~」
「それで、朝早く出掛けて行ったんだね」
「うん、だれかに、ひろわれたとおもっちゃったの」
「間違いじゃないけど、観察力が足りないな」
「ふよよ?」
ジニちゃんたら、あどけない顔を向けているわ。
「今朝は、空が洗われたみたいに透明だったろう? それに、雨の臭いがしていたんじゃないかな? だから、マイマイツムリなんかが活動していただろう?」
「うん、もんのかざりとかマイマイツムリのおうちをしらべたんだよ。オーリー、すごいの」
「褒めてくれてありがとう」
あれ? 何だか、タレ耳がもじもじし出したわね。
「あのね、イーグがね、あめがふったことをおしえてくれたの……」
また、元気がなくなっちゃったみたい。
「それでね、ジニのことぽんちょこりんっていったんだよ……ううっ」
あらあら、オーリーが優しいから、また思い出して悲しくなっちゃったみたいね。
「気にする事はないよ、ジニ。イーグは、甘えているだけだからね。いつか、恥ずかしく思う日がくるだろう」
「わかったの~」
「ジニもイーグもまだまだだね」
どうやら、オーリーの慈しみ深い微笑みで、ジニちゃんは安心したみたいだわ。
「ジニ、これからもイーグとなかよくするの。でも、オーリーがいちばんだいすきなの~」
「私もだよ」
「うふふなの~」
『みずさし』が見つかって良かったわね、ジニちゃん。
おしまい