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83 街長さんの地底視察




 もともと避難所にするために考えた地底都市だったけど、邪竜の脅威が去ってからも、開発は進行中だ。

 新しい観光名所にするって、しっかりした目的もあるからね。


 街一つ丸ごと作る規模なわけで、さすがにすぐには完成しない。

 どのくらい進んだのか、今日は街長である私が視察にやってきた。


「地底都市。なるほど、興味深い」


 ちなみにこの通り、なぜか銀髪幼女エルコもいっしょについてきた。

 別にいいけどね、手のかかる子じゃないし。


「先史文明にも、こういうのあったりした?」


「大都市の地下に、同様の地下街が発展。限られた土地の効率的利用を着想とする」


「あー、やっぱり似たような考えなんだ」


 街を広げるために、いたずらに森を切りたくない。

 そう思ってやったトコもあるからな。

 ムリに森を切り開くとガケ崩れとか洪水が起こるって、ガルダが言ってたし。


「ここも上の街みたいに、にぎわってくれるといいな……」


 今はまだ、残像を残して猛スピードで駆け回る大工さんたちくらいしか居ないゴーストタウン。

 完成した時、大勢の人の活気にあふれた街になるのが楽しみだ。


「忠告。地下都市は人の目を逃れやすい。治安の悪化を懸念」


「む、昔の地底都市、そんな感じだったの……?」


「浮浪者が雨風をしのぐために寄り付く、違法な品物の売買が横行、表沙汰にできない商売の開業、などのリスクが発生」


「そ、そうなんだ……」


 そりゃそうか。

 閉鎖空間だけあってスラム化しやすいわけだ。


「定期的な見回りが必要かもね」


「浮遊城の監視システムの使用を提案。死角となる場所にカメラを設置し、24時間体制で監視が可能。すぐに異常を検知し、脳内に通知を送信できる」


「……そ、それはちょっと」


 効率的で合理的なんだろうけど、あまりにもプライバシーとかを考慮してない提案。

 エルコらしいと言えばらしいね……。


「……? 運用コストの心配は不要。私は人間ではなく術式の受肉体であり、睡眠、食事等は一切不要。万全の監視体制を――」


「や、そうじゃなくてね。ほら、監視されてるって思うと街の人たち、不安だったり不満だったりが溜まってくじゃん」


「納得。では秘密裏での運用を提案する」


「そういう問題でもないんだよな……。ともかく却下で」


「不可解……」


 しょぼん、としてしまったエルコに、なんだか申し訳ない気持ちになる。

 この子なりに私や街のためを思って提案してくれたんだもんね。


「……よし、じゃあこの地底都市の新しい観光名所、今からいっしょに考えよう。街並みを見回りながら、さ」


「同意……!」


 とたんに目がキラキラし始めた。

 こういうとこ、ホントに子どもっぽくてかわいいな、コイツ。



 地底都市の道沿いには、明かりを確保するために地上と同じ街灯がならんでいる。

 それと天井にも照明がついていて、見上げればまるで夜空の星のよう。

 これだけでも見に来る価値ありなんじゃないだろうか。


「……とは思うけど、他にもなんか欲しいよね。エルコ、いいアイデアある?」


「何も浮かばず。しかし空気の循環が必要と判断」


「あー、なるほど。風が吹かないから空気が淀むのか」


 たしかにこれは、大勢の人が入ったらすっごい空気が悪くなりそう。

 通気性の向上、か。


「もう二つくらい縦穴を掘るのはどうだろう。それぞれの入り口と出口に風の魔石を使った装置を取り付けて、空気の通り道にするの」


「名案。居住性の向上は重要と認む」


 うん、いい意見がもらえた。

 観光名所については何にも出てこないけど。

 雑に氷山でも作っとくか?


 ブシャアアァァァァァァァ!!


「うおおおぉぉぉぉぉぉぉおっ!!!」


 地下空間に突如として響きわたる悲鳴、それから何かが噴き出す音。

 いったい何が起きたのか。

 エルコと顔を見合わせて、すぐに走り出す。


 駆けつけてみれば、地下の壁面で作業をしていた中の一人が尻もちをついていた。

 その原因は……。


「水?」


 カベに開けられた穴から噴き出す水。

 アレを掘り当てて、ビックリして尻もちついたのか。

 魔物じゃなくてよかった……。


「あ、あっつ……。まともに浴びてたら大やけどだ……」


「熱い……? もしかして……」


 近寄って、触ってみる。

 たしかに熱い、かなり熱い。

 源泉並に熱い。

 てか源泉そのもの……?


「あの、大丈夫ですか?」


「あ、あぁ、街長さん……。なんとかな……。たく、もっと街を広げてやろうと掘ってたらとんでもないモン掘り当てちまった……」


 うん、とんでもないな。

 ふさがないとココ水没しそう。


時の凍結(クロノ・フリーズ)


 ピキィィィ……ン!


 ひとまず時間を凍らせて、開いた穴に岩をどんどん詰めていく。

 そうしてチョロチョロとしか出てこないようにしてやった。

 これでよし、と。

 時止め解除。


「お? ……おぉっ、これがウワサの時間を止める力か!」


 いきなりふさがったことに驚いてるご様子。

 さて、掘り当てちゃったこの温泉。

 どうするか、手は一つしかないよね。


「エルコ、新しい観光名所、コレにしない?」


「同意。温泉街としてこの上ない新名所と判断」


 よし、新名所は地底温泉だ。

 でも、ただ普通の温泉を作るだけじゃつまらない。

 エルコと二人、ちょっとアイデア出しあってみようかな。




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