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67 天空の城が来た




 はるか上空を雲のように流れていく、巨大な城。

 アレはいったい何なのさ……。


「……お使いしてる場合じゃないな、これ。ミアには悪いけど」


 ひとまず様子を見てみるとしよう。

 このまま大人しく街の上を通過していってくれれば、未確認飛行物体としてしばらくウワサになるだけ。

 もしこっちに手を出して来ようものなら、すぐに叩き落してやる。


 天空の城は、少しずつ高度を下げながら街に近づいてきた。

 城の存在に気づく人たちも増えてきて、みんなして空をながめたり指をさしたり、アレは何だとざわざわしたり。


 やがて城は街の真上に到着、そして停止。

 日の光がさえぎられ、辺りに影が差す。


(止まった……)


 つまり、この街に用事があると。

 どうか悪意のない来訪者であってほしい。

 てか日照権の侵害だぞ、コレ。



 ひとまず街の中心、止まった城の真下までやってきた。

 ちょうど冒険者ギルドのある辺りだ。


 さて、こちらから乗り込むべきか、相手の出方を待つべきか。

 次に取るべき行動を思案していると、地面にとつぜん魔法陣が現れた。

 そして……。


 シュン……っ。


 その上にプロムと瓜二つの、銀髪の幼女が現れたんだ。

 今のは転送魔法陣……?

 城の中からワープしてきたのか……。

 いや、そんなことよりもどうしてプロムとそっくり――。


「純魔を宿す者。早々に発見。僥倖ぎょうこう


 うお、こっちに来た。

 しかもこの口ぶりは……。


「……アンタ、私に用事があるの? こんな大層なモンで乗り付けて来ておいて、いったい何の用なのさ」


「要求。即刻この街を退去せよ」


「……はぁ?」



 〇〇〇



 乗り物の迷惑な停め方はご遠慮願いたい。

 街の迷惑になるので、お城は山へと移動してもらいました。

 で、ひとまず銀髪幼女を連れて宿へ戻ることに。


「あ、ネリィ!」


 中に入ると、アイナが心配そうに駆け寄ってきた。

 こんだけ騒ぎになってんだから、この子の耳にも当然届いてるよね。


「空飛ぶお城、ネリィも見たよねっ! アレなに?」


「落ち着いて。今のところはわからない。これからこの子に詳しく聞くつもり」


「……この子、誰? プロムちゃんに似てるねぇ」


「転送魔法陣で城から降りてきた子ども。……似てるよね」


 もしかしたらこの子も、プロムと同じ存在なんだろうか。

 プロムとちがって、えらく不愛想な上に無口だけども。



 ミーティングルームまでお通しして、宿のメンバーも五人全員集合。

 さぁ、事情聴取のお時間だ。

 ちなみにミアとサクヤは多忙につき、分身を働かせての参加となっております。


「えっとぉ、まず自己紹介からお願いっ」


「識別名称、エルコルディホ。浮遊城エピプレーオンの演算術式、その受肉体」


「やっぱプロムと似たような存在か。となると、あの子にも来てほしいな……」


「呼んだかのぅ」


「うん、呼んだ」


 相変わらずいきなり出てくるプロム。

 別空間からいっつも様子見てるのだろうか。

 ともあれ今回ばかりは非常にありがたい。


「おぉ、プロム! ミアの新作料理、喰わせたいと思っていたところなのだ!」


「非常に魅力的な申し出じゃな。が、今日は遠慮しておくかの。……なんせ、妹と積もる話があるでな」


「妹だって!?」


 ガルダが驚きの声を上げる。

 姉妹とは、どうりで似てるわけだ。


「左様。こやつはワシのデータをベースとして構築された術式の受肉体。いわば妹のようなものじゃ」


 あ、血がつながってるわけじゃないのね。


「術式呼称プロメテウス。数世代前の旧式であるあなたを姉と呼ぶことは不合理と判断」


「あん? ポンコツとか言いたいのかのぅ、この能面お化け!」


「事実を指摘したまで。感情の乱れこそ旧式の証左」


「こんのぉ……!」


「まぁまぁ、抑えて抑えて」


 いいぞガルダ、そのままなだめておいて。

 このままだと話が進まないから。


「……で、素性はだいたいわかった。あの城も先史文明の超ハイテクな遺産なんでしょ?」


「肯定。必要とあらば情報を開示する」


「そこはまぁ、追々かみ砕いて教えてよ」


「了承。引き続き質問を受け付ける」


「じゃあ、大事な大事な二つの質問。あなたは何の目的でここに来たのか。そして……、私にこの街を出ていけってのはどういうことなのか」


「えぇっ!?」


「ネリィさんが、この街を……?」


 みんなそれぞれ、とってもおどろいた表情を浮かべる。

 まぁ当然だよね。

 私だってビックリだもん。


「目的は既に開示済み。あなたが口にした通り」


「そうだね、私を街から追い出すのが目的、と。そんで、わざわざ私を追い出すなんて何が目的で?」


「理由。ネリィ・ブランケットの滞在により、邪竜イヴァラング襲来の可能性98%。襲来によりグラスポート地方が灰燼と化す確率、100%。故に退去を要求する」




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