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50/93

50  通常営業再開です




「ぷあぁぁぁ~……。これが温泉……、とろけるのじゃぁぁ……」


 温泉につかってとろけた表情のプロム。

 さっきまで『ワシには入浴なぞ不要じゃ』とか言ってたくせに、ハンバーグといい即堕ちしすぎでしょ、この幼女。


「あふぅ……、疲れが飛んでいくのだぁ……」


「一日ぶりのお風呂、気持ちいいですぅ……」


「うへへへぇ……、美少女たちの裸ぁ……」


 みんなもそれぞれにとろけてるね。

 アイナだけとろけ方が違うけども。


 食事が終わったあと、お姫様は一足先に温泉に入ってからご就寝。

 私たち宿メンバーで後片付けをしてから、全員で温泉に入ってるとこだ。

 プロムはメンバーじゃないけど。



 お風呂に入ってる時間は、恵まれていなきゃならない。

 心の底からリラックスできて、不安なんか感じなくって、いくらでもアイデアが湧いてくるような……。

 だから難しい話や、暗くなるような話はしたくないんだ。


 というわけで、お風呂から上がったあとにプロムへの質問を開始。

 場所はもちろんミーティングルーム。


「結局さ、術式のバグ――だっけ。アレの原因はわかんないまま?」


「むぅ、さっぱりわからんのじゃ……。経年による不具合、という可能性もあり得るが」


「あの時出てきたベヒモスも、バグってヤツのせいだったのかな……」


「可能性は高いのう。本来、浅い階層に強力なモンスターは生まれんはずじゃ」


 だとしても、あの日以来階層に不釣り合いなモンスターが出たり、ましてやモンスターが出てきたりなんて事件は起こってないんだよな……。

 私がこの村に来た日、あの時だけたまたまバグの影響が出た。

 そんな偶然あるんだろうか。


「まぁ、詳しいことは戻って調べなおしてからじゃの。何かわかったら教えてやろう」


「戻るのだ? もう会えないのだ?」


「案ずるな、いつでも来られるのじゃ。それに、メシのうまさと風呂の気持ちよさを知ってしまったからの。呼ばれなくとも勝手に来てやるわ」


 不安そうに問いかけるミアに、プロムは言い聞かせるみたいに答えた。

 ミアの方が子どもみたいに見えるな。

 ……いや、そもそもプロム何万倍も年上なんだっけ。


「今度来るときは、また違う料理を馳走ちそうしてくれ。楽しみにしてるのじゃ」


「……任せるのだ! 二度と忘れられない味を喰らわせてやろう!」


「うむ。では皆の者、また会おうぞ!」


 軽く手をふるプロムの頭上に発生したワープゲート。

 それが下へとスライドして、プロムの頭からつま先までを飲み込んだ。

 ゲートが消えると、そこにはもう誰もいない。


「……元の世界に、帰っちゃったんだねぇ」


「なんだか名残惜しいですね」


「別にさみしくなんかないのだ。また来ると言っていたであろう、すぐに会えるのだ」


「……ミア、どこ行くの?」


 さっと背中をむけて、ドアの方へと歩いていくミアの背中を思わず呼び止める。


「明日の仕込みをやっておく。それから、ダンジョンで手に入れた食材も選別せねば。と、いうわけでミアは忙しいのだ!」


 そう言って部屋を出ていくミア。

 声は元気そう、態度もふてぶてしい。

 でも、背中にさみしいって書いてあるよ。

 あの二人、気が合いそうだからな。



 〇〇〇



 翌日、お姫様率いる『薔薇騎士団ローゼンシュバリエ』は王都に戻ることになった。

 今回の件、どう報告されるのやら。


「お世話になりましたわ、アイナさん。食事はおいしくお風呂も素晴らしい、言うことのない宿でしたわ」


「えへへぇ……、照れちゃいますよぉ」


「ミアの料理が王族にも認められたのだぁ……」


 二人とも感激してるな。

 アイナは王族のこと尊敬してるから当然か。

 ミアの方は、料理をほめられたことそのものに感激してるっぽいけども。


「サクヤ、ご苦労。今日をもって契約終了ですわ。報酬をお受け取りなさい」


 姫様の言葉を待って、騎士の一人がサクヤにごっそり貨幣が入ってそうな革袋を渡す。

 いったいいくら入ってるんだろ。


「あなた、これからどうなさるの?」


「もちろんここで働きますよ! お姉さまのそばで、いっしょに!」


「あ、ちょっとサクヤ……。みんな見てるから……」


 腕に抱きつかれて照れるガルダ。

 なにかとは言わないけど、もう秒読みですね。


「……最後にネリィさん。わたくしの下に来てくださらなかったこと、心残りがないわけではありません」


「申し訳ありません……。でも、ここが私の居場所ですから」


「ふふっ、わかっていますわ。ですが、時々お城の方に顔を見せてくださいね?」


「は、はい……、もちろん……」


 ぶっちゃけお城、堅苦しくって苦手だけどさ。


「それでは皆さま方、ごめんあそばせ! おーっほっほっほっほっほ!!」


 最後に姫様は高笑いを残すと、さっそうと馬車の中に飛びこんだ。

 そして来た時と同じように、騎士団に護衛されながら馬車が去っていく。


 ずいぶんと長く感じた、たった四日の滞在期間。

 馬車が来たときは大事件の予感がしたものだけど、思った以上の大事件がいろいろと起こり過ぎだよ……。


 ともあれ、ここから宿は通常営業。

 いそがしくて騒がしい、けれどあったかい日常が、今日からまた始まるんだ。


――――――――――――――――――――


 グラスポートの村


 人口

 79人→103人 +24



 施設


 宿屋 鍛冶屋 食料品店 家畜小屋

 雑貨屋 武具屋 アイテム屋 魔石店

 冒険者ギルド出張所



 観光・産業


 ミスティックダンジョン

 コショウの栽培(大規模)

 アウロラドレイクの竜肉(期間限定)




 宿屋『森のみなと亭』


 施設

 本館 宿泊可能人数 100人

 別館 宿泊可能人数 100人

 食堂 60席 温泉・サウナ


 平均宿泊客

 1日に150人


 平均食堂利用者

 日に700人


――――――――――――――――――――




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