47 中枢を目指せ
「よーし、ここはまずミアが突っこむのだ!」
「なんでだよ、普通に私が先陣切るよ」
「うむ、『純魔』のこやつが行くべきじゃろうな」
「むむむ……」
いや、ミアには悪いと思ってるけどさ。
数万匹の最上級モンスターの群れのど真ん中に放り込んだら、さすがにアンタでも死ぬって。
「……ミア、今私は時間を止められない。突入した後、頼りにしてるから」
「……お、おぉ! たんと頼るのだ!」
と、フォローを入れたところで、私は柱の影から飛び出した。
とたん、数万匹の魔物の目がこちらをむく。
「注目浴びちゃってんな……。人気者だね、私。なんつって」
軽口をたたきつつ、魔力を全開に。
奴ら全員の頭上に巨大な氷山を大量に作り出し、一気に叩きつける。
「全員、ブッ潰れろ」
ドガシャアアァァァァァァァァァァッ!!
巨大質量の落下攻撃に、大量の魔物がひしゃげて潰れた。
でも、まだ生き残ってるヤツがいる。
そいつらには砕けて散った大量の氷山のかけらをあやつって、バラバラに斬り刻む。
数万の魔物は、一気に数を減らしていった。
「この分じゃ、道を斬り開くどころか全滅させちゃいそうだね」
「甘い、甘いのじゃ。この程度で終わるならワシ一人でとうに片付けておる」
「え?」
どういうこと?
……とか思った瞬間、魔物たちがどんどん無から発生していく。
なるほど、倒したそばから無限に補充されるわけね。
「じゃが、道を斬り開く役目は果たしたのう。ネコ、行くぞ」
「心得たぁぁぁ!!」
プロメテウスをかついでダッシュしてくるネコ。
他のみんなも後に続いて、城の入り口を目指して走っていく。
先頭を走る私がまず城内へ、それからミアと幼女が続いて、他のみんなは入り口を背に立ち止まった。
「ネリィ、ミア、作戦通りここはアタシらが引き受ける! できるだけ早めに終わらせてくれよな!」
「ミアにまかせるのだ! 皆こそ、一人たりともくたばるでないぞ!」
私としてはミアも心配なんだけど、まぁいっか。
せっかくやる気になってることだし。
「急ぐぞ! 目指すは最上階、制御中枢じゃ!」
『竜の牙』を引き抜いて巨竜へと姿を変えるガルダを背後に、私たち三人は走る。
ミアがかついだ幼女の案内を受けながら。
城の中とは思えないほど広い城の廊下。
ベヒモスが横に二匹並んでも、二本脚で立ち上がってもぜんぜん余裕なほど広い。
てか、今まさに二匹並んでる。
「凍氷刃」
ズバズバズバァ!
そして今まさに、私が遠隔操作する氷の刃でバラバラに斬り刻まれた。
「プロム、中枢ってのはまだ?」
「あと少しじゃ! てかなんじゃ、そのプロムというのは」
「プロメテウスじゃ長いし呼びにくい。だからプロム」
「それいいのだ! ミアもこれからプロムと呼ぶぞ」
「なれなれしいのう……。あとネコ、そろそろ下ろせ。ワシの足の方が早い」
「そうなのか。活躍したいミアとしても、両手が空いてた方が嬉しいのだ!」
ストン、と下ろしたとたん、私たちの速度に余裕でついてくる幼女。
ホントただ者じゃない。
「……む、見えたぞ。あれが制御中枢へのトビラじゃ」
廊下の先に見える大きな両開きのトビラを指さして、プロムが叫ぶ。
でも無事目的地に到着とはならなさそう。
なぜならトビラの前に……、
「……ごっついのがいるね」
「カラの中にたっぷり身がつまってそうなヤツなのだ!」
この世界に来たときにプロムがけしかけてきた、なんとかってゴーレム。
アレが三体並んでるんだ。
さすがに狭そうだな……。
あとミア、ちがう、合ってるけどちがう。
「今度こそ、今度こそミアが料理してやるのだぁぁぁぁっ!!」
これまでのうっぷんを晴らすがごとく、『鬼斬り包丁』を振りかざして突っこんでいくミア。
せっかく両手が空いたことだし、ここは様子見してやろう。
あぶなかったらすぐにフォローで。
「喰らえ、閃斬り!!」
ズドガァァァァッ!!
ゴーレムの胴体に、先制攻撃の横斬りがヒット。
斬れなかったけど、巨体を思いっきり壁に吹っ飛ばす。
ならんでたもう二体のゴーレムも、巻きこまれてブッ飛ばされた。
「続いて、微塵斬り!!」
ガガガガガガガガッ!!
倒れた三体のゴーレムに、これでもかと連撃を浴びせていく。
装甲がはがされて、あちこちから火花が散るほどボロボロになったゴーレムたち。
「そしてトドメの……」
最後に両手でにぎった『鬼斬り包丁』を、右から左へ半円状に動かして力を溜め……、
「半月斬り!!」
ナナメ上に思いっきり斬り上げた。
三体まとめて半分になったゴーレムが、機能停止して崩れ落ちる。
「むふーっ、どうだミア様の実力は! やっと、やーっと見せられたのだ!」
「なかなかやるのう。アスメラルドゴーレムならあの姫も騎士もシノビも軽く倒しておったが、まぁそこそこできるのじゃ」
「…………」
辛辣だな、この幼女。
立ち尽くすミアの肩を、とりあえずポンと叩いておいた。




