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33 オーロラの翼




 ドラゴンとモンスターは違う。

 いっしょくたに語られることが多いけれど、ヤツらは魔石で動くモンスターじゃない、れっきとした生き物だ。

 ただ、その力がただの生き物の範疇はんちゅうを大きく超えているだけ。

 神が作ったただ一つの生き物、だなんて呼ばれているくらい、普通じゃないだけだ。



 グラスポート連山の一つ、その山頂。

 岩場だらけの広場に、さえぎるもののない風が吹きすさぶ。

 夏の終わりだってのに長袖がほしいくらいだ。

 ネリィが来てたら凍死してただろうね、間違いなく。


「お姉さま、準備できました!」


「上出来だ、ご苦労さん」


 サクヤが用意してくれたのは大きなたき火。

 そこにワイバーンの死骸をつるして、こんがりとあぶりはじめる。

 これで焼けた肉のニオイを、吹き抜ける風がはるか遠くまで運んでくれるはずだ。


「これでホントに来ますかね」


「来るさ、それまで待とう。寒くないかい?」


「平気ですっ、たき火がありますし! ……それに」


 ぴとっ。


 サクヤがぴったりとアタシにくっついてきた。


「お姉さまがいるから寒くありません、です」


 人肌に触れてるとあたたかい、ってヤツかね。

 ……鎧着てるから冷たいはずだが、まぁ実際あたたかそうだし、いいか。


 たき火で暖をとりながら、待つこと数時間。


「……来たね」


 空に光のカーテン――オーロラが現れた。

 アタシたちはとっさに離れて戦闘態勢をとる。


「サクヤ、気をつけな。まずは遠距離からの魔砲撃がくるよ。それがアウロラドレイクの基本行動だ」


「お姉さまに気遣ってもらえた! 承知です!」


 サクヤの返事が聞こえた次の瞬間、オーロラから雨のように魔力の光線が降りそそいだ。

 素早くステップして、スキマなく降る光線のわずかなスキマを縫うように回避していく。


 サクヤも同じく……っていうか、アタシより危なげないね。

 今となってはあの子の方がアタシより素早さは上か。

 もっとも、『竜の牙』を抜かない状態では、だけれども。


「お、お姉さま、この攻撃いつまで続くんです!?」


「遠距離からの魔力砲じゃあ仕留められない相手だと、むこうが思い知る時までさ。……そろそろ、だろうね」


 読み通り、言い終わると同時に光線の雨がやむ。

 そしてはるか天空、オーロラの中からヤツが姿を現した。


『キキョエエエェェェェェェェッ!!!』


 甲高い咆哮とともに、山頂へ舞い降りた超巨大なドラゴン。

 ネリィが話に出していたベヒモスよりも、数倍はデカい。


 暗い青色をした蛇みたいに手足のない胴体に、ツノのないつるりとした顔。

 なにより目を引くのが体の左右、首の付け根からしっぽの先まで広がる巨大なつばさ。

 星空が透けて見える極薄の翼膜が虹色に輝いて、まるでオーロラのようだった。


「なるほど、アウロラドレイク……。名前通りのべっぴんさんだねぇ」


「お、お、お姉さまっ!? ああいうのがタイプなんですかぁ!?」


「どうだろうね。相棒に血を吸わせてやりたいとは、思っているよっ!」


 背中に背負った『竜の牙』を手にして、封じられた力を解放。

 刀身から竜の力が流れ込んで、アタシの身体能力が爆発的に上昇する。

 さらに、


竜翼転身(ドラゴウィング)!」


 巨竜転身(ドラゴライズ)の応用で、背中に竜の翼を生成した。

 全身を巨竜に変えるより、この方が小回りが利いてスピードも出るからね。

 これであのデカブツと、空中で互角以上に渡り合える。


「サクヤ、援護よろしく」


「うけたまわりました、お姉さまっ!」


 頼もしい返事を背に、翼を広げて一気に飛び上がる。

 一気に距離をつめ、竜の脳天に剣を振り下ろした……はずが、


 スカっ。


 まったく手ごたえがない。

 目の前に竜の顔面があるってのに、文字通り空気を斬った感触しかしない。


「……そう簡単にはいかないか」


 あたりを見回せば、いつの間にか分裂したアウロラドレイクが数十匹、アタシのまわりを取り囲んでいた。

 ……いや、これは分裂じゃない。

 おそらく光の屈折を利用した魔力製の虚像だ。


 つまりハリボテ、攻撃してくるわけじゃない。

 恐れることはなにもないね。


「さぁて、どいつが本物だい……?」


 一匹一匹つぶして回ればすぐにわかるか。

 まずは手近なヤツから――、


 キュイイィィィィィィ……ッ!


「っ!」


 目の前にいるドレイクの幻が翼を広げて、魔力光が集まっていく。

 他の幻も同じく。


「クソ、どういう仕組みだ……!」


 ビシュッビシュッビシュン!


 全方向から撃たれる光線を飛びまわって回避。

 竜の姿はたしかに幻、でもこの攻撃は幻じゃない。

 虚像が攻撃してくるだって?

 なんかの冗談か……!


 ……いや、タネはあの翼膜だ。

 『竜の牙』で強化された目でよく見れば、攻撃のたびに翼膜がうごめいている。


 おそらくはあのオーロラみたいな薄い翼膜で光を屈折、圧縮して操っているんだ。

 光を屈折させるだけなら、幻の翼膜だって同じことができるはず。


(なんて、タネが割れても本体を見つけないと意味ないか……)


 さて、どうするかね……。

 ダメージ覚悟で光線の中突っ切って、かたっぱしから潰して回るしかないか……!


「お姉さま、本体はコイツですっ!」


 ドガッ!


 幻の中の一体にサクヤが投げたカギ付きロープが絡みつき、フックが深々と突き刺さった。

 ロープはピンと張って、アウロラドレイクがもがき始める。

 見下ろせば、分身の術で十人に増えたサクヤが全員でロープをつかんで抑え込んでいた。


「この竜からだけ、生命エネルギーを感じます!」


「サクヤ、ナイス援護!」


 助かった!

 本体めがけて、刀身に竜の魔力をみなぎらせながら突進。


くだり飛竜っ!!」


 大上段からかかげた渾身の一撃を、脳天に振り下ろした。




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