2.新入隊員歓迎
ー第三討伐大隊会議室ー
厳しい顔つきのアレスチェット大佐と、その向かいに立ち並ぶ三人の新入隊員。
その中にいる一人の少年の先ほどとはうって変わってお手本のような姿勢の立ち姿に、
大佐の右横に同じ様に立っているカルナは少し感心した。
と、いうのも小一時間程前の出来事に原因がある。
小一時間前。
「あれ、カルナ!?」
少年の声は静かな軍基地の廊下ではよく響いた。
もちろん、アレスチェット大佐と副官のカルナにその声は届く。
「……え……?」
ひきつっていたカルナの顔は、自分の方に向かってくる少年を見ると次は顔を青ざめた。
「久し振りだな!」
「ちょっ、チャクル、何でここに……!」
「何でって、ちょっと軍基地の中を見学してた」
「どうした?」と言わんばかりの表情に呆れ帰ったカルナは、
咎めるような口調で言葉を重く吐き出す。
「あのね、この方は大佐よ? 貴方の配属先の!」
その言葉で初めて大佐の方に視線を向ける
「すいませんでした!!」
深く頭を下げ謝罪する少年に大佐は今までの厳しい顔つきとは別の微笑みを見せた
「構わんよ。元気があるのは良いことだ」
少年はほっとしたように顔を上げる。
「少佐、この者が例の少年か?」
「はい、その通りです」
「なるほど、確か名前は……」
「チャクル・エクリートです!」
少年は敬礼の姿勢を見せる
「そ、そうだったな。して少年、説明会の時間まで後少しだが大丈夫なのか?」
「説明会……あ、もうそんな時間!? し、失礼します!」
そういうと少年は、慌てて二人の前から走り去ってしまった。
残された二人は唖然と少年の背中を見つめるしかなかった。
と、いうことがあったのだ。そのせいで余計に立派に見えてしまう。
「それでは、これより新入隊員び向けての説明を始める」
大佐の言葉にカルナは今までの考えを一旦頭の片隅に置いた。
「まずは、新入隊員諸君に歓迎と激励の意を表す」
そういうと大佐は右手を顔まで持ち上げ敬礼をする。
続けて新入隊員三人も同じ様にするが、やはり軍歴の長い大佐の敬礼は見事なものだった。
「よろしい。ではこれから説明に移らせて貰おう」
それから大佐は、任務の時に使う装備、戦場での心得、普段の日程、等々を説明した。
「と、説明はこんなものだが、最後に一つ言いたいことがある」
大佐の顔は忠告をするような表情だった。
「ここに集った者には何かしらの信念があるだろう。自分の為、家族の為、帝国の為……
志があるのは結構なことだが、一つ。忘れてはいけないことがある」
新入隊員の面々は姿勢は崩さずとも理解できないような表情をする。
「軍は組織だ。いわば団体行動をする物達であって必ずしも連携が必要だ。
もし、連携が崩れたらどうなる?」
大佐の質問に新入隊員の中から一人が答えた
「その連携が崩れたことによって他の連携が崩れるでしょう」
「その通り。それがお遊戯の団体行動だったらしょうがないで済む。
が、軍は。この団体行動は戦場でするのだ。一人でも勝手な行動をする者がいれば
間違いなく死ぬ。戦場では一つの死が百万の死を招くこともある。
要するに「英雄思考は持つな」ということだ」
気づけば新入隊員の首筋には汗が垂れていた
「とはいえ君達は選ばれた者だ、同じ職場の者として大いに期待している」
緊張をほぐすためか、大佐は穏やかな笑みを浮かべる
「では、説明会はこれで終わりだ、部屋の方に戻りたまえ」
新入隊員達が会議室から出ていくと、大佐はカルナに話したかけた
「例のチャクルという少年。君の幼馴染みと聞いたが」
「はい、昔からの付き合いです。もともと二人で軍に入るはずだったのですが
、チャクルは学力がイマイチだったので私のほうが早く入隊することになりました」
「なるほど……では……彼は君の左脚のことを知らないのか……」
大佐が躊躇いながら言うと、カルナはうつむいた
「……やはり、言わなければならないのでしょうか……」
カルナは重々しくそういうと軍服の上から左脚の付け根を擦った。
(チャクルはどう想うんだろう……)
葛藤と左脚の鉄鋼の感触が心に渦巻き絡み付く。
はい、数少ないこの小説の読者の方々には心より感謝です。
話は変わって僕の読んでる某幼い女の戦記があるのですが、結構僕の文体はその小説に影響されてますね。
という話をしたかったのです。
と、いうことで今回はこれでお仕舞いです。
また次回でお会いしましょう。そもそもこれを読んでる人なんているのかな? まあ、僕はあくまでも趣味を続けてるのでまあいいでしょう。