9010M列車 調査
私はちょっとした危機感を持っていた。大体、電車の中で勉強。うまく行くはずがない。そう思っていた。
「・・・。」
「フフン。」
息子は得意気。今回もちゃんと前回より点数がいい。1点だけだが記録は更新している。このまま本当に塾やめるって流れになるのだろうか。後2回でそれは決まる。
(ゴールデンウィークの帰り頑張ってはいたけど・・・。そんな独学では進めてほしくはないし・・・。)
うーん。
「次はいつ電車で勉強するつもりなの。」
「土曜日と日曜日。」
両日行くのか・・・。これを聞いたとき、私の腹は決まった。付いてこう・・・と。
土曜日。早い時間から真ちゃんは電車に乗りにいった。恐らくいつもやっているんだろう。券売機に行ったかと思うとさっさと改札の中へと消えていった。私もそれを追って、改札の中へと入る。
(真ちゃんはどっちに。)
辺りを見ると米原方面のホームに消えていく後ろ姿が見えた。
米原ってどこ行くんだろう・・・考えてみれば電車に乗りに行くんだから米原にいっても、京都に行っても関係無いか。
守山から普通電車に乗り込む。私もそれに倣ってその電車に乗った。
(まるで探偵ね・・・。)
内心息子のあとを付けることに多少の楽しみを感じる。
電車が米原に着いても、真ちゃんは降りる気配がない。この先私電車でいったことない。自分の知らない世界に行くことに不安がよぎる。こんな方にまで勉強に来ているなんて・・・。
ようやっと電車を降りた。細長いホームに電車が止まる。これで改札を出るのかなと思ったら反対側に来た電車に乗ってしまった。本当に電車に乗ってるだけなんじゃ。
次に気付いたとき、電車は大阪に来ていた。
(しまっ。真ちゃんは。)
と思ったら真ちゃんは乗り換えたときに座った席にいて、外を眺めていた。湖北から大阪までずっとそこにいたのか。結構長い時間電車に乗りっぱなしではないか。
大阪の次の駅で電車を降りた。私もそれに付いて電車を降りる。今度は東西線の電車に乗り換え。ロングシートに腰かけて器用に勉強している。あの集中力があるなら塾でも・・・。真ちゃんはその電車を終点まで乗り通し、柘植の方へ行く電車に乗った。ずっと追っていてあまり気にしてなかったものの6時間以上の時間がたっていた。
さすがにここまで勉強を続けるとなると眠くなったのか乗ってすぐに眠りについてしまった。手にはちゃんと教科書握ってるんだから勉強してよ。
(でも、ずっと勉強してたし。どのくらい進んでるのかなぁ。)
気になる。
気付かれないように、ゆっくりゆっくり近づき、教科書の下にあるノートを覗き込む。これじゃ見えないか・・・。今度はそっとノートを引き抜き、眺めてみた。普段とは比べ物にならないくらい汚い字だが結構やっているのがわかる。
(こんなに頑張ってるなんて・・・。)
それに感心するし、見直しもした。これは・・・。
「んっ・・・。えっ。」
「あっ。」
息子と目があった。
「何やってるの。ママ。」