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Ico McDonnel's Story -Iraq War-  作者: 青カヴぃな俺
5/7

興味深い質問だ②

目標の建造物に近付くにつれて、目標が発する明かりから暗視装置を外す奴が増えていき、二人も空気を読んで外した。

 イコとヘッセは、再度弾倉と薬室をチェックする。

 因みにイコは前後ろにバックパックを担ぎ、その脇にまだバックを下げていて物凄く太って見える格好だ。

 おかげで長物の銃は構えにくいし、上手く全力で走れない。本当にお荷物状態である。

「ヘッセ、前のバックだけでいいからさ、持って~」

「そしたら、アンタを守り難くなるからヤダ」

「と、いう理由は嘘です」

「いや、真面目な話」

「ちぇ」

 隊員が静かに見張りの兵士を綺麗且つ芸術的に始末してる最中、二人は後方でそんな話をしていた。

 隊員が後ろからイラク兵士の口を左手で塞ぎ、右手に持ったナイフで首を突き刺す。

 首の筋肉である二腹筋と胸鎖乳突筋等の筋に沿って刃を入れたので、然程物理的な抵抗なく確実に頸動脈の達した。

 イラク兵士は驚愕な表情のまま死に、隊員に暗闇へ引き摺られていった。そのまま、処分されて、分からなくなる。

 その光景を見ていた二人は背筋を震わせた。モノみたいにしかも綺麗に人間を屠る光景なんて普段見ないからだ。

「ヘッセも出来る?」

「無理無理、あんなグロい事は…」

「だよね~、なんかもう殺戮兵器?みたいな?」

「まぁ、アタシらは人殺してなんぼの仕事だからね」

「あ、大尉が手招きしてる」

 そして、ウィルス大尉が手招きするので二人は施設入り口までダッシュした。



 正面の見張りは、気が付いたら片付けられていた。

 銃声は鳴らない、警報も鳴らない。それは完璧な仕事であった。

 二人は少し汗を流し、ウィルス大尉の居る場所まで辿り着く。

 正面にはトラックが通れそうな検問用ゲート。

 その近くには監視カメラ等が有ったが既にスプレー等でレンズを潰されてある。

 隊員の1人がゲートの横にある液晶をいじり開けようと努力している。

「どうだ?開くか?」

「ダメです、キーカードを通してもロックされてます。恐らくは当直の連中がカメラの異変に気付いてからロックをかけたモノかと」

「となると、解錠は難しいか…」

 その答えだと言わんばかりに突如として、甲高い警報が鳴り響いた。

 イコ達二人は驚き耳を塞いだ。

「ワァオ!一瞬だけ、マリリン・マンソンのライヴを連想させたよ!」

「マンソンのライヴってこんなうるさい?」

「聖書破ったり、豚の血が降ってくるくらい平穏だった!」

 警報に負けないように叫び会話する。

 その間にウィルス大尉は他の小隊と連絡をとり、装置をいじっていた隊員が叫ぶ。

「隊長!開きません!」

 その声を聴くやいなや、大尉は二人へと命令を下す。

「ゲートに人が入れる位の隙間か穴を作ってくれ!」

 その声にイコとヘッセはお互いを見てから動きだした。

 ヘッセは銃のサスペンダーを肩にかけてゲートに近付き、イコは身体の前にあるバックパックを降ろして開け中に手を突っ込む。

 ヘッセはノックする程度にゲートを叩き、イコに向かって首を横に振る。

 叩く音は鈍く、中身が詰まっているような音だった。

「ゲートは厚くて無理!壁からいくよ」

「ファック!」

 イコは使う予定のない予備のC4とガムテープを彼女に投げて寄越した。

 それをキャッチして、手早くナイフを取り出す。

 どのように貼り付けるか、簡単に目算。

 C4の緑色の包みをナイフで破いて、白い粘土の様な爆薬を軽く伸ばしながら円を描く様に壁に設置。ガムテープで固定。

 イコは自慢の信管の箱を開けて、人差し指サイズの棒をヘッセに投げた。ワイヤーと起爆装置を取り出す。

 ヘッセはゆっくりと信管を設置したC4に挿し込み、彼女からワイヤーの末端を受け取って信管に接続させる。

「イコ!接続完了した!大尉、離れて!あの角まで!隠れて!」

「総員退避、退避だ!」

「早く!キンタマにクレーター状の穴が開くよ!ついでに、木星までブッ飛ぶよ!」

 イコは小隊に叫び、荷物をまとめた。

 ヘッセはワイヤーを伸ばしながら建物の角を曲がり爆風が当たらない様に隠れる。

 伸ばしたワイヤーをマルチツールで切断、起爆スイッチに接続。ヘッセが来るの待った。

「耳を塞いで口を半開にして!」

 イコを先頭に各隊員を屈み壁に引っ付き耳を塞ぐ。

「イコ、ごめん!」

「私の後ろに早く!」

 ヘッセはイコの後ろに割り込み、レンジャー隊員同様にして彼女の肩を叩いた。

「ファイヤ イン ザ ホール!ファイヤ イン ザ ホール!」 

 そう叫んでから、起爆装置の固いボタンを叩く様に押した。

 爆音と振動が彼女達を襲う。

 粉塵が彼女らを隠す位舞った。

 そんなのに気にせず、すぐに隊員達が移動し開けた穴に侵入していく。

 その場には二人だけが残され、彼女達は壁に寄り掛かり腰を降ろした。

「ケホっ!お疲れ様、ヘッセ」

「アンタもね」

 銃声、警報が鳴り響いていた。



「さて、私達も中に行きますか」

「じゃあ、アタシが先頭かな?」

「なんでアンタなのよ」

「ヘッセ?足見てみ?」

 イコはマカロフ拳銃を抜いてからセフティを外しスライドを勢いよく引いた。

 ヘッセの足は震えているのが分かった。

「まぁ、うん。生理現象だよ」

 ヘッセもM4の発射機構をセミに変えてアイアンサイトのノブを回す。

 サイトの口径が大きいモノに変更し、チャージングハンドルを引いた。初弾装填。

「ヘッセは私の背中をいつも守ってればいいよ」

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

 砂煙が収まり、二人は重い腰を上げて自分達が先程作った穴に近付いて死角をイコが安全を確認してから、建物内部に侵入した。

 先頭がイコ、最後尾ヘッセ。

 穴を潜るとすぐ通路に出た。

 灰色の壁と白い床が続き、蛍光灯が銃弾でやられて火花散らす通路だ。

 通路には空薬莢。

 壁には弾痕と血、死体。

 床には血溜まりとそれに浸る何人かの軍服を着たイラク人、人数分のAkライフル。

 そんな、一種のホラー映画みたいな廊下をゆっくりと壁伝いに歩く二人。

 空薬莢が落ちている通路を歩いていると曲がり角に差し掛かった

 ゆっくりと角の向こうを確認しようとしたイコは、人間の息遣いを向こうに感じる。

 簡単なハンドシグナルでヘッセに知らせて、壁に張り付く。

 交代してヘッセが先頭になりM4を構え直して、確認。

「クリア、大丈夫」

「ホント?」

「虫の息の奴が何人か居るだけ」

 通路の両側の壁に張り付く様にコーナーを曲がり進む。

 よく見ると、重傷を負い息をしてるが手当しても助からなさそうなイラク兵士が何人かいた。

 彼等の目は突如現れた彼女らに何かを求める目だった。

「道徳的対応をした方がいいか、それとも非道徳対応か」

「無理、進むよ」

 イコはため息をついてから、跨ぐように進む。

 床に適当に落ちてるAKMを拾い、死んだイラク兵士のチェストリグを剥ぎ取って肩にかける。

 AKMの機関部をチェックしてから、弾倉を交換するイコ。

「やっぱりコイツだけだと不安だわ、借りるよ」

 死んだ兵士に言う

「AKなんてイコ使えるの?」

「少なくともヘッセよりは扱えるよ」

 チャージングハンドルを引いて発射機構をセミに変えた。

「さぁて、ドンドン進もうか」

「イコ、なんかちょっと気分が…」

「大丈夫?」

「なんとかなる」

「あいよ、ゆっくり行こう」

 なるべく足音を立てずにゆっくりと進む二人。

 警報は止んだが、非常事態を知らせる点滅灯はまだ光り銃声は聞こえた。

 そして無線が入る

<ーえるか>

「はい、大尉。なんでしょうか?」

<大方制圧したから、貯蔵庫まで来てくれ>

「了解、すぐに向かいます。だってよ、ヘッセ」

「わかった」

 制圧、という言葉が入る。

 その二文字だけでも心は幾らか楽になった

「まぁ、大方制圧されたから多少は楽になったかな?」

「さて、じゃあ急ごうか」

 二人はまた幾つか分からない曲がり角を曲がる。

 イコはまた、新しい息遣いと足音と聞き慣れない言語を耳にした。

 その言語は、コーナー先から聞こえる。そのことを後ろへ伝え、角で出待ちする。

 銃口が角から出ないようにAKMを構え、足音と会話する声が近づく。

 明らかに英語ではない。

 そのことに、心拍数は上がっていくのがわかる。

 さっき、粗方制圧したという報告が事実であっても、完全なる制圧したということではないと思い知らされる。

 静かに、大きく深呼吸し、安全装置を解除した。

 予想通りに一人、曲がり角から現れる。

 見慣れたくない拳銃であるトカレフTT-33がゆっくり現れると、その拳銃をバレルで叩き落とした。

 現れた敵兵士の胸部を銃口で殴ると共に引き金を引いた。

 7.62mm✕39mm弾は射入口として、星型裂創を作ってはイラク兵の皮膚と大胸筋をいともたやすく貫く。射創管として、ストッピングパワーをそのまま肋骨や大動脈弓に伝えながらも引き裂いてしまう。射出口は楕円形になり、穿透創のミックスミートが吐き出されて、壁にかかる。

 撃たれた兵士は、一瞬何が起きたか分からずに、目を大きく見開き倒れて動かなくなる。

「<アメリカ兵だ!>」

「ファック!」

 イラク兵は小銃を乱射して壁、床、天井に弾痕を創る。しかし、イコ達には損害なし。

 彼等は近くのロッカーを倒したり柱に隠れる

「大尉!敵に接触!ソチラに着くのが遅れます!」

 ヘッセが無線で叫ぶと共に二人が隠れる角柱に弾が抉る様に着弾。破片を飛び散らした。

<なっ!?大丈夫か!?>

「ちょっと遅れますので、お願いします。…イコ、ちょっと応戦してて」

 無言で彼女は頷き、応射する。

 両者の距離は5m近くで、近接戦闘だ。

 AKMのリコイルを感じながら、イコは名案を思いつく。

「ヘッセ!ちょっと交代!」

「はいよ!」

 交代し、ヘッセが応戦する。その間、イコはバックを開ける。

 先程壁に穴を開け、残った半端なC4爆薬を千切り丸める。そして、近くに落ちている壁の破片や空薬莢を入れ込む。

 その間、ヘッセとイラク兵は銃撃戦を展開させる

「バンバンと銃声が近い近い」

「イコ!何してんの!?」

「音響爆弾ないし閃光手榴弾もないから、半端なC4で代用しようと考えてる」

 ヘッセは撃ち尽くしたマガジンを交換し、爆弾を手で丸める彼女を見て笑う

「近いから量を考えてよね」

「わかってるって」

 拳位のちょっと雑な白い粘土の球体に、起爆信管を挿し込みワイヤーを信管に繋げてから先程使った起爆スイッチに接続させた。

「ごめん、銃がジャムった!AK貸して!」

「もう良いよ!選手交代!」

 再度居場所を交代する二人。

 イラク兵は制圧射撃を繰り出し、反撃の隙を与えない様にしてきた。

 壁の中のコンクリート破片が飛び散り、射撃ができない。

「バカスカ撃ちやがって、銃は大丈夫?」

「中に破片が入ったみたい、ちょっと今は使えないかも」

「了解、コレを向こうにプレゼントするから離れて」

「わかった」

 イコは壁に張り付き、一度向こう側を一瞬覗く。

 すると、銃弾が彼女の頭部の辺り高さの場所を襲い更に壁を抉る。

「ワォッ!改めて見ると、イラク兵ってターバン巻いてないんだね!」

「どうでも良いよそんなの!」

「皆が大好きコンポジション爆薬。その味、噛み締めて、その良さをあの世でヤハウェにでも説いてくれ」

 丸めて、色々な破片や空薬莢を中に入れ込んで作った即席爆弾。そいつを左手に持ち、起爆スイッチを右手に持つ。

 ヘッセは先程同様に身体を屈めて耳を両手で塞いでイコを見た。

 イコは指でスリーカウントを示してから、イラク兵達に向かって放り投げる。

 空中で爆発する様に起爆スイッチを壁に叩き付けて起爆。

 爆薬は爆発し、またもや爆音や爆風、衝撃波放ちそれとまた別に地上反射波がイラク兵を襲う。

 避ける術がない彼等は、映画様に吹き飛びはしない。しかし、後ろに突き飛ばされた様に爆風と破片を浴びて倒れた。

 爆風は予想以上に身体を壊す。

 先んじて、まず耳と眼が破壊されるのだ。

 一見、爆風を浴びても身体は無傷そうに見える。しかし、実際は鼓膜破裂や眼底出血又は眼球破裂、皮下出血や肝臓挫減等々が起きる。

 最悪、臓器破裂に肉が剥がされ人間の原形を留めない。

 質が悪い。

 今回は爆風と共に壁の破片や空薬莢が彼等を襲った。

 破片は皮膚に刺さり、一瞬にして肌を真っ赤なクレーターを無数作り出す。

 空薬莢が肌に飛んでいけば、爆風で曲がったその歪な形状のまま突き刺さり、大きな創傷を作り出した。

 爆発してから数秒後にイコ達は銃を構えて煙の中に突っ込む。

 イラク兵は血だらけの身体中に破片が刺さり、見るも無残な姿で痙攣しながら絶命している。

「クリア!ヘッセ、グロいからまだ来ないで!」

「わ、わかった!」

<--ぶか!おい!応答しろ!>

 ヘッセの無線機から音声が入る。

「大丈夫です、これよりソチラに向かいます。アウト」

 念のために、痙攣する輩の胸に弾丸を叩き込んだ。

 撃たれた人間だった肉塊は大きく一度痙攣して、そのまま動かなくなる。

 一通り撃ち殺したら、障害物を簡単に退けて進む。 

 二人は部隊が集結する貯蔵庫に到着した。

 巨大倉庫の様で、幾つも大型爆弾や榴弾等が木箱の中に収まり綺麗に並んでいる。

 そして近くには死体と血液、壁には弾痕があった。

 隊員はやや汚れて埃まみれな二人に驚きの視線を送る。

 彼等も何人か負傷したのか、横になっている者も居た。

 ウィルス大尉も驚愕の視線を送る一人だ。

「二人とも大丈夫か?怪我は…」

「大丈夫に見えませんか?」

「イコ、[頭]が大丈夫かって聞きたいんだよ、きっと」

「なら、大丈夫じゃないですね~」

「「アッハッハッハ!」」

 空元気を装う様に笑う二人。

「で、大尉。大量破壊兵器は何処です?」

「ソチラを優先的に無力化したんで、場所を教えて下さい」

 イコはザックを降ろして中身を床に置き始め、ヘッセも同様にする。

 だが、大尉は真剣な面持ちで二人の質問に答えた。

「なかった」

「「はい?」」

「推測されていた大量破壊兵器は、なかった。どうやら、此処は普通の弾薬を製造する工場の様だ」

 イコは倉庫を見渡して、大きなため息をつく。

「じゃあ、なんですか?無駄骨って奴ですかね?」

「まぁ、そう言われればそうかも知れない。だが、上からは予定通り爆破、破壊しろとの命令だ。よろしく頼む」

「「了解」」



「じゃあ、アタシがスプレーでマークした柱に置いてある爆弾やミサイルを置いて下さい」

 ヘッセは決められた柱に赤いラッカスプレーで印を付けた。

 そこに、隊員達は大型爆弾等を慎重に運ぶ。

 イコは彼等が運んだ爆弾やミサイルの信管部分に余分なC4を巻き付けてはガムテープで固定。

 内側に柱が折れる様にし、自らの重さで建物が崩れる様に爆破の計算をしてある。

 イコが柱に隣接して置いてある1m未満のミサイルの弾頭部にC4の塊をくっ付けていると、後ろから大尉が話し掛けてきた

「イコ特技兵」

「はい?」

「ミサイルなんかに爆薬をつけて、本当に爆発するのかね?」

「そうですね、接触信管ならば弾頭部分に爆薬着ければ大丈夫かなって感じです」

「それは、判別出来るのか?」

彼女はミサイルに手を置いて、彼に振り返る。

「まぁ、大体分かります。例えば、今は私が触ってるのが、…たしか旧ソの、あ~、コンクールス。[此方]のコードネームはAT-5~なんだっけ?」

「私は知らないよーイコ」

「分かる様に頼む」

「旧ソ時代に開発され今も現役の対戦車ミサイルです」

 一部の爆弾、ミサイルは弾頭から解体し起爆しやすいようイコは簡単に改造した。

 改造といっても、信管をちょっといじる程度で改造したらC4の塊をくっ付けてコードを繋ぐ。

 その姿に隊員達は、イコはただの工兵じゃないと察する。

 普通の工兵なら、こんな事はしない。又、解体、改造なんてしない、出来ないからだ。

 マルチツール片手に汗を流す彼女はそんな様変りな視線に気にせず作業を進め、腕時計を見た

「朝方4時ね」

 汗を拭い、倉庫内をパッと見て、爆破予定の柱はあと数本と確認。

「ヘッセ!ソッチはどうよ?」

「あと柱二本位!ちょっと手貸して」

「あいよ」

 残り少ない爆薬の入ったザックを担ぎ上げ、ヘッセが作業する柱まで駆け足で向かう。

 彼女は、柱に置かれたミサイルを指差した。

「コレ、御願い」

「あぁ、コイツは接触信管だから頭に載っければ大丈夫」

「爆薬ある?アタシのも、周りの他の連中のも切れた」

「ちょっと待ってて」

 イコはザックに手を突っ込み中身を漁る。

そして新しい長方形のC4爆を渡した。

「C4はコレで最後、手持ち信管はあと七本」

「サンキュ!あと、お隣さんの柱を御願い」

「わかった」

 イコは爆薬と信管を彼女に渡して、柱に爆薬を設置。ヘッセに背中を向けながら話す

「ヘッセ、やっと終わるね」

「うん、一時はどうなるかと思った」

「だよね」

 遠くで、隊員が指示された場所の設置完了が叫ばれた。

「残り少ないから、隊員は外に退避してて」

 ヘッセがそう言う。

 すると、我先にと貯蔵庫を出ていく隊員達。それを見ながらイコは笑う。

「怖いもの知らずだと思ってた特殊なアメリカカンピーポーも、どうやら金玉をまる焦げにさせるのが恐ろしいらしいね」

「大した玉だこと」

「デカいのはとツラと竿だけだと、萎えるねぇ」

「ハハッ。まぁ、貯蔵庫自体が火薬庫だからね。逃げたくなる気持ちも分からなくもないけどさ」

 ヘッセはミサイルの弾頭に爆薬を置いて、ガムテープで固定し信管を挿した。

 それからコードを信管に繋ぐ。

「そういえば、今さらだけど私達って今回作戦終わったら、変な部隊に編入とかはないよね?」

「何、イコはデルタやレンジャーに興味あるの?」

「ないよ~。噂だとホモが居たり、ベトナムでプレデターみたいにベトコンの耳を首飾りにするような指揮官の下なんか、こっちからお断り」

「ナニソレ」

 他の人間が居ないとなると、雑談しながら作業を進める二人だった。

 予定通りに、バカみたいにデカい柱のある貯蔵庫と製造ラインに爆薬等々が無事に設置完了。

 ヘッセは設置した爆薬を繋ぐコードを一つにまとめて、一本のコードリールに繋ぐ。

そのコードリールに起爆装置を繋げて爆破するのだが、まだ付けない。

「よし、ヘッセ。先に行ってていいよー」

「わかった。お先にー」

「あいよー」

 そして、イコも作業を終えてヘッセに続いて貯蔵庫から出ようとして驚きの光景を目にした。

 死に損ないのイラク兵がヘッセに銃を、AKをヘッセに向けているではないか。

 考えることなく、身体が動く。無防備な彼女を庇う為にイコはに咄嗟射線上へ両手を広げ身体を晒した。

「ヘッセ!」

「えっ?」

 


 その行為に意味があったのか。

 何故、あの時に銃を抜かなかったのか。

 もし、銃で対応していたら、別の未来があったのではないかと彼女は生涯思い続ける。



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