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Ico McDonnel's Story -Iraq War-  作者: 青カヴぃな俺
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第三章 興味深い質問だ

見つかる物が見つからない時、人間は腹を立てることがある。それは、一部の人間だけかもしれないが、一部という概数が数字として現れると幾つかは分からない。

 その一部の人間という括りにイコも入るのだろうとヘッセは思っていた。

「ファック!どこに大量破壊兵器なんかあるんだよ!」

 ウッドランドカモの化学防護服にガスマスクを付けていたイコは、マスクの中でそう愚痴を吐く。

 そんな彼女にヘッセは冷静に呟いた。

「どっかにあるんだよ、イコ」

「この前は革製品の生産工場、今回は便器の工場ときた。実はブッタ大統領は嘘をついて作ってないとか言わないだろうなぁ」

「ブッタじゃなくて、フセインなー。ブッタだったら今頃アジアの黄色い人間と一緒にもうちょい黄色い猿を撃ってるよ、多分ね」

 イコ達の部隊は、CIAから情報提供された地点を中心に、大量破壊兵器の捜索をしていた。

 イコはつまらなそうに、煤まみれの未使用の便器を蹴飛ばして、地面へ倒す。

 便器は倒れて割れ、一部が粉々となる。

 その粉砕された便器の直ぐ近くには、射殺された死体が並べられていた。

 便器の工場は広く、ベルトコンベアやクレーンが備わっており、生産性を重視した作りになっていた。しかし、全ての機械はホコリを被っている。

 電気は通っていおらず、明かりは点かないので隊員は窓を開けたり、装備のライトを照らしたりして有ると言われた大量破壊兵器を探す。

 探索機械からは放射線やそれに準ずる値は検出されず、防護服とマスクを外して良いと指示が出る。

 暑い気候の中で、暑い防護服に蒸れるマスク。

 イコは直ぐにヘルメットを脱いでからマスクを剥がしてしまう。

「んだぁ、クソ暑い中こんな格好させやがって」

「仕方ないよイコ、毛穴から体液噴出させてゴーストバスターズのマシュマロマンみたいに溶けちゃうかもしれないんだし」

「トータル・リコールの最後の空気がなくて圧の関係で身体が膨張するよかマシ」

 ヘッセもマスクを剥いでしまう。

 グチグチ言いながらながらヘルメットを被り直す。

「そもそもなんでアタシらが、こんなことしなきゃいけないんだよ」

「UNSCOM(国際連合大量破壊兵器廃棄特別委員会)とかスパイ連中の下請けみたいなモンだからしゃーない」

 その後、部隊は反攻勢力の遺体を規定通りに処分し、撤収する。



 部隊が基地に帰投し、暫しの休息が与えられる。

 その間、二人は扇風機の回っているテントの中で過ごした。簡易ベッドに横になり、見慣れた天井を眺めて放心状態になっている。

 イコのMDプレイヤーからはビーチボーイズが流れている。

「あー365日こうして過ごしていたい」

「休暇がまだ取れないからそう思うのは仕方ないことだよね」

「オマケにお腹痛い」

「えっ?もうそんな時期?」

「ピル切らしたから、遅らせることが出来なくなっちまったのさ、イコさんは」

「残念、レイプされてくれば、妊娠KOで本国に帰国できるかもね」

「この前、整備班の女がレイプされたからって、アタシらにはないんじゃね?」

「なんでよイコ」

「色気ってもんがないからね」

 その言葉に二人は笑う。

「軍隊に入って色気出すなんて、自殺行為ってことを知らない輩が多すぎるんだよ」

「脳筋でも性欲はデカい塊単位で貯まるからね」

「処女サマなら、金巻き上げられるかもよ?意外とヘッセは人気あるんだから」

 勘弁して、と言いたげに手を振るヘッセ。

「変な虫しか来ないんだから勘弁してって所」

「なるほど、アタシには関係ない話だった」

 イコは天井を見上げながら、煙草を口に咥えた。

「男もいいけど、煙草と酒とペプシが亭主みたいにいつも一緒に居てくれたら、言うことないな」

「一歩間違えると、クズみたいなセリフだねイコ」

「イェーイ!クッズでぇーす。ついでに、バイブも追加しておけば、男なんて要らないわ」

 ハンドジョブの仕草をしてケラケラと笑う。

「最近ヤッてないから、マスかきの仕方を忘れちまったなぁ」

「女がマス掻くところが、竿がないだろうが」

 突如として、一見部外者の様な男性が二人が居るテントへ入ってきた。

「いつから憲兵サマは一般兵士の言語統制まで幅を効かせるようになったん?」

「ポリティカル・コレクトネスもMPの仕事だったかどうかは、俺も記憶がないが?イコ」

 ヘッセは起き上がり、男性を見た。その後ろに見たことがない人間が居る。

「デイビッド、その後ろの方はどちら様で?」

 デイビッドと呼ばれた男性。初老位の白人男性でデザートカモのBDUを着て、肩にはMPの腕章がある。

 彼は、後ろの人間をイコ達に紹介した。

「こちら、デルタフォースのウィルス大尉である。二人に用が有って来られた」

 紹介されたウィルス大尉。茶髪で刈り上げられた頭髪、サングラスをかけて支給された半袖シャツ、腰に上着を巻き付けていた。腰には官給品のM9拳銃がナイロン製ホルスターで吊ってある。

「ウィルス大尉だ。この度は、よろしく頼む」

 イコ達二人は、立ち上がり敬礼するとそれには簡単に敬礼して返す大尉。

「二人には、少し俺たちの作戦を手伝って欲しいんだ。何、難しい任務ではない」

 大尉は、衛生写真一枚だけをイコへと渡す。

 その写真は、ある建物を上空から撮影されたやや不鮮明な写真であった。

「君達が本日の任務で探していた、大量破壊兵器の製造工場、化学兵器工場だな。恐らく有るであろう兵器工場の破壊を手伝って欲しい」

 ヘッセはイコの手にある写真を見て、その建物の構造を仮想であるが簡単に想定すると具申する。

「位置、場所が判明しているなら空爆なり巡航ミサイルの攻撃なりで破壊すればいいのではないのですか?」

 その意見に大尉は、確かにその方が簡単でいいと呟く。

「その意見には、賛成だ。だが、君達も行っただろう?其処に大量破壊兵器が存在していたいう事実を、確かな証拠が写真や何かしらの形で上は欲しいのだ。分かりやすいものでな」

 イラク戦争は、イラク国内の大量破壊兵器の武装解除が大義名分で行われた部分もある。その結果を残せないと、ブッシュ政権にとっては大きな痛手である。開戦に踏み切った大きな要因である大量破壊兵器がなかったとしたら、一体何を調べて、何を根拠に攻め入ったのかと非難される。

 ヘッセの具申通りに、巡航ミサイルでの攻撃は確かに効果的ではあるが、評議会を納得させられるだけの分かりやすい証拠が欲しいのだ。それを国際連合大量破壊兵器廃棄特別委員会は軍部へと依頼する。

その結果がこれだ。

 イコはヘッセから写真を取り、ウィルス大尉へと申し出る。

「大尉殿、作戦に参加及び協力するのは問題ないのですが、この建物を爆破、破壊するにはかなり大量もしくは高威力な爆薬が要ります。又、作戦に従事する隊員全員に可能な限りC4爆薬を、それから携帯電話かデジタル時計とコードリールを5〇〇メートル分、ガムテープと起爆信管をが必要になります」

「あぁ、爆薬に関しては問題ない。航空支援にて破壊予定だ。我々は内部の工場やブツを確認したら重要設備のみの破壊だけに爆薬を使用すれば良い」

 イコ達は驚き顔を見合う。

 つまり、建物を吹き飛ばすだけの爆薬を携行しなくて良いとのことだ。

「多分、それで有れば事足りるハズだ。他のモノは教えて貰えれば揃い次第届けさせる、質問は?」

「サー。ありません」

「イコに同じく」

「明日、深夜に出発する、準備しておけ」

 そう告げて大尉は去っていった。

 その後ろ姿を見ながら、二人は大きなため息をついた。

「マジかよ、スペシャルアメリカンピーポーとご対面したらこれだ。アメリカの方でも会えてお目に掛かるのは数%しか居ないけども、一生の思い出になるな畜生」

「イコ、諦めて準備するよ。特殊部隊連中と一端の工兵が同じ作戦に、しかも裏方ではなく同じ現場に従事できるなんて中々ないんだから、一生の思い出かもね」

「ファック、そんな不吉な思い出はこっちから願い下げだよクソッタレ。何が楽しくて特殊な部隊連中と同行しなきゃなんだよ」

 そう呟きながら渡された白黒な写真を見直した。

 一見、上空からの写真なので建物は真上から四角形の物体にしか見えない。

 二人はそれから、簡単な柱の位置を想定し、効果的に破壊活動を行える為に柱の位置を予測しその位置と予測から一定の爆薬量を換算する。

「C4爆薬を先方に一人頭五本位もって貰えれば有れば大丈夫じゃない?」

「ヘッセ、よく考えてみて。仮にこの左枠のスペースに機械が有った場合、数本足りないし、完全に潰せない。それこそ、発掘大冒険でもされたら最悪再利用される。そう考えた場合、一人頭六本は持って貰えないとキツいだけ」

「けど、建物は自体は後から航空支援で破壊されるらしいからいいんじゃない?」

「まぁ、そうだけどさ。何か、癪に触らない?」

「わからんでもないよ、その気持ちはさ」

 その言葉にイコは目を輝かせて、兵站部へと走っていった。

「ったく、何を考えてるんだが、たまに分からなくなるな、イコに関しては」

 ヘッセは彼女の後ろ姿を見て、笑みを浮かべながら呟く。

 それはまるで、姉妹を見ているような笑みであった。

 そして、作戦決行前の最終準備。夜の八時を回ったころだ。

 イコは支給されているバックパックにコードリールや信管を詰め込みマルチツールをポケットにしまう

 ヘッセはM16のマガジンにローダーで弾丸を込めていた

「イコ、何持ってく?」

「荷物が有り過ぎるから自衛用の拳銃だけにするわ」

「そんなに荷物があるの?」

 ヘッセは四つ目のマガジンに弾を込め始めつつも、イコの方を見た。

 イコもM9のマガジンに9mmルガーを込め始めるが、荷物が多すぎる。バックパックが2つを肩掛けのバックが一つ。又、ウェストバッグもある。

「まさかとは思うけども…」

「そうだよ、全部爆薬だよ」

 しれっと答えるイコ。それに諦めたように首を小さく振るヘッセ。

 暫く、弾を込める作業音だけが、響いた。

 裸電球に虫が飛び回り、外はそこそこ静かだった。

「今更だけどさ、ヘッセ」

「ん?」

「凄い事になっちゃったね」

「そうだね」

 ヘッセはマガジンを手のひらで叩いて中の弾を揃える。

 実際、揃うか知らない。

「私はさ、ずっと後方で作業してるモンだと思ってたよ」

「アタシも同じ考えだったよ、数日前まで」

「成功するかな?」

「失敗しても、アンタと生きて帰れればなんでも良いよ実際は」

「そう、だよね」

 ヘッセはマガジンを置いて、イコの座るベッドに座り肩を寄せた

「大丈夫だって、な?レンジャーに、それと終始アタシがアンタに付いてる」

「うん」

「大丈夫だよ」

 今更になってヘッセは不安に襲われ始めたのだ。

 だがそれは、イコも同様だ。

「おいおい、変な所で病気になるなぁ~」

「病気?」

「そぅ、臆病って病気」

「イコ、響きが悪いよ~」

「世界屈指のアメリカ軍兵士が金玉縮こませちゃいけないよ。…まぁ、臆病なんてのは、ある意味普通の反応だけどさ」

「処女ビッチだから、金玉ないよ」

 その返しにイコは笑い、お互いに寄り掛かる。

 体温、心拍、呼吸を感じる

 死んだら何も感じないのだ

「イコが居てくれて良かったよ、ホントにさ」

「アンタみたいなクラスの女委員長が居てくれるから、アタシはしっかりしていられるんだよ」

「女委員長って、なによそれ」


 それから、二人は沈黙の中、肩を並べて今生きて感じてるモノを噛み締める様に過ごした。

 数時間後には、命が消える、消えてしまうかもしれない。

 そんな漠然とした不安と恐怖に耐える為に。

 こんな時に、残酷な位早く時間は過ぎていく。

 その時、イコは考えた

[何で私達が選ばれたのだろう]

 彼女はその理由を知る事はない



 すぐに集合時間になってしまい、二人は荷物満載で他の隊員と合流する。

 彼等の手にはゴツい小銃等が握られていて、対して二人は平凡なカスタムなM16に拳銃だけ。

「ウチら滅茶苦茶貧相な装備じゃん、んだよアレ。ヘッセ、ちょっと交換してもらえば?」

「貧相なのは身体ーじゃなくて胸だけで充分だっつーの」

 部隊の隊員は二人をまるでお荷物を見る様にしていた。

 その目つきに、イコもガンを飛ばす。

 微妙な険悪ムードが両者に広がってしまう。

 すると、ウィルス大尉が声を張り上げた

「良いかお前たち!今回は二人、二人だ!二人のお客さんを連れての任務だ!気を引き締めろ!!」

「「「 サーイェッサー! 」」」

「お客さんって」

「ふざけやがって畜生、アタシを見ろ。人間荷物だ」

 そして、部隊と二人はヘリに乗り込んだ。

 ヘリで移動し、山岳地帯へ降下。

 其所から徒歩で二時間移動し工場を襲撃、爆破の流れ。

 一応、航空支援は受けられるが野外の敵勢力限定

 工場内部は実質的に、ウィルス大尉の部隊だけで制圧しなくてはならないし、敵増援が来る前に設置、爆破をしなくてはならない。

 二人はどうなるか分からくて、不安だらけだった。

 第一○六特殊作戦航空連隊第三大隊B中隊のチヌーク(輸送ヘリ)に載せられて夜間飛行をする。

 自衛の為にM134ミニガン等が搭載されており、パイロットが暗視装置を付けて飛行する。

 キャビンの奥、端にイコら二人が座りそれ以外は隊員が居座った

 ヘッセは暇つぶし用のルービック・キューブを取り出して、手のひらで回して暇を潰す。

 右手の平で時計回りに回り、滑る様に左手に流れて同様な動きをする

 イコはヘッセに寄り掛かり寝ていた

 ヘリのエンジン音だけが響き、小さいランプだけで薄暗いキャビンに話し声は聞こえない。

(…よく眠れるよ、この子は)

 玩具をしまい、彼女はイコの頬をつついた

「ぅ~ん」

「全く、寝顔は無駄に可愛いんだから」

「彼女は」

 そんな二人に目の前に座るウィルス大尉は、小さい声で話しかけた

「はい、なんでしょうか?大尉」

「その、彼女は大丈夫なのか?」

 ヘッセはその質問に小さく笑う

「何が大丈夫かは分かりませんが、大丈夫です。この子はちょっとだけ頭が弱いけど、爆弾や爆破の事になれば、爆弾魔の様になりますから」

「フム、なるほど」

「大尉、暇ならなんで私達二人がこんな部隊に今だけ編入されているのか、教えて下さいませんか?」

 ヘッセは興味本位で聞いてみた。真っ当な答えが返ってくるとは思っていない。

 しかし、聞いても悪くはないはずだ。

 その問に彼は、少し俯き気味に答えた。

「まぁ、恥ずかしい話だ。前回の作戦で元工兵の奴が負傷してな、今回作戦に参加するウチの隊に爆薬、爆破に詳しい者が居ない」

「他のスペシャルな隊から借りれば良いじゃないですか」

「面子だよ面子。[工兵が居ないから、ちょっと誰か助けてよ]なんて言ってみろ、株価がた落ちの面子丸つぶれだ」

「なるほど」

「『なんだお前らはそんな事も出来ないのか?それでも玉付いてるのか?』なんて言われてみろ、結構心にくるぜ?で、知り合いから内緒で爆薬に詳しい奴を教えてもらって、お二人さんが此処にいる訳だ」

「なるほど、肩書が立派だと、無駄に大変ですね」

「まぁな」

 それ以降会話がなくなった。

(…下らない理由で此処に居るのか)

 それからヘッセもイコ同様に寝る事にした。

 眠れるかどうかは分からないが、瞳を閉じてイコ寄り掛かる様にした。



「降下ポイントへ到着、これより降下を開始する」

 部隊と二人は降下ポイントに予定通り降下して、作戦が本格的に開始された。

 月明かりしかない暗い山岳地帯。

 何処かの山の頂上で降ろされてヘリコプターから降り次第防御体形をとるレンジャー部隊。

 ヘリコプターは部隊全員が降下次第離脱し、辺りの安全が確認されると体形を維持したまま何人かが体形の中央へ集合した。

 イコもヘッセも自前の銃を構え、[フリ]だけする。

 隊員の何人かが地図とにらめっこして現在位置と進行方向を確認。

 その最中に、他の隊員は既に終わっている移動準備を二人を始めた。

 イコは寝起きで、尚且重い荷物を担ぐとフラつき木に寄り掛かる。

「っとっとっと」

「ほら、しっかりしてよ。イコ」

「う~ん」

 拳銃のスライドを少し引き、薬室内を確認してから単眼式暗視装置を装着する。

 ヘッセも同様に暗視装置を付け、隊員は最新の暗視装置が既にヘルメットについていた。

「ねぇ、ヘッセ」

「何?」

「やっぱり支給されるモノが違うと、格の違いを思い知らされるねぇ?」

 イコは暗視装置を微調整しながら話す。

「まぁ、いいんじゃない?別にそんな直接戦闘に参加しないし」

「てか、暗視装置なんて普段着けないから見辛いんですけども、コレどうすれば集光すんの?これだからハイテク機器はローテク人間には辛いんだよ」

「MDはハイテク機器じゃないのかよ」

「あれは、CDの小型化だから」

 片眼だけがグリーンな視界に慣れないし、普段彼女らは夜の作戦には参加しないし参加した事がなかった。

「銃に暗視機能付の光学照準器つければ良かったわ」

「あぁ、湾岸戦争時代にもその手の照準器が有ったんだよね」

 イコはバックパックを担ぎ直し、ヘッセもバンダナをしっかり締めた。

 それから、全員の無線を確認してから一列に体形を組む。

「これより、降下ポイントから移動」

 ウィルス大尉は本部に連絡を入れて、部隊は移動を開始する




 山を部隊は黙々と進む。

 雑草や砂利を踏む音と荒い息遣いだけが聞こえる。

 小休止を何回か繰り返して、部隊は目標建造物が見える地点まで辿り着いた。

 二人は着くと同時に静かに荷物を降ろして勝手に休息をとる。

 何名かの隊員には白い目で見られたが、気にしない。

 そして、ウィルス大尉が指示を出しているが二人はそれも気にしない。

「カールとボブがポイントA、ルイスとマードックはポイントB…いやCだ。狙撃支援を頼む。第二小隊はが西口、第三が東口、第一が正門だ」

「大尉、お客様はどうしますか?」

「俺と同じ第1小隊で面倒を見る。戦闘中は俺達のケツを守らせておけば良い」

「ラジャー」

 ウィルス大尉は双眼鏡で兵器工場を見た

 建物自体は四角いモノで、煙突が幾つもあり、建物の周りには有刺鉄線やバリケード、見張り台等がある

 数少ないサーチライトが宛もなく動いていた

 イコとヘッセも自前の双眼鏡を交代しながら目標建造物を見た

「ヘッセ、デカくない?」

「アタシはデカくない」

「違うって、おっぱいじゃんくて、ケツの話」

「」

「分かってるよ、冗談だよ。ごめん」

「もう」

 イコは双眼鏡をヘッセに渡した。

「爆薬が足りない場合は、中の大量破壊兵器にでも接続して柱を破壊すれば良いよね」

「そぉだね、下の階を中心に設置、爆破すれば上の階は重さで降ってくる。それより、ワイヤーと信管多めに持ってきた?」

 ヘッセは双眼鏡から目を離してイコを見ると、彼女は小さい長方形で緑色の外装がポリマーの箱を取り出した。信管の収容ボックスだ。その中身を一つ摘んで、ゆっくり引き抜く。

「ジャジャーン!レーザー起爆型雷管を持参しました」

「段発可能?」

「可能だよ?じゃなきゃ自腹で買わないよ」

「ソレ、自腹…というか私物かよ」

「軍用より信頼性抜群だからね」

 イコは、うっとりとした目で信管を眺める。

 ヘッセはその姿に苦笑い。

「スラッパー起爆式雷管の発展。もぅ素敵だよね」

「へぇ、スラッパーの発展なんだソレ」

「うん、スラッパー大好きだから」

 信管やら雷管の話をしていると、ウィルス大尉が真剣な面持ちで二人に近付いてきた。

「静かにしてくれ、これより襲撃するぞ」

 ヘッセは肩を竦めた。

 イコは急いで信管を箱へしまい、バックへ入れる

「前半戦、二人は俺の第1小隊について来て、ケツを守ってくれれば良い。後半戦は二人の独壇場だ。良いかな?」

「「はい」」

静かに返事をし、各小隊は移動を開始した。



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