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Tsurune  作者: 初瀬川 航
2/2

始まりの弦音

できるだけ話を進めていきたいと思います。

戦闘はまだ入らないかもしれないです。

カーテンの隙間から眩い朝日が差し込む。

微睡みのなかで時計に目をやり時刻を確認する。

(.....いつも通りだ..)

寝ぼけた頭でそう考えながらもベッドから起き上がり朝食をとるべく一階へと向かう。そして、いつものように茶髪を束ねポニーテールにして学校へ行く準備を済ませる。

そう、弓士となってからもこの生活のリズムは変化していない。

「...いってきます。」

「いってらっしゃい、凛」

わざわざ名前まで呼ばなくても、とはたまに考えるがそれが母らしいというか、日常の一部となっていた。そう考えながらも「霜月」の二文字が書かれた表札の横を通り抜ける。

そう、私は霜月凛、式神と共に戦う弓士の一人、そして何より黒川玲の共闘者であり親友である。

あるときを起点に共に戦うようになった訳であるが共に戦う内にお互いをより深く知り今では一番の友達となった。一方の玲がどう考えているかは定かではないが....。

そんなことを考えているといつも通り待ち合わせ場所に玲が姿を現す。

「おはよう、玲」

「おはようごさいます、凛」

流石に慣れては来たもののやはり同級生ましてや親友に敬語を使われるのは違和感があると思ってしまう。誰にでも丁寧に接するのは彼女の美点であり性格であるため変えられるとは思ってもいないし変えようとは思わない。でも、だからこそ遇に、

「玲って誰にでも敬語使ったりしてて本当に誰にでも丁寧に接するよね。」

とさりげなくアピールしてみても、

「そうですか?」と気づいているような気づいていないような感じで笑みを返されてしまう。

まぁ、美点ではあるのだから否定はしないが...

「凛?」

「どうかした?」

「考え事でも?」

その癖して玲は勘が鋭い。本当に玲はずるい。

「なんでもないけど、私たち以外の弓士を見つけるっていってもどうするの?」

「運良く見つかるとは思えないですし...」

やはり、お互い良案はないようだ。

そうこうしているうちに学校へと到着し、「2-1」と書かれた教室へと向かう。クラスは偶然にも同じで玲の右斜め後ろが私の席だ。

担任がやってきてHRが始まる。

「今日は急遽全校集会を、行うことになりました。突然ですが大事な話があるので遅れないように。」

何のことだろうと教室が少しばかりざわめく。

それは凛と玲も例外ではなかった。




「昨日の戦闘見られたかな...」

「たぶん大丈夫でしょう....」

集会への移動中の二人が気にしているのは彼女たちが昨日行った「怨霊」との戦闘。

一般に弓士の戦闘は禁止されていない、というよりはむしろ「怨霊」を退けなければならない。

ただ....。

二人の弓士は一抹の不安を抱えたまま全校集会を迎えることになったのは言うまでもなかった。

(そして、その予感は半ば的中する訳ではあるが....)




「本日皆さんにお話しするのは.....」

壇上の校長が静かに語り始める。緊張している生徒、困惑している生徒、不安気な生徒様々であった。というのは校長が神妙な面持ちで静かに話し始めることは極めて稀だからである。

「学校に起きた異変、そして、弓士についてです。」この言葉に驚く生徒たち。それを察知した校長が話を続ける。

「ひとまず落ち着いて最後まで聞いてください。弓士と聞いて驚いたり不安になったりする気持ちは分からなくはないですから。とりあえず本題へと入ります。今朝のことですが校舎の壁に呪文と思しきものが刻まれていました。」

誰かのいたずらではないのかとざわめく生徒と職員。

「そして、昨晩ですが弓士と怨霊との戦闘を目撃しました。」

(つまり...)生徒、職員に不安が走る。

「怨霊による被害に逢う可能性が非常に高くなってきたということです。そこで弓士である生徒には後程名乗り出てほしいということが一番伝えたかったことです。怨霊による被害を防ぐことのできる可能性がある弓士の生徒にはこちらからも補助、支援をしたいと思っています。だからこそ、そうである生徒は名乗り出るようお願いします。」そういうと校長は壇を下り集会はお開きとなった。



「どうする、玲?」「どうするって言われましても...」あの言葉にどうするか完全に迷ってしまった二人。今は昼休みの真っ只中昼食を食べながら考えるもやはり決めることができない。

そんなところへスピーカーから放送が流れてくる、校長からだ。内容を要約すると大事な話があるから弓道部は放課後校長室に集まるようにということであった。

「とりあえず行くしかないですね。」

「今は考えても仕方がないからね。」

二人は校長の話次第で答えを決めることにしたのであった。


午後の授業が終わり放課後になると二人は校長室へと向かった。既に他の弓道部員は揃っていた。

今、この弓道部は三年生が既に引退しているため一年生と二年生のみである。また、実力は県下トップクラスのものである。

「今日皆さんをお呼びしたのは....」

校長が口を開く。

「今朝の集会で分かったことがあり、提案があるからです。」一同に緊張が走る。そして、皆が次の言葉を待つ。

「実は私は弓士ではないものの式神を使うことができます。そして今日の集会でそれを使って皆さんを「視」させていただきました。」

何とも言えない空気が辺りに広がる。

「そして、私の予想通り弓道部の皆さんは弓士の適正がある、もしくは弓士であるということが分かりました。」

ある程度納得している二年生と納得のいっていない一年生。その表情を見て話を続ける、

「皆さんは気づいていないかもしれませんが皆さんが弓道部にいるというのは何かしら「弓」に導かれているからです。まだ納得できない人もいるとは思いますが人は流れ、そして運命の下にある訳ですから何も不思議なことではありません。」

そう言われてみて全員にどこか府に落ちるところがあったのだろう、次第に校長の話へと引き込まれていく弓道部員。

「そこで、弓士として戦うか否かを問いたい訳です。」

そんなことを即決できる訳がないという空気が流れる。何しろ弓士は崇められると共に畏れられてきた存在であるのだから。弓士は神をも行使できる可能性を持っている、八百万の神を信仰してきた日本人にとって弓士は異端であり禁忌にほど近いものであったためだ。そして、素質があるといえ、それを放棄しようとしてきた者も何人も存在した。その後は伝えられていないが。

「言い忘れていましたが、皆さんは実質一択しかできません。これは脅しではありません。弓に導かれた以上たぶんこの運命(さだめ)には抗えないでしょうから。....もちろん私だってこんなことをあなた方に言いたい訳ではありません。ただ、これだけは知っておいていただかないと校長としてではなく気が済なまい...」

何とも歯切れが悪く、また少し苦い表情をしていた校長であったがやはりこちらの不安は収まらない。

「話はこれで以上でしょうか?」

少し苛立ったようにも、下級生を心配するようにも聞こえる口調で部長が校長に尋ねる。

「最後に言わせて下さい。皆さんに選択の自由は与えます。そのうえで弓士として戦ってもいいという生徒には集会で話した通り全力でサポートさせてもらいます。」

「今から話し合いをして決定してもいいですか?今日中には答えを出します。」

「もちろんだよ。答えが出るまで待っている。」

部長のお陰でどうにかその場での決断を逃れた部員たちは話し合うべく道場へと向かう。

その途中で玲と凛の目が合う。お互い少しばかり困惑の色が目に伺えた。他の弓士を早く見つけたいと切に願っていた二人ではあったが今回は話が違ったようであった。望んで弓士として共に戦ってくれる人が何人いるのかという不安が、そして、ついに始まってしまうのかという予感にも近いものが二人の間を流れていた。

道場へと向かう際に見えた空は美しくも妖しげに紅に染まっていた。


ーそう、さいは投げられた。もう、逃げることはできない、だからこそやり遂げて見せる、この弓、弦音に誓ってもー

書いてみると思ったよりも話が進まなかったので少し焦ってきました(^_^;)

次回で軽く戦闘に入れるように書いていきます。

焦りすぎずゆっくりしすぎずで書いていきます。

次回も頑張るので宜しくお願いします。


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