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生き残るための方策 運命の“赤い”糸

 それなりに時間は経過したはずだが、今だに悲鳴や奇声が止まない。


「ひぃいいいいいやああああ」「あなたが死んだら誰の背中を追えばいいんですか!」

「ふっふふ、文子知ってるわ。こういう展開。

 周りのクズ共の血を浴びた文子は呪われた美魔女になるの。

 そして会社のクズ共を殺すも、呪いで死にかけちゃう。

 けれど、そこで呪いを解く唇を持った年収10億のイケメンに――」

       「ふがふががあああがが」

 

 最後のは奇声じゃなく入れ歯が外れた爺さんの声か。

 あの女が現れたときは一瞬静かになったんだけどな、と言っても局地的か。


「はぁ」


 こういう声を聞くと嫌になってくるな、仕方ないとは思うが。


「こうも酷ければな」

 

 歩きながら車内を見回した。

 車内の至る所に、生首らしきものと首なしの体が掃いて捨てるほどある。

 暗いおかけで直視せずに済むが、血の匂いはどんどんと酷くなっていく。慣れるなんてことはないだろう。

 こんな酷い環境で冷静な奴は逆におかしいか。


「ふう」


 落ちてたスマホの画面を片っ端から見たが、どれも同じ内容だったな。

 後は生きている人に話を聞くだけだ。まともに話が聞けそうな奴はいるかな。


「うーん」


 あの女ほど狂ったやつはいなさそうだが、皆どこかまともじゃなさそうだ。

 周囲にいるのは、ぼそぼそ呟いてる女に、目が濁ってるおっさん。それと目がギラギラとした大学生っぽい男。

 比較的まともそうなのは、子連れの母親かな。

 子供がおとうさん、おとうさん言ってるのは気になるが……他に候補もいないしな。

 



「私達これからどうなるんだろう、ユミも死んで……」

「ダイジョウブ! カレンはあたしが守るから。

 それにしても許せない! ユミがナニしたっての」


 俺の意識を目覚めさせたあの声が近くから聞こえた。

 連結部分の近くに立っているあの二人か。制服らしきものを着ているし中学生か高校生だろうな。

 普段なら見慣れた光景だが、暗く血に満ち溢れた車内ではどこかミスマッチだ。

 

 会話の内容からして頭は逝かれてなさそうだし、あの子達でいいか。

 子連れの方よりも話しかけやすそうだ。

 少し歩き彼女達に近づいたところで、


「ちょっといいかい?」


 女子と話すとき用の高い声を出す。

 こんな状況下でも俺は俺らしい。


「は、はい」


 声を掛けた後に気付いた。

 俺が可愛いと思ってチラチラ見てた黒髪ショートカットの子だ。

 暗闇の中でもわかる銀色のヘアアクセサリが大人っぽさを演出している。

 可愛いと思った子の声だから起きた、ってことはないよな。たまたまだろう。

 

 隣にいるのは光宙が可愛いと言った茶髪の巨乳ちゃんか。

 もう1人は……死んでしまったらしい。


「チョット! カレンに何かする気!?」


 巨乳ちゃんはショートカットの子――カレンを守るかのように、身を乗り出してきた。

 体を前につき出してきたせいで、胸が強調されていた。制服越しだというのに胸の形がわかるって相当だぞ。

 内心でくだらない事を考えながら、俺は冷静に応えた。


「違うんだ。生きている人に話を聞きたくて」

「そういって乱暴する気でしょ!?」


 俺は一歩後ずさりながら、違う、と否定した。

 こんな状況じゃ警戒されても仕方ないか。

 

 別の人に話を聞くべきか迷っていたところで、


「ハルちゃん、この人困ってるみたいだよ。話、聞いてあげよ」

「で、でも男だよ? ケモノなんだよ!?」


 助け舟があった。

 俺の見る目に間違いはないな。

 というかこのハルって子、随分と男に対する偏見があるな。

 見た目はビッチっぽいのに。


「大丈夫だよ、そんなに怖そうな人には見えないもん」

「そう……? 胡散臭い笑顔浮かべてない?

 カレンがいいっていうなら文句ないケド」


 そうだ、怖い人じゃないぞ。

 胡散臭い笑顔に関しては否定しないけど。

 女の子にモテたくて笑顔の練習をしたせいだろうか。下心が顔に出てるんだろうな。

 これでも受けはいいんだが、ハルって子には見抜かれたらしい。


「じゃあ、いくつか聞かせてもらっていいか?

 と、その前に自己紹介させてもらおう。

 鈴木蒼汰、松律(しょうりつ)高校の三年生だ。

 蒼汰(そうた)って呼んでくれ。

 夏期講習の帰り道だったんだけど、こんなことに巻き込まれた」


 俺は顔を渋めながら、簡単に自己紹介をした。

 ショートカットの彼女も頭を下げたあと、自己紹介を始めた。


「蒼汰君ですね。よろしくお願いします。

 私の名前は市ノ瀬(いちのせ) 夏恋かれんです。呼び方はなんでもいいですよ。

 高校は伊月花(いつきはな)という所で、同学年です」


「よろしく頼む。夏恋さん」


 伊月花、聞いたことあるな。確か女子高だった気がする。金持ちの子女が集まるとかなんとか。

 光宙が逆玉狙ってナンパいかね!? とか言ってたな。

 制服もどこか高級感がある。その割にスカートは短めだが。


「学校で部活動をしたあと、3人でショッピングをした帰り道だったのですが」


 そこで彼女は一度言葉を止めた。

 俺は彼女の瞳に溜まった涙を見つめながら、続きを待った。


「1人は、死んでしまって……ううっ」 


 自らの体を抱き寄せながら、か細い声でそう言った。

 俯かせた顔からは涙が溢れ出していた、可哀想だとは思う。


「俺も友達を亡くした。気持ちはわかるよ」

 

 首をゆっくりと縦に振りながら、優しい声で同調した。


「アンタも友達を……さっきはごめんね。酷いこと言って。

 カレンに何かあったらと思うとどうしても」


 ハルという子は俺の方を向いてしっかりと頭を下げた。

 カールされた髪が床につきそうで危なっかしい。

 見た目と違って礼儀正しいな。


「気にしなくていい。俺が悪い人間という可能性もあった。

 君の態度は間違っていない」


「あんがと。何かアンタって大人っぽいね。っと、あたしも自己紹介しないとね。

 あたしの名前は香本こうもと 晴美はるみ


 警戒心は薄れたらしい。

 軽く笑顔を浮かべながら彼女は言った。

 

「香本って呼んで。ユミとカレンとは中学からの友達だったの。

 で、あたしからも聞きたいことがあるんだけど」

「なんだい、香本さん。俺で答えられることなら」


 両腕を少し広げながら、彼女の質問に備えた。


「こんなことをした犯人の手掛かりを知ってたりしない?」


 香本さんは右手を力強く握り締めながら、怒りの声を出した。

 彼女も友人が死んで辛いのだろう。

 夏恋さんと違ってその辛さを犯人にぶつけているようだが。


「残念ながら。俺もいきなり巻き込まれてね」

「……そうだよね。ゴメン、先に質問しちゃって。

 どうしても犯人を許せなくて」


 下を向きながら唇を噛み締めていた。

 仲が良かったんだろうな、香本さん達3人組は。

 俺と光宙みたいに。


「気にしなくていいさ。俺も許せないのは同じだ」


 だが、と思う。

 そもそも犯人なんているのだろうか? こんな現象、人が引き起こせるとは思えない。

 スマホに表示されてるハイを押したら死ぬのはまだいい。だが、どうやって殺してる。

 刃物が出てきた形跡もないし、漫画でよくある糸を使った殺人ということもないだろう。

 殺し方が全くもってわからない。人にできる殺し方なのか? まだスマホに潜む悪魔が殺したと言われた方が納得できる。

 

「ふっ」


 馬鹿なことを考えてるな。

 悪魔や天使なんて存在しない。つまり人が引き起こした事件にほかならないだろう。

 どうやって殺してるのかは置いておくとして……。

 なぜこんな訳のわからないことをした? 動機はなんだ? 

 何かしらの理由があるはずだが……。


「……蒼汰君、大丈夫?」

「ん、あっああ大丈夫だ、すまない。考え事をしていた」


 夏恋さんは心配そうな表情を浮かべながら、俺の顔を見ていた。


「ならよかった」


 ほっとひと息付きながら、彼女は優しい笑みを浮かべた。

 ……なんだかこの笑顔を見ると癒されるな。


「それで質問って何かな?」

「それなんだが2人共もうスマホに表示されているハイは押した?」


 2人は同じ内容の返事をした。

 それならと、2人にスマホを出してもらい、見せてもらった


「生存、か」


 画面には、


 『   生存   』    55


 と書かれていた。

 背景は生を感じさせる白と金色を基調としていた。癪に障ることに天使まで映っている。

 死んだ人の画面とは随分と違う。あちらはまさしく死を意識したデザインだった。


「アンタはもしかして、まだ?」


 香本さんは目を細めながら重々しく言った。


「ああ」


 俺は画面を見せる。

 そこには最初と変わらず、『ゲームヲハジメマスカ?』という文字と『ハイ』が2つ描かれていた。

 数字だけは100から55へと変わっていた。


「で、ここから先が聞きたいことなんだ。よく思い出してくれ」


 俺は二人の顔を見たあと、こう尋ねた。

 右と左、どっちのハイを押した? と―――― 

 

 

 

 


 

 

お読み頂きありがとうございます。

作者は実はホラー苦手です……

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