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スマホ × 電車=デス・ゲーム  作者: ネームレス・サマー
悪夢の中で、彼は適応する
11/27

あなたを助けるメリット、ありますか?

気づきました。

ホラーなのに昼更新が多いという事実に……!

「ん?」


 ひとしきり笑ったあとに気づいた。

 Round 1? つまりまだ続くのだろうか。


「はぁ」


 喜んで損したな、恥ずかしい奴。

 頭を掻き毟ると髪が手に絡みついた。前々から思っていたが、うっとおしい髪だ。

 もういっそ切ってしまおうか、ちょうどナイフがあることだし。


「……」


 ポケットからナイフを目の前に取り出すと、


「血がこびり付いてやがる」


 まともに使えそうにないな。

 人を刺したりするぐらいなら出来るかもしれないが、髪を切るのは難しいか。

 ……あの女は(どうぞく)結局人を殺したのだろうか。そもそも今はどうしているんだろう。

 紐で縛り付けた後は、あの2人に任せてしまった。


「はっ」


 お優しい夏恋(かれん)さんの事だ。紐を解いて、自由にしてやったに違いない。

 それでもいいさ。こっちに被害が来ない限りはな。

 ナイフをポケットにしまったあと、明るい音楽が永遠と鳴り続けるスマホに目を向ける。



「ふむ」


Round 1

    

Winner   49

1位/49位



 予想通りか。

 1位の横に49位と書かれている。これはプレイヤーの順位を示し、参加者の数が49人だと証明している。


「…………」


 暗い車内を見回すが、確かにそれぐらいの人数だろう。

 そしてWinnerの隣に描かれた49、これは最初の画面から登場していた物と意味合いは同じか。

 100から49、随分と多くの人間が死んでいたらしい。


「……」


 床に転がっている膨大な首なし胴体と生首、それに大量の血。

 それぐらい死んでいてもおかしくはない。

 あまり目に付かない場所にあるせいで、そこまで多くは感じないが。

 床を中心に周囲を見回していたせいで、

 

「気色が悪いな」


 1体の生首と目が合ってしまった。

 死んでいる存在と目が合うというのもどこかおかしいが、そんな感覚を受けた。

 濁った目をしてるくせに、何かを俺に訴えかけてるような気がしてならない。


 “お前も死ね”

 

 そう言っているような気がした。

 訳も分からず理不尽に殺された私と同じように死ね、と言うのか。

 可哀想だとは思うが、お前の迂闊さが自らの死を招いたんだ。

 精々自分の低脳さを呪って成仏しろ。


「ふっ」


 心の中で蔑みの笑みを浮かべながら、馬鹿な首に語りかけた。

 といっても慎重に動いたからといって助かるわけじゃないがな。

 俺がそれを証明している。あの声がなければ俺もお前と同じ哀れで醜い死体さ。


「チッ!」


 あの声の事を思い出していたら、また青白い光が目の前に出現していた。

 これで3度目か、前よりも更に存在感が増している。

 最初見たときは随分と淡い光だったのに、どうしてだろう。

 自分の狂ってる度合いを示している、なんてことはないと思いたい。


「会えて嬉しいよ」


 心にもないことを呟く。

 勘弁してくれ……チラリと光を見た後、俺は視線をスマホへと戻した。

 もうこの光について考えるのはやめよう。これ以上おかしくはなりたくない。


「…………」


 ついさっきまで、明るい音楽(勝者)暗い音楽(敗者)が満ち溢れていた車内。

 だが、いつの間にか殆どの音は消えている。つまらないな。

 生きる人間と死ぬ人間がハッキリとわかって、面白かったんだが。


「まぁいい」


 音が消えたという事は次の画面にいったのだろう。俺もゲームを続けるとするか、右手で画面に触れる。

 すると、Round 2という文字と5秒前の数字が表示された。

 さて、次のゲームも1位になるとするか。




「ミスったな」


Round 2

    

Winner   48

3位/48位


 ワンミスをしたのが大きかったか。

 エミポンの曲なんて普段は聞かないからな。

 まさかバラード系の癖して、サビはあんなに激しい曲調だとは思いもしなかった。


「言い訳だな」

  

 首を床に向けながら、頭を振る。

 というかワンミスで3位ってことはノーミスが2人いるってことか。

 大したもんだな。さっきよりも難易度は高かっただろうに。


「まっ1位じゃなくてもいいか」


 Winnerということは、生き残れるラインにはいるのだろう。

 何人生き残れるのだろうか、最低でも3人は生き残れそうだが。

 そもそもあと何回今のゲームが続くんだ、と考えながらスマホを見ているとある事に気づいた。


「1人死んだのか……?」


 49から48へと数を減らした。

 ゲームの結果で死んだのだろうか。1人だけというのがどうにも引っかかる。

 あまりにも結果が芳しくなかったのか、それともまた別の要因で……。


「わからんな」


 ゲーム中はプレイしている人全てのスマホから音が鳴っているせいで、悲鳴もロクに聞こえなかった。

 どうして死んだのか、一応知っておきたかったが、今は目の前に集中するべきだろう。

 意識を切り替え、スマホの画面を触ると、


『   生存   』   48


 と書かれていた。

 前見た時のように、背景は生を感じさせる白と金色を基調としていた。

 憎たらしい天使も変わらずにいる。


「生存? どういうことだ……?」


 どうして次のゲームに行かず、この画面になった。

 いや、喜ばしことなんだが釈然としない。

 単純に考えれば成績が良かったから、ということになるが。

 俺はスマホを左手に持ちつつ、ロングシートから立ち上がる。

 

「…………」


 そこで気づいた。あの青白い光が消えていることに。

 本当、あれは一体なんなんだ……? やめよう。

 考えてもいい事はない。今は周囲の状況を確認するべきだ。

 少しだけ歩いてみるとするか……




 面白い。

 絶望に満ちた表情の人間が何人もいる。

 2回プレイしてみてわかったのだろう、自分ではクリア(生還)できないことに。

 ノーマルやイージーならともかく、今日初めてプレイした初心者がハードはキツいだろうな。

 

「ふふ」


 余裕そうに車内をほっつき歩いてる俺が不思議なのだろう。

 目を血眼にした人達が疑問を顔に浮かべていた。


「アイツ、さっきの……どうして今歩いてるんだ」

「知らないよ、どうせもう諦めて投げやりになってるか、

 頭が逝かれて今の状況を正確に判断できてないんでしょ」


「うわっ、かわいそ。

 こっちに何かしてこなきゃいいけど」


「だね、ってほら無駄口叩いてる場合じゃないよ。

 僕達だって、次をクリアできなかったらもう死ぬかも……」

「うんなことねーよ。死なねえ、死なねえ」


 可哀想なのはお前ら2人だよ。

 元の座っていた場所に引き返しながらそう思った。

 人を見下して、勝手に俺が敗者だと判断している。

 そんなお前らが哀れで仕方ないよ。


「ふう」


 血で乾いたシャツで汗を拭う。

 今の車内は見ているだけで愉快だ。敗者と勝者の見分けが簡単につくからな。


 もちろん俺は、勝者だ。


 ロングシートに体を沈みこませようとしたところで、


「あの……すみません」


 右斜め前から若いサラリーマンが声を掛けてきた。

 夏だというのに背広まで着ていて、見ているだけでも暑苦し。


「なんですか?」


 顔を合わせずに返事だけする。


「えーっとですね」


 どう言おうか、迷いかねているような喋りだ。

 ……ん、というか前にこの声を聞いた気がするな。

 あの醜い集団にいた人間だろうか。


「さっき会った菊池なんですけど、覚えてませんか?」

「ああ」


 思い出した。

 夏恋さん達と別れた後、情報集めをした時に聞いた内の1人だ。

 

「覚えてますよ」


 声のする方へ振り向く。

 最初に会った時と変わらない、少し気弱で優しそうな顔をしていた。

 

「よかった……鈴木蒼汰(そうた)さんですよね?」

「ええ、そうです」


 何か用だろうか。

 ゲームがそろそろ始まるだろうに、話しかけてくるなんて、この人も生存が確定したのだろうか。

 この人には借りがあるし、次のゲームがあるなら、

 

 “死”んでいてくれた方が都合がよかったんだけどな。


「その……頼みたいことがありまして。

 実は私この音楽ゲームをやるのは始めてでして、2回とも失敗でした」

「それは残念ですね……」

 

 内心で笑みを浮かべていた。

 俺の推測は良い方に外れていたらしい。

 だが、それならどうして声をかけてきたんだろう。


「ええ、部長――上司に散々勧められていたゲームなんですがね」


 短い髪を撫でるように触りながら、苦笑いをしていた。

 頭は良さそうに見えるが、リズム感があるようには見えないしな。

 好き好んでこの手のゲームはやらないのだろう。


「それで、頼みたいことっていうのは?」


 何となく予測はできるが。

 まぁ、答えは決まっているな。借りがある人間だ。


「このゲームを代わりにプレイして欲しいんです。

 鈴木さんの近くに座っていたので、プレイしてる所を偶々見てて。

 他の人とは全く別の動きをしていて驚きました。かなりお上手ですよね?」

 

 死んでもらおう。


「それなりには」

「鈴木さんのプレイ方法を見て、両手でやってみたんですが、余計ダメになっちゃって……。

 あれは上手い人にしか許されないやり方なんですね」


 普通の状況なら、恩を返すべきタイミングだろう。

 だが、車内(世界)は普通じゃない。狂った世界だ。

 俺自身も狂った世界で生きている、狂った住人でしかない。


「そんなことは」

「いえいえ、謙遜しないでください。

 それで、どうですか? お願いできませんか。

 勿論ここを出たら必ず恩返しはさせてもらいますから! どうか」


 綺麗な90度のお辞儀だ。

 血だまりの床に頭がつきそうになっている。

 そんな彼を見て、俺は、


「…………」


 ロングシートのクッションへと深くもたれ掛かった。

 ポールに右肘を載せて、頭を下げる彼を見下す。

 良い、気持ちだ。


「あ、あの……?」


 返事のないことに疑問を感じたのか、彼は顔を上げてこっちを見た。

 その表情、実に良い。


「協力して頂けると思って、いいんですか?

 って、あっもう5秒前になってる」


 お前の運命はもう決まった。

 俺に頼んだのが運の尽きだ。他の人間――夏恋さん辺りなら助けてくれたかもな。

 残り5秒と1分30秒の時間を精々楽しめ。


「あのお願いします!」


 そう言い、俺の膝下にスマホを差し出してきた。

 俺はそれを左手で――――払い除ける。

 スマホは床を滑り、数メートル先で動きを止めた。


「えっ、あっちょどうして!?」


 慌てて彼はスマホを拾いに行った。

 もうゲームが始まる頃だろうか。僅かにいる周囲の人はスマホに釘付けになっている。

 自分達のことなんて視界にも聴覚にも思考の中にも存在しないだろう。


「…………」


 哀れな彼を眺める。

 血で汚れたスーツと同じように、拾い上げたスマホは血で汚れきっていた。

 画面の部分を必死に拭きながら、彼はまた、


「あの、手が当たっちゃっただけですよね。どうかお願いします!」

「うん、そうですね」


 スマホを差し出してきた。

 俺の答えはもう決まっている。


「しつこい人間は嫌いなんだよ」


 そう言いながら、俺は彼の顔面目掛けて蹴りを食らわせた――――


 

 


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