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魔王が求める平穏生活?  作者: アバン
第四章 風の精霊王編
36/37

第36話 アルフヘイム

ブックマーク100件突破しました(*´艸`*)ありがとうございます

こんな自己満作品でも読んで頂ける方がいるというのは励みになります。

残業休日出勤に負けずに更新…したいんですが、書き溜め分がこれで終わりか…\(^o^)/休みくれ

 「はぁ、やっと着いたわ・・・」

 「あぁ、やっとだな・・・」

 「カイの旦那が妖精に魅了されなければもっと早く着いたかもな」

 「ちがっ!あれは・・・!」

 「それを言うならあのユニコーンもよ・・・いいえ、そんなの無かった。私達は真っ直ぐここを目指してたどり着いた。そうよね?」

 「あ、あぁ・・・」

 「妖精の悪戯ってのは困ったもんだな・・・命に関わるようなモンは少ねぇんだがよ、こう・・・タチが悪ぃのが多いぜ」

 「・・・同感だ」

 「しかし、ここが妖精の里?何も無ぇじゃねぇか」

 「あぁ、これは見えてないだけさ。そもそも、妖精界ってのは、妖精に近い純粋な子供とかが見えてしまって迷い込む類の場所だから、大人だと向うが見せようとしないと見えないんだ」

 「へぇ~」

 「おーい!ティターニアー!ミッドガッズ王国の首都に近い出口に行きたいんだ!ちょっと教えてくれー!」


 俺が呼びかけるも、辺りの風景に変化はなく、花畑には俺の声だけが響き渡る。


 「おーい!ティターニアー!」

 「・・・なぁ、本当はここじゃ無ぇんじゃねぇのか?」

 「そうね、今まで歩いてきた風景と大差ないし・・・」

 「いや、ここで間違いない。おーい!ティターニアー!ティターニアー!ティタ・・・この、年増ーー!」

 「誰が年増かーー!」

 「いでっ!」

 「うぉっ!」

 「えぇっ!?」


 俺が痺れを切らして禁呪(・・)を唱えると、身長50センチメートル程のスカートが広がったドレスを着た妖精が目を吊り上げて俺の目の前に浮いていた。


 「まったく!久方ぶりに面白そうな客人が現れたと思えば・・・お主か!言うに事欠いて年増とは何じゃ!」

 「はは・・・元気そうでなにより、ティターニア」

 「かわいい・・・他の妖精よりも、ちょっと大きい?」

 「・・・ふわふわ」

 「むっ、何じゃ、今回は随分と顔ぶれが違うの。というか、お主も何か違うの?」

 「あぁ、まぁ、色々あってね・・・とりあえず、入れてくれないか?」

 「むぅ、わらわもそんなに暇では無いんじゃがのぅ」

 「いつも昼寝しかしてないくせに・・・」

 「何か言ったか?」

 「いや何も・・・ところで、ここに壺いっぱいの雪月花の蜜があるんだが・・・」

 「むっ!な、何じゃ!わらわを買収しようというのか!」


 突然現れた軽いノリのティターニア(妖精女王)に仲間は戸惑っているが、妖精達(あいつら)の親玉だ。イメージとは違うだろうが、こういうものだと折り合いをつけたらしい。


 「いやいや、買収なんて・・・ただ、この壺結構重いし、有効活用できる者がいれば譲るのはやぶさかじゃないなーなんて」

 「そ、そうか。知らぬ仲でもない。何ならお主の荷物を軽くするのに協力してやるのは、やぶさかではないのじゃ」

 「でもなー。俺達目当ての出口が分からなくて困ってるんだよなー。一応これ、俺達の非常食だし・・・ここまで歩いて疲れたし、たまにはベッドで眠りたいなー。そうすれば、元気になってこの重い壺を置いて行きたくなちゃうかもなー」

 「う、うむ、そうか。しかし・・・」


 チラチラと壺を横目に見るティターニア。気にしてるのがバレバレだ。

 雪月花は寒冷地に一定期間だけ咲く花で、妖精界には無い。人間界でも風味が良いと評判で、それなりに高価な嗜好品だ。

 さぞ、この蜜が食べたかろうよ・・・くっくっく。


 「あー、だめだー、もう疲労が限界だぁー。疲労回復に甘い物でも食べようかなー・・・それっと」

 「あ、ああぁ・・・」


 俺はおもむろに壺を開けると、中の蜜を一筋掬って口へ運ぶ。


 「んー、やっぱり雪月花の蜜は香りがいいなぁ。この鼻に抜ける爽やかな花の香りとしつこすぎない上品な甘さ・・・」

 「あぁああああああ・・・」

 「イースタルさんが出発前にやたら蜜を買い込んでたのは、この為だったんですね・・・」

 「ここまで想定してたのかしら・・・」

 「いやー、落ち着いて泊まる所が無いとなると、これを食べて疲労を回復するしか・・・ほら、リズも食ってみろよ」

 「え、えぇ・・・あ、おいしい」

 「あぁぁああああぁぁぁああぁああ」

 「わー!人間だー!」

 「人間ー!いいにおいー!」


 蜜の匂いにつられてか、ティターニア以外の妖精が次々と寄ってくる。


 「ん?何だ、お前たちも食べたいのか?」

 「たべるー!」

 「いいのか!?人間!」

 「あぁ、いいぞ・・・と言ってやりたいところだが、どこかの意地悪婆さんが入れてくれなくてなー。残念だがこれは俺達が食べないとこの先に進む元気が出ないんだ」

 「ばばあー?」

 「女王はばばあー」

 「いじわるばばあー!」

 「ばっ!婆とは何じゃ!わらわはまだぴちぴちの2万3千歳じゃ!」

 「にっ、にまん・・・?」

 「はぁー、惜しいなー。この極上の蜜も、みんなで食べればもとおいしくなるのに・・・意地悪妖精のせいで俺達が食べないといけないなんてなー。ほーれほーれ」

 「ぐっ、ぐぬぬぬぬ・・・」


 俺はこれ見よがしにティターニアの目の前で蜜を上に掬ってトロトロと壺に戻す。


 「あー!もう!わかったのじゃ!出口も教えてやるからその蜜をよこすのじゃ!勿論、中にも入れてやる!!」

 「お願いしますは?」

 「ぐっ・・・!お、お願いするのじゃ!ぜひ里で休んでいって欲しいのじゃ!出口も教えさせて欲しいのじゃ!だから!蜜を!蜜をぉぉぉぉおおお!!!」

 「最初から素直にそう言えばいいんだよ・・・ほら」

 「「「「「わーーい!」」」」」

 「あぁっ!だめじゃ、お前たち!その蜜はわらわの・・・あぁ・・・っ!」

 「おいしー!」

 「あまーい!」

 「いいにおいー!」

 「あ、あぁぁ・・・」


 花畑に膝をつき、がっくりとうなだれるティターニア。壺には大量の妖精が群がり、瞬く間に蜜を食べつくしてしまった。


 「・・・イースのあんな楽しそうな顔、初めて見たわ」

 「あぁ、案外鬼畜だな・・・まぁ、あの女王さんを見てると気持ちはわかるけどよ」

 「・・・ふわふわ、かわいい」

 「あ、それ私もちょっと思った」

 「でもまさか、あの伝説に唄われる妖精女王様がこんな方だったなんて・・・」

 「そうね、もっと厳かな女王様だと思っていたけれど・・・」

 「これを民が知ったら教会のイメージはがた落ちだな」

 「そ、それを言わないで下さいぃぃ」


 まぁ、こうなる事は予想してあったので、俺はもう一つの壺を取り出してティターニアに渡す。


 「ほら、こっちにもあるから、これを食べろ・・・他の妖精に見つかるなよ?」

 「おっ、お主・・・」

 「ティターニアには前にも世話になったからな・・・その恩返しだよ」

 「お主という奴は・・・お主と言う奴はぁぁああ!うわーーん!」

 「・・・どの口で言ってるんだか・・・」

 「下げて上げる。あくどい」

 「まぁ、何だ。妖精って、案外簡単なんだな」

 「うまい!うまいぞぉぉぉぉ!!」


 ティターニアは泣きながら俺の渡した壺を開けて、蜜を食べている。

 最初は泣いていたが、蜜を食べる内にみるみる笑顔になり、泣き笑いの様になりながら口をベトベトにして食べている。

 今でもこいつが本当に妖精女王なのか疑わしくなる時があるぜ・・・


 蜜を食べて落ち着いたのか、ティターニアは厳かな表情を取り繕い、俺達に向けて喋り始める。


 「んー、ごほん!良く来たのじゃ、隣人達よ。色々あったが、わらわ達はそなたらを歓迎しよう」

 「べとべと・・・かわいい」

 「あとで拭いてあげなきゃ」

 「かわいいとはなんじゃ!わらわはこれでも―」

 「まぁまぁ。とりあえず、俺達を招待してくれないか?」

 「むっ、そうじゃな。ほれ」


 ティターニアが手にした杖を振ると、今まで何も無かった花畑に重なる様に幻影が出現し、いつしかそれは質量を持った現実として俺達の前に姿を現した。


 「うわぁ・・・!」

 「凄い・・!!」

 「きれい・・・」

 「おぉっ、こりゃぁ凄ぇ」

 「・・・ほう」

 「ようこそ、隣人達よ。妖精の里アルフヘイムへ」


 数瞬前までただの花畑だったそこには、木と草でできた城とでもいうべき幻想的な世界が広がっていた。




 ◇◇◇◇◇◇◇




 「ほう、という事は、前に来たあの女子の家の近くの出口でよいのか?」

 「家?」

 「あぁ、そうだな。わかるか?」

 「わかるもなにも、ここからならば何処にだって出口は開けるのじゃ」

 「本当ですか!?」

 「もちろんじゃ。わらわを誰だと思っておる」

 「ありがとうございます!ティターニア様!」

 「まぁ、今は疲れているじゃろう。明日になったら開いてやる・・・今、人間用の寝床をこしらえておる所でな、しばし待つがよいのじゃ」

 「悪いな・・・ところでティターニア」

 「うん?」

 「いくつか聞きたい事があるんだが・・・まずは、こいつの病気を治せないか?」

 「・・・っ!」

 「病気じゃと?うむむ・・・これは・・・これは、無理じゃな」

 「そう、ですか・・・」

 「そうか」

 「うむ。われらは道具を作ったりするのは得意じゃが、あまりそれ以外の事はできなくての・・・見た所、()の影響じゃろ?わらわでは太刀打ちできんの」

 「やっぱりそうか・・・」

 「あの・・・精霊王様もおっしゃっていましたが、奴、とは?」

 「うーむ。わらわも奴の事はあまり良くわからんのじゃ。それこそ、そこの・・・」

 「今はイースだ」

 「うむ、イースの方が知っておるじゃろうて」

 「イースが・・・?」

 「まぁ、それは追々な・・・今、人間界との時差はわかるか?」

 「それも、わからんのぉ。わらわ達にはお主らが言う時間などという概念は無いのじゃ」

 「だよなぁ・・・まぁ、こればっかりは出てみないとわからないか」


 妖精界には夜も無いし、生物というよりも精霊に近い妖精に時間なんて概念は無いだろう。


 「で、では、水と風の精霊王様の居場所をご存じではありませんか・・・!?」

 「精霊王のぅ・・・奴らは基本的に自分の眷属の多い場所・・・水なら水、火なら火が多い所を聖域として転々としておるからのぅ。水なら水の豊富な所じゃないかの?」

 「そう、ですか・・・では、風は?」

 「風はどこにでもあるからのぅ・・・」

 「風はどこにでも吹くから、風の精霊王はどこにでも偏在している・・・それこそ、会話をこなすとなると、常に突風が吹き荒れている様な所を探さないとだめだと思うがな」

 「うむ、イースの言う通りかもしれんの・・・お、どうやら寝床の準備が整ったようじゃ。今はゆっくりと体を休めるとよかろう」

 「はい。ありがとうございます」

 「なに・・・あ、娘よ。そなたはちと残れ」

 「え?あ、はい」

 「ではな」


 俺達は呼び止められたリズを残し、迎えの妖精に連れられて用意された部屋に向かった。


 「あの、何か・・・?」

 「ふむ、やはり似ておるの」

 「似ている?」

 「前にイースが連れて来た女子にじゃ」

 「イースが?」

 「うむ・・・あ奴も姿が変わっておったし、人間界ではその時間とやらが多く流れた後なのじゃろうが・・・姿形というより、魂の在りようが似ておる」

 「魂、ですか・・・」

 「うむ。あ奴がむきになるのもわかるというものよ」

 「イースが、むきに?」

 「そうじゃ。前に来た時のあやつは、わらわがいくらちょっかいを掛けても、あぁ、とかそうだな、とかしか言わんかったからの」

 「へぇ、意外・・・あんなに仲が良さそうに見えたのに」

 「別にわらわはどんな人間とも仲が良い訳ではない。が、妖精の性とでもいうべきか・・・珍しい相手とはつい遊びたくなってしまうのじゃ」

 「あの、私でよければ、いつでも・・・」

 「うむ。わらわも立場があるでな、気持ちだけ受け取っておこう・・・これを」

 「これは?・・・綺麗」

 「まぁ、お守りみたいなものじゃ。肌身離さず、持っておくが良かろう」

 「あ、ありがとうございます。まさか、伝説の妖精女王様とこんな風に話ができる日が来るなんて思ってもみませんでした」

 「まぁ、わらわが会った人間はお主を含めても数えるほどじゃからのぅ。だが、この世界の事を他言してはならぬぞ?」

 「え?それは、はい」

 「はるか昔は人間と妖精は共存しておったんじゃがの・・・妖精や幻獣達が人間に狩られる事件が相次いで起きたので、わらわの力で妖精の里を隔離したのじゃ」

 「世界を、分離・・・!?」

 「じゃから、この事は喋ってはならぬぞ。仲間にも申し伝えておけぃ。もし、言いふらしたならば・・・」

 「いっ!言いません!絶対!」

 「ならば良い・・・その宝珠、大事にせいよ」

 「はい!ありがとうございます!」




 ◇◇◇◇◇◇




 「おぉ、お嬢、遅かったな」

 「ちょっと、女王様の世間話に付き合ってたの」

 「妖精が世間話、ねぇ」

 「リズ!このベッド凄い!草と花でふわふわ!」

 「こらシャル、飛び跳ねるな。草が舞う・・・リズ、風呂も中々だったぞ」

 「お風呂があるの!?」

 「お花、いっぱい浮いてた」

 「飯は無いがな・・・まぁ、それは俺達が持っているもので何とかなるし」

 「そうね・・・というか、皆一緒の部屋なのね」

 「まぁ、妖精に男女の違いを気にする様な感性は無いだろうからな・・・あいつら性別無いし」

 「妖精女王(・・)なのに?」

 「あぁ、ティターニアだけは妖精の母として、女らしいが・・・妖精の男がいるって話は聞いたことが無いしな」

 「そうなの・・・」

 「まぁ、野宿に比べたら格別だろ」

 「そうね・・・じゃあ私も、お風呂入ってくるわ」

 「あぁ・・・ところで、ティターニアと何を話したんだ?」

 「んー・・・秘密」

 「そうか」

 「あ、でもイースの昔の話とか聞いちゃった」

 「えっ!?」

 「あ、シャル、もう一度お風呂いく?」

 「いく」

 「じゃあ行きましょ・・・覗かないでね?」

 「ちょ、おい!昔の話ってなんだ!?」

 「いってきまーす」

 「ちょっとリズ!おい!」

 「何でぇ、聞かれちゃまずい話でもあったのか?」

 「いや、そういう訳じゃないんだが・・・」


 ティターニアめ、余計なことを・・・あの様子を見る限り、俺が魔王だったって事は言ってなさそうだが・・・まぁ、聞かれちゃまずい事なんて無いと思うからいいんだけど・・・

 こうして妖精の里で俺達はひと時の休息を得たのだった。




 ◇◇◇◇◇◇




 「世話になったな、ティターニア」

 「気にするな。お主は里を救った英雄だしの」

 「英雄、ねぇ」

 「次に来るときは杖も持ってくるがよい。見てやろう・・・まぁ、そうそう壊れもしないだろうが」

 「あぁ、次はな。今はちょっと手元になくてな・・・」

 「何を言っておる。あれはお主を主と認めたのじゃ。呼べば手元に来るじゃろうて」

 「えっ、そうなの!?」

 「無論じゃ。他の奴らに渡したものもそうじゃったろう」

 「あー、言われてみれば確かに・・・」

 「あまり無下に扱うなよ?お主が見限られるぞ」

 「わかってるって」

 「おーい!イース!行くぞー!」


 俺がティターニアと別れの挨拶をしていると、仲間が門・・・ゲートの前から俺を呼ぶ声が聞こえた。


 「あぁ!今いくよ!・・・じゃあ、ティターニア、悪いけど道を頼む」

 「よかろう。これを持っていくといい」

 「これは?」

 「蜜のお礼じゃ。妖精たちの粉が入っておる。塗れば、どんな傷もたちどころに癒えるじゃろう」

 「あれは手土産だから別に・・・まぁ、ありがたくもらっておくよ」

 「うむ。お主はまた不器用な生き方をしているようじゃしのぅ・・・人間は命が短い分、生き生きとしておる。少し羨ましい」

 「何なら、着いて来たっていいんだぜ?」

 「世迷い言を・・・わらわの役割はお主も知っておろう」

 「まぁ、な」

 「・・・あの小僧の状態を見るに、奴は滅ぼし切れんかった様じゃの?」

 「やっぱり、そう思うか?」

 「うむ。明らかにあれは魔神の影響じゃ」

 「だよなぁ・・・ヴルカンもそんな事言ってたし」

 「わらわの作った武器でも滅ぼし切れないとなると、もうどうしたら良いかわからん」

 「まぁ、今のところまだ平和みたいだし・・・今代の勇者達ががんばるさ」

 「お主も今の時代に生きておろう」

 「俺は・・・もう引退だよ。あれだけ頑張ったんだ。少し位休んでも罰は当たらないと思うんだ」

 「その割には色々厄介ごとに巻き込まれていると思うがの・・・まぁいい。ほれ、道を開くぞ」

 「あぁ。世話になったな」

 「なに、次はもっとおいしい蜜を持ってきてくれれば良い」

 「善処するよ」

 「ではな・・・よーし、道を開くのじゃ!お主ら、準備は良いか!?」

 「えぇ!お世話になりました!」

 「うむ、達者での・・・『開け!時空の扉!妖精が長、ティターニアの名において命じる!稀人を誘い、彼の地へと通ず扉を開けよ!』」


 ティターニアが言葉を唱えると、アーチが掛かっていた空洞に虹色に波打つ空間が現れる。

 俺達はその時空の扉をくぐり、帰郷の途に―


 「あ・・・まぁ、何とかなるじゃろ」

 「ちょ、おい!何か聞こえたぞ!あ・・・って何だ!?」

 「大丈夫、英雄殿なら何とかなるのじゃ」

 「おいぃぃいい!?ちっとも大丈夫そうじゃないんだけど!?」

 「まぁ・・・達者でな!」

 「こらーーー!年増ーーーー!!!」


 俺達は一抹の不安を抱きながら、光の洪水に飲まれて消えた。


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