第31話 快復祝い
「それじゃあ、イースの快復を祝って、カンパーイ!」
「「「「「「カンパーイ!」」」」」」
体調が戻った俺を加えた6人は、ヘファイトスの酒場で久しぶりに顔を揃えた。
これからの打ち合わせと、俺の快復祝いを兼ねての集まりの為、少し高めの店で個室を用意したとのこと。
「いやー、でもイースが治って良かったぜ。こいつら我儘ばっかりでよ。俺とカイの旦那だけじゃ身が保たねぇよ」
「むっ、私はそんなに我儘じゃないわよ?」
「お嬢を名指しはしてないが・・・この石鹸じゃなきゃだめだの、朝は果物が無いと駄目だのと言ってたのは誰だよ」
「旅の間はそんなに言ってないじゃない。街に居る時くらい人間らしい生活をしないと!」
「その人間らしい生活の希望水準が高けぇんだよ・・・まぁ、懐が温かいから何とかなるが」
「お金は使ってナンボよ」
「・・・お嬢はある意味冒険者に向いてると思うぜ」
そんな会話をしつつ、皆まずは空腹を満たすために次々に運ばれてくる料理に舌鼓を打つ。
それなりの店だけあって、料理がうまいな・・・おっ、これはグレートホーンの肉じゃないか?
「でも、イースタルさんが元気になって良かったですよ。治癒魔法が効かない時はどうしようかと思いました」
「おっ、そうだよ。治ったからいいとはいえ、ありゃぁヤバかったと思うぜ。何だったんだ?あの状態は」
「あぁ、あれはな」
「・・・イース、これ」
「あ、あぁ、ありがとう、シャル。あれはな」
「ほら、イース。野菜もちゃんと食べて?」
「後で食うよ、リズ・・・あれは」
「だめよ!野菜をちゃんと食べないと大きくなれないんだから!ほら、あーん」
「う・・・あれ」
「イース、お肉のほうが、大きくなる・・・あーん」
「む・・・ほら、イース。あーん」
「あれは」
「・・・あーん」
「あーん!」
「・・・・・・」
「だぁ!もう!何なんだよ!ちゃんと自分で食うよ!」
俺の左右にリズとシャルが陣取り、しきりに料理を俺に勧めてくる。
そんなギラギラした目つきで料理を突きつけられても困る。
っていうか自分で食えるわ!!
ゲインはどこか諦め顔で、カイは苦笑してこちらを見ている。
どうやらこの状態に首を突っ込むのは危険と判断したらしい。
リッツ?素知らぬ顔で飯食ってるわ。
どうやらこの世話焼きたがりの2人をある程度満足させないと話もできないらしい。
封印解放で倒れてから妙に世話したがるんだよな・・・それだけ見慣れない状態で倒れたってことなのかもしれないが。
俺は2人の眼光に結局逆らえず、ひな鳥の如く次々に突きつけられる料理を無心で口に頬張った。
◇◇◇◇◇◇◇
「ふぅ。少し落ち着いたわね」
「少し所じゃ・・・うっぷ。ねぇよ」
「そんなになるまで食べなくてもよかったのに」
「今更それか!腹いっぱいだって言っても食わせて来たのはどいつだ!」
「ほ、ほら、シャルと一緒に興が乗っちゃったというか・・・ねぇ?」
「リズはやりすぎ」
「ちょっと!それは無いんじゃない!?」
「お嬢落ち着けよ。せっかく全員そろったんだしよ」
「むぅ・・・まぁいいわ。私は大人の女ですから」
「むっ、わたしだって大人」
「その胸」
「はいはいはい!そこまでそこまで!で、お嬢!これからどうすんだ!?」
危険を感じたのかゲインが強引に話を持っていく。
さすがスカウト。危機察知能力が高い。
「ん・・・ゴホン。そうね、これからは―」
「あ、悪い。ちょっといいか?」
リズを遮った俺に皆の視線が向く。
「俺のあの状態・・・を含めて、俺の事を話しておこうと思うんだが、いいか?」
「おぉ、気になってたんだよ」
「えぇ、明らかに普通の状態ではありませんでしたから・・・話を伺っておかないと次に対処ができません」
「いいわ、イース。話してちょうだい」
俺以外の面々は真剣に―ゲインだけはニヤニヤしながら―俺の方を注視する。
「いや、そんなに大した話じゃないんだが・・・俺は生まれつき魔力が大きいらしくてな。普段は封印魔法で抑えてるんだ」
「封印!?そんな大魔法を・・・」
「大きいって、どんくらいなんだ?」
「あー、封印は旅エルフがたまたまやってくれた。精霊魔法でな。カイの思ってる様な大魔法の封印じゃないと思うぞ。魔力量がどの位かは封印全開放した事ないからわからないけど・・・少なくともシャルの30倍以上はあるだろうな」
「わたしの30倍以上・・・」
仮に前世の魔力量だとすると、一般的なAランク魔法使い―とはいえAランク魔法使い自体そんなにいないが―の10倍位は軽くあったからな・・・前世より増えてる気がするんだよなぁ。
「魔力が全く使えないのも困るから、俺がその封印を改造して、段階的に開放出来るようにしたんだ。解放するとある程度の魔力が自由になる。それが、あの火竜戦だ」
「なるほどねぇ」
「他人の魔法を、改造・・・?」
「えぇ、それも精霊魔法を・・・イースタルさん、貴方とんでもないですね」
「ん?それって凄いのか?」
「え、えぇ。そんなこと聞いた事もありま」
「・・・すごい!すごいすごい!!」
「うぉっ」
「しゃ、シャル?」
カイの言葉を遮り、シャルが興奮した様子で立ち上がり、こちらに迫ってくる。
「全属性で!30倍で!改造で!ふわふわで!!」
「ちょ、しゃ、シャル、落ち着け」
「シャル!何やってるの!」
「シャルのお嬢がこんなに興奮してるの初めて見たぜ・・・」
「イースさんの物凄さは魔法の使い手なら顎を外すレベルですよ」
「そんなになのか?」
「えぇ。各国がこれを知れば、躍起になって召し抱えようとするでしょう」
「マジかよ」
「全属性というだけでも、世界に数人ですし。それが・・・」
「あー、なるほどなぁ・・・」
ゲイン達が暢気な会話をしている中、シャルは俺とリズの抑えも振り切って俺に詰め寄ってくる。
「イース!」
「な、なんだ?」
「わたしをお嫁さんにして!!」
「ぶっ!」
「ごふっ!」
「・・・・・・」
「はぁっ!?」
「ちょ、えぇっ!?」
「2人で魔導の深淵、見よ?」
「見よ?じゃないわよ!シャル!あなた自分が何言ってるかわかってるの!?」
「もちろん。褥を共にして子作りする。わたしとイースなら新しい魔法だって作り出せる。きっとわたし達の子供も凄い才能を持って生まれてくる」
「おいシャル、落ち着け」
「それに、多分わたしは床上手」
「床・・・」
「シャル、そんな言葉どこで覚えたの!?」
「経験は無い。けど自信がある」
「何言ってんの!?」
急に何なの!?この状況!
シャルは俺に抱き付いて上目遣いで見上げてくる。
おぉ、ちょ、やわらけぇな・・・何かいい匂いも・・・ってそうじゃなくて!
「わたしは客観的に見れば美人の部類に入ると思う。魔法も使えるし、献身的。今まで稼いだお金もある。そして床上手。お買い得?」
「そうじゃなくて!女の子がそんな簡単に自分の一生を!」
「イースは家柄もそこそこ良いし、容姿も端麗・・・というかかわいい。貴族じゃないからしがらみも少ないし、お金も私達と同じくらい稼いでる。そしてこの才能・・・ためらう理由が見当たらない」
うぉぉ、打算的・・・
「そういう事じゃなくって!」
「むぅ・・・仕方ない。リズは家柄が良さそうだし、リズが正妻で私は妾でもいい。私は理解のある妻」
「なっ!?何言ってるのシャル!?」
「わたしが正妻でいいの?」
「そうじゃなくて!何で私まで!?」
「だってリズ、どう見てもイースのこと」
「わー!わー!わー!やっぱ無し!今の無し!」
リズとシャルが騒いでいるのを横目に、ゲイン達は我関せずといった面持で酒を煽っている。
止めろよ。
「イース」
「う、うん?」
「どっちが正妻?」
「ちょっとシャル!」
「あー、いや、ほら、今はそういう事まだ早いかなーって・・・」
「いつなら結婚してくれる?」
「結婚するのは確定なんだ・・・何というか、成人したばっかりだし、そういう事は今は考えられないというか・・・ほら、とりあえず話終わってないから座って!」
「むぅ・・・後で、ね?」
「あ、あぁ・・・」
「・・・・・・へたれめ」
何とかうやむやに・・・おい、ゲイン。今何て言った。
本当に自慢じゃないが、生まれ変わってからまだ夜の経験は無い。肉体的には健康的な男の子なので、シャルに抱き付かれてあやうく反応しそうになった・・・どこかの街でコッソリ発散しなければ。
一時的とはいえ、パーティーメンバーに手を出してロクな事はない。本当にロクな事は無い。
体験談じゃないぞ?色んなパーティを見て、だ。
「ゴホン!で、だ。ここからが本題なんだが・・・封印を解放して魔力を使うと、俺たぶん死ぬんだ」
「へぇ~、死・・・はぁっ!?」
「ちょ、イースタルさん・・・」
「・・・イース、それ本当なの?」
「正確には魔力を使い続けると、だな・・・そもそも、生まれたばかりの俺は自分の魔力に身体が耐えきれなくて死にかけてたらしい。そこで、魔力を封印したんだ。王立学園で魔力に身体が耐えられる様に修行したり、魔素の濃いダンジョンで暮らしたりしてた訳だが・・・まぁ、多少マシになった位かな」
「それであんな所に居たのね・・・」
「ダンジョンに住んでたのは理由があったのか」
「半分学園長の酔狂みたいなもんだと思うがね」
「それとあの状態にどんな関係が?」
「あぁ。封印を解除してもすぐ死ぬ訳じゃなくて、身体の端から・・・毛細血管だったか?身体の脆い所から段々死んでいくらしくてな。魔力使うだけで血だらけになる。大体、満足に動けるのは3分ってとこかな」
「3分・・・」
「死ぬ前にまた封印すれば死にはしないんだが、どうもその魔力の影響で、封印解除後は身体に効果を及ぼす魔法や魔法的な効果・・・治癒魔法や魔法薬なんかが効かなくなるらしい。だから、封印解放前に負った傷も含めて、その時にある傷は自力で治すしかないんだ」
「そうですか。それで、あの状態という訳ですね」
「あぁ。前に封印解除した時には数日間寝込んだんだが・・・今回は身体が成長したからか、リッツの煙草のせいかわからんが比較的マシだったな」
「・・・体内魔力の影響・・・それって、リッツと同じように?」
「いや、リッツの病気みたいにはたぶんならないんじゃないかな・・・今まで外見や身体能力に影響出た事無いし」
「イース。ここの面子はみんな知ってるから伏せなくていいぞ」
「そうか・・・たぶん、俺のは魔物病みたいにはならないと思う。あくまで自分の魔力だからな。まぁ、魔物病の仕組みが分かってないから何とも言えないが」
「なるほど・・・本当の奥の手ということですね」
「あぁ。この様子じゃ身体が耐えられる様になるってのは考えにくいから、封印状態でも自由にできる魔力をやりくりする為に魔法構成の最適化を行って頑張ったりしてるんだが・・・それでも焼け石に水だな」
「・・・封印中の魔力は常人並なんですよね?」
「あぁ。冒険家でも何でもない村人位だな」
「その魔力量で上級魔法を1回使えるんですか・・・イースさん、貴方、宮廷魔術師にでもなってそれを広めた方がいいんじゃないですか?」
「かたっ苦しいのは嫌いなんだよ・・・妬み嫉みとか凄そうだし」
「わたしは最近イースに教わってる・・・けど、あまり成果は無い。たぶん、常人じゃ無理」
「練習すればいけると思うんだけどなぁ・・・まぁ、そんな訳で、あまりアテにはして欲しくないが、あの状態になったら普通の薬草とかで看病してくれると助かる」
「わかったわ・・・話してくれてありがとう、イース」
「なに、長い付き合いになりそうだしな。今までの道のりで人となりもわかって信頼しているし」
「へっ、嬉しい事言うじゃねぇか」
「しかし・・・わかっていると思うが、これを誰かに喋ったら・・・必ず殺す。喋ったと思しき相手も含めて、一族郎党共にだ」
最後に釘を刺しておく事も忘れない。
俺は言葉と共に殺気と魔力を乗せ、残りの5人に叩き付ける。
「わ・・・わかってるって。話ゃしねぇよ」
「・・・わ、わかったわ」
「・・・うむ」
「わ、わかりました・・・っ」
「妻は主人をたてるもの」
「・・・そうか、すまないな。キーリス先生みたいにはなりたくないんでね」
俺はみんなが同意したのを見届けてから、殺気を収める。
扉の外で―個室じゃない酒場で―食器が割れたり何かがひっくり返る様な音が聞こえたような気がするが、気にしてはいけない。
ゲインやカイは明らかに消耗しているが、残りの3人は涼しい顔をしている。
この技は前世でもよく使ってた便利な技で、並の奴じゃ失禁しかねないんだが・・・まぁ、話す気が無いから、と思っておこう。
「キーリス先生・・・?」
「あぁ、俺の学園での教師でね。本人の希望で詳細は伏せるが、士官の誘いとかでひどい目にあったらしい」
「なるほど・・・国もえげつない手を使う事がありますからね」
「おと・・・ミッドガルズ王国はそんな事しないわよ」
「まぁ、よろしく頼むよ・・・で、リズ。これからどうするんだ?」
「そうね、まずは竜素材の処分と、火の精霊王への確認と・・・」
「待て、誰か来るぞ・・・これは・・・」
「おいおいおい、ここにもかよ」
「・・・さわがしい」
「この隠す気も無い足音は・・・」
またあいつか?
と俺がうんざりした瞬間、個室のドアが弾け飛び―扉があったそこには想像した通りの筋肉ダルマ―と、見慣れぬ優男が一人立っていた。
「ふははははは!ここにおったか!凄まじい気配がしてもしやと思えばそなた達とは!中々の殺気であったぞ!!」
「あぁ~あ、また扉壊しちゃって・・・」
「まさかそこで飲んでたのか・・・?」
やっちまった。外に漏れた気配はわずかだと思うんだが・・・伊達にA級じゃないか。
「さぁ!尋常に立ち合い―」
「おい、そのもう一人の優男は何だ」
「ぬ?まぁ良いではないか。いざ―」
「良くねぇよ。立ち会わないっつってんだろ。そいつは誰だ」
こういう奴は、相手のペースに乗せちゃだめなんだ。こっちのペースに巻き込んでうやむやにしないと。
「あ~、なるほどねぇ。こりゃぁザックが気に入るのもわかるわ」
「何だ仲間か。おい、こいつどうにかしてくれよ。いい加減迷惑なんだ」
「わるいねぇ~、ザックは一度言い出すと譲らなくてね・・・特に気に入った相手は」
「無責任だな。パーティーメンバーなら何とかしろよ。その内ランクもはく奪されかねないぞ?」
「いやいや、彼はこれでいてちゃんと手加減もするんだよ。禍根が残る様な事もないし・・・ちょっと強引だけど」
「ちょっと強引、ねぇ・・・まぁ、今回もお引き取り願うまでだ」
事前に打ち合わせでもしていたのか、優男が喋り出すと、筋肉ダルマが動きを止めて彫像の様に固まる。
嫌な彫像だな。
「まぁまぁ。ザックの悪癖には僕らも困っていてね・・・ザックを諦めさせる・・・のは難しいから、君たちの益になる事を持ってきたよ」
「益?」
「そう、これさ」
そう言って優男は一通の手紙を取り出す。
明らかに高級な紙で作られた封筒―紙自体が高級品ではあるが、それに輪をかけて高そうな紙だ―に、見慣れない印篭で封がしてある。いや、あの紋章は・・・
「っ!?その印は・・・っ!?」
「そう、君のお父様からの手紙だよ」
「その手紙が何だってんだ」
「僕らはこれでもAランクパーティでね・・・重要度の高い情報の伝達なんかもしてるんだ。ザックと立ち会う報酬は、この手紙。これを無視しちゃぁちょっとまずい事になると思うよ?」
手紙が欲しければ戦えってか。汚ねぇ野郎だ。
リズの動揺っぷりが半端じゃないな・・・まぁ、お父様とやらがアレなら確かに慌てるか。
「脅されてるようにしか思えないんだが?」
「脅すなんて人聞きの悪い・・・もちろん、手紙以外にも報酬は用意してあるよ。今までの冒険者はザックと立ち会って強くなったり、勉強になったって喜んでる人がほとんどだよ?悪くない話だと思うんだけどなぁ」
「何故そこまでして立ち会わせたいんだ」
「僕としてもザックの我儘に付き合いたい訳じゃないんだ・・・しかし、我がパーティの特A戦力がこのままじゃずっと使い物にならない。それは困るんだよねぇ~」
ここはもうリーダーに決めてもらうしかないな。逃げ道は無さそうだが。
俺はちらりとリズを見て、声を掛ける。
「・・・リズ、どうする」
「ひゃいっ!?あ、え、えぇ・・・そうね・・・ほかの報酬というのは?」
「君たちはお金もそこそこ持ってそうだし、金銭では釣れないと思ってね・・・全国を旅してるんだろう?報酬は魔狼の馬車・・・と言っていいのかわからないが、魔狼車と、冒険者ギルドお墨付きの全国通行許可証だ」
「魔狼車と通行証か・・・」
確かにそれは助かるかもしれない。魔狼は馬よりも強靭だし、速度も出る。並の魔物にも怯えないから大抵の所は行ける。
自分でも戦うしな・・・リズの出自のおかげか、関所で変に足止めを喰らった事は無いが、手続きに時間がかかるのはかわらない。
確かにその2つがあれば旅は格段にスムーズになるだろう。
「・・・命の危険は無いのね?」
「そこは保証するよ。ザックはこれでも手加減がうまいんだ」
「手加減、ね・・・」
「もし誰かが死亡した場合には?」
「もし君たちの内の誰かが死亡したり、再起不能の大けがを負ったら、その一人につき金貨100枚の賠償金を約束しよう」
「ひゃ、ひゃく・・・!?」
「それと、これは我々からの正式な依頼として冒険者ギルドを通して処理される。ギルドの立ち合いもあるよ」
「・・・イース、どう思う?」
「どうもこうも、受けるしか無いんだろう?まぁ、ここまでやってるんだ。仕方ないんじゃないか」
「・・・わかったわ。受けましょう」
「助かるよ・・・と、言うのも変だけどね。もう動いていいよ、ザック」
「・・・ぶはぁ!!息苦しかったのである!!」
「何も息まで止めなくてもいいのに」
「息をしながら止まるなどと器用な真似はできん!!」
何なの、馬鹿なの?
「まぁ、そういう事だから・・・今日は夜も遅いし、飲んでるしね。明日の昼はどうだい?」
「えぇ、いいわ。ところで、貴方は?」
「これは申し遅れました。Aランクパーティ『紅の剣』リーダー、シャントです」
「シャント・・・紅剣か!」
「そう呼ぶ人もいるね・・・よろしくね、期待の新人さん達」
優男―シャントは優雅に一礼すると、恐らく何回もしているであろう、様になったウインクをした。