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魔王が求める平穏生活?  作者: アバン
第三章 火の精霊王編
30/37

第30話 病室にて


 「う・・・」


 サラサラと何かが頭を撫でる感触に俺は目を覚ます。

 目を開けると瞳を刺すような光と、その光に照らされる美しい女の顔がこちらを覗きこんでいた。


 「ジュリア・・・?」

 「あら、起きちゃった?」

 「ここは・・・何故お前が」

 「何言ってるの、もう。本当に寝ぼすけさんね」

 「いやしかし、お前はもう・・・」

 「本当に寝ぼけてるの?まぁそれだけ私の膝枕が寝心地よかったのかしら。こんなシュティが見られるのは寝起きの時だけよね」


 女・・・ジュリアはクスクスと笑いながら俺の頭を撫で続けている。

 ここは―そうか、俺達は湖のクラーケン退治を終わらせて、アラルーンに帰る途中だったか。

 この辺りはもう魔物も少ないから木陰で交代で休む事にして、俺は芝生を布団にうとうとと―って


 「・・・俺は確か芝生に寝転んでたと思うんだけど」

 「ここも芝生よ?」

 「いやまぁそりゃわかるんだけど・・・この状況は何だ?」

 「膝枕よ?」

 「いやだから・・・何で?」

 「だって、シュティがあまりにも気持ちよさそうに寝てるから・・・この髪、触り心地いいのよね」


 俺達が言葉を交わす間にも、ジュリアの手は俺の頭を撫で続ける。


 「やめろ。あいつらに見られたらまた何を言われるか」

 「いいじゃない、言わせておけば。タリアはまた貴方に突っかかるでしょうけど。ふふっ」

 「勘弁してくれ。あいつはじゃれてるつもりでも、こっちは命がけだぞ」

 「タリアだって加減してるわよ。照れ隠しでたまに加減を間違えるだけで」

 「照れ隠し?なんで照れるんだ」

 「はぁ・・・シュティには教えないっ」

 「何だよそれ・・・おい、もうやめろって」

 「まだいいじゃない。こんなに平和な時間は最近久しぶりだし・・・シュティだって気持ちいいんでしょ?」

 「そんな・・・ことはない」

 「う、そ。だって振り払わないもの。本当に嫌なら無言で振り払ってどこかに行っちゃうでしょ?」

 「ん・・・むぅ」

 「はいはい、じっとして。また寝てもいいからね」


 何が楽しいのか、ジュリアはニコニコと笑いながら俺の頭を撫で続ける。

 確かに気持ちいいけどさ。


 「お前は王女なんだぞ。こんなことをして・・・」

 「はいストップ。それ以上言ったら怒るわよ?」

 「いやだが、国に帰ればお前は・・・」

 「私は私よ。今はただのジュリアンヌ。今そう・・・ただの女の子よ」

 「ジュリア・・・」

 「イース!」

 「うぇっ!?」

 「どうしたの!イース!」

 「ちょ、ジュリア、何いって・・・」

 「イース!イース!!」




 ◇◇◇◇◇◇◇




 「う・・・ジュリ、ア?」

 「イース!目が覚めたのね!?」

 「リ・・・ズ?こ、こ、は・・・?」


 目を開けると、心配そうにこちらを覗きこむ女―リズの顔が目の前にあった。

 まさか一日に二度同じ様な起き方をするとは・・・ありゃ夢か。

 暫く使っていなかったかの様に喉が張り付き、声がかすれてうまく喋れない。


 「み、ず・・・」

 「あぁ、お水ね。はい、ゆっくり飲んで」


 恐らく久しぶりに口にする水は身体に染み渡る様で、どんな料理よりもうまく感じた。


 「・・・あぁ、うまい・・・ここは?というか俺は・・・」

 「イース!本当によかった、イース!!」

 「い、痛だだだだ!」


 感極まったのか、リズは上半身を起こした俺に抱き付いてくる。

 花の様な香りと何やら柔らかい感触が・・・って、痛い!傷が痛い!


 「リズ!痛い!痛い!」

 「あ・・・ご、ごめんなさい。つい」

 「いやまぁ心配してくれるのは嬉しいよ・・・」


 改めて向き直ったリズを見ると、目の端に光るものが見えた。


 「あの後イースだけ血まみれで倒れて、回復魔法も効かなくて・・・息はまだあるのにイースはもう死んじゃってるんじゃないかって・・・」


 あぁ、そうか、確か火山で火竜と・・・

 昔の夢を見たせいか、何だかまだ現実感が無いな。


 「それはその、何と言うか特殊な体質というか、何と言うか・・・」

 「でも少し元気になったようでよかったわ」

 「あぁ、ところで、ここは?」

 「ヘファイトスの治療院よ。カイの回復魔法も効かなくて、薬も効かなくて、ただ見守るしかないって・・・それで・・・」


 リズが喋る度に目元が潤んでいく。


 「わ、わかった!悪かった。これは奥の手みたいなもんで、使った後はしばらく魔法も魔法薬も効かなくなるんだ」

 「もう!心配したんだからね!次からはちゃんと説明してから使って!」

 「あの状況で説明もくそも・・・」

 「わ、か、っ、た?」

 「は、はい、わかりました・・・」


 リズが笑いながら怒るという器用な事をやっていると、俺の腹からキュゥゥ~と音が鳴った。


 「あ、お腹減ってるわよね。屋台で何か買ってくるわ」

 「屋台?そもそも、これ、何日たった?」


 この腹の減り具合は何日か経ってる感じだ。


 「イースが倒れて2日よ。街はここ数日お祭りみたいなものね。火竜の腕・・・というか足?を切り落としたでしょ?勿体ないからあれ持って帰って来たんだけど、それを見た住人が火竜が討伐された!ってもう大騒ぎ。おまけに私達は英雄扱い。顔でも隠さないと外も出歩けないわ」

 「2日か・・・まだマシな方・・・って、そんな事になってたのか。まぁ、住民の気持ちはわかるな」

 「まぁ、そのせいでちょっと困った事にもなってるんだけど・・・えっと、あの後、動けそうな私とシャル、ゲインとカイでイースとリッツを火竜の足と一緒に運んで、今に至るってわけ」

 「そうか、すまなかったな・・・って、そうだ、リッツは?あいつ、あの時・・・」

 「・・・えぇ、それは・・・」

 「それは、俺から話そう」

 「リッツ!」

 「リッツ・・・か?」


 声のした方を見ると、扉を背に寄りかかる、体中と言っていい程多くを包帯で巻いたリッツが立っていた。




 ◇◇◇◇◇◇




 「さて、何から話すか・・・」


 今度はリッツが俺の横たわるベッド脇の椅子に座り、紫煙をくゆらせる。

 リズが屋台に飯を買いに行っている間に、リッツがあの時の事を話してくれるようだ。


 「そうだな・・・お前、俺の煙草を吸っただろう?」

 「あぁ、そいうや吸ったかもな」


 あの時は怪我で朦朧としてたというか、ハイになってたからあんまり覚えてないんだよな。


 「この煙草な、麻薬だ」

 「麻薬!?」

 「あぁ、常人にとってはな・・・だからもう、吸わない方が良い。常人が吸えば、強い幻覚と酩酊感に襲われて動けなくなる。幸い、依存性はそこまで強くないが・・・毒であることは確かだ」


 それであんな夢を見たのか?しかし・・・


 「自分は常人じゃないような言い方だな」

 「あぁ、そうだな・・・旅の目的が俺の病気を治す為だというのはもう気づいてるな?」

 「あぁ、グノームの所でリズが言ってたからな」

 「この煙草は麻薬ではあるが、使用者の魔素抵抗力を一時的に高める効果がある・・・俺にとっては薬だ」

 「魔素抵抗力?」

 「この病気は、身体が魔素に侵食されていき、筋力、反応速度、耐久性・・・身体のあらゆる機能が向上する。そのかわり、狂暴な性格となり、いつしか自我を失ってしまう・・・」

 「おい、それって・・・」


 そんな馬鹿な。アレは人間には罹らないんじゃなかったのか。


 「そう、火竜と同じ・・・魔物病(・・・)だ」

 「・・・人間も、かかるのか。しかし、あの姿は・・・」

 「人間は俺が初めてだろうな。ひょっとすると、人知れず発症して殺された者もいるかもしれないが・・・騒ぎになっていない所を見ると、俺が初めてだろう」

 「・・・魔物病の原因はわかっていない。ある日突然なる病気だ・・・それが、人間もかかるとわかれば・・・」

 「そうだ。人々は疑心暗鬼となり、疫病の様な差別と虐殺が生まれるだろう」

 「だからリズはあんなに必死になっていたのか」

 「だろうな。直す手立てが見つかれば、これを公表できる」

 「リズとは幼馴染なんだろう?そんな打算的な考えだけじゃないと思うがな」

 「まぁな。俺は人知れず消えるから良いと言ったんだが、今の言葉で説得されてな・・・貴方以外の者がいつ発症するともわからない。ならば、その身を捧げて生きなさい、とな」

 「リズらしいといえばらしい。で、あの姿はそれで?」

 「あぁ。人間の場合は、発症が段階的のようだ。この煙草()で抑えているのもあるが・・・動物と違って、すぐに理性を失うということも無いらしい」

 「そういやヴルカンも言ってたな。火竜に奴の欠片が侵入して、ついには理性を失ってしまったと・・・つまり、高位の竜や人間といった自我のある者はある程度抵抗力がある、ってことかもな」


 ()の欠片、か・・・ヴルカンがそう呼ぶ奴というと・・・やはり滅ぼすことはできなかったんだろうか。


 「かもしれないな。奴の欠片とやらが何を指しているのかはわからないが・・・一歩前進といったところか。まぁ、火の精霊王はあの後現れずじまいで、話も聞けなかったがな」

 「俺達はあいつの依頼をこなしたんだ。その内現れるだろうさ」

 「かもな・・・で、あの姿についてだが。あれは一時的に俺の体内魔力を活性化して、魔物病を進行させた。それであの力が出た訳だ」

 「なるほど・・・ってことは」

 「最終的には肌が青くなり、魔族の様な姿になるだろうな・・・角は消えたが、肌はまだ一部青いままだ」


 そういうとリッツは腕の包帯を解いて俺に見せる。角は消え、肌も一部元に戻ったようだが、前に比べて青い部分が多くなったらしい。


 「すると、魔族ってのはひょとして・・・」

 「あぁ、俺の先輩かもな。元からそういう種なのかもしれないが。理性を失った魔族ってのは聞いた事がないからな」

 「そうか・・・何故それを俺に?この話が広まるとまずいんだろ?」

 「確かにまずい。が、仲間(・・)に疑問を持たれたままでは旅が立ち行かなくなるだろう。それに、お前をそんな奴だとは思っていない」

 「仲間、か。意外だな。お前が俺をそう思っていたなんて」

 「リズの手前、最初は警戒していただけだ・・・あいつは、簡単に人を信じるからな。俺がブレーキ役なのさ」

 「カイも神官のせいかほわっとしてるし・・・苦労人だな」

 「お前がいうな」


 クツクツと俺が笑うと、リッツはそっぽを向いてしまう。照れてんのか?


 「ところで、お前の傷は何なんだ?火竜のせい、という訳でもなさそうだが・・・」

 「あぁ、これか。そうだな、そっちが話したんだ。俺も話さないとな・・・まぁ、他の皆が揃ったら説明するよ」

 「そうか・・・どうやら、騒がしいのが帰ってきたぞ」

 「たっだいまー!イース!いい子にしてた?オコノン買って来たよ!!・・・何?」


 病室のドアを勢いよく開いてリズが姿をあらわす。

 買ったばかりなのか、その手には湯気をあげるオコノン―生地にお好みの具を入れて焼き、ソースと青のりを掛けたもの―を大量に抱えたリズの姿があった。


 どんだけ買ってきてんだ。そんなに食えるか!

 顔を見合わせて苦笑する俺とカイを怪訝な目で見つめるリズからは、ソースのいい匂いが漂って来た。




 ◇◇◇◇◇◇◇




 「何よ、妙に仲良くなっちゃって」

 「別に仲が悪かった訳じゃない」

 「む~、怪しい・・・変な道に目覚めないでね?」

 「何いってんだ・・・?」

 「気にするな。昔からリズは少し頭がおかしくなる時がある」

 「何よそれ!」

 「まぁまぁ・・・」

 「これ買ってくるのも大変だったんだから。英雄様!とかいって囲まれるわ、屋台のおじさんはお金を受け取らないわ・・・ここに帰って来るのも、バレないように捲いてきたんだからね」

 「そりゃぁご苦労なこって」

 「・・・イースは治ったら私達を・・・特に私を労う必要があるわ。心配かけた分も含めてね」

 「はいはい、わかったよ、何か考えるよ」

 「約束よ?」

 「リズ、あいつら(・・・・)は現れなかったのか?」

 「えぇ、今日は現れなかったわ・・・諦めたのかしら?」

 「そんなタマには見えなかったが・・・」

 「あいつら?」

 「あぁ、さっきちょっと困った事もあるって言ったでしょ?それがね・・・」

 「むっ、待て、誰か来る」


 リッツがリズを制し、立てかけてあった槍を手に取る。

 何者かがこちらに近づいているらしい。こんなに堂々と来る所を見ると、刺客って訳でも無さそうだが・・・そもそも、刺客に狙われるような事してないしな。


 リズが入って来た時の様に、ドアが勢い良く開かれ―というか弾き飛び―、筋骨隆々の偉丈夫が現れた。


 「はっはっは!こんな所に隠れておったか!さぁ!尋常に勝負せぃ!」

 「ちょっと!ここどこだと思ってるの!治療院よ!」

 「大丈夫だ、他の患者に迷惑を掛けては―おぉ?何という傷だ。さぞ激戦であったのだろう。よかろう、お主もまた戦士だ!快癒の暁には二度とそうならぬ様、某が稽古をつけてやるぞ!」


 何だ、この暑苦しいおっさんは。っていうか何勝手に話を進めてんだ。稽古なんていらねぇよ。

 見た所40代前半の様だが、防具の意味を成しているのかと疑うようなハーフアーマー?を素肌―流石に下半身にはズボンを履いている―に着込んだ、ムキムキのおっさんだ。

 振れるのかと疑う程大きな斧を背負い、無駄に胸を張っている。暑苦しい。

 それ、胸の部分要るのか?もう腕だけでいいんじゃないのか。


 「少年の見舞いとは感心なり。流石はドラゴンスレイヤー。高潔な精神もまた良し!!」

 「誰が少年だ!立派な成人だ!」

 「む?そうか、それは失礼した」

 「お、おう、わかればいいんだが・・・なぁ、こいつ、何だ?」

 「これが、その困った原因よ・・・」

 「おぉ、名乗りがまだであったな。某は、Aランクパーティ『紅の剣』が一人、豪斧のザクルゼン!我らが依頼を代わりに果たした豪の者が居ると聞き及び、果し合いに参った!!」

 「Aランク?依頼って、まさか・・・」

 「そう、道具屋の御婆さんが言ってた、火竜討伐を請け負ったパーティーみたいね。依頼を横取りした訳じゃないけど・・・」

 「それは良いのだ!民草に平穏が訪れれば問題は無い!お主達はギルドの依頼金目当てでも無いらしいからな!しかし、我らにとっては依頼未達であり、ドラゴンと戦うという稀有な機械を逃してしまった!ならば!そのドラゴンを倒した者と戦えば良いではないか!!」

 「・・・何いってんの?こいつ」

 「・・・私にもわからないわ」

 「・・・こういう馬鹿はたまにいるが、それがAランクというのが厄介だな」

 「聞けばお主らはEランクパーティにも関わらず、住民の為に立ち上がったと言うではないか!しかも、溶岩から街を守るために不毛の火山をあの様に変えてしまったとか!相手にとって不足無し!!」


 Eランクパーティ?リズ達は冒険者じゃないし、俺を含めた3人は雇われてるだけだから・・・って、そうか。非冒険者の集団でも、依頼を便宜的に行う場合にはEランクパーティとみなす、とかいう規定があったような、なかったような。

 それよりも・・・


 「住民の為に立ち上がった?」

 「気付いたらそういう事になってたのよ。違うって言ったんだけどね」

 「しかもイース、お前がやった最後のアレ(・・)で、もはや俺達は祭り上げられるレベルだ。気が重い」

 「アレって?」

 「ほら、グノームに頼んで地形変えたでしょ?山がうねるわ、木々が急激に生い茂るわ、元に戻すどころか凄い事になったんだから」

 「それは・・・俺のせいじゃねぇよ、グノームに言ってくれよ」


 あるべき姿に戻してくれ、と言った気がするが、それがそんな大事になるとは。


 「何と!あの奇跡を起こしたのはその小僧であったか!ヘファイトスに着いたかと思えば山がうねって溶岩を山頂に押し戻すという信じられないものを見たわ!はっはっは!!」

 「・・・で?こんな所まで何の用だ?ザクルゼンとやら」

 「うむ!そこの女子・・・はまぁいいとして、その男までも某との勝負から逃げるのでな!こうして説得に出向いているという訳だ!!」

 「説得というか、もうただの付きまといだろう」

 「なぁ、その勝負とやらを受けてこっちに何か得があるのか?」

 「得だと?嘆かわしい!ドラゴンスレイヤーとも思えぬ女々しさよ!強敵がそこにいる・・・それだけで血沸き肉躍るではないか!!」

 「・・・どうしたらいいんだ?これ」

 「だから困ってるのよ・・・」

 「強いて言えば!豪斧たる某と立ち会える事が喜びとなろう!さぁ!武器を構えぃ!!」


 筋肉の―ザクルゼンの瞳に剣呑な光が宿り、思わずリズとリッツが武器を構えかける。

 やめろ。構えたらここでおっぱじまるぞ、と制止しようとしたその時、ザクルゼンに劣らぬ怒声が響き渡る。


 「何やってるんですか!ここは病室ですよ!出て行きなさい!!」

 「む、看護婦か。暫し待たれよ!これは尋常な勝負である!恨みつらみなど無いので安心せぃ!」

 「安心できますか!ここは病室です!他の患者もいるんですよ!怪我人を捕まえて何を言ってるんですか!!」

 「そこの小僧には何もせん。某は―」

 「黙りなさい!!治療院(ここ)では私達がルールです!!これ以上はギルドに抗議してランクをはく奪しますよ!!」

 「む・・・それは困る。某のみならば良いが・・・」

 「紅の剣を対象として抗議します!!また、貴方がたにはどこの治療院でも施術を受けられないようにしますよ!さぁ、わかったなら出て行きなさい!!」

 「む・・・ぬぅ、ここはひとまず預けよう。しかし、某にも矜持がある。小僧も含め、快癒の暁には正々堂々と立ち合おうぞ」


 ザクルゼンは心なしか残念そうに顔を伏せると踵を返して病室を後にする。

 何とも厄介な奴に目をつけられたもんだ。


 「はぁ、何だありゃ」

 「私も理解できないわ。Aランクといえば、素行に問題のある人が到達できるレベルでは無いんだけど・・・」

 「性格がアレなだけで、素行不良までは行かないんだろうな。Aランクともなると、どこかぶっ飛んでる奴が多いからな」

 「ご無事なようで何よりです。ところで・・・」

 「あ、助かりました。ありがとうございま―」

 「このドアを壊したのは、誰ですか?」

 「え?」

 「この、ドアを、壊したのは、誰ですか?」

 「あー、えっと、さっきの筋肉ダルマ、です・・・」

 「そうですか。あのクソ虫が・・・看護という名の地獄を見せてやろうかしら・・・ふふふっ」


 清楚な看護服に身を包み、暗い笑顔を浮かべる看護婦に俺達は戦慄する。

 こ、怖えぇ・・・


 「ところで貴方たち」

 「ひゃ、は、はいっ!」

 「それ(・・)は何ですか?」

 「そ、それ・・・?」

 「その、オコノンです」

 「あぁ、これはお腹の空いたイースの為に・・・」

 「病み上がりでそんなものを食べさせてはいけません」

 「え、はぁ・・・」

 「数日間食べ物を胃に入れていないと胃が収縮していて満足に食べられず、吐いてしまいます。下手をすれば死んでしまいますよ?」

 「死・・・!?」

 「まずは、おかゆ等の流動食からです・・・いいですね?」

 「「「は、はいっ!」」」


 看護という名の地獄を見たくない俺達は、看護婦の言葉にただ従うしかなかった。


鬼の期末も終わり、ハロウィンも終わり、ようやく更新再開する余裕・・・はあんまりないけど、頑張って更新したいです(`・ω・´)くわっ

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