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魔王が求める平穏生活?  作者: アバン
第三章 火の精霊王編
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第25話 ぶきぼうぐは そうびしないと こうか が ないぞ !


 「ほれ、出来たぞ。これがイースで、これが嬢ちゃんで、こっちがでかいのだ」

 「わぁ・・・これが・・・」

 「ほう、流石ドワーフの鍛冶師・・・」

 「折れた嬢ちゃんの剣も打ち直しておいた。特殊な素材は使っちゃいねぇがあれもかなりの業物だ。勿体ねぇからな。ほれ、説明してやるからこっち来い」


 俺達は鍛冶師のコラッドから武具完成の連絡を受け、アイアンキングにやって来ていた。

 まぁ、連絡を受けというか、手伝わされてた俺が皆を呼んだだけなんだが。

 本当にコキ使いやがって・・・関係ない武具の手伝いもやらされたぞ。


 「まずは嬢ちゃんだな。まずこの剣。これは元々嬢ちゃんが持ってた剣を打ち直したものだ。二本目の予備剣としちゃぁ贅沢だな。そのまま直すのも芸が無ぇんで、火属性を付加しといた」

 「火属性・・・」

 「火属性っておい、これから俺達は火山行くんだぞ」

 「けっ、大体の生物は火に弱ぇんだ。火山ではミスリルの剣使いな。で、これがそのミスリルの剣。銘はモルスハインダー」

 「モルスハインダー?」

 「エルフ語か?死を阻む者、ってとこか」

 「ドワーフの俺がエルフ語何て使うかよ!これは神代語・・・エルフ語の元になった、神が人類に最初に教えたとされる言語だ。まぁ、中身はあんまり変わらねぇがな」

 「あぁ、あの教会とかに彫られている文字ですね」

 「そうだ。俺達ドワーフは会心の作品に神代語で銘を付ける。神の武器・・・神造武具にも引けを取らない作品だってな」

 「神造武具?」

 「有体に言やぁ神が作った物の事だ。実際は小人族や妖精が作ったモンも含まれるんだが・・・まぁとてつもないもんだと思えばいい」

 「つまり、ドワーフに銘を付けられた武具はそれに匹敵すると・・・?」

 「匹敵すると思って俺達は作ってるがね」

 「で、何か特別な効果が付いてるのか?この剣」

 「あぁそうだ、効果な・・・このモルスハインダーは身体能力の向上と、危険察知の効果を持ってる」

 「身体能力はわかりますが・・・危険察知ですか?」

 「あぁ。この剣を持つだけで剣の魔力と使い手の魔力が同調し、増幅されて身体強化の魔法と同じ様な効果が表れる。つまり、筋力や耐久力が一段階上がる。危険察知は、この剣が使い手にとって危険だと感じる何かを察知した時に、光って使い手に知らせる」

 「剣が、危険を感じる・・・」

 「ミスリルは意志ある金属だ。精霊の様に意思があったり喋ったりする訳じゃねぇが・・・まぁそういうモンだと思っておけ」

 「わかりました」

 「ちなみに、使い手が不甲斐なさすぎると剣が使い手を見限る事もあるから気を付けな」

 「えぇっ!?」

 「さて、次はこの胸当てだ」

 「え、ちょ、見限るって・・・」

 「よっぽどの事が無い限りは大丈夫だ。特にそれとこれは嬢ちゃん用に作ってるしな。で、この胸当てだが・・・これは基本的に直しただけで、ほぼ手は加えてねぇ。だが、嬢ちゃん用に直したおかげで、属性軽減は元々ついてた火・風・雷以外も軽減するようになった。最終的な効果は全属性の軽減と、自己治癒促進だ」

 「全属性軽減ってすごくないか」

 「俺様の腕のおかげよ。自己治癒促進はそのままだ。これを着ていれば傷の治りが早くなる。といっても回復魔法の様に目に見える様な速度じゃねぇけどな。その副次効果で、おそらく疲労が溜まりづらい筈だ」


 危険察知、身体能力向上、自己治癒促進か・・・どれ程の効果かは知らないが、これでリズは前衛として一流所ともやり合える位になるんじゃないだろうか。


 「次はでかいのの槍だな。銘はコーディウム。意味は貫く者だ。特別な効果は無いが・・・ある程度の距離で名前を呼べば、手元に戻ってくる」

 「ほぅ・・・」

 「手元に戻ってくるぅ!?」


 十分特別だよ!


 「投槍として使っても取りに行かなくていいってことだ」

 「それは助かる。戦術の幅が広がるな」

 「槍と離れすぎると効果が無いからその辺は試して見極めな。で、最後にイースだ」

 「お、おう」

 「全くお前ぇの注文は面倒なのが多い・・・ほれ、これだ。要望通りの長さと軽さ。中剣とでも言えばいいのか。銘はクアエシトール」

 「探索者、か?」

 「あぁ、探索者やら探究者ってとこか。効果は魔素分断と自己修復機能だ」

 「分断?修復?治癒じゃなくて?」

 「自己修復は、この剣が多少欠けたりしても自分で直る。使い手の傷じゃなくて剣が直る。だから治癒じゃなくて修復だ。で、魔素分断は魔素を切り裂ける・・・つまり魔法を切れる」

 「魔法を・・・何だか凄すぎて感覚がマヒしてきたわ」

 「・・・俺もだ」

 「流石に折れたりしたら駄目だろうがな。この3本に共通する事だが、ミスリル製だから強度と切れ味は折り紙付きだ。鋼鉄製の剣と打ち合おうとすると、そのまま剣を切り裂いちまう位だな」

 「やったのか?」

 「あぁ、試し切りでぶつけてみたんだが・・・水を切る様に手ごたえ無く切っちまった。嬢ちゃんの持ってた剣ぐらいの業物じゃねぇと打ち合う事すらままなら無ぇだろうよ」

 「剣の切れ味を自分の技量だと勘違いしない様に注意する必要がありそうね・・・こればっかり使っていると、自分の腕が訛りそうだわ」

 「若い割にわかってんじゃねぇか、嬢ちゃん。強すぎる力は驕りを生む。慢心してると、イザという時に足元掬われるぜ」

 「注意しよう」

 「で、ついでと言っちゃぁなんだが、お前の手袋も直してある。さすがにもう入らなかっただろ?」

 「あぁ、竜皮のグローブな」

 「竜皮!?」

 「ミスリル糸を編み込んだ下地に竜皮を散りばめている。ちと重いが耐久性は抜群だぞ」


 相変わらずいい仕事だ、コラッド。


 「あとブーツだな。これもつま先と靴底をミスリルで補強してある・・・こんなモンを揃えて、お前は何と戦うつもりだ」

 「人生は何が起こるかわからない。命を守るためにはできる限りの事をしておいかないとな」

 「A級冒険者でもこんな装備揃えられねぇぞ・・・それこそ、統べからぬ七王達位しかこんなモン持って無かったんじゃねぇか?」

 「あの伝説の?」

 「あぁ。話によるともっと凄ぇもん持ってたらしいけどな。当時は随分と噂になったもんだ。結局、魔神を倒しても魔物病は無くならなかったけどよ」


 前世では気付けば邪神と戦わされてたからな。何が起こるかは本当にわからん。

 しかし、伝説とか言われるとすごく居心地が悪い。確かに装備はミスリルどころじゃなかったが・・・人から昔の自分の話を聞くのは初めてだな。


 「ま、お前ぇらもゆくゆくはそんな大仰に語られる事になるかもしれんぞ。なんせそれだけのモノを作ったからな!がはははは!」

 「えぇ、ありがとうございました、コラッドさん」

 「ほれ、最後に小っこい嬢ちゃんのローブだ。これも持っていきな。また珍しい素材があったら持って来いよ?」


 終始上機嫌なコラッドを背に俺達はアイアンキング(鍛冶屋)を出る。

 出費も嵩んだが・・・いいものを手に入れる事が出来たな。これでそこいらの魔物や野盗に負ける事は無いだろう。


 「じゃ、宿屋に戻りましょう。そろそろ王都から呼んだ商隊が来る頃だわ。本当は試し切りをしたいけど・・・魔獣かドラゴンでも襲って来ないかしら?」

 「おい、何物騒な事言ってんだ・・・火山に着くまでに魔物くらい出るさ」

 「そうだな。火山にはコレに慣れる為にもゆっくりいくか」

 「良かった。またケツが痛くなるのかと思ったよ」

 「そうそうあの魔物馬車は使えないわよ。私達を降ろすと同時に走り去ったから依頼もできないしね」

 「そりゃぁリズが悪いんじゃ・・・ん?」


 宿屋に着くと、そこには頑丈そうな馬車とそれを囲む物々しい冒険者達が立っていた。

 あれが商隊か?


 「どうやら着いている様ね」

 「何だ、お前たち!こっちをジロジロ見て・・・悪さを働こうってんなら容赦しないぞ!」


 馬車の前に立っていた冒険者が剣を抜き、こちらを向いて構える。

 ふむ、構えがなってない。これならリズの方が腕は上だな。


 「やめないかお前たち!この方は私のお客様だ・・・剣を引け!」


 応戦するのが面倒だな、どうするかと思っていた矢先、騒ぎを聞きつけたのか宿の中から仕立ての良い服を纏った中年の男性が出て来た。

 どうやらこいつがその商会の遣いらしい。


 「申し訳ございませんでした、エリザベート様」

 「いいえ。貴方の扱う品物を考えれば当然の配慮よ。よく来てくれたわね、ケシュマー。まさか貴方が直々に来るとは思っていなかったわ」

 「エリザベート様のご用命とあらば当然です。リッツガルド様も、お久しゅうございます」

 「・・・我々はただの旅行者だ。あまり大仰な事はするな」

 「おぉ、そうでした。そうでしたな・・・では、中でさっそく商談を―おや?」

 「あん?」

 「エリザベート様、こちらの方もお仲間の方ですか?」

 「えぇ、仲間のイースよ。そういえば紹介していなかったわね・・・このケシュマーは王都で最大の商会の商会主なのよ」

 「お初にお目にかかります。ケシュマー・ケシュメルと申します。ケシュメル商会という小店を営んでおります」

 「ケシュメル?あぁ、あの貴族なのに商人をしてるっていう変わりも、いや、有名な」

 「はっはっは、商売に貴族も平民もありませんよ。よろしければお名前を伺っても?」

 「あぁ、イースタル・レグスだ。いい取引になる事を期待している」

 「ほう、あの鮮血の・・・どうりで貴族相手にも物怖じしない訳だ。よくあのマーナー男爵がレグスの名を持つ者を手放しましたな」

 「鮮血?」

 「おや、ご存じない。彼は・・・イースタル・レグス殿は地方領主のマーナー男爵家に仕える家臣の家系ですよ。先の大戦で先帝陛下から家名を賜った・・・貴族では無いですが、有能な人材を輩出すると評判の一族です」

 「そうなの?」

 「そういえば数年前、シュトロック領で不可解な事件が起きたとか・・・あとは、王立学園が稀代の天才を匿っているとも」


 リズが俺の方を向き、問いかけてくる。

 確かに言ってなかったが、別に自分から言う事でもないしな。俺は別に仕えていない訳だし。


 ケシュマーは俺の首にかかったペンダント(卒業証明)をちらりと見てつぶやく。

 カマ掛けが露骨だよ。


 「有能な人材かどうかはともかく、親父がカインドル・シュトロック・マーナー様に仕えているのは事実さ」

 「いやいや、中々の御手前と見えて・・・そのローブと杖、見せて頂いても?」

 「悪いな、これは恩人からの貰い物なんだ。売る気は無い」

 「はっはっは!これは見透かされてしまいましたな。なに、ほんの好奇心。商人にとっては挨拶の様なものですよ。気を悪くされたなら申し訳ない」

 「いいから中に入るならさっさと入るぞ。ここじゃぁ目立ってしょうがない」

 「おぉ、そうですな・・・では、エリザベート様。中に部屋を取っておりますので、そちらで」

 「えぇ、よろしく頼むわ」

 「・・・そうそう、お父上からご伝言を賜っております。そちらの件は後ほど・・・」

 「・・・っ!え、えぇ、わかったわ・・・」


 何やら身を固くしたリズを先頭に、俺達は宿に入った。


主人公一行の装備強化回でした。

武器や人の名前を考えるのは辛い・・・というか武器とか技の名前って中2心を燃やさないと付けられないよね(´・ω・`)

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