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魔王が求める平穏生活?  作者: アバン
第二章 学迷都市編
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第18話 ダンジョン ―Easyモード―


 「で?お前らは何でこんな枯れた迷宮の最奥を目指すんだ?」


 不幸な遭遇から4日。エリザベートら4人が食料やら何やらを買い込んで我が家に転がり込んできた。

 上層を踏破した、といっても魔物も少ないし、上層は魔素が薄い為、大した罠や敵も出ないからそんなに辛くはなかったろう。

 もっとも、上層だろうと深層だろうとダンジョンは時間の感覚も狂うし、神経を使うものなのだが。


 「お前には関係ない。お前はただここを提供して案内すればいいだけだ」

 「んだとこの!」

 「勘違いするな。お前は仲間でも何でもない。ただ、この迷宮に潜る間俺達のガイドを務めればいいだけだ」

 「もう!リッツは何でいつもそんな言い方しかできないのよ!・・・ごめんなさい。彼も悪気は無いんだけど、ちょっと口調が乱暴で」

 「ふん!まぁ別に仲良くなろうとも思わないけどな!ただ、気を付けた方がいいぞ、のっぽ。いつか後ろから刺されても知らないからな」

 「お前程度の実力のものにやられるか。それとも寝込みでも襲うか?卑しい奴め」

 「ちょっとリッツさん!言い過ぎですよ!」

 「俺がそんな事するか!この先も旅を続けるんだったら一時的にも新メンバーを加えた時にだな・・・あぁ、もうめんどくせぇ、好きにしろ!」


 家に泊めて案内までしてやるのに何でこんな仕打ちを・・・ん、そういえば・・・


 「おいのっぽ」

 「・・・・・・」

 「ひょっとして、お前俺の髪色がこう(・・)だからそんな突っかかって来るのか?」

 「・・・・・・貴様らはいつもトラブルばかり起こす」

 「トラブル起こしてるのはお前だろうが!」

 「まぁまぁ!リッツにレグスの旦那も。落ち着きなって」

 「そうですよ。ここで諍いを起こしても何もならないでしょう・・・リッツさんはもう少し円滑に物事を進める事を覚えて下さい」

 「・・・ふん」


 こいつムカつくな・・・まぁ、学園長から案内しろって言われてるし?こっちも卒業がかかってるから我慢するさ。干渉しないけどな。


 「で?まだ何も答えてもらってないんだが。目的はわからなくても案内自体はできるが・・・何を求めてるかがわからないと最奥でどこを目指せばいいかわからない。あと、今後はそういう予定で進めるんだ?」

 「そうね・・・まず今日はここに泊めてもらって、今後の打ち合わせ、装備の点検、補充とイースタル君との連携を確認して、もう一日泊めてもらって出発、かしらね」

 「まぁ、そんな所か。戦闘でどう動くかわからないと危ないしな。我が家の前にも探せばトレント位いるから、明日は何匹かトレント狩りをして連携確認でいいか?」

 「えぇ、それでいきましょう。イースタル君と話していると成人前?に見えるのに、熟練の冒険者と打ち合わせしている気持ちになるわ」

 「ちげぇねぇ。俺も今まで何人か学園出のひよっこ共を見た事があるが、理詰めで話せる奴は少ないからな」

 「一応命がかかってるんだ、当然だろう・・・と言いたい所だが、確かに浮ついた奴らが多いのも事実だな。まぁ、ピンキリだろう。あと、俺の事はイースでいい」

 「そう?じゃあ遠慮なく。で、イース君はどういう戦いを?」

 「そうだな、実戦は明日見せるとして・・・基本的に俺は、戦闘では役に立たない」

 「へぇ?こんな所(迷宮)に住んでんのに?」

 「あぁ。ここに住んでいるのは俺の体質改善の意味合いが強くてね。そこの魔法使い(無口女)ならわかるかもしれないが、俺は生まれつき体内魔力量(オド)が少ないんだ。少ないといっても、常人程度はあるが」

 「体質改善?」

 「学園長がな、オドが少ないなら魔素の濃い所で生活すればいいなんて言い出してな。オドも少ないけど、俺の身体の魔素抵抗力が弱いらしいんだ」

 「ほぉ。そんなんでよく冒険者になろうと思ったな」

 「冒険者になりたかった訳じゃないんだが・・・ほら、俺の髪はあからさまだからな」


 そう言って俺は自分の髪をつまんで見せる。


 「あぁ・・・」

 「そんな訳で、身体強化できない・・・訳じゃないが、長く続かないから前衛もできない、魔法を何回も使う事ができないから後衛にもなれない」

 「おいおい、するってぇと何ができんだよ」

 「そうだな、道案内と、荷物持ちと・・・応援かな」

 「ぶっはっはっは!応援か!そりゃぁ盲点だったわ!」


 ゲインが嘲る様に大笑いする。何も出来ないって言ってる様なもんだからな。まぁ、仕方ないか。


 「ちょっと待って。魔法を何回も使う事ができないって事は、何回かは使えるの?」

 「ん?あぁ、そうだな・・・今の魔力量なら・・・一日に中級を数発って所かな」

 「ほう、じゃあ一応魔法使いなのか。一日数発でも、魔法使いが増えるのはありがてぇな。属性は?」

 「全部だ」

 「は?」

 「だから、全部だ」

 「・・・ひょっとして、全属性?」

 「あぁ」

 「マジかよ!?かぁ~、もったいねぇ~!」


 ゲインがやっちまったと言う様に顔に手を当てて天井を仰ぎ見る。こいつはいちいちリアクションがでかいな。


 「全属性で中級魔法を・・・学園長が手元に置いて育てようとするのもわかるわ」

 「まぁ、俺はそんな所だ。だから、あまり期待はしないでくれ」

 「わかったわ。基本は後衛に控えてもらって、ここぞという時に魔法を使ってもらおうかしら・・・味方に当てないでね?」

 「素人じゃあるまいし、そんなことするか」

 「いややいや、学生は素人みたいなもんだろ・・・って睨むなよ」

 「・・・・・・・まぁ、そうだな。道中ではリーダーに従うさ。一時でもパーティに入るんだからな」

 「それを聞いて安心したよ」

 「で?そっちの編成は?何となく雰囲気でわかるが」

 「そうね、前衛が私とあっちのリッツ・・・イースタル君のいうのっぽの2人よ。私は剣、彼は槍。で、このゲインが遊撃で・・・彼はスカウトだから戦闘もこなすけど罠や索敵の意味合いが強いわ」

 「そうだろうな」

 「で、あっちの・・・服でわかるでしょうけど、カイが神官で、シャルが魔法使い。後衛よ」

 「攻守共にバランスが取れてるな。バランス取れる様にこのゲインと無口女を雇ったんだろうけど」

 「そうね、2人には助けられてるわ」


 その後も主に俺とエリザベートとガインの三人で今後の方針を詰めていく。必要事項は30分程で大体煮詰まった。


 「こんな所かしら」

 「そうだな」

 「あぁ、こんなもんでいいと思うぜ。後は明日実際に戦ってみてすり合わせだな」

 「で、旅の目的・・・とまでは言わないが、ここ(迷宮)の目的は?」

 「そうね・・・私達は、この裏迷宮にある精霊が居ると聞いてやって来たの。この迷宮の目的はその精霊に拝謁(・・)することよ」

 「精霊?」

 「そう、土の・・・精霊王よ」




 ◇◇◇◇◇◇◇




 「ようやく下層か。魔物が少ないとはいえ、やっぱりそれなりに神経使うな」

 「そうね。でも、前と違って手の込んだ罠に警戒しなくていいのは楽よね?」

 「おい、それを蒸し返すなよ」

 「あはは、ごめんごめん」


 俺達6人は、裏迷宮の下層にたどり着いた。さすがにこの身体になってから下層に来た事は無い。危ないしな。

 あとは前世の記憶を頼りに法則を見つけて最奥に行くんだが・・・守護者はいないよな?


 「とりあえずここでいったん休憩しましょ。イース君は下層にも来た事あるの?」

 「前にパーティで何度かな。構造がかわるから何ともいえないが、まぁある程度はわかるさ」

 「頼りにしてるわよ」


 思い思いに休憩していると、シャルロット(無口女)が俺に近寄ってくる。


 「イース。ふわふわ」

 「あのさ、休憩の度に俺の頭さわりに来るのやめてくれない?」

 「ふわふわ、撫でられるの嫌?」

 「いや、まぁ嫌というか、居心地が悪いというか・・・」

 「ふふっ、そうしていると仲の良い兄妹みたいですね」

 「私の方がお姉ちゃん」


 シャルロット・・・シャルは俺より3つ年上の17らしい。とてもそうは見えないんだが・・・17でDランクの冒険者ということは、それなりに才気ある魔法使いのようだ。

 まぁ、前世も入れたら俺の方が断然年上だけどな。

 俺の頭を撫でるシャルを見て、カイとリズがほっこりする。止めろよ。


 「イース、弟になる?」

 「何言ってんだ」

 「シャルロットさんは相当イースタルさんを気に入っているようですね」

 「気に入られても・・・なぁ?」


 一応好意を向けられているようなので、無下にしづらい。なんかこう、エリー(お嬢様)と似てる部分があるというか、妹な感じなのにお姉さんぶってる所が何とも無下にしづらい。


 「そんなナマイキな所もかわいい。イースは魔法の使い方がうまいから、きっとオドの量が増えれば私を超える」

 「魔法の使い方?」

 「そう。普通、この魔力量じゃ中級魔法一発すら打てない」

 「そうなんですか・・・天才兄妹ですね」

 「えへん」


 おい、シャル。口語じゃわからないが、カイはきっと俺を兄として「きょうだい」って言ってると思うぞ。


 「おい白髪頭。本当にこの先に土の精霊王がいるのか?」


 (不本意ながら)達がじゃれ合っていると、紫煙をくゆらせながらリッツガルド(のっぽ)が近寄ってくる。こっち来んな。


 「知るか。とりあえず最奥に入ったら魔素の濃い方に案内するが、俺は精霊王がいるかどうかなんて知らん。お前らが勝手に言ってるだけだろ」

 「ちっ、役立たずが」

 「てめぇ・・・」

 「まぁまぁ!どちらにせよ行かなければわかりませんし!」

 「おら!手前ぇら!喧嘩する元気があるんなら先に進むぞ!リッツの旦那も焦れるのはわかるが、年下に当たるもんじゃないですぜ」

 「・・・ちっ、行くぞ」

 「ごめんね?イース君。リッツも悪い人じゃないんだけど、昔ちょっと忌み・・・何というか、嫌な思い出があるみたいで」

 「あぁ、忌み子ってのはそんなに気にしてないからいいよ。それよりもリズとカイ、それとあののっぽが幼馴染なんだろ?よくあんなのと仲良くできるな」

 「ははは・・・リッツさんは根は良い人なんですよ?ちょっと気難しい時がありますけど・・・その内仲良くなれますよ」

 「仲良くなろうとは思わないけどね」


 そんな無駄話をしながら休憩を切り上げ、奥へ進む俺達。

 3時間程だろうか。下層を進んだ奥に、下に降りる階段があるであろう部屋を閉ざす、重厚な鉄扉が姿を現した。


 「さて、ここを降りれば恐らく深層、最奥だが・・・気づいたか?」

 「あぁ」

 「えっ、何が?」

 「意外とすんなり着きましたね」

 「・・・敵が少なすぎる」

 「そうだ。坊主やシャルの嬢ちゃんは気づいた様だが、中層までと比べて魔物が極端に少ない。というか、いなかった」

 「枯れた迷宮だから、そんなものなのでは?」

 「お嬢達はこれが初の迷宮だからわからないかもしれないが、基本的に迷宮は奥へ行くほどに魔物が強力になり、数も増える。魔素が濃いからだ。それが、中層まではまばらに魔物が出たのに下層にはいない。そうするとだ・・・」

 「守護者がいる可能性がある、だろ?」

 「ご名答」

 「こっちの迷宮は枯れてるんじゃなかったの?」

 「枯れているからこそ、守護者に下層の魔物の分も魔素を集めているのかもしれない。まぁ、過去にこっちに潜った奴の話だと宝も守護者もいないってことだったが・・・何十年も放置されて守護者位は出たのかもな」

 「何であれ蹴散らすだけよ。少し休憩して進みましょう。出るとしたら、どんな守護者なのかしら」

 「そうだな・・・今の迷宮が出来る前、こっちしか迷宮が無かった頃はドッペルゲンガーが守護者だったが・・・果たしてどうかな」

 「へぇ、良く知ってんな。ドッペルゲンガーか・・・もしそいつが復活していると、誰に化けるかで厄介だな」

 「あぁ。区別がつくように、合言葉を決めていこう」

 「ドッペルゲンガー!?あの妖精か魔物かよくわからないっていう?・・・合言葉は「なんとかなるさ」よ!とにかく行きましょ!」

 「あっ、おい、お嬢!休憩はどうした!・・・ったく!またお嬢の悪い癖が出やがった!」

 「・・・基本的にあの子は馬鹿」

 「仕方ねぇ、追いかけるぞ!」


 残された俺達4人は先に走り出したリズとのっぽ―リッツはリズが走り出したと同時について行った―を追いかける。

 リズの開けた扉をくぐり、階段を降りるとそこには、周りの壁が淡く光る広間があった。

 どうやら守護者は居ないようだが・・・部屋の中心に大きな岩塊が見え、その更に後方に装飾の施された扉が見える。


 「どうやら守護者はいねぇようだな。あの扉の奥に精霊王が?」

 「あぁ、奥に強い魔素を感じる。精霊王かどうかはわからないが、何かいるのは確実だな」

 「案外楽にたどり着けたわね!」

 「リズさん。守護者がいなかったからいい様なものの、いつも慎重に行動して下さいとあれほど・・・」

 「大丈夫よ!みんなの力を合わせればなんとかなるわ!」

 「・・・こうなったリズに何を言っても無駄だ。とっとと行こう」


 そんな事を話しながら俺達が中心の岩を避けて扉に進むと、足元から微かな振動が伝わって来た。


 「なんだ?地震か?」

 「自身程度で迷宮は崩れないと思うが・・・万一を考えて急いだ方がいいかもな」


 俺達は装飾の施された扉に駆け寄り、扉を開こうとするも・・・開かない。


 「んー、もうっ!何で空かないのよ!」

 「何か仕掛けでもあるんでしょうか」

 「守護者が居なければ扉は開くはず・・・って、何か地震強くなってきてないか?」

 「・・・これは予想外」

 「そうだなぁ、まさか扉が開かないとは・・・錆てんのか?」

 「・・・違う、戦闘準備」

 「戦闘?扉と戦うとか?まさか」

 「・・・はぁ、みんな、後ろを見て」

 「あん?」


 俺達が振り返ると、先程は広間の中央にあった岩塊が何故か目の前にあった。

 ・・・目の前?まさかこいつ・・・


 「まさか、こいつ・・・」

 「・・・動いたのか?」


 その言葉が引き金になったように、ひときわ揺れが激しくなった途端、目の前の岩塊から太く歪な手足が生え、ずんぐりとした人型を取った。

 人型といっても・・・岩でできた5mはあろうかという巨人だ。


 「ゴーレムかっ!」

 「グオォォォォォオオオオオオオン!!」


 どうやら厄介ごとには手足が生えるらしい。


書き溜め分が無くなりました。休みも無くなりました(゜∞゜)人生ハードモード

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