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魔王が求める平穏生活?  作者: アバン
第二章 学迷都市編
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第15話 今度こそ武器を選ぼう


 「・・・という訳で、この部屋から出る事になった」

 「えぇー、せ、折角仲良くなったと、お、思ったのに・・・」

 「うーん、でもまぁ、住むところが寮じゃなくなるだけで、学園には通うんでしょ?」

 「あぁ。寮母さんの飯が食えなくなるのが非常に残念だがな」

 「ふむ、これも何かのよしみだ。たまに差し入れに行ってやる」

 「最初の印象は最悪だったけど、何だかんだでお前(ガイウス)いい奴だよな・・・」

 「なんだと?」

 「はいはい、荷物纏めなきゃいけないんだがら、その辺にして」


 学園長(くそじじい)の鶴の一声でダンジョンに住む事となった俺は、相部屋の3人に事情を話していた。

 もっとも、俺の魔力だとか封印の事は言わず、将来の面倒事に備えて鍛える為、という名目にしてある。

 もう今の状況が面倒だよ・・・


 「でも、まさかイース君が詠唱破棄までできるとは思わなかったなぁ」

 「そもそも、中級魔法を扱えることや、あの魔力量で魔法を打てる事の方が驚きだがな」

 「そりゃぁ、何だ、あふれ出る才能ってやつ?」

 「なんだと!このっ!このっ!」

 「うわ、やめろって!」


 こんなじゃれ合いもこれで最後か・・・いや、学園の中では会うもんな。


 「それより、知ってるか?うちの(キーリス)先生、賢者を継ぐ者とか言われてたらしいぜ?」

 「えっ、本当!?」

 「ほう、王立学園の教師陣は只者ではないと思っていたが、それ程の人物だったとは・・・」

 「そ、その賢者を継ぐ者?ってす、すごい事なの・・・?」

 「なに、知らんのか!?チョピン!」

 「ひ、ひぃ!ごめんなさい!」

 「ほら、ガイウス君、そんな急に叫ばないの。チョピン君もいい加減慣れなよ」

 「ご、ごめん、び、びっくりして・・・」

 「実は俺もその賢者なんたらってよく知らないんだよね」

 「貴様!自分の教師だろうが!」

 「知らないんだから仕方ないだろ!」

 「まぁまぁ!」

 「むぅ・・・仕方ない、無知な貴様らの為に、俺が講釈してやろう」

 「あー、そりゃどうも」


 ガイウスの長ったらしい話を要約すると、賢者を継ぐ者(キーリス先生)は西の賢者・・・生前俺と張り合ったくそじじいの弟子らしい。

 西の賢者が老衰でこの世を去ったのが今から約20年前。そこで、彗星のごとく現れたのがうちの先生だとか。

 みるみる内にBランク冒険者まで駆け上がった先生は、ゼーランディア王国に宮廷魔術師として召し抱えられるも、嫌気が差したのか出奔。しばらくはまた冒険者を続けていたらしいが、数年前からぱったりと噂を聞かなくなったそうだ。


 「それが、学迷都市で教師になっていたとは・・・噂を聞かなくなった訳だ」

 「何か学園長が匿ったらしいからな。多分、生徒ではこの4人しか知らないから、もし外部にばれたらキーリス先生が鬼の様に追って来そうだ」

 「な、なんでそんな事を僕らに、お、教えるのさ・・・」

 「ん?何となく」

 「えぇっ!?」

 「となみに、今でもたまに暗殺者とかに狙われるらしいから、俺達が情報を持ってるとわかったら、暗殺者とかが俺達を情報目当てに狙ってくるかもな」

 「ちょ、ちょっと!やめてよぉ!そんな事知りたくなかったよぉ!」

 「こらっ、イース君!あんまりチョピン君をからかわないで!」

 「ははは、悪い悪い。まぁ、今言った事は結構マジだが、喋らなきゃ大丈夫さ」

 「うぅ、そ、そこは嘘じゃないんだ・・・」

 「おっと、そろそろ授業だな。まぁ、荷物はちょくちょく取りに来るよ。なんせ、まだ具体的にダンジョンの何処にどう住むかすら決まってないし。むしろ、本当に住めんのかな?」

 「むぅ、改めて聞くと凄い話だ・・・」

 「そうだね、キーリス先生(賢者を継ぐ者)じゃないけど、僕らは今、未来の英雄と共に生きてるのかもしれないね」

 「やめろって、クリムト」

 「むぅ、あながち鼻で笑えんな・・・」

 「ガイウスまで・・・」

 「しょ、商売に使えるかな・・・?」

 「ちなみに、俺が詠唱破棄使えるのがバレたら、真っ先にチョピンをシメに行く」

 「うえぇ!?い、言わないよぉ!」


 そんな談笑をしつつ、俺達は部屋から出てそれぞれの授業へ向かう。

 今日は3馬鹿のせいで中途半端に終わった武器適性検査の続きだ。

 まぁ、適性検査というか、色んな武器を試してみて、自分に合った武器、もしくは自分が使いたい武器を選ぶだけだが。


 剣、は多分向いてないだろうなぁ。というか重くて振れない。斧も同じ。

 重い武器は身体強化をしなきゃ実戦レベルでは到底使えない。身体強化するオドがあったら魔法使った方が早いわ。

 弓も無理。当たる気がしない。というか、真っ直ぐ飛ばせる自信がない。


 前世はどう戦ってたっけ・・・基本は魔法で固定砲台・・・でも無かったな。

 身体強化や魔法付与して蹴ったり殴ったり、杖で殴ったり・・・密着して魔法放ったりもしてたっけか?

 結構前出てんじゃねぇか。


 やはり基本は杖術だろうか。杖なら剣や斧、槍よりは軽いしな。

 待てよ、槍?槍か・・・


 自分の扱う武器について考えつつ歩いていると、いつの間にか教室の前に着いていた。

 教室の扉を開けると、自分が最後だったのか、皆の視線が一斉にこちらを向く。

 妙な沈黙が支配する中、一気に爆発したようにキーリス教室の面々がイースに駆け寄ってきて声を掛ける。


 「よぉ、イース!何だ!昨日のアレは!」

 「そうだ!全属性でしかも中級魔法まで!お前は一体何者だ!」

 「イースはやれば出来る子だと思ってたにゃぁ~」

 「こんなに!可愛い顔して!」

 「何で私達を誘わなかったのよぉぉぉ!このぉぉぉぉ!」

 「ちょっ、やめっ、触るな!叩くな!引っ張るなぁぁぁあああ!!」


 一応祝福してくれているのか、バシバシと頭や背中を叩いてくる仲間たち。

 まぁ、それはいいんだが・・・頭を掻きまわしたり、髪の毛を引っ張ったりする奴は何だ!

 ふわふわ獲ったにゃ!って言ってる奴!すぐわかるぞコミコ!


 「お、おや、皆さんお揃いですね・・・」

 「ちょ、先生!止めて!」

 「あー、ゴホン!折角の祝福です。イースタル君は甘んじて受ける様に・・・皆さん!気がすんだら演習場に移動して武器適性検査の続きをしますよ!」


 しばらくして興奮が冷めたのか、飽きたのかはわからないが皆満足?して席に戻っていく。

 止めなかったキーリス先生を恨みがましい目で見ると、先生はニヤニヤと笑っていた。

 昨日の腹いせか?俺のせいじゃないだろうに。

 しかしまぁ詠唱破棄はそんなに話題になっていないようで、少し安心した。


 昨日の様に演習場に到着した俺達は、また思い思いの武器を持って散ってゆく。

 今日は絡まれないで済みそうだ。


 「んー、何にしようかな・・・やっぱり槍と手鋼、短剣のどれかかなぁ」


 俺は短剣と槍、手鋼を持って演習場に進み出る。

 槍は杖術の延長、手鋼も杖術の体術の延長と―少し癪だが―闘王の見様見真似、短剣はその取扱いの良さから。


 俺はまず、手鋼を着けて猫娘(闘王)のやっていた型を思い出しながら試してみる。

 ・・・うん、これ、結構難しいわ。手鋼なら剣に比べて軽いし、何とかなると思ったけど・・・

 闘王の使っていた闘王術―本来はなんたら流って流派だったはずだが、猫娘のせい?で闘王術という呼び方が一般的になってしまった―は属性や魔法効果を纏って戦う技もあるものの、関節技やらの技術的に鍛錬すれば何とか使える技が多いと思ってやってみたが、これが案外難しい。

 まず、手鋼はそんなに軽くなかった。防具も兼ねるので当然といえば当然だが・・・あと、何だかんだいって、身体強化した動きが基本のようで、生身だと無理な動きも多い。さらに言えば、技を使うよりも、力で叩きのめしていた方が多かった気がする。

 つまり、身体強化がないと実戦的な効果を発揮できない点では、他の武器とかわらない。


 次に短剣。短剣は手鋼と違って刃がある分、身体強化に依らずともある程度の殺傷能力には期待できる。が、やはりリーチの差はあるな。

 短剣を主に使うなら、体術との複合的な運用が必須だろう。あとは護身用と割り切るか。

 後は・・・そもそも生身の身体能力で、魔物や身体強化した人間に刃が通るかだな。


 最後に槍。長い分それなりに重いが、剣の様に振り回す訳ではなく突きなので、ある程度今のままでも扱えそうだ。

 ただし、これも今は突き以外満足に扱えないので、一定以上の実力を持つ者には通用しないだろう。


 結局、武器でどうにかするには身体強化する魔力がないと駄目か・・・と思っていると、各生徒を見回っていたキーリス先生がこちらにまわってきた。


 「やぁ、イースタルさん。調子はどうですか?」

 「どうもこうも、身体強化しないとどれも駄目だと思い始めた所ですよ」

 「そんな事言って。中々堂に入って・・・うん?何か違和感がありますね。これは・・・杖術?」


 少し槍を振っただけなのに気づくとは・・・伊達に二つ名がつく魔法使いじゃないってことか。


 「地元では武器を振れる年齢では無かったので。棒切れで色々試してみたんですよ」

 「それにしては動作が完成され過ぎているというか・・・その振り下ろす技、それはスタッフの先に魔力を纏わせて叩き付ける技ですよ?魔法といい杖術といい・・・魔法使いの先生でもいたんですか?」

 「いえ、全部独学です」


 嘘ではない。前世では、魔法は見て覚え、触っ(分解し)て覚え、杖術も魔力頼みで強化した身体でぶつかって覚えた技ばかりだ。

 まぁ、他の魔法使いの動きを参考にしたりはしたが・・・習ってはいない。


 「その年齢でその完成度・・・ますます恐ろしいですね。本当に教えることがなさそうですよ」

 「何言ってるんですか。ちゃんと教えて下さいよ、教師なんですから」

 「教師とは言っても、私はまず入り口の所でどの武器が合っていそうかアドバイス位しかできませんから」

 「こっちは金貨30枚(お金)払ってるんですよ?」

 「うっ、そう言われると・・・何が気になるんですか?」


 俺はしぶしぶ聞いてくるキーリス先生に、身体強化と武器の悩みを聞いてみる。

 よく考えると教えを乞うというのは初めてのことで、変な気分だ。


 「そうですねぇ・・・学園長の試みがうまくいくなら、身体強化はできるようになるものとして考えれば、なんでもいいんじゃないでしょうか」

 「おい」

 「ただ、貴方の魔法の才能を考えると、前衛より明らかに魔法使い・・・魔導師に向いていると思います」


 まぁ、そりゃぁそうだろうな。ただ、それでは前世をなぞっているだけで、新たな技術の習得にはならない。


 「嫌なんですか?まぁ、魔法や杖術は教えることが無い位の完成度に見えますから・・・あり得ないですけど・・・弓なんてどうです?」

 「弓はあたる気がしません」

 「それこそ練習ですよ」

 「練習して竜弦製の弓を引いて、10本の矢を一射で別々の場所に居る敵に当てられるようになりますか」

 「何ですか、その弓の神様は・・・そんなレベルで弓を扱えるのは森の王位ですよ」

 「それに、弓は嫌いなんです」


 魔法のライバルだからな!


 「うーん、まぁ、向いている向いてないでいえば、完全に杖だと思います。後は、自分の好きなものをやってみなさい。皆最初はそんなもんですよ。いざとなったら違う武器を練習すればいいだけですし。何も、ここ(学校)に居る間に武器を極められる訳ではないのですから」

 「そう言われるとそうなんですけどねー」

 「せっかく業物の武器(ファイアナイフ)もお持ちのようですし、まずはナイフから初めてみてはどうですか?」


 うーん、やっぱり、その辺だよなぁ。まぁ、護身で使う位のレベルになればいいか。


 「わかりました。ナイフにしてみます」


 こうして俺の主要武器は、とりあえずナイフに決まった。


ナイフと言っても、果物ナイフの様なものではなく、サバイバルナイフの様な大振りのナイフです。

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