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魔王が求める平穏生活?  作者: アバン
第一章 シュトロック編
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第01話 プロローグ

 「支援魔法行きます!『主よ、世に満ちる聖霊達よ。彼の者に困難に耐えうる鋼の肉体を与えたまえ―セイント・プロテクション!』」

 「ありがてぇ!」

 「あー、もう!こいつ硬すぎるよぉ~~!」

 「邪神といっても神だからな。殴れるだけ御の字じゃないか」

 「そうだぜ!形があるんだから斬れば死ぬってだけ解りやすいぜ!!」

 「もぉ~、だからグリムは脳筋だって言われるんだよぉ~!」

 「なにぃ!?」

 「・・・おい、お前ら、真面目に戦え」

 「真面目にやってるよぉ~~!」

 「真面目にやってはいますが・・・あちらさんの攻撃が単調だしこちらの攻撃はあまり通らないしで・・・談笑くらい許されると思いませんか?」

 「こいつでかいからとりあえず振れば当たるし」

 「単調な攻撃になる様に魔法で牽制したり防いだりしてるんだよぉぉぉぉぉおおおお!『プリズン・レイ!!』」


 俺が詠唱破棄して魔法を唱えると、魔神を無数の光の筋が取り囲み、切り裂いてゆく。

 俺はシュティール。自慢じゃないが魔法使いとしては世界でもトップクラスの自信がある。

 巷じゃ魔法使いの王様ってことで魔王なんて呼ばれてるしな。


 何故俺がこんなバカ共(仲間)とこんな辛気臭い所にいるかというと、仲間の実家()からの要請を断り切れなかった為だ。

 なんでも、魔物が生まれる原因―便宜上魔神と呼んでいる―の居場所が分かったはいいが、魔神の住処は強力な魔素―マナとも言う―に覆われていて人間ごときじゃ足も踏み入れられなかったそうだ。

 最初は国連で妖精族に魔素を退ける法具を作ってもらおうとしたらしいが、断られるどころか妖精を見つけることすらできなかったらしい。

 まぁ、あいつら物凄くシャイだしな。

 そこで、ひょんな事から妖精族謹製の武具を持っており、実力的にも世界トップクラスが集まっている俺達に白羽の矢が立ったって訳だ。


 何故か仲間に一国の王女が居たりすることもあり、要請を断れずのこのこと魔神の住処、魔神殿までやって来た訳だが・・・

 マジヤバいわ。強過ぎんだろ、こいつ。

 さっき俺が放った魔法、この前溶岩竜(ラヴァ・ドラゴン)を細切れにした魔法だぜ?

 それがどうよ、魔法が終わってものの数秒で元通りだもんな・・・一応傷は負ってる様だったが、魔法の効果中もどんどん再生してたみたいだし。


 まだパーティが壊滅する・・・とは言わないが、攻撃したそばから再生していきやがるし、無詠唱で魔法っぽい現象を連発してきやがるし、こいつら(仲間)はバカだし、終わりが見えない。

 魔神ってのも高名なエルフだか何かの聖霊魔法で何とか感知できたって話だから、眉唾もんだと思っていたが・・・こうして実際に相対してみると事実だと思える。

 というか、仮にも”神”と付く奴に7人で挑ませるとか何なの?世界の国王達はバカなの?


 「おい!シュティール!ブツブツ言ってないで魔法で何とかしろ!」

 「あぁ、いつもの現実逃避ですか。顔はいいのに陰気なんですよねぇ、シュティは」

 「ちょっと貴方たち、戦ってる時くらいシュティをいじめないで」

 「いじめてねぇよ、頼りにしてんだよ」

 「・・・俺はいじめられてたのか」

 「言葉の綾よ」

 「おいガイン、お前も何か言ってやれよ」

 「・・・・・・でかいの、来る」

 「うぇっ、またあの広域攻撃か?」

 「このままじゃラチが空かないわね・・・」

 「もう、再生しない様にシュティの魔法でドッカァ~ン!して吹き飛ばすしか無いんじゃない?」

 「そう、ですね・・・シュティールさんの魔法で粉々に吹き飛ばせば何とかなるかもしれません」

 「というわけで、ヨロシクにゃん☆」

 「こいつ、斬っても治るから楽しくないんだよなぁ」

 「こいつら・・・わかったよ!とりあえず次の魔法?を分解して大技決めるから、時間稼いでくれ!」

 「了解☆」

 「任せろ!」

 「・・・皆、守る」

 「お願いね、シュティ」

 「また凄い魔法が見れそうですね」

 「お願いします・・・『主よ!世に満ちる聖霊達よ!自らを我らが荒波から守る防壁と成せ―セイント・ドーム!』」


 ハルートが神聖魔法で防護壁を張り、魔神の攻撃に備える。

 俺は魔神の魔法っぽい広域攻撃を受けるべく、防護壁の前に立って魔神を注視する。


 「グォォォォオオオオオオオオゥ!!!」

 「来るぞ!」


 魔神の目が真紅に輝き、静かに黒く光る(・・・・)波動がこちらに向かって放たれる。

 さっきから俺が魔神の攻撃を魔法っぽいだとか魔法?としているのには訳がある。

 俺はまだ駆け出しの頃、そこらにいるただの魔法使いだった。

 生き残る為に、糧を得るために他の魔法使いやら魔物やらを観察し続けた結果・・・なぜか俺には魔法の構成というか、成り立ちがわかる様になった。

 その結果、見た魔法を模倣したり、詠唱を破棄したり、無詠唱にしたりと色々な事がその内出来るようになった訳だ・・・もちろん、血の滲む様な努力はしたがな。

 その俺からすると、魔神の攻撃は魔法というより、現象を改変している様に見える。

 まぁ、結果だけ見ると魔法を無詠唱でバンバン使ってくるって事なんだが・・・本質がどうも俺達の魔法とは違うんだよなぁ。

 ともかく、その特技のおかげで魔王と呼ばれるまでになったんだが・・・これを応用すればこんな事もできる訳だ。


 「うぉぉぉぉぉ!マナ・レストレイション!!」

 俺は魔神から放たれる光に向けて手を伸ばす。

 構成を理解し、効果を読み取り、自らのマナを使って干渉し、魔法をマナ―魔素に・・・分解(・・)する。

 便利な技―これは魔法ではなく、技術だ―ではあるが、難点は魔法に俺が触れなきゃいけないってことなんだよな。

 って、この魔法、意味消滅の魔法じゃねぇか。いくらハルートの防護壁とはいえ、これに触れただけで紙の様に貫かれて全滅だぜ。

 危なかったな・・・とはいえ、もう俺達の勝ちだ!


 俺は魔神の魔法を分解した魔素を再利用し、魔法を構築する。

 こいつにはただの魔法じゃ意味がない。それこそ、タリアが言っていた様に粉々に吹き飛ばすか・・・いや、ただ吹き飛ばすだけではまた再生するだろう。

 もっと根本から消し去るような、そう、魔神が使っていたような魔法・・・!


 「『魔素よ、魔素よ。我が呼び声に答え、我が意をかの敵に示せ―』」

 「おっ、新らしい魔法か?あいつが詠唱するなんて珍しいな」

 「いつもは詠唱破棄か無詠唱で魔法使うのにねぇ~~」

 「それだけ難しい魔法なんじゃないの?って、うそ!連発!?」


 ジュリアが叫び声を上げる先で、魔神は第二波を放つべく、その真紅の瞳を輝かせる。

 仲間達の能天気な会話に若干イラつくが・・・これがどんな危険な魔法かは、俺以外は実際に受けてみないとわからないだろう。

 とにかく、あれをまともに受けたら全滅する・・・が、こちらも今更止められない・・・間に合え!


 「『汝は虚無。万物の意味を滅し、混沌へ帰す崩壊の光!』」

 「グォォォォォォオオオオ!!!」

 「うぉぉぉぉぉ!『ニヒリスティック・ゼロ!!』」


 魔神が黒い光を放つと同時に、俺の魔法が完成する。

 俺の持つ妖精杖アマデウスに集った膨大な魔素が魔法へと変換され、魔神に向かって黒い光(・・・)が放たれる。


 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!」

 「グガァァァアアアアアアァァァアアアアアアア!!」


 俺と魔神の中間で黒い光同士がぶつかり合い、空間が歪む程の魔素が放出される。

 己と世界の境界が曖昧になってゆく傍ら、俺の脳裏にはこんな希望がよぎっていた。


 ―俺、生まれ変わったら平穏に生きるんだ。


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