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祝福と悪戯は紙一重  作者: ヒトエのミニ神
三章
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状況確認

 リグンの町から脱出した二人と一匹は、草原の中で特に背の高い草むらに身を隠し、軽く作戦会議をし、指針を決めることにした。

 ただ闇雲に逃げていても事態は改善しないのである。

 ツケウさんどうしてるかな、と、気になるし、本当なら今頃は別荘でウキウキライフだったのに、とも思う。

 けれど今はこれからどうするか、それを考えねばならない。


「まず状況整理しよっか。私たちはなぜ追われてるのか」

「うむ、城に賊が侵入したらしくてな。その犯人だと私たち二人は疑われているところまではいいな?」

「うん、そして王様たちが私達を本当の犯人だとは思ってなかったところまでオーケーだよ」

「だからそれはすまなかった。許してくれ」


 ソーカ、両手を合わせて平謝り。


「許すけどイジる!」


 そしてヒトエは清々しいまでに鬼畜であった。


「それで?」

「あ、あぁ……」


 咳払いして気をとり直したソーカは掴んでいる情報を教えてくれた。


 その賊というのは、黒いマントで全身を覆った男とピンクの服を着た女の二人組らしい。男が見張りの兵士を蹴散らして城門をいとも容易く突破し、控えていたコーリッヒと激突したそうだ。しかも死霊を操り、本人の実力もコーリッヒにひけをとらなかった。そして、その間にどこからか侵入していた女が牢屋に侵入して、起きていた者の命を奪った。その後、合流し消えるように逃走したとのこと。目的は不明。


「黒マントがソーカさんで、ピンクのジャージが私って訳だね」

「そうだ」


 しかも、そのピンクのジャージはヒトエが持っているものしかこの町に存在してないはずなのだ。


「黒マントの男は顔を見られてないらしいがヒトエと親しい黒ローブとして私が浮上した」

「あれ、巻き込んじゃった感じ? なんかゴメンね」


 ソーカはふふんと笑う。


「許すし、イジりもしないぞ」

「ちょっとぐらいならいいのに。ていうか、なんかワクワクしてない?」


 ソーカの時間が止まった。石になったかのごとき行動停止である。

 それから数秒ほどして、ギギギとは鳴らないまでも、錆び付いたおもちゃのような緩慢な動きで、首だけを動かし前を向く。

 固くなった笑顔と額に浮かぶ大量の汗だ。言い訳せずとも、なんの自爆がなくとも、図星ですと白状してくれている。


「そんなことあるわけないじゃないかー」


 見事な棒読みであった。


「無実の罪で追われるなんてドラマの主人公みたいで憧れてたりなんてしていない!」


 これが言い訳と自爆である。


「ソーカさん、そういうの好きだったんだねー」

「好きじゃないからっ」

「照れなくていいのに……あれ?」

「ど、どうした?」


 突然首をかしげるヒトエにソーカは不安を覚えたようだ。怯えた表情でなんだかそわそわしている。


「んー、いや気のせいかも」

「そ、そうか。気のせいか」


 ホッと息をつくソーカ。やはり何かを隠しているのは間違いなさそうだ。でも、今は突っつかないでおくことにした。


「それよりこれからどうする?」


 素直に城へ保護されるという選択肢は、逃亡してしまったので、すでに潰れている。そもそもコーリッヒが取り逃がすほどの実力者だ。城の中も安全とは言い切れないだろう。


「そうだな……まずは隠れ家を探すべきじゃないか?」

「たしかに休むとこは確保しないとね」


 寝てる間に犯人や死霊や魔物に襲われたらシャレにはならない。二人しかいないので、夜の見張りの負担軽減のためにも、出来るだけ安全な場所を見つけたいところである。


「フンフンフンッ」


 すると突然、ラーくんがヒトエの肩から飛び降り、地面を嗅ぎ回りだした。ここはラーくんの故郷の林が近い。懐かしい匂いでもあったのか、それはもう熱心に嗅いでいる。尻尾のないお尻をふりふりさせていて可愛い。

 これはもうモフるしかないね。

 ヒトエは手をわきわきさせ、鏡に写したら目が覚めるような笑みを浮かべ、そしてモフりにかかる。

 ひらりするり、ラーくんはヒトエの腕を掻い潜った。


「そんな……」


 この世の終わりであるかのように悲しむヒトエの肩に手が置かれる。


「遊んでないで探しにいかないか?」

「……うん」


 ちょっと怒ってた。たしかにそんな場合じゃないね、と反省したヒトエは少し遠くまで跳び跳ねていたラーくんを呼ぶ。いつもなら、それだけで戻ってきてくれる。

 今日もいつものように立ち止まって振り返り、一旦あざとく首をかしげると、前に向き直りそのままジグザグ前に進んだ。


「あれ? 戻ってこない」

「なんか付いてこいって言っているようだったな」


 そんなファンタジーな、と、笑おうとしたが、今度は名前を呼んでないのに止まってこっちを見ている。そんなラーくんを見て、あながち間違いじゃないのかも、と、ヒトエは思い直した。


「付いていってみる?」

「それしかなさそうだな」


 ラーくんは立派な仲間。置き去りなんてできるはずがない。


 追いかけていくと、案の定というかなんというか、林の方に近づいていた。


「あの林はまずいよねぇ」


 あそこで死霊と遭遇したことがある。

 もちろんその後、ギルド主導で調査されてはいるが、それなりの広さがある林だ。件の黒ローブが潜伏している可能性は依然として高いので、この状況で入るのは危険な行為である。


「どうする? ラーくんを捕まえて止めるか」

「うーん」


 またラーくんが足を止めて振り返った。その真ん丸な瞳と視線が合う。

 そこからは一抹の不安も感じられなかった。とても穏やかである。


「……行こう」

「わかった」


 ヒトエの決断にソーカはなにも言わなかった。さすがイケメンである。

 また跳び跳ねだしたラーくんを追い、二人は林の中へと足を踏み入れたのだった。

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