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鬼人神鬼  作者: saku
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第肆話『序04 真白 紬』

 私の中で暴れる強大な力。

 それはいつか、私自身を飲み込むかもしれない。


――死は怖くない


 嘘


――自分を犠牲にしてまで、誰かを助けたい


 嘘


――世界中の人々を幸せにしたい



 真っ白な風景の中に現われた、黒い影が私に言っている。

 お前は偽善者だと…………



//////



?「――ッ!?」


 私が目を覚ますと、見慣れた部屋の風景があった。


?「……また……ですか……」


 私は額にかいた汗を拭い、布団から身体を起こした。

 そして、寝間着の上に一枚羽織ると、庭に降りた。



//////



 庭に出た私は、雲一つない空を見上げた。


?「紬お嬢様」


 突然、私の側に男が現れ、地面に片膝をつけて頭を下げていた。

 私は驚く事はなく、いつも通りに答えた。


紬「おはようございます、大和」

大和「おはようございます、紬お嬢様。今日はお早いのですね」

紬「………………」

大和「……また……ですか?」


 大和は何も言わない私に呟く様に言った。


紬「のモノの力が強まっています」

大和「はい。それに合せ、鬼人達が動き出しています。いかが致しますか?」

紬「いずれ、私の居場所もつき止められるでしょう。ならば、こちらから仕掛けます」

大和「わかりました。では、早急に準備を整えてまいります」


 そう言って、大和は姿を消した。

 私はまた空を見上げた。


紬「幾千の時を越え、歴史は繰り返すもの。でも、その歴史は決して繰り返してはいけない。そう、もう二度と…………」


 この青い空を消してはいけない。



//////



 準備を整えた私は玄関を出て、大和を待っていた。


大和「遅くなりました」

紬「では、行きましょう」

大和「お待ち下さい!」


 一歩踏み出した私を、大和が呼び止めた。


大和「一つ、失礼ながら、よろしいでしょうか?」

紬「どうしました?」

大和「紬お嬢様。御身体は大丈夫でしょうか? 少なからず影響を受けているはずです」


 私は大和の言葉に、一瞬反応した後、笑顔を向けた。


紬「大丈夫ですよ」

大和「……わかりました。ですが、いくら紬お嬢様といえ、それを封印したまま鬼人の相手をするのは危険です。戦闘は私にお任せ下さい」

紬「わかりました。では、頼みますよ、大和」

大和「はっ!」



//////



 家を出た私と大和は、鬼人の吐き出す邪気を追っていた。


大和「――!? 紬お嬢様、おさがり下さい」


 そう言って、私の前に出た大和の前方から複数の異形なモノ達が向かってきた。


大和「下級鬼か」

下級鬼「ぎゃ~はっはっ!! このムカつく感じ。それに俺達の姿が見えてるって事は、お前、あの方を封印した奴等の末裔だな?」


 下級鬼の一匹が、私を指差した。


紬「だとしたら、どうだと言うのですか?」

下級鬼「その身体を切り刻み、お前の血肉を献上するのよ! そうすれば、俺達はもっと強い力を頂ける」

紬「そうですか。――――大和」

大和「はっ!」

紬「このモノらに道を聞く事にしましょう」

大和「かしこまりました」


 大和は私の前に構える事なく立った。


下級鬼「ぎゃ~はっはっ!! 人間の分際で出しゃばると痛いじゃすまないぞ! 先ずはお前からだ!!」


 下級鬼の一匹が、大和目掛けて攻撃を仕掛けて来た。

 しかし、その攻撃は空を切り、同時に大和の蹴りが異形のモノをとらえた。


下級鬼「ぷっ、ぎゃぁぁぁぁぁ!?」


 大和の蹴りをくらった下級鬼は、数メートル吹き飛んだ。

 だが、まるでダメージがなかった様に、あっさりと立ち上がった。


下級鬼「びっくりした~。お前も俺達が見えるのか。だが、体術だけじゃ俺達は痛くも痒くもないぞ?」

大和「やはり、駄目か」


 そのやり取りを見た私は、後方で術を唱えた。


紬『我、汝に矛を与える。我、汝に盾を与える。汝、我が矛と盾を用いて悪しき魂を浄化したまえ』


 私が術を唱え終わると、両手に持っていた2枚のお札が宙を舞い、大和の両手と両足を包んだ。


大和「感謝致します。紬お嬢様」


 そして、大和は素早く下級鬼との間合いを詰めて、先程と同じ蹴りを入れた。


下級鬼「ぐっぱぁ!!」


 下級鬼は同じ様に吹き飛ばされ、起き上がろうとした。


下級鬼「ぎゃ~はっはっ!! だから、普通の打撃じゃ……俺……は……」


 その瞬間だった。

 下級鬼の足の先から、小さな光の粒に変わっていった。


下級鬼「な、なんだ、これは!? お、おおお、お前、一体何をした!?」

大和「紬お嬢様からお借りした浄化の力だ。あいにく、私に浄化の力はない。そのため、紬お嬢様にお借りしたのだ」

下級鬼「そ、その、両手足の光が浄化の力か……くっ、くっそ~~~~!!」


 一匹の下級鬼の身体が全て、光の粒になり消えた。


大和「さて、残りのモノも始末しないとな」

紬「大和。一匹は残しておいて下さい。道案内がいなくなってしまいます」

大和「はい。紬お嬢様」



//////



 私達は異形のモノに道案内をさせて暫く、それは突然だった。

 道の真ん中には、年端もゆかぬ少女が立っていた。


少女「あなたが持っているのね?」

紬「――大和!?」


 少女から感じた殺気で、私は声を上げた。

 背中からは冷たい汗が素肌を伝い流れて行くのを感じた。

 私は自分でもわからない内に、大和に補助の術を使っていた。


大和「――鬼人だな。さっきの奴等とはレベルが違う」


 大和の表情から余裕がなくなり、目の前の少女に対し、最大の警戒をしていた。


少女「……さようなら……」


 そう言った瞬間、少女の小さな手に不釣り合いなほど、大きな鉤爪が装備された。


大和「くっ!?」


 まるで生き物の様に見えるその禍々しい大鉤爪は、触れるモノ全てを切り裂く様な唸りをあげて襲ってきた。

 大和は少女の繰り出す大鉤爪の一撃を、補助の術で強化された拳で弾いた。


大和「くっ……紬お嬢様に強化された拳で弾いても、腕が痺れる」


少女は武器の重量など関係ないとでも言うように、何度も大鉤爪で大和を刈り取ろうと襲った。

 その少女の攻勢に対し、大和は防戦一方になり、身を守るのが精一杯だった。


大和「……っ……はぁ、はぁ……」


 まずい。

まさか、鬼人の力がこれ程とは…………

 私が大和に加勢出来れば、少なくともあの子を退けるくらいは出来る。

 でも…………


 私は拳を固く握った。


大和「ぐっ!?」


 遂に、少女の攻撃が大和を捉え始めた。

 いつの間にか大和の両腕は力無くうなだれ、既に使い物にならなくなっていた。


紬「大和! この場を退きます!!」

大和「はっ! ――!?」


 一瞬だった。

 大和が私の声に答えた隙に、少女の大鉤爪は大和の脇腹に深々と突き刺さった。


大和「――ごぷっ!?」

紬「大和!?」

大和「ぐぅ……」


 大和は私に視線を送ると、自分に突き刺さった大鉤爪を抜かずに抑え込んだ。


紬「――ッ!?」


紬『汝、我を誘え。我、汝の示す場所へ行かん』


 私は宙に五芒星を描き、術力を込めた。


紬『錬成移法れんせいいほう


紬「大和!!」


 素早く大和を掴み、その場から姿を消した。


少女「いなくなっちゃった? ダメ……あの人達は逃げる鬼。私はそれを捕まえる鬼……」


 そして、少女もその場から姿を消した。


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