表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼人神鬼  作者: saku
47/49

第肆拾伍話『後編10 紬の過去03』

//////



遠藤「ちくしょう! あの小娘共、人を見下しやがって!」


 紬達が去った後、遠藤は怒りから近くにある物を片っ端に壊していた。


遠藤「……はぁ、はぁ……絶対に犯してやる」

?「――下品ですね」

遠藤「――!?」


 遠藤が振り返ると、そこには黒いスーツを着た男がいた。


遠藤「だ、誰だ、お前!? 何処から入った!?」

黒いスーツの男「そんな事はどうだっていいじゃありませんか。貴方は、真城 紬をどうしたいのですか?」


 男の質問に遠藤は不気味な笑みを浮かべながら言った。


遠藤「あの女を犯して、犯して、犯しまくって、俺に哀願する牝にしてやるんだ!」

黒いスーツの男「やはり下品極まりない。しかし、その欲望の強さは気に入りました。――貴方が望むのであれば、貴方に力を与えましょう」

遠藤「力? お前に何が出来るって言うんだ!?」


 男はゆっくりと遠藤に近き、後ろにある壁に触れた。

 すると、男の触れた壁が粉々に崩れていった。


遠藤「ぁ……ぁあ……」

黒いスーツの男「この力が欲しいですか?」

遠藤「……ほしぃ……欲しい! 俺にもくれ!」


 遠藤の言葉を聞いた男は、薄気味悪い笑みを浮かべた。


黒いスーツの男「わかりました。ですが、ただで力を得られる程、世の中は甘くありません」

遠藤「どうすればいい!?」

黒いスーツの男「簡単です。――等価交換ですよ!」


 その瞬間、男の手は遠藤の胸を貫き、心臓を握り潰した。

 そして、遠藤は地面に倒れた後、何事もなかったかの様に立ち上がった。


黒いスーツの男「おめでとうございます。これで貴方は力を得られた。――命を代償にね。これからは私の人形として働いてもらいます」



//////夕方の道



奈絵「さすが、紬。私も何かやろうかな?」

紬「護身術ならやっていて損はないよ」

奈絵「でも、私は紬と違ってか弱いから……」

紬「誰がか弱いですって?」


 そんなくだらない話をしながら、帰り道を歩いていた私達の前に、見知った人が立っていた。


紬「……遠藤さん。依頼はお断りしたはずですが?」

遠藤「…………」


 しかし、遠藤さんから一向に返答がなかった。


紬「何もないのなら、私達は失礼させて頂きます」

遠藤「…………」

奈絵「ちょっと、あんた! 何か言ったらどうなの!?」

遠藤「…………」


 一向に返答のない遠藤さんの様子を不信に思った私は、遠藤さんに近づこうとした奈絵を制した。


紬「奈絵、待って。何か様子が変」

奈絵「変って、こいつは元から…………紬?」

紬「奈絵、私の後ろに」


 私の表情を見た奈絵が、後ろに下がる。


紬「遠藤さん、何があったのですか? 今の貴方から生きてる人間の気配がありません」

奈絵「紬。それ、どういう事?」

紬「わからない。でも、私達の目の前にいる遠藤さんから、今日あった時に感じられた生命の気配がないの」

奈絵「それって……あいつが死んでるって事?」

紬「多分……」

奈絵「じゃあ、なんで動いてるの!?」

紬「わからない」


 突然、遠藤さんの身体が、二度、三度痙攣を起こした。

 そして、不気味な笑みを浮かべた。


遠藤「犯す……真城 紬……」


 その瞬間、常人では考えられない速さで、遠藤さんは私達に向かってきた。


紬「奈絵! 危ない!」


 私は奈絵を突き飛ばした。


奈絵「いたた……何する……」


 今、私達のいた場所のコンクリートが、えぐり取られていた。


奈絵「ちょ、ちょっと、紬……なによこれ?」

紬「お父さんとお母さんに聞いた事がある。地獄に住む鬼……」

奈絵「鬼がどうしたのよ?」

紬「他の悪霊何かと比べものにならないくらい強い力を持った奴ら。そして、鬼達と契約して、その力を得た人間を鬼人。鬼人を相手にする時は、熟練の陰陽師が最低でも3人以上。それに達していなければ、生きてその場を退けって」

奈絵「そ、それって……あいつがその鬼人って奴なら……」

紬「かなり、やばいかも……」


 そんな私達の心境などお構い無しに、遠藤さんは鋭い爪を立て、襲ってきた。


紬「くっ……」


 私はまたも辛うじて、その爪から逃れた。


紬「奈絵、逃げて!」

奈絵「な、なに言ってるのよ、紬!?」

紬「どうやら狙いは私みたい。だから、私が遠藤さんを引き付けておくから、その隙間に奈絵は逃げて!!」

奈絵「紬を置いて行けるわけないじゃない!!」

紬「行って!! 奈絵を守りながらだと、全力で戦えないの!!」

奈絵「…………わかった」


 そう言って、奈絵は走り出し、背中越しに叫んだ。


奈絵「おじさんとおばさんを呼んでくるから! それまで、頑張って!!」


 私は小さく頷いて、遠ざかる奈絵の足音を聞いていた。


遠藤「……真城……紬……」

紬「貴方はもう人間じゃない」


 私は自分に言い聞かせる様に言葉にして、懐から術札を取り出した。


紬「もう……人間じゃない!!」


 そして、術札に最大限まで術力を込めて放った。

 術札は遠藤さんに触れると爆発した。

 普通の人間なら、確実に死に至る威力の術札。

 しかし、遠藤さんはそれを受けて、何もなかったかの様に立っていた。


紬「……嘘……でしょ……?」


 今のは私の全力の一撃だった。それが、全く通用しない。


紬「ちょっとでも、なんとかなると思った私が、馬鹿だったって事か」


 そんな事を言っていても仕方ない。

 私は必死に生き延びるための方法を探した。

 しかし、思い付くのは逃げる、ただ、逃げる事だけ。


紬「……はぁ、はぁ……」


 死と言うリアルな現状を目の前にし、私の身体を恐怖と言う感情が支配し始めていた。


紬「……死にたくない……」


 相手に背を向け、ひたすら逃げ回った。

 他人から見たら惨めに見える事だろうが、今の私はそんなものを気にしている事が出来なかった。


紬「……いや……」


 しかし、逃げるにも限界があった。

 遂に私は遠藤さんに捕まってしまった。


紬「……や、やめて……殺さないで……」


 どうすることも出来ない状況に、私は涙を流し、敵に助けを求めていた。


遠藤「……紬……」


 遠藤さんは人差し指を立て、私の洋服を切った。

 その時、既に私の中で何かが壊れ初めていたのかもしれない。


 命が助かるのなら……


 そのためなら、今の私はどんな恥辱も喜んで受け入れるだろう。


紬「……はぁ、はぁ……んっ!?」

遠藤「……真城……紬……」


 遠藤さんの手が、私の身体をまさぐり初め、未発達の小さな胸に触れた。


紬「……ぃ……ゃ……」


 私は遠藤さんを刺激する事が怖く、絞り出す様に呟く事が、唯一の抵抗だった。

 暫くすると、私は目を閉じ、その現実から目を背けた。

 すると、そんな暗闇の中に光を燈す様に、奈絵の声が響いた。


奈絵『紬! 紬~!!』

紬「奈絵!?」


 目を開けると、そこに奈絵の姿はなく、代わりに遠藤さんの背後に立つ楠がいた。


紬「……ぁ……く、楠……?」


 意識が朦朧としている私を見た楠の表情に、今まで見たことがない程、怒りが溢れていた。


楠「貴様……人形の分際で何をしている?」


 その瞬間、遠藤さんの身体は粉々に砕け散った。


奈絵「……はぁ、はぁ……つ、紬! おじさんとおばさんを呼んできたよ!!」


 そこに、お父さんとお母さんに助けを求めに行った奈絵が戻ってきた。


奈絵「紬!?」

紬「く、楠さん……貴方は……」


 奈絵は一目散に私に駆け寄ってきた。

 そして、今の楠と遠藤さんの光景を見たお父さんとお母さんの視線は、楠に集中していた。


楠「……やれやれ ばれてしまいましたね」


 楠は粉々になった遠藤さんの残骸を足で踏み付けた。


楠「使えない人形のせいで、全て終わりです。しかし、まぁ良いでしょう。そろそろ、準備も出来た頃ですから」

英人「楠くん。君には信頼を置いていた。――残念だ」

楠「人を簡単に信用してはなりません。例えそれが身内のものだとしてもです」


 お父さんとお母さんが臨戦体制に入ると楠は構えを解いた。


楠「貴方達の相手は、私ではありませんよ」


 私はその時、楠の言った事の意味がわからなかった。

 でも、それは直ぐにわかることになった。


奈絵「……ぁ……」


 私の頬に水滴が落ちてきた。

 そして、その直後、奈絵が私に覆いかぶさる様に倒れてきた。


奈絵「……ごほっ……つ……む……ぎ……」


 私の名前を呼んだ奈絵の手から力が抜けた。


紬「……奈絵……奈絵!?」

楠「ふ……はっはっは……あ~はははははは!!」

紬「奈絵!? 奈絵!?」


 いくら揺すろうが、奈絵から反応はなかった。

 その瞬間、私の中をどす黒い何かが支配していくのを感じた。


――憤怒

――憎悪

――失望

――罪悪


 そして、数え切れない負の感情の中、私は自分の中に何かが生まれるのを感じた。



//////



紬「……あ……ぁ……」


 紬の身体から少しずつ邪気が漏れ始めていた。


楠「来ましたね」

英人「楠くん! 紬に何をした!?」

楠「実は紬お嬢様は、鬼の襲撃の際、一度命を落とされていましてね。私の血を紬お嬢様に与えたのですよ」

英人「まさか、紬が鬼と契約を!?」

楠「人が堕ちていく様は、いつ見てもいい。あらゆる負の感情が肉体を支配し、新たな生命を作り出す瞬間」


 紬の身体から出る邪気の量が、次第に増大していった。

 その邪気の量は、既に鬼とは比べものにならぬ程、巨大化していた。


英人「紬!」

絵依「紬!!」


 両親からの声も届かず、紬の肥大し続けていた邪気が止まった。

 紬はゆっくりと手で地面に触れた。

 すると、紬の触れた部分だけ腐植した様崩れていった。


楠「ほぅ、これは面白い。どこの鬼と契約したのかわかりませんが、腐植の能力とは……」


 自らの力を見た紬の口元が緩んだ。

 そして次の瞬間、紬は目の前にいる人間を標的と定めて襲い掛かった。


英人「紬! 目を覚ますんだ!」

絵依「紬!?」


 皮肉にも、紬が標的として定めたのは、実の父と母であった。


楠「くくく……何と皮肉な事です。実の娘に殺される父と母」

紬「あっはっはっはっはっ!!」


 紬は四つん這いになり、まるで獣の様に地面を移動していた。

 そして、紬の移動した後は、道が腐植し崩れていた。


英人「紬!!」


 英人は自分の娘を両腕で抱きしめた。


英人「紬、戻って来るんだ!! 地獄の鬼に魂を渡すな!!」


 だが、英人の叫びは虚しく響き、紬が英人の腕に触れた。


英人「ぐ……あぁぁぁあ!?」


 その瞬間、英人の片腕は腐食し、崩れ落ちていった。

 たまらず、英人は紬から離れた。


絵依「あなた!?」

英人「だ、大丈夫だ。それより、紬が鬼と契約をする前に呼び戻さなければ……」

楠「くくく……無駄ですよ。紬お嬢様はご友人を亡くされ、罪の意識を持ったと同時に私への怒り、憎悪と言った感情を持ったはずです。これら負の感情は鬼共の恰好の餌になる」


 楠の笑みは今までの温かなものではなく、醜い悪魔の様に変わっていた。


英人「例え、紬が鬼に捕われていようが、必ず呼び戻す!」


 すると、英人と絵依が同時に言霊を唱えはじめた。


英人『全知全能の神よ。我が御霊を持ちて、悪しき魂を浄化し、彼の者に正しき道をしせしたまえ』


 紬の身体を包む様に光の柱が現れた。


英人『我は望む』

絵依『輝ける光』

英人『我は求む』

絵依『輝ける魂』


 光の柱の上下に五亡星が現れ、中心にいる紬に向かい縮まっていった。


楠「金属性の悪しき魂を浄化させる高等術式ですか。まさか、あなた方が使えるとは予想外でしたよ。しかし、金属性の術者でないあなた方が、それを使ってただで済むと思っているのですか?」

英人「私達の命は尽きるだろう」

楠「それがわかっていながら、その術式を使うと言うのですか?」

英人「自らの命を賭しても救いたい者が人にはあるのだ」

楠「面白い。では見せて頂きましょう。人が勝つか。鬼が勝つか」


 上下に現れた五亡星が、完全に一致し、紬の動きを停止させた。


英人&絵依『連結術式。解魂浄霊悪即滅殺かいこんじょれいあくそくめっさつ


 紬の身体が一度大きく揺れた後、苦痛の声を上げた。


紬「い、や……あ……ぁぁぁぁぁ!!」

英人「つ、紬……戻って来るんだ」

絵依「紬……皆、あなたの帰りを待ってますよ」


英人&絵依『はぁぁぁぁぁぁ!!』


 その瞬間、力が弾け、辺りを光が包んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ