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鬼人神鬼  作者: saku
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第肆拾肆話『後編09 紬の過去02』

//////真城家



 あの鬼の襲撃から数ヶ月経ち、私も楠も元通りに日々を過ごしていた。


楠「紬お嬢様。また、奈絵なえ様と喧嘩をしたのですか?」

紬「だって、奈絵が悪いのよ」


 楠はため息を吐き、いつも通り、私に聞いてきた。


楠「今回の原因はなんなのですか?」

紬「奈絵が、私にあれを食べさせたのよ! しかも、わからない様に料理の中に混ぜて!」

楠「なるほど。それが原因ですか……」


 奈絵は学校のクラスメイトで、私の親友。

 でも、何かあると喧嘩をしては仲直りの繰り返しだった。

 そして、私達の喧嘩の仲介をいつも楠がやってくれていた。


楠「仕方ありません。奈絵様とお話をしてきます。――しかし、紬お嬢様。嫌いだと言いましても、納豆を食べたくらいで……」

紬「楠……あれは人間の食べ物じゃないわ! だって、腐ってるのよ!?」

楠「それは納豆ですから」

紬「臭いし、ねばねばしてるのよ!?」

楠「ねばねばに栄養があるのです」

紬「あれを食べた後は、あのねばねばが口の中に残って、私の食べるもの全てを侵していくのよ!?」

楠「全く……まるで子供のわがままですよ、紬お嬢様」


 そう言って、楠は部屋を出て言った。



//////



 それから数時間後。

 楠の仲介で私と奈絵は、いつも通りに戻っていた。


紬「ねぇ、奈絵」

奈絵「なによ、紬?」

紬「私、最近思うんだ」

奈絵「だから、なによ?」

紬「姉妹きょうだいがいたら、きっと今の私と奈絵みたいな感じ何だろうなって」


 奈絵は私の言葉に笑いながら返してきた。


奈絵「何言ってるのよ? 姉妹なら、毎回喧嘩なんてしないわよ」

紬「でもさ、私、本当に奈絵と姉妹だったらよかったのにって思う時があるんだ」

奈絵「仮に姉妹だったら、もちろん私がお姉ちゃんよね?」

紬「私がお姉ちゃんよ」


 その瞬間、私と奈絵の視線の間で、火花が飛び散った。


紬&奈絵「……ふっ……あははは!!」

奈絵「馬鹿ね。そんな事あるわけないじゃない!? 」

紬「そうよね。私達が毎日一緒にいたら、それこそ大変だもんね!!」


 私と奈絵はいつも通り、二人で笑っていた。



//////通常の道



紬「奈絵! 今日、暇?」

奈絵「なによ?」

紬「暇なら付き合ってよ」

奈絵「はい、はい。それで、どこに行くの?」

紬「ちょっと、お仕事」



//////誰かの家



奈絵「今日の依頼者が気持ち悪い人で、一人で行くのが嫌だから付いてきてほしいって言ってたけど、どんな人なの?」

紬「人から聞いたんだけど、ロリコンの変態マニアだって」

奈絵「うげぇ!? だったら、私なんか、モロ危ないじゃない!?」

紬「大丈夫よ。奈絵を襲う前に私を襲うはずだから」

奈絵「ちょっと、それってどういう意味よ?」

紬「どういうって、そういう意味だけど?」

?「あ、あの……」


 私達が家の前でやり取りをしていると、まんまるとお腹の出た男が家から出て声を掛けてきた。


?「君が紬ちゃん?」

紬「はい。貴方は、依頼者の遠藤えんどう 重大じゅうだいさんですね」

遠藤「そっちの子は?」

奈絵「水蓮寺すいれんじ 奈絵なえです。今日は、紬の付き添いで来ました」

遠藤「奈絵ちゃんか……よろしく」


 そう言った遠藤さんは、奈絵の身体を舐め回す様に見ていた。


奈絵「紬。あいつ、相当ヤバそうだよ」

紬「だから、奈絵に一緒に来てもらったんじゃない」


 遠藤さんを見た奈絵が、不安げに耳打ちをしてきた。


紬「いざとなったら、遠藤さんには悪いけど、実力行使でいく」

奈絵「頼むよ、紬」



//////遠藤さん家



紬「随分と広いお家ですね」


 遠藤さん家の中に入ると、いくつも部屋が分かれていて、各部屋の入口には中が見えない様にカーテンが掛かっていた。


遠藤「まぁね。撮影なんかもするからね」

紬「撮影? 映画でも作ってるんですか?」

遠藤「とっておきの映画だよ」

奈絵「へぇ~……面白いそうですね! 私、映画とかって興味あるんだ!」


 すると、奈絵の言葉に反応した遠藤さんは、笑顔で言った。


遠藤「本当!? ちょうど、奈絵ちゃんくらいの女の子が主役の映画を撮りたいと思ってたんだ!?」

奈絵「え~!? じゃあ、私が出れたりするんですか!?」

遠藤「大歓迎だよ」


 調子に乗る奈絵に釘を刺す様に、私は耳打ちをした。


紬「ちょっと、奈絵。仕事以外はノータッチ。言ったでしょ? ロリコンの変態だって」

奈絵「そうだった。気をつける」

紬「それで、遠藤さん。依頼内容ですが、もう一度聞かせて頂けますか?」

遠藤「あ、はい。この頃、夜になると聞こえて来るんですよ。小さな女の子の泣き声が……」

紬「その声が何故、少女のものだとわかったのですか?」

遠藤「そ、それは、声を聞けばわかるよ」


 遠藤さんの言葉が、急に詰まりだした。


奈絵「あれ? 確か、前に紬が幽霊とかの声は普通の人間に聞こえるものじゃないし、聞こえても、訓練を積んだ人じゃないと、電子ノイズみたいな音が聞こえるだけって……」

遠藤「そ、そんなはずはない! ぼ、僕はちゃんと聞いたんだ!」

紬「遠藤さん。今、奈絵が言ったことは本当です。遠藤さんが訓練を積んだ方ならその話はわかります。ですが、遠藤さんから訓練を積んだ者の持つ力が感じられません」


 つまり、遠藤さんが言っている事は嘘。


紬「遠藤さん。本当の事を言って下さい」

遠藤「な、なにを言ってるんだい? 本当も何も、僕は聞いたんだ!」

紬「――そうですか。それなら、私は帰らせていただきます。この依頼はなかった事に」

遠藤「あ、ちょっと……」

紬「では……行くよ、奈絵」

奈絵「うん」


 私が遠藤さんに背を向けて歩きだすと、各部屋から男達が複数人出てきた。


奈絵「なによ、こいつら!?」

遠藤「奈絵ちゃん、さっき映画に出たいって言ったじゃないか。だから、今から撮影を始めよう」

紬「……奈絵。私から離れないでね」


 男達はじりじりと私達との距離を詰めてきた。


男1「ひゃっはー!? 女子中学生だー!?」


 そして、一人の男が私達を捕まえようと飛び出した。


紬「少し痛いですが、我慢してください」


 私は懐から取り出した術札に微量の術力を込めて、男に投げた。


男1「ぐぁっ!? な、なんだ!?」

紬「今のはほんの少し力を込めた物です。もちろん、もっと込めれば、人間を殺すことも出来ます」


 男達は、初めて見る事に驚いていたが、次第に開き直り始めた。


男1「そいつで人間が殺せるってなら、やってみな。俺達を殺せるのならな」

紬「くっ……」


 例えどんな奴だろうが、殺すなんて出来ない。


 男達は私の気持ちを察する様に、薄気味悪い笑みを浮かべていた。


紬「奈絵。ちょっと、ヤバいかも……」

奈絵「じょ、冗談は止めてよ」


 その時、私は男達の後ろに立て掛けてある、掃除用モップを見つけた。


紬「奈絵」

奈絵「何よ?」

紬「あいつらの後ろにあるモップを取ってきて」

奈絵「私が? 紬が行けばいいじゃない」

紬「私は男達を引き付ける。だから、その隙間に」

奈絵「紬……わかった」


 私は両手に術札を持ち、男達に向けて放った。


男1「いだ!?」

男2「紬ちゃんはいけない子だね。そんな子には、お仕置きをしないと」


 男達の視線が私に集中した瞬間、奈絵が男達の背後に向かって走った。


奈絵「紬!!」


 奈絵が男達の後ろから、モップを投げた。


紬「ナイス、奈絵!!」


 私は奈絵からモップを受け取ると、男達に向かって構えた。

 小さい頃から槍術に興味があった私は、父さんやお母さん、それから道場の先生などに教わっていた。


紬「やぁぁぁぁぁ!!」


 私は気合いを込めて一歩踏み出すのと同時に、モップの先端で男のみぞおちを突いた。


男1「ぐぁっ!?」


 みぞおちを突かれた男は、呼吸困難に陥り、立ち上がってこれなかった。


男2「いい気になるなよ、くそガキが!!」

紬「やぁ!!」

男2「がっ!?」


 続いて襲ってきた男が攻撃に入る前に、男の腋の下をモップで突いた。

 腋の下にも、人間は急所がある。

 そこを強く突かれると、痛みで呼吸がしにくくなり、少しの間、立ち上がる事は困難になる。


紬「いゃあぁぁ!!」

男3「ぐえっ!?」


 そして、脇でモップを抱え、身体ごと回転し、残りの男を地面にはいつくばらせた。


奈絵「さすが、紬!」

紬「へへぇ~♪」

遠藤「ま、まさか……」

紬「さて、あとは遠藤さん一人ですよ。どうしますか?」


 私は勝ち誇った様に遠藤さんに言った。


遠藤「ぐっ……く……」


 私はその場で歯ぎしりをしている遠藤さんを見て、モップを捨てた。


紬「では、依頼は無効と言うことで、私達は失礼させて頂きます」


 そして、その場をあとにした。


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