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鬼人神鬼  作者: saku
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第参拾肆話『中編20 紫苑の記憶02』

羅蕭「お前達には、為さねばならぬ事があるであろう!? この様にしている間にも、主人が苦しんでいるのだぞ!?」


 戦鬼と妃戦には、紫苑の命が第一となっていた。


戦鬼「主人の命令だ」

妃戦「主の命を遂行するだけです」

羅蕭「ならば、こちらも主人の命。全力で行かせてもらう」


 戦鬼と羅蕭が同時に地を蹴り、拳がぶつかり合った。


戦鬼&羅蕭「おぉぉぉぉ!!」


 激しくぶつかり合う拳の衝撃が辺りにも飛び散り、地面や壁を破壊した。


妃戦「連弾炎!」


 突然、後方にいた妃戦から、複数の炎が放たれた。


羅蕭「――ぐっ」


 羅蕭は片腕を盾にし、襲いくる炎を防いだ。

 すると、炎を防いだ僅か一瞬の隙に、戦鬼は羅蕭の懐に潜り込み、拳を叩き込んだ。


戦鬼「おぉぉぉぉぉ! おらー!!」

羅蕭「ぐっ……ぉおっ!?」


 戦鬼の拳を受けた羅蕭の身体は、数十メートル吹き飛ばされ、壁を破壊し、ようやく止まった。


羅蕭「……ぐっ……さすがにお前達を相手にするのは、並大抵の事では無理か」


 そう言って、羅蕭は瓦礫の中から立ち上がった。


羅蕭「魔炎斧」


 すると、羅蕭の手に、身長よりも遥かに巨大な斧が握られた。


羅蕭「おぉぉぉおぉぉぉ!!」


 羅蕭は魔炎斧の重量など、まるで無いか様に振るった。


戦鬼「ぐっ!!」


 戦鬼は両腕を交差させ、魔炎斧を受け止めた。


羅蕭「よくぞ、魔炎斧を受け止めた」

戦鬼「この程度かよ?」


 戦鬼は魔炎斧を弾き返し、背中越しに言った。


戦鬼「妃戦! あれを頼む!」

妃戦「あれは主からの命がなければ使えぬ」

戦鬼「主人からの許しはもらってる! 早くしろ!」

妃戦「私は聞いていない」

戦鬼「うるせえ! やれったら、やれよ! こいつを倒さねぇと、主人の命に反する事になるぞ!」


 戦鬼の言葉を聞いた妃戦は、深く息を吐いた。


妃戦「主の命は絶対だ。仕方ない」


 そう言った妃戦の両手から、次第に帯電音が鳴りはじめた。


妃戦『……解……雷……』


 その瞬間、妃戦の両手から落雷の様な轟音が響いた。


妃戦『……俊雷……』


 すると、妃戦の両手から放たれた雷が、戦鬼の身体を覆った。


羅蕭「俊雷か……ならば……」


 それを見た羅蕭は、魔炎斧を地面に突き立てた。


羅蕭「我、望むは絶対零度。生きとせ生きるもの、全てを停止させる。――氷魔血華」


 すると、空中の水分が凍って行き、美しい華を咲かせた。


妃戦「水の最高位術。全てを凍らせる絶対零度の世界」

戦鬼「俊雷を纏った俺に、そんなものが効くかよ!」


 金属性は水属性の術との相性は良い。

 俊雷を纏った戦鬼の身体は雷に覆われている。

 そのため、今の戦鬼の身体を凍らせ、動きを封じるのは不可能に近かった。

 だが、それは羅蕭も承知の事だ。

 すると突然、羅蕭に向かっていた戦鬼の動きが止まった。


戦鬼「これは!?」

羅蕭「氷魔血華は、相手を氷結する術にあらず。四方に咲いた華こそ、氷魔血華の真髄」


 宙に咲いた華に戦鬼の身体が触れた瞬間、華に触れた戦鬼の身体が、鋭利な刃物で切られた様な傷がついていた。


妃戦「連弾炎!」


 妃戦が氷の華を溶かすため炎を放ったが、まるで効果はなかった。


羅蕭「無駄だ。その程度の熱量では、氷魔血華を相殺することは出来ぬ」


 羅蕭の言葉を聞いた妃戦は、小さく口元を緩めた。


妃戦「――戦鬼。片がついたら、私を止めてくれ」

戦鬼「――!? ちょっと待て!? まさか、お前のあれはヤバすぎる!!」


 戦鬼の言葉を聞き終わる前に、妃戦の身体を炎が包み込んだ。


妃戦「我……我が身を炎とかし、全てを焼き尽くす刃となる。――炎獄陣えんごくじん

戦鬼「ちっ!?」


 妃戦の身体が炎に包まれた瞬間、戦鬼は素早く妃戦の後方に移動した。


妃戦「――滅」


 その瞬間、妃戦の身体は消え、次に現れたのは羅蕭の目の前だった。

 妃戦の通ったと思われる道の華は、全て散っていた。


羅蕭「――!? ぐっ!」


 妃戦の燃える拳を、羅蕭は魔炎斧で受け止めた。

 しかし、妃戦の攻撃はそれで止まらず、魔炎斧の上から連打を繰り返していた。


妃戦「はぁぁぁぁ!!」


 その様子を後ろから見ていた戦鬼は、深く息を吐いた。


戦鬼「はぁ~……、あぁなっちまったら、終わるまで止めらんねぇぞ。炎獄陣を纏った妃戦は、破壊を楽しむ鬼になる。鬼である俺達の本来の姿だが、一度使ったが最後、気を失うまで破壊を続ける」


 妃戦が炎獄陣を使うのは、主人の命が危険な時だけだ。

 戦鬼の困り果てた様子を他所に、炎獄陣を使った妃戦は、戦いを楽しむ様に笑いながら攻撃を続けていた。


羅蕭「ぐっ……これ以上は、お前達を……」


 羅蕭の気持ちが一瞬迷った瞬間を、妃戦は見逃さなかった。

 羅蕭の魔炎斧をかい潜り、羅蕭の身体に触れた。


妃戦「ふふ……味わえ。永久に消えぬ、地獄の業火。極火滅炎ごっかめつえん


 その瞬間、妃戦の手から放たれた業火が、零距離で爆発をした。


羅蕭「……がっ……」


 その衝撃に羅蕭は、ふらふらと二、三歩後退をした。


羅蕭「炸裂式の炎か…………ッ!?」


 妃戦の極火滅炎によるダメージは大きく、片腕が吹き飛び、腹部も削り取られていた。


戦鬼「妃戦の極火滅炎か。ありゃ、絶対に味わいたくねぇな」



//////紫苑VS時斗



時斗「――紫苑。俺がわからんか?」


 時斗の呼び掛けに、紫苑からの返答はなかった。


時斗「そうか。――なら、紫苑が悲しい思いせん内に、俺が終わらしたる」


 時斗がそう言った瞬間、紫苑の四方を氷の刃が囲んだ。


時斗「紫苑。少し痛いで」


 時斗の合図と共に、四方にあった氷の刃が一斉に紫苑を襲った。

 しかし、氷の刃は紫苑に触れることなく、黒い炎に消されていった。


時斗「ちっ! やっぱ、この程度の術じゃ、黒炎は抜けんか」


 そして、黒炎が氷の刃を消すと同時に紫苑の姿が消えた。


時斗「まずい!?」


 時斗は瞬時に、自分の四方に氷の壁を作った。

 すると、一カ所だけ、氷の壁から蒸気があがった。


時斗「そっちか!?」


 時斗の視線の先に、紫苑の姿が現れた。


時斗「――くっ!」


 紙一重で、時斗は紫苑の攻撃をかわしたが、着ていた服に黒炎が飛び火した。

 時斗は黒炎のついた服を素早く脱ぎ捨てた。


時斗「あ、危なかったわ!?」


 時斗の脱ぎ捨てた服は、黒炎に包まれて消滅した。


時斗「しゃあないか……」


 時斗は消滅した服の後に視線を向けて、拳を握った。


時斗「望むは絶対零度。彼の者の動きを封ずる、美しい花を咲かせ。――氷魔血華!」


 その瞬間、時斗と紫苑の周りを霧が覆い、次第に霧の水滴が凍り、美しい氷の華を咲かせた。


時斗「こいつは火属性の天敵。水属性の最高位術。これで終わりや、紫苑!!」


 辺りの水分が一瞬で凍り付いていったが、黒炎を纏った紫苑に影響はなかった。


時斗「あかんか……なら、あれしかないか」


 その瞬間、紫苑の姿が消えた。



//////羅蕭VS戦鬼・妃戦



羅蕭「はぁ、はぁ……戦鬼、妃戦……お前達に、これは使いたくなかったが、主人の命を遂行するため……許せ」


 羅蕭は、ボロボロの身体に渾身の力を込めて立ち上がった。


戦鬼「なんだ?」


 羅蕭は魔炎斧を握り、無防備のまま立っていた。

 それを見た妃戦は、地面を蹴り、羅蕭に向かっていった。


戦鬼「――妃戦! なんかわからねぇがやばい! 行くな!!」

妃戦「はぁぁぁぁぁぁ!!」

戦鬼「妃戦――!!」


 妃戦と羅蕭が交差する瞬間、羅蕭とその手に握られた魔炎斧が微かに動いた。


羅蕭「許せ。――魔装氷炎まそうひょうえん


 羅蕭の魔炎斧が妃戦に当たる瞬間、魔炎斧を覆った水分とぶつかり水蒸気爆発を引き起こした。

 爆煙が視界を遮る。

 先程まで休む事なく攻勢に出ていた妃戦の気配も止まっていた。


羅蕭「――許せ。これしかお前を止めるすべが……なか……った……」


 力を使い切った羅蕭の片膝が地面についた。

 そして、次第に爆煙が晴れて来ると、二つの影が映った。


羅蕭「――!? まさか……」


 爆煙の中から姿を現したのは、魔装氷炎をその身で受け、大きな傷を負った戦鬼だった。


戦鬼「がはっ!?」


 多量の吐血をし、自慢の角は折れ、ボロボロになりながらも戦鬼はその場に立ち続けていた。


戦鬼「……らじょう゛~……」


 身体を動かそうとする戦鬼だったが、魔装氷炎のダメージは大きかった。


妃戦「……っ……」


 そこへ、魔装氷炎の爆発により気を失っていた妃戦が目を覚ました。


妃戦「……っ!? 戦鬼? その傷は!?」

戦鬼「……ぉっ!? 炎獄陣が解けたのか?」

妃戦「……まさか、私が!?」

戦鬼「へっ……そんな馬鹿な事があるかよ」


 妃戦は戦鬼に駆け寄り、急いで治療を始めた。


羅蕭(主人……すまぬ……)


 その後ろで羅蕭は力を使い果たし、崩れ落ちた。



//////紫苑VS時斗



 紫苑の姿が時斗の前から消えた。

 時斗には、紫苑の動きについていけるだけの体力は残っていなかった。


時斗「出来れば、こいつはやりとうなかったんやけどな」


 時斗は一度深く深呼吸をし、覚悟を決めた様に真っ直ぐ立った。


時斗「紫苑! 俺はここや! さぁ、やってみい!!」


 その瞬間、時斗の身体に衝撃が走った。


時斗「――がっ!?」


 時斗の腹を貫いた紫苑の腕から、流れ出した時斗の血液が落ちていく。


時斗「……つ……つかまえた……」


 時斗は自分の身体を使い、紫苑の動きを止めた。


時斗「――黒炎、封鎖!!」


 時斗は紫苑の身体に直接冷気を流し込み、内側から黒炎を封じ込め様とした。


時斗「――ッ!?」


 だが、その間にも、黒炎が紫苑の腕を伝い、時斗の身体を焼いていた。


時斗「……紫苑……はよ、目~覚まさんかい!!」


 時斗は自分の身体に残っている術力を、紫苑の体内に流し込んでいった。

 すると、次第に紫苑の身体を取り巻いていた黒炎が消えていった。


時斗「……はぁ、はぁ………」


 そして、紫苑を取り巻いていた黒炎が完全に消えたと同時に、紫苑の身体から力が抜け落ちた。


時斗「し、紫苑!?」


 崩れ落ちる紫苑の身体を時斗は受け止めた。


時斗「……ったく、世話の掛かるやっちゃな……」

紫苑「……ん……」


 すると、ゆっくりと紫苑の瞳が開いていった。


紫苑「……とき……と……?」


 ぼんやりと見えた時斗の名前を呼んだ紫苑が次に見たものは、真っ赤に染まった時斗の身体だった。


紫苑「時斗!?」

時斗「……な……んて顔……しとんのや……し……お……」


 時斗はそのまま、気を失ってしまった。


紫苑「時斗!? 時斗ーー!!」



//////白い背景



 そこで、紫苑の記憶の映像は途切れた。


 だけど、あの後、紫苑がどんな気持ちだったのか……なんとなくわかる気がする。

 そして、今までの紫苑の行動も、俺達を巻き込まないようにしていたんだ。

 一人で悩んで、一人で戦って……


 すると、いつの間にか俺の瞳から涙が溢れ出していた。


優斗「……紫苑を助けたい……あいつを守ってやりたい……」


 すると、俺は真っ白な世界の中に紫苑の姿を見つけた。

 その紫苑は、まるで小さな子供の様に、弱々しく、綺麗な顔を涙で濡らしていた。


優斗「……紫苑……紫苑!!」


 気がつくと俺は、紫苑に向かって駆け出していた。

 そして、紫苑の手を掴んだ瞬間、優しい温もりを感じ、視界がホワイトアウトしていった。



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