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鬼人神鬼  作者: saku
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第参拾弐話『中編18 それぞれの戦い11』

時斗「……ぉ……ぃ……」


 何だ?

 誰かが呼んでる。


時斗「……お……い……おい!? 無事か!?」

優斗「……ぅ……」

時斗「どうやら、生きとるみたいやな」

優斗「――お前!?」


 気が付くと、俺の目の前には時斗がいた。


優斗「――ッ!?」


 立ち上がろうと腕を動かした瞬間、激痛が走った。

 それと同時に、俺の止まっていた思考回路が動き出した。


優斗「ち、近づくな!?」

時斗「どないしたんや?」

優斗「お前が偽物だってのは、わかってんだ!」

時斗「偽物?」


 すると、時斗は笑いはじめた。


時斗「なるほどな。兄ちゃんもあいつにやられたってわけか」

優斗「あいつ?」

時斗「俺の姿に化けて。紫苑だけやなく、兄ちゃんもか。胸糞悪い」

優斗「紫苑? 紫苑もやられたのか!?」

時斗「あぁ。命まではいかへんかったがな」


 俺は安心して、一息吐いた。


時斗「そや。一応、証明はしとかなあかんな」


 そう言って、時斗は自らの式鬼を呼び出した。


時斗「こいつが俺の式鬼、羅蕭や」


 時斗の言葉に合わせ、羅蕭が軽く会釈をした後、時斗は羅蕭を元に戻した。


時斗「そんで兄ちゃん。真城の姉ちゃんはどないした?」

優斗「俺が来た時にいたのは、お前の偽物と月ちゃんだけだった」

時斗「月? ちっこい嬢ちゃんもいるんか!?」


 時斗は辺りを見回した。


優斗「月ちゃんはいない。連れていかれた」

時斗「なんやて!? ――あいつが何で月を……?」


 時斗は少し考えた後、何かを思い出した様に言った。


時斗「せやった。今は忙なあかん事があるんや」


 すると、時斗は俺の腕を取り、立たせた。


時斗「歩けるか?」

優斗「問題ない」

時斗「なら、すぐに真城に向かうで」

優斗「真城に?」

時斗「あぁ。完全に奴らにやられたわ。鬼門は破壊してこそ、意味のあるものやったんや」

優斗「どういうことだ?」

時斗「鬼門は力を与える物やなかった。力を封じる物やったんや」


 力を封じる?

 だとすれば、俺達が鬼門を壊すって事は、封じられた力を解放するって意味か?


時斗「四精鬼に鬼門を守らせ、あたかも重要に見せかけてたんや」

優斗「それって……」

時斗「奴ら、四精鬼を捨て駒にしたんや」


 仲間を見捨てる何て……

 待てよ?

 安里と京澄の鬼門の破壊は、俺が見ている。

 そして、時斗がここにいるって事は、藤平の鬼門も破壊されているはず。

 つまり、残っているとすれば、紬のいる真城の鬼門だけって事に。


時斗「兄ちゃんも気付た様やな」

優斗「急いで紬の所に行かないと」

時斗「その前に……その折れとう腕をかしな。下手くそやけど、少しはましになるからな」


 そう言って、時斗は折れている俺の腕に触れた。


時斗「内功転生。上手くいけば、腕くらいは元に戻せる」


 そして、暫くすると、腕の骨は繋がり、痛みが消えていた。


優斗「折れた腕が……」

時斗「さぁ、早う行くで」



//////真城家



紫苑「……むぎ……紬!?」


 紬は自分の名前を呼ぶ声に目を開けた。


紬「……紫苑さん……? 何故、ここに?」

紫苑「それよりも、紬。あんた、ぼろぼろじゃない」

紬「……少々、やられてしまいました」


 紬の身体は、少々などと呼べる傷ではなかった。

 身体の至る所に切り傷があり、左手の指は人差し指、中指が折れて、曲がっていた。


紫苑「しっかりしなさい。今、治してあげるから」


 そう言って、紫苑はゆっくりと紬の身体に手を差し出した。

 それと同時に、奇妙な球体が紫苑の腕に集まった。


紬「紫苑さん。それは……?」

紫苑「これ? 精霊よ」

紬「精霊? まさか、本当に……」


 そして、紫苑は紬に笑いかけた。


紫苑「だから、大丈夫……!? ごほっ!?」


 紫苑は慌てて、口元を紬から隠した。


紬「紫苑さん?」

紫苑「大丈夫。何でもないわ」


 紫苑の口元には、僅かに赤い血液が付いていた。


焔(おい!? もう止めとけ! でねぇと、マジでやばいぞ!!)

紫苑(私の事は、私が一番わかってるわよ。でも、紬の傷を治せるのは、私だけなのよ)

焔(ちっ! お前、そんな事してると、早死にするぜ)

紫苑(私が死なない様に、焔がいるんでしょ?)

焔(な!? 自分で無茶苦茶するやつをどう助けろってんだ!? 主がいなくなったら困るから、仕方なく言ってるんだ)

紫苑(――ありがとう、焔)

焔(あんま、時間はかけるな。それと、命の危険を感じたら、俺は強制的に解除するからな)


 焔はそう言い残すと、紫苑の中に消えていった。


紫苑「……内功転生……」


 焔の力を借りた紫苑の術力を受け、紬の傷はみるみる治って行き、自力で立ち上がれるまでに回復した。


紬「ありがとうございます、紫苑さん」

紫苑「…………」

紬「紫苑さん?」


 突然、紫苑の周りを浮遊していた球体が消え、紫苑の身体がゆっくりと倒れていった。


紬「紫苑さん!?」


 地面にぶつかる寸前で、紬は紫苑の身体を抱き合えた。


紬「紫苑さん……紫苑さん!?」



//////真城家前



 俺と時斗は全力で走り、最短で真城家に到着した。


優斗「はぁ、はぁ……」

時斗「兄ちゃん。はよ、中入るで!」


 その瞬間、俺と時斗に嫌な予感が走った。


優斗「……今のは……」

時斗「誰かの術力が消えた。それも、かなり大きい奴や!」

優斗「急ごう!」



//////真城家内部



 俺と時斗は一直線にある場所に向かっていた。

 そして、そこに着いた時、目の前には、気を失っている紫苑と、紫苑を抱き合える紬の姿があった。


優斗「紬!? 紫苑!?」


 俺と時斗は紫苑に駆け寄った。

 そして、時斗はゆっくり紫苑の身体に触れた。


時斗「あほ!? 自分の限界超えて、精霊の力を使ったんか!? 身体ん中の術力がからっぽになっとる!」

優斗「紫苑はどうなるんだ?」

時斗「術力がからっぽっちゅう事は、紫苑の身体に魂が無いっちゅうこっちゃ」

優斗「魂が無い?」

時斗「魂が無い肉体。つまり、植物人間の様なもんや。そして、魂を持たない身体は、いずれ朽ちていく」

優斗「このままじゃ、紫苑は死んじまうって事か? 何か、紫苑を助ける方法はないのかよ!?」


 俺は声を荒げた。

 そんな俺に、時斗は冷静に言った。


時斗「まだ、方法はある」

優斗「何だ!?」

時斗「外からの術力供給や」


 外から?

 つまり、俺達の術力を紫苑に分けるってことか。


優斗「わかった。直ぐにやろう」


 意気込む俺に、時斗は慌てるなと言わんばかりの態度をとった。


時斗「待ちぃや。兄ちゃん、簡単に術力供給が出来ると思っとるんか?」

優斗「だって、戦鬼や妃戦って式鬼に、紫苑は術力供給をしてるんだろ?」

時斗「それと、今回のは別や」

優斗「別? どう言う事だ?」

時斗「主が式鬼に術力供給が行えるんは、術力の行き来する術糸みたいなんが繋がっとるからや」

優斗「じゃあ、どうすればいいんだ!」

時斗「落ち着きぃや。紫苑との術糸を繋げる。ここが、一番難しいとこなんや」


 時斗は紫苑に手をかざした。


時斗「ええか。今から、俺が紫苑の世界に入る道をこじ開ける。その間に兄ちゃんは紫苑の世界で、術糸を繋げてくるんや」

優斗「術糸を繋げるって、どうすればいいんだよ!?」


 俺の言葉に少し悩んだ時斗は、ごまかす様に笑った。


時斗「行けばわかるやろ。――多分な」

優斗「多分って!?」

時斗「しゃーないやろ。俺だって、外部からの術力供給なんて、やったことあらへん」

優斗「皆知らないなら、俺じゃなくて、お前や紬が行った方がいいんじゃないか?」

時斗「まぁ、普通やったらそうするんやけど、俺も真城の姉ちゃんも、紫苑に分けるだけの術力が残ってないんや」

優斗「――わかった。何とかしてみる」


 俺は覚悟を決めた。

 この場で紫苑を助けられるのは俺だけ。

 失敗は紫苑の死に直結する。

 絶対に失敗は許されない。


時斗「最後に、紫苑の世界に入る時には、兄ちゃんの身体から魂だけが引きはがされる」

優斗「え?」

時斗「紫苑の世界っちゅうんは、言わば精神……心の世界や。普通の身体じゃ入れんのや」

優斗「わ、わかった」

時斗「それと、魂と身体を強制的に引きはがすわけやから、余り長い時間、魂が身体に戻らなければ、一生戻れなくなってまう。時間は長くて、30分くらいやろな」

優斗「それって、つまり……?」

時斗「簡単に言えば、死や」


 俺は大きく深呼吸をした。

 自分を落ち着かせるため。

 そして、改めて気持ちの切り替えをした。


時斗「準備はええか?」

優斗「――あぁ、頼む」


 俺が答えた瞬間、紫苑を中心に風が渦を巻き、空中に裂け目が現れた。


時斗「そいつが入口や!!」


 俺は迷わず、空中に出来た裂け目に飛び込んだ。


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