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鬼人神鬼  作者: saku
33/49

第参拾壱話『中編17 それぞれの戦い10』


時斗「……くっ……」


 男と対峙していた時斗が、突然、地面に片膝をついた。


時斗(偽)「限界だな。藤平 時斗」


 男はそう言って、時斗に刀を向けた。


時斗(偽)「その身体でよくやった。私に刀鬼の力を解放させたのだからな」


時斗(最悪やな。こんなとこで終わりか。まぁ、あいつを逃がす事が出来ただけ、えぇか)


時斗(偽)「さらばだ」


 その瞬間、時斗の心臓目掛け、一筋の閃光が走る。

 それと同時に、突風が吹き、風が渦を巻いた。


紫苑「情けない顔して、何してるのよ?」


 その声に時斗は聞き覚えがあった。

 時斗はゆっくりと視線を声の主に向けた。


時斗「……紫苑……? ほんまに紫苑なんか?」

紫苑「他に、何に見えるっていうのよ」



//////



 目の前に傷付いた時斗の姿。

 私はこんなに傷付いた時斗を、今まで見たことがなかった。


時斗「……紫苑、無事やったんやな?」

紫苑「お蔭様で。――ありがとう、時斗」


 私はゆっくりと時斗を寝かせた。


紫苑「あとは私に任せて」

時斗「任せてって、あいつはそこらの鬼人なんかやない」

紫苑「わかってる」


 すると、私の言葉に呼応する様に、私を囲む球体が回転を上げた。


時斗「紫苑。それは……」


 私は立ち上がると、男に鋭い視線を送った。


時斗(偽)「何かと思えば、貴様か」

紫苑「妃戦と時斗の分。きっちり借りを返す」


 ――私を包む風が一層力強くなる


 両手には弾炎を纏い、男を目掛けて地面を蹴った。


時斗(偽)「――消えた!?」


 男が私の姿を見失った次の瞬間、私の拳は男の顔面を捕らえていた。


時斗(偽)「ぐ……がぁ……!?」

紫苑「これは私の分」


 そして、私は吹き飛んだ男を追撃した。


紫苑「これは、妃戦と時斗の分」


 男は更に勢いをまして吹き飛ぶ。


紫苑「そして、最後に私の分!!」


 私はありったけの力を込めて、男を地面に叩きつけた。


紫苑「……はぁ、はぁ……」


 さすが精霊の力。

 使いすぎると、私の身体に反動がくる。


紫苑「あいつは……?」


 私が視線を向けると、何事もなかった様に男は立ち上がった。


時斗(偽)「それが精霊か…………ッ!?」


 一瞬、男はバランスを崩したが、すぐに立て直した。


時斗(偽)「素晴らしい力だ。精霊は五体。まだ、四体もこの力と同等の者達がいるのか」


 男は小さく笑みを零すと刀を納めた。


時斗(偽)「察するに、その精霊の力は補助系統のものだな? だが、身体の方が力についていけていない。――くくく……面白いものを見せてもらった。鬼門も三つは破壊され、結界の発動に必要な条件は揃っている」


 男は視線を私に向けた。


時斗(偽)「京澄 紫苑。いずれ、その精霊は私が頂く」


 男はそう言うと、音もなく姿を消した。

 私は男の気配が完全に消えたのを確認すると、焔の武装を解いた。


紫苑「……はぁ、はぁ……」


 その瞬間、身体中の力が抜け、地面に座り込んでしまった。


時斗「――助かった」


 時斗は私の腕を掴み、そのまま、首と膝の後ろに手を回して私を抱き上げた。


紫苑「ちょ、ちょっと!? 何やってんのよ!?」

時斗「力使い過ぎで動けんのやろ? それに、お前、こんな所でぐずぐずしてる暇はないんちゃうか?」


 そうだった。

 早くみんなに伝えて戻らないと。


紫苑「時斗」

時斗「なんや?」

紫苑「みんなに伝えて。鬼門を破壊してはだめ。鬼門は邪気の通り道を塞いでいる物なの」

時斗「邪気の? ――しもうた!?」


 時斗の表情が一変した。


紫苑「お願い。皆に伝えて」

時斗「何言うてんのや。紫苑も一緒に行くんやろ?」

紫苑「私は戻らないと行けないの。私を助けてくれた奴が、一人で残ってるの」

時斗「せやかて、そんな身体で何が出来る言うんや?」

紫苑「大丈夫」


 私は地面に下りて、自分の足で立った。


紫苑「まだ、術力が尽きたわけじゃない。焔もいる」


 いつの間にか、私の回りに焔の球体が浮遊していた。


紫苑(焔。もう少しだけ、力を貸して)

焔(俺は構わないが……紫苑。さすがにあんたの身体は限界が来ているはずだ。いくらあんたが優秀でも、この先はどうなるかわからないぞ?)

紫苑(覚悟の上よ。あんな奴でも、死なれたら後味悪いわ)

焔(全く、お優しい主だ)


 焔は呆れた様にそう言うと、私の中に消えていった。

 それと同時に、私の回りを浮遊している球体が高速で回転し始めた。


時斗「紫苑。あの時の事、まだ背負っとるんか?」

紫苑「…………」


 私は時斗に何も答えず、その場から飛び立った。



//////



紅蓮「……はぁ、はぁ……」

炎鬼「終わりか?」


 紅蓮の姿は見るも無惨なものだった。

 片腕は溶け落ち、身体の至る所には重度の火傷を負っていた。


紅蓮「……こ、この先へは……」

炎鬼「くくく……不便な身体だな。苦しくとも死ぬことが出来ないとは」


 突然、炎鬼は紅蓮に話を始めた。


炎鬼「貴様は鬼人の殺し方を知っているか? 一つは、陰陽による浄化の力。そして、もう一つは、契約した鬼が持つ心臓を破壊する事」


 紅蓮も炎鬼の言った事はわかっていた。

 それゆえ、何故、炎鬼が今、そんな話をするのか理解出来なかった。


炎鬼「貴様を殺すのに、俺は浄化の力など使えん。つまり、貴様の契約した鬼から貴様の心臓を奪い、貴様を殺す」

紅蓮「心臓を奪う? 出来るわけがない。俺達は地獄に行く事は出来ないんだからな!」

炎鬼「くくく……はっ、はっ、はっ!!」


 紅蓮の言葉を聞いた炎鬼が、声を上げて笑いはじめた。


紅蓮「簡単な事だ。契約者が行けぬなら、既に地獄にいる奴にとらせればいい」

炎鬼「鬼にお使いでもさせようってか?」

紅蓮「ふふ」


 炎鬼が鼻で笑った次の瞬間、その手には紅蓮の心臓が握られていた。


紅蓮「――!?」

炎鬼「実に良い鬼だったよ。炎鬼の力を感じると、抵抗なく、素直に渡してくれた」

紅蓮「――は……はっはっはっ!! 最後は裏切らておしまいか!? 俺に相応しい!」


 紅蓮は覚悟を決めた様に、笑いはじめた。


紅蓮(ちっ……あいつは、仲間の所に行けたのか? 俺とした事が、最後になってあんな女に出会うなんてよ)


炎鬼「――さらばだ」


 炎鬼の言葉と同時に、紅蓮の心臓は破壊された。

 その時、一陣の強い風が吹き、球体を身に纏った紫苑の姿が現れた。

 紅蓮は倒れ行く視界の中、紫苑の姿を確認した。


紫苑「――紅蓮!?」


 紫苑は倒れた紅蓮の側に一瞬で移動し、紅蓮の身体を抱き起こした。


紫苑「あんた、こんなにまで……」

紅蓮「……おせぇんだよ……」

紫苑「すぐに傷の手当てを!?」

紅蓮「――いいよ」

紫苑「えっ?」

紅蓮「言わなくてもわかる。お前も……相当無理してる様じゃねぇか……ま、前に戦った時より……力が感じられねぇ」


 紅蓮には術力を感じる力などあるはずもない。

 だが、紅蓮は紫苑の術力が限界である事を直感的に感じたのである。


紅蓮「……それに……心臓をやられれば、いくら鬼人だからって……生きていられない」

紫苑「…………」

紅蓮「……そんな顔するなよ……俺が好きでやった事……だ……ははっ……全く……とんでもない女に……惚れち……まった……」

紫苑「紅蓮?」


 紫苑が支えていた紅蓮の身体から力が抜け、肉体は塵になっていった。


炎鬼「馬鹿な男だ! 敵の女に惑わされるとは!」


 炎鬼は紫苑の目の前に溜まった、紅蓮の塵を蹴り飛ばした。


紫苑「――!?」


 それを見た紫苑は硬く拳を握り、ゆっくりと立ち上がった。


紫苑「――やっぱり、あんた、最高にムカつくわ!」


 その時、紫苑の纏う球体が更に回転を上げた。


焔(待て!!)


紫苑「――!?」


焔(感情的になるな! 自分の身体が限界だと知っているだろう!? ここは一度引いて、体制を整えるんだ)


紫苑「うるさい!! ――私は、私は!?」


 紫苑は炎鬼に向け、拳を繰り出した。

 しかし、拳は炎鬼にかわされてしまった。


焔(紫苑! 俺はお前の中にずっといた。だから、お前が起こした過ちも、背負っているものもわかる。だが、今はそれを抑えろ! でなければ、この街で沢山の命が消えていく事になるぞ!!)


紫苑「――!?」


 突然、紫苑の動きが止まった。


紫苑「――わ、わかった。今は退く」


 その言葉とは裏腹に、紫苑の拳は固く握られ、自らの気持ちを押さえ込むように歯軋りをした。

 そして、紫苑はその場から素早く姿を消した。


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