第弐拾捌話『中編14 それぞれの戦い07』
優斗「――ここは……」
見渡す限りの荒野。
俺はこの景色を見たことがある。
優斗「ここは俺の世界か? 何でこんな所に……」
?「久しぶりだな」
優斗「――!?」
突然、背後から声を掛けられた。
?「何て顔をしている。これが初めてでないだろ?」
俺が振り向くと、大人びた言葉遣いからは想像が出来ない小さな少女が立っていた。
優斗「君は……?」
少女は俺の質問に、驚いて返答した。
少女「私を覚えていないの!?」
優斗「覚えていないも何も、今、初めて会ったのに」
少女「…………」
少女は寂しそうな瞳を俺に向けた。
少女「そっか……この世界で会えたって事は、戻ったんだと思ったけど……まだ、なんだね……」
そう言って、少女はゆっくり目を閉じた。
優斗「一体どう言う事なんだ?」
少女「いえ、貴方が私の名を呼ばないのであれば、私との再会は早かったと言う事です」
優斗「再会? それはどう言う事なんだ?」
すると、少女は寂しさを帯びた笑顔を俺に向けた。
少女「私は貴方の中にいます。貴方に再び名を呼ばれるのを待って……」
そう言って、少女は数歩後ろに下がった。
優斗「ま、待ってくれ!? 君は一体!?」
少女「貴方と共に戦う者です。そして……」
追いかける俺よりも早く少女は、何処かに消えていった。
//////東名寺
片瀬「残るは真城の鬼門だけか」
片瀬は結界に包まれた空を見上げた。
紫苑「残念だったわね。あんた達の計画は失敗」
私は目の前の片瀬に、皮肉った言葉を言った。
片瀬「……くくく……」
片瀬は私の言葉を聞き、笑みを漏らした。
片瀬「いや、これで良い。計画通りだ」
その時、私の背後から気配もなく、そいつは現れた。
炎鬼「豪鬼、美鬼、絶鬼がやられた様ですね」
片瀬「帰ったか、炎鬼」
炎鬼「最強と言われた四精鬼が、このざまとは。――ところで、そちらはどうですか、片瀬?」
片瀬「問題ない」
この男、気配を感じなかった。
こいつが四精鬼の炎鬼。
私の視線に気付いた炎鬼は、笑顔を向けた。
炎鬼「片瀬。これは何ですか?」
片瀬「奴らを動かす為の餌だ」
炎鬼「なるほど」
片瀬「それにしても、炎鬼。そろそろ、その話し方も止めたらどうだ?」
炎鬼「そうですね」
そう言った瞬間、炎鬼の表情が一転した。
炎鬼「はぁ~、全く、馬鹿だよなあいつら。大人しく俺について来れば、死なずに済んだのによ」
片瀬「全くだ。それに比べ、炎鬼。お前は頭が良い。それでも、まさか、こちらが手を汚さずに片がつくとはな」
な、何を言ってるんだこいつら?
私の中で二人の会話の内容が掴めなかった。
片瀬「不思議な顔をしてるな。くくく……特別に教えてやろう」
片瀬は鉄格子越しに、不気味な笑いを浮かべた。
片瀬「そもそも、初めから貴様らの認識は間違っていたのだ。鬼門を壊せば、結界が崩れる? そんな事はない。むしろ逆だ」
紫苑「逆?」
片瀬「貴様らは鬼門を勘違いしている。鬼門とは本来、邪気の通り道。つまり、目印なのだ。人間共の負の気は、鬼門を通り、地獄に送られる。そうする事で人間界に負の気が溜まる事なく、暮らしをおくれる。だが、その鬼門が破壊されたら」
鬼門が破壊されれば、人間の負の気が行き場を失い、人間界に溜まる。
紫苑「――まさか!?」
片瀬「そうだ。俺の結界は、溜まった負の気を糧に発動される」
まずい。
急いで優斗達に知らせないと。
そう考えた時、ふと、疑問が浮かんだ。
紫苑「炎鬼。貴方は仲間を裏切ったの?」
炎鬼「――アハハハハ!! 仲間!? あいつらの事を言ってるのか!?
炎鬼は声を上げて笑った。
炎鬼「馬鹿か? 四精鬼なんて、てめえらが勝手に付けたものだろうが? 俺にとっちゃ、あいつらは駒だ。使えなければ変えればいい」
紫苑「――そう。私、あんたの事がよくわかったわ」
炎鬼「それは光栄だ」
紫苑「――命を持て遊ぶ腐った生ゴミね。私が一番嫌いなタイプ」
炎鬼「残念だな。俺は嫌いじゃないぜ。お前の様な女が哀願して、助けを求める姿は大好きだぜ。――そして、助けを求め、哀願するお前をぐしゃぐしゃにするんだ。その時のお前の表情、泣き声を想像するだけで逝きそうだ」
私は怒りの全てを視線に込めて、炎鬼を睨みつけた。
紫苑「あんた、心底ムカつく。こんな物がなければ、真っ先に殺してるわ!」
私の言葉を聞いた炎鬼は、振り向いて片瀬に言った。
炎鬼「片瀬。こいつの始末は俺にやらせろ。こんな活きの良い獲物は久しぶりだ」
片瀬「好きにしろ。それと、奴が動き出したぞ」
炎鬼「知っている。絶鬼を仕留められる奴など、そうはいないからな」
奴?
こいつらが警戒している奴って。
片瀬「あぁ、夜鬼の奴、何故今になって動いた」
炎鬼「気にする事はない。邪魔をすれば殺すだけだ」
片瀬「そうなればいいがな。何故かあの方は奴に、細心の注意をしている」
夜鬼?
あいつが動いたってどういう事?
炎鬼「それよりも、あと一つだ。壊しに行くか?」
片瀬「いや、あの方が自ら動かれた」
炎鬼「そうか。なら、俺達の出る幕じゃないな」
片瀬「あぁ」
そう言うと、炎鬼は私に視線を向けた。
炎鬼「なぁ、そしたらよ。こいつはもう、必要ないよな?」
片瀬「そうだな。残りの鬼門が破壊されるのは時間の問題だろう。故に、もう餌は必要ない」
炎鬼「じゃあ、残りの鬼門が破壊されるまで、楽しむとするかな」
炎鬼は不気味な笑みを浮かべ、私に近づいてきた。
炎鬼「さて、ゆっくり遊ぼうか、お嬢さん」
やばい!?
こいつはふざけた態度と裏腹に、ありえないくらい強い。
こんな、こんな所で……
その瞬間、炎鬼の身体を紐の様な物が縛り上げた。
片瀬「こ、これは!?」
炎鬼を縛り上げた物を見て、片瀬が素早く視線を向けた。
片瀬「貴様……正気か?」
?「あぁ、正気さ。その女は俺のものなんでな」
紫苑「あんた!?」
そこには、一度私と戦った牙浪 紅蓮の姿があった。
紅蓮「また会ったな。随分、ひでぇ格好じゃねぇか?」
紫苑「うるさい! それよりあんた、何しに来たのよ!?」
紅蓮「何しにきたとはひでぇな」
そう言うと、紅蓮は龍蛇鞭で鉄格子を切り裂いた。
紫苑「あんた……」
紅蓮「何きょとんとしてんだ? お前がいかねぇと、お仲間が大変なんだろ?」
紫苑「――そうだ!? 紬達に、鬼門を破壊しない様に伝えないと!?」
すると、紅蓮は小さく笑い、私に言った。
紅蓮「ちっ! 柄じゃねぇが、惚れた女が困ってるのは見過ごせねぇな。――ほら、早く行けよ」
紫苑「え?」
紅蓮「早く、行けってんだよ!」
紫苑「でも、あいつは……」
私の言葉を聞かなくてもわかると、紅蓮の表情が語っていた。
紅蓮「四精鬼だろ? 割に合わねぇ役だ。早くお仲間に伝えて戻って来いよ」
紫苑「――ありがとう」
私はそれ以上何も言えなかった。
ただ、皆に危険を伝えるために、私の身体が自然と動いた。
そして、一言お礼を告げると、急いで皆のもとに向かった。
紅蓮「……俺の命が無くなる前にな……」




