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鬼人神鬼  作者: saku
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第弐拾陸話『中編12 それぞれの戦い05』

//////真城家



美鬼「このガキが、さっさと消えな!?」

八々「ガキ、ガキってうるさいな。紬を傷付ける奴は許さない!!」

美鬼「ガキが! 許さないからどうするってんだ?」

八々「お前にも、紬と同じ痛みを与えてやる」


 すると、八々は美鬼の正面に立った。

 その瞬間、美鬼の指がピクリと動いた。


八々「無駄だよ。僕はその糸じゃ捕まらない」

美鬼「――!?」

紬「糸?」


 紬は不思議そうな表情を八々に向けた。


八々「紬を捕らえていたのは、細く頑丈な鉄糸なんだよ。しかもこいつは、紬の目から鉄糸が見えない様に、自分の能力で光の屈折率を調整していたんだ」


 すると、美鬼の表情が一転した。


美鬼「な、何故わかった?」

八々「さぁ、何故でしょう?」


 八々は無邪気に笑いながら美鬼に答えた。


美鬼「……ふっ、まぁいいさ」


 そう言って、美鬼は鉄糸を操り、八々ではなく負傷している紬を狙った。

 しかし、既に紬の側に移動していた八々によって、難なく交わされた。


八々「残念だったね」

美鬼「これは……そうか、わかったぞ、お前の能力が……お前、私の思考を読んだな?」


 美鬼は八々の能力に気が付くと、表情には笑みが戻った。


美鬼「それなら説明がいく。レアな能力だが、タネさえ分かっちまえばなんとでもなる」


 そして今度は八々の表情から余裕が消えた。


美鬼「お前の能力で私がこれから何をするのか読んでみな!」

紬「や……」

八々「動くな!!」


 紬に対し、八々は声を荒げた。


八々「動いちゃだめだ、紬。僕らの周りはあいつの糸が張られている。少しでも動けば切り落とされる」


 八々の説明に、美鬼は不気味な笑みを浮かべた。


美鬼「そのガキの言う通りよ。動けば綺麗に切れるわよ」


 そして美鬼は隠し持っていた小さなナイフを取り出し、八々に投げた。


八々「うぁぁぁぁ!!」


 八々は張り巡らされた鉄糸、そして自分の後ろにいる紬を守るため動かなかった。


美鬼「あらあら、痛そうね。式鬼のくせに血まで流しちゃって」

紬「八々!? や、止めろ!?」

美鬼「辛いわよねぇ。でも、その声は好きよ。本当のお嬢様の声」


 そして美鬼は更にナイフを投げた。


八々「あぁぁぁぁ!!」

紬「八々!」

八々「……紬……」

美鬼「あ~ははははは!! ゾクゾクするわ~!!」


 美鬼は昂揚した笑い声を上げながら、二本、三本とナイフを投げた。

 八々の小さな身体は、投げられたナイフの傷口から溢れた血で、真っ赤に染まっていた。


八々「……つ……む……ぎ……」


 八々は多量の出血で意識が朦朧となっていた。


八々「……紬は……僕が……守る……」

美鬼「馬鹿なガキだ。大人しくしていればよかったものを。全身の血を抜いて、殺してあげる」

紬「……血液……?」


 紬は自分の周りを確認する様に見回した。

 そして、八々に向けて言った。


紬「ありがとう、八々。あとは、私がやります。休んでて下さい」


 そう言って、紬は八々を術札に戻した。


美鬼「今さらガキを引っ込めてどうするつもり?」

紬「――貴方の負けです」


 紬は地面に落ちている自分の武器を拾いに走った。


美鬼「ふふふ……言ったでしょ? お嬢様の周りには、私の鉄糸が張ってあるって。――細切れに……!?」


 しかし、鉄糸は紬の身体にかすり傷をつけるばかりだった。


美鬼「な、何故!?」

紬「はぁぁぁぁ……皆のかたき!!」


 一直線に突き出した紬のハルバートが、美鬼の身体を貫いたまま、勢いを止めずに進み続けた。


紬「――あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」


 そして、紬のハルバートは向かい側にあった壁に突き刺さって止まった。


紬「……はぁ……はぁ……」

美鬼「……何故……鉄糸が……」


 紬は両手を膝に置き、乱れた呼吸のまま答えた。


紬「……あ、貴方のミスは……私達を傷付け過ぎた事です。血液には塩化物イオンと言う物質が含まれています。それは鉄や鉄合金などに、錆を誘引する物質」


 美鬼は紬の言葉を聞き、視線を張り巡らせた鉄糸に向けた。


美鬼「……そ、そう言う事か……鉄糸が錆て……」


 美鬼の身体は、ハルバートに貫かれた場所を中心に、光の粒に変わっていった。


美鬼「ちっ! くそ……ガキが……」


 そう言って、美鬼の身体は消滅した。

 そして、美鬼の消滅を確認した紬は、緊張の糸が途切れた様に気を失った。



//////安里家



絶鬼「お前の力は知ってるぞ」


 絶鬼は余裕の笑みを浮かべながら言った。


絶鬼「そんな力で儂に勝てるとでも思っているのか?」

夜鬼「おしゃべりな奴だな」


 夜鬼は不意打ちの様に、絶鬼に襲いかかった。

 だが、絶鬼は夜鬼の攻撃をあっさりと避け、鋭い爪で夜鬼を切り付けた。


絶鬼「これでお前も使えるだろう?」


 夜鬼の腕からは、ポタポタと血液が垂れていた。

 次の瞬間、夜鬼の身体が変化し、瞳からはその場のもの全てを射殺す様な殺気が放たれていた。

 そして、腕から流れていた血は鋭い矢となり絶鬼に向け放たれた。


絶鬼「甘い、甘い。大事な血液を無駄に使ってもいいのかぃ?」

夜鬼「…………」


 夜鬼は何も言わず、次々に血の矢を作りだしていった。


絶鬼「無駄だ。無駄だ」


 絶鬼は数十と言う血の矢を、苦もなく避けていった。


絶鬼「!?」


 最後の血の矢を避けた瞬間、絶鬼の胸に地面から伸びた血の槍が刺さった。


絶鬼「……そうか……地面から目を逸せるために……」


 絶鬼が次の言葉を発する前に、血の刃によって、絶鬼の全身は切り刻まれていた。

 夜鬼は細切れになった絶鬼を確認し、背を向けた。

 その瞬間、風景が切り替わった。


絶鬼「どこへ行くんだ、夜鬼?」


 その声に素早く反応した夜鬼の前には、先ほど細切れにした絶鬼が立っていた。


夜鬼「……幻術か……」

絶鬼「その通り。夜鬼、お前は死ぬまで儂の幻と戦い続けるのだ」


 そう言った絶鬼の姿は、蜃気楼の様に夜鬼の前から消えていった。


夜鬼「幻……か……」


 絶鬼の居場所が掴めない中、夜鬼は自らの頸動脈を切った。

 夜鬼の首から血液が吹き出し、辺り一面に血の雨が降り注いだ。


絶鬼「馬鹿が! 貴様の能力は己の血液が無ければ意味のないもの!」


 絶鬼は絶好のチャンスと、夜鬼に攻撃を仕掛けた。

 しかし、絶鬼の意志に反し、身体は動かなかった。


絶鬼「なんだこれは!?」


 動揺する絶鬼に夜鬼はゆっくりと近づいた。


絶鬼「く、来るな!?」


 その時、絶鬼は自分の身体に付いた夜鬼の血液に気がついた。


絶鬼「そうか。貴様が血をばらまいたのは、このためだったのか!?」

夜鬼「幻にはないが、本物には実体がある」


 しかし、絶鬼の言葉を無視するように夜鬼は近づいていった。

 そして、絶鬼を見下ろしながら夜鬼は小さく笑みを零した。


夜鬼「相手を間違えたな、じじい」

絶鬼「ま、待て!? あ、あいつなら解放する!?」


 そう言って、絶鬼は優斗への幻術を解いた。


夜鬼「余生、俺の前に現れないように隠居でもするんだな、じじい」


 夜鬼が背を向けた瞬間、絶鬼は背後から夜鬼を襲った。


絶鬼「馬鹿が! 油断したな! 何が隠居だ! 貴様こそ、一度堕ちた地獄に帰るんだなぁ!!」


 その瞬間、絶鬼の腕が光の粒に変わっていった。


絶鬼「これは!?」

夜鬼「俺が見逃すとでも思ったのか、じじい?」

絶鬼「浄化の光!? この力は奴等しか……そうか!?」


 絶鬼の表情が一転し、夜鬼を鋭い眼光で睨んだ。


絶鬼「貴様はあの方と同様……」


 絶鬼の言葉を遮る様に、夜鬼は追撃をし、絶鬼の身体を全て光の粒に変えた。

 そして、夜鬼が優斗に視線を落とすと、呟く様に言った。


夜鬼「あいつに会うまでは、死ぬなよ……」


 そして、夜鬼は去っていった。



//////安里家



優斗「……っ……」


 俺が目を覚ますと、そこには初めに入ってきた安里家があった。


優斗「さっきまでのは、一体何だったんだ?」


 周りを見渡すと、戦闘を行っていた様な形跡があった。


優斗「これは……」


 俺は思い出そうとしたが、意識を失った先は何もわからなかった。


優斗「――悩んでても仕方ない。早く鬼門を探して北の京澄に行かなくちゃ」


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