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鬼人神鬼  作者: saku
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第弐拾伍話『中編11 それぞれの戦い04』

//////京澄家



 京澄家に入った月は、息が詰まる程の重圧を感じていた。


月「……はぁ、はぁ……」


 重圧の中での緊張から、いつの間にか呼吸は乱れ初めていた。


?「こんな所で遊んでたら危ないよ。お嬢ちゃん」


 突然、月の背後から声を掛けられた。


月「――!?」


 月は素早く距離を取り、自己の守りを無意識に固めた。


?「どうしたのかな? そんなに怖がっちゃって。――仕方ないか。普通の子供がこんな場所にいるはずないしね」


 男は月に笑顔を向けた。


?「それで、お嬢ちゃんの目的はあれかな?」


 そう言って、男は後ろにある小さな社を指差した。


月「あれは?」

?「あれが鬼門だよ。お嬢ちゃん達が探してるね」


 男の口調は優しかった。

 しかし、それが更に男の存在を不気味にさせていた。


?「おっと!? それと、自己紹介だ。私の名は炎鬼えんき。四精鬼と言えばわかるかな」

月「……四精鬼……」


 月は以前、四精鬼の名を夜鬼に聞いた事があった。


炎鬼「それから、特別に私の能力を見せてあげます」


 そう言って、炎鬼は足元に転がっていた石ころを拾った。

 石ころは炎鬼の手の中で真っ赤な液体に変わった。


月「――!?」

炎鬼「わたしの契約した鬼は、摂氏数億度の地獄の炎を浴び続けた奴でね、いつしかそいつは自らの身体に地獄の炎を纏う様になった。つまり、私の身体にも地獄の炎が流れているのです。触れればこの石ころの様に熔解する」


 月の足は小さく震えていた。


炎鬼「良い反応だ。今日はお帰り、お嬢ちゃん」


 そう言って、炎鬼は月に背を向けた。


月「……だめ……私は、戦いに来たの……」


 震える月の言葉を聞き、炎鬼は立ち止まった。


炎鬼「いいのかい? お嬢ちゃんは確実に死んじゃうよ?」


 炎鬼の口調は優しかったが、その言葉を聞いた瞬間、月の身体に寒気が走った。

 しかし、月は恐怖を堪える様に唇を噛み締めた。


月「……怖くない……戦う……」


 月は空気中にある水分を固め、水の盾を作った。


炎鬼「悪いな、お嬢ちゃん。そんな物じゃ、意味がない」


 そう言って、炎鬼が水の盾に触れると、一瞬の内に蒸発して消えてしまった。


炎鬼「これでわかったかな? 今度は止めないよ。――お嬢ちゃんの身体が溶けるまで」

月「――!?」


 月は先ほどと同じ様に、水の盾を作った。


炎鬼「無駄だって、さっき、わかっただろ?」


 無駄だとわかっていても月は下がらなかった。

 死への恐怖で身体が震えても、引き下がれない理由が月の中にあった。


炎鬼「そうか。残念だ」


 炎鬼の腕は、水の盾を突破り、月に襲いかかった。


炎鬼「――!?」


 しかし、炎鬼の腕が溶かしたのは、一本の木の柱だった。


翔「この馬鹿。だから言ったんだ」

月「……翔……?」


 月が目を開けると、別れたはずの翔に抱き抱えられていた。


翔「勘違いするな。僕は夜鬼さんの敵になりそうなあいつを排除しにきたんだ。月を助けるためじゃないからな」


 そう言って、翔は炎鬼の姿を確認した。


翔「しかし、四精鬼の炎鬼とは……ついてるのか、ついてないんだか……」

炎鬼「お前は鬼人か。なるほど、少しは楽しめそうだ」


 翔は素早く、自らの武器を手にした。


炎鬼「鎌ね。そいつは、どんな能力を持っているのかな?」

翔「自分の目で確認しろ!!」


 翔の大鎌の刃が空中で消え、炎鬼の首を襲った。


翔「――!?」


 しかし、大鎌の刃は炎鬼の身体に触れた瞬間、熔解した。


炎鬼「なるほど。その鎌は空間を飛び越すのか。だけど、残念だったね。私の身体には、誰も傷をつけられない」

翔「ちぃ! 全身が灼熱の塊か!」


 そして、翔は小さな声で月に話しかけた。


翔「月。僕が奴の注意を引く。その隙に此所から逃げろ」

月「……やだ……」

翔「僕の予知では、この場所で月が血だらけになっていた。だから、この場から離れるだけでいいんだ。ここにいれば、予知通りになる」

月「翔は?」

翔「僕は大丈夫。炎鬼の動きは予知出来る。でも、月を守りながらじゃ、いくら動きが読めても殺られる。だから、一人の方が動きやすいんだ」

月「……翔……」


 それでも迷っている月を、翔は突き飛ばした。


翔「行け、月!! ――――はあぁぁぁ!!」

炎鬼「自分を犠牲にするのですか。愚かな」


 炎鬼は不気味に笑いながら、対峙している翔ではなく、その後ろにいる月に視線を向けた。


炎鬼「それでは遠慮なく、殺します」

翔「月!? ちっ!? ――――うぁぁあぁぁ!?」



//////藤平家



時斗「全く、厄介な能力やな。実体の無いカマイタチとはな」

豪鬼「諦めな、藤平のぼっちゃんよ」


 時斗と羅蕭は、一度、豪鬼との距離をとった。


羅蕭「主人よ。これから、どうする?」

時斗「何とかして、あのカマイタチを止めな、近付けんわ。――ん? カマイタチ?」


 時斗は何かを考え込んでいた。


豪鬼「どうした藤平のぼっちゃんよ? 続きをやろうぜ」


 時斗はゆっくりと顔を上げた。


時斗「あぁ、いいで。そして、この勝負も終いにしようや」

豪鬼「ふふふ……、どうやら死ぬ覚悟が出来たらしいな」

時斗「そいつはどうかな?」


 時斗は小さく笑みを零した。


時斗「羅蕭!」

羅蕭「はっ!」

時斗「5分や。5分間、奴を食い止めてくれ!!」

羅蕭「心得ました」


 時斗の言葉と同時に、羅蕭は豪鬼に向かっていった。


羅蕭「魔閻斧!」


 豪鬼は羅蕭の魔閻斧を軽々と止めた。


羅蕭「ぐぅぅ……」


 羅蕭はありったけの力を込めて、鍔競り合いの形に持っていった。


豪鬼「な、なるほど……俺が刀を振るわなければ能力は発動しない。時間を稼ぐには、この形が一番だな」


 しかし、豪鬼がそのままでいるわけはなく、羅蕭を蹴り飛ばした。


豪鬼「これで距離が開いたな」


 豪鬼は羅蕭に向かって刀を振るった。

 見えない刃を避けるのは容易な事ではなく、羅蕭の残りの片腕が宙を舞った。


羅蕭「ぐぉぉぉ……」

豪鬼「はっ、はっ、はっ! もう後はないぞ!? さぁ、どうする、式鬼よ!?」


 羅蕭は両腕を失いながら、懸命に立ち上がった。


羅蕭「主人から任された5分。命を賭しても、必ず……」

豪鬼「忠実な式鬼だな。お前の様な式鬼を殺すのは惜しいが、仕方がない」


 豪鬼が刀を構えた。

 そして、両腕を失った羅蕭は、残る牙を使い豪鬼に向かっていった。


羅蕭「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」

豪鬼「実におしい」


 豪鬼は羅蕭の腹部に刀を突き刺していた。


豪鬼「どうだ? お前、俺と組まないか? 主人なんて殺してよ?」

羅蕭「愚問を……貴様の下につくくらいなら死を選ぶ」

豪鬼「そうか、そうか。仕方ない。忠実ゆえの過ちだ」


 豪鬼は刀を羅蕭の首を目掛けて振り下ろした。

 だが、豪鬼の刀は羅蕭の前に出来た分厚い氷によって防がれた。


時斗「すまんな、羅蕭。だが、これで奴を倒せる」


 時斗は羅蕭の片腕を拾い、結合した。

 しかし、時斗の術力も残りはわずかだった。

 それは乱れ、整える事が不可能な呼吸に現れていた。


時斗「あと一撃や。奴の能力は俺が防ぐ。せやから、ありったけの力で奴を攻撃するんや」

羅蕭「わかりました」

豪鬼「無駄だ! 俺の能力を見て、まだわからないか!?」


 豪鬼は向かってくる羅蕭に刀を振り下ろした。

 羅蕭は豪鬼の刀を、残っている片腕で受け止めた。


豪鬼「馬鹿が! それで防いだつもりか!?」


 そう、豪鬼の言う通り、第二の実体を持たぬ刃は止めていない。

 だが、羅蕭の身体に何の変化もなかった。


時斗「羅蕭! 食らわしたれ!!」

羅蕭「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 豪鬼の刀を弾き飛ばし、羅蕭の拳が豪鬼の腹部を突き抜けた。


豪鬼「うぐぁぁぁ!?」


 吹き飛んだ豪鬼の前に、時斗は近付いていった。


豪鬼「……がっ……な、何故……俺の能力が……」

時斗「あんた、自分の力を過信し過ぎや」

豪鬼「……藤平……時斗……」

時斗「カマイタチっちゅうんはな、科学的に原因がわかっとるんや。液体が気体に変わるために必要な熱があってな、液体は気体に変わるため、その熱を吸収するんや。そして、カマイタチは人の体温が低い中、身体についた汗なんかの液体が更に熱を奪おうとした結果、それに耐えられない細胞や組織が破壊されて起る現象。つまり、身体に液体が付着してなければ、この現象は起こらんわけや」

豪鬼「……どうやって……」

時斗「簡単や。液体を凍らせてしまえばいい」

豪鬼「凍らす? だが、それなら溶けた氷の水が……」

時斗「だから羅蕭に時間を作ってもらったんや。氷っちゅぅんはな、短時間で凍らせると水の分子が揃わへんから、氷の結晶が大きくならんのや。せやから、いつもより時間を掛けて凍らせ、氷の結晶を大きく、解けにくい物を作ったんや」

豪鬼「ふっ……はっはっはっ……ははははは!!」


 時斗の言葉を聞いた豪鬼は声を上げて笑った。


豪鬼「負けだ……俺の負けだ! さぁ、殺れ!」

時斗「言われんでも、そうさせてもらうわ」


 そう言って、時斗は術札に気を込めて豪鬼の胸に落とした。

 すると、豪鬼の身体が光の粒となっていった。


豪鬼「……ありがとよ。楽しかったぜ……藤平の……ぼっちゃん……よ……」


 そして豪鬼の身体は、全て光の粒に変わった。


時斗「ふぅ~……」


 時斗は大きく息を吐くと、氷の刃を鬼門に放って破壊した。


時斗「こ、これで、俺の仕事は終わりや……はよう、紫苑を……」


 しかし、激しい戦闘の中で力を使い過ぎた時斗の身体は拒否をした。


時斗「……あかん……力を……使い……すぎ……た……」


 時斗はその場に力なく崩れ落ちた。


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