第弐拾参話『中編09 それぞれの戦い02』
//////京澄家
月「……ここに鬼門がある……」
月はじっと京澄家を見つめた。
そして、一歩踏み出そうとした瞬間、肩を叩かれた。
月「――!?」
驚いた月は、素早くその場から離れた。
翔「何だよ。そんなに驚かなくても良いだろ? 元は仲間なのによ」
そこには、元は夜鬼の下で共に戦った、水瀬翔の姿があった。
月「……翔……何で……?」
翔「この先は行かない方がいい。――殺される」
月はじっと、水瀬翔の目を正面から見つめた。
月「……それは、悪い事をした罰……」
翔「悪い事……ね」
翔は月に最終通告をする様に言った。
翔「いいか。死んだら意味がない。この先に待ってるのは鬼だ。慈悲も何もない」
月「………………」
それでも強い瞳を向ける月を見て、翔は大きく息を吐いた。
翔「はぁ~……、しょうがないな」
呆れた様に言った翔は、自分の左袖を捲りあげた。
月「それ……」
翔「あぁ、これは鬼印だ。僕も鬼と契約をした」
驚いて言葉を失っている月に対し、翔は続けた。
翔「夜鬼さんについて行く為の僕なりの覚悟だ。そして、月には教えておくよ。僕の能力は未来予知。簡単に言えば、預言だ」
月「よ……げん?」
翔「そう。相手の未来が見えるんだ。片瀬に捕まったお姉さんの未来は、既に見えていた。そして、今は月だ」
月「月?」
翔「あぁ、未来の画面に血まみれになった月がいた」
翔にすればリスクの高い話だ。
自らの能力を元仲間とは言え、今は敵になる月に伝えるのは。
それでも翔は伝えた。
しかし、月は小さく首を横に振った。
月「……月が奪ってきた人達にごめんなさいが出来るなら……」
すると、翔は呆れた様に言った。
翔「人がせっかく忠告をしてやったのに。どうなっても知らないからな」
そう言って、翔は月に背を向けた。
月は目の前に佇む京澄家を確認した後、ゆっくりと中に入って行った。
//////藤平家
豪鬼「はぁぁぁぁ!!」
空を切った豪鬼の刀は、轟音と共に堅いコンクリートの床を砕いた。
時斗「ちぃ! くらったら終いやな」
豪鬼の刀を避けた時斗は、豪鬼の体制が整わない内に、氷の刃を放った。
豪鬼「またこいつか!」
豪鬼が刀を一振りすると、無数の氷の刃が一瞬で消えた。
豪鬼「同じ事をやっても無駄だ! お前の本当の力を見せてみろ!?」
時斗「言われんでも、徐々にエンジン掛けてくわ!!」
すると、豪鬼の周りにある水分が凍結し、身体を覆った。
時斗「氷縛!」
時斗はそのまま豪鬼に向かって突っ込んでいった。
時斗「はぁぁぁぁ、氷結刀!!」
時斗は空中にある水分を固め、氷の刀を作った。
そして、氷で身動きの出来ない豪鬼目掛けて突き立てた。
豪鬼「ぐっ……く……くく……くくく……はっ、はっ、はっ!!」
豪鬼は氷の刀が刺さった胸から血を流し、大声で笑った。
豪鬼「心地良い痛みだ! いつ以来だ、血など流したのは!」
豪鬼は刺さっている氷の刀を無理矢理引き抜いた。
時斗「……化け物が……」
豪鬼「次は俺の力を見せてやる」
そう言って、豪鬼は身体の動きを奪っていた氷を力任せに引き剥がし、持っている刀を構えた。
豪鬼「頭を屈めろよ。首が飛ぶぞ」
豪鬼が刀を振るった。
時斗とは距離があるため、当然、当たる事はない。
時斗「何してんのや?」
しかし、次の瞬間、時斗は自分に向かって来る不気味な気配を感じ、反射的に頭を下げた。
時斗「なっ!?」
時斗が振り向くと後ろの壁に、大きな刀傷が刻み込まれていた。
豪鬼「よく躱した。これが俺の能力だ」
時斗「……風……カマイタチっちゅう奴か……」
豪鬼「まぁ、そんなところだな。ちなみに、風には実態がないからな。斬撃を受け止めようなんてするなよ?」
時斗の背筋に冷たい汗が流れていた。
時斗「さすが、四精鬼っちゅうだけはあるな」
時斗は人型の術札を取り出した。
時斗「羅蕭!」
豪鬼「式鬼か」
羅蕭「主人。敵はあいつか?」
羅蕭はじっと豪鬼を見据えた。
時斗「あぁ、手加減無用や」
羅蕭「承知した。―-魔閻斧」
すると、羅蕭の手に豪鬼の刀と同等の斧が握られた。
豪鬼「ほぅ。面白い。俺と力勝負をしようと言うのか?」
豪鬼が話している間に、羅蕭は距離を詰め、斧を振り下ろした。
羅蕭「ふん!!」
空気を切り裂きながら、斧は豪鬼の頭上から振り下ろされた。
豪鬼「ぐ……さすが、俺に正面から挑むだけはあるな」
羅蕭の一撃は受け止めた豪鬼の身体を伝い、コンクリートの床を破壊した。
豪鬼「―-だが、この程度か?」
豪鬼は羅蕭の斧を弾き返した。
豪鬼「さて、次はこちらから行くぞ」
今度は豪鬼が羅蕭に刀を振り下ろした。
時斗「……風……? あかん!? それを受けるな、羅蕭!!」
しかし、時斗の声は既に遅かった。
豪鬼の刀を受け止めた羅蕭の片は切り落とされていた。
羅蕭「ぐっ!? これは……」
豪鬼「だから、言っただろ。受け止めちゃいけないって」
羅蕭は自らの斧で確かに豪鬼の刀を受け止めていた。
時斗「さっきのカマイタチやな。刀は実態があるから受けられる。せやけど、もう一つの刃はカマイタチ。つまり風や。風に実態はあらへん。羅蕭の魔閻斧をすり抜けてきたっちゅう事か」
豪鬼「正解だ」
豪鬼は不気味な笑みを零しながら言った。
羅蕭は素早く豪鬼と距離をとった。
羅蕭「主人。どうする」
時斗「あの能力がある限り、奴の斬撃軌道にいる事はあかんか」




