第弐拾弐話『中編08 それぞれの戦い01』
藤平家に着いた時斗は、ゆっくりと家の中を歩いていた。
時斗「また来たで、みんな。悪いけど、鬼門を破壊させてもらうわ」
時斗は誰かに語り掛ける様に喋っていた。
時斗「確か、鬼門はこの先にあったはず」
家の一番奥にある扉を開くと、下に続く階段が現われた。
時斗「この下か」
時斗はゆっくりと階段を地下に進んで行った。
//////地下の部屋
時斗「何や、このだだっ広い部屋は?」
地下に降りた時斗は、見渡す限り何も無い、広い部屋に立っていた。
時斗「家の地下にこんな場所があったとはな」
すると、部屋の一番奥に小さな社の様な物があった。
時斗「あれか」
時斗は躊躇せず、素早く氷の刃を鬼門に向けて放った。
時斗「――!?」
?「何を焦ってるんだ? 藤平のぼっちゃんよ?」
放たれた氷の刃が、鬼門の前に突き刺さった時斗の身長を悠に超える刀によって防がれた。
時斗「……その刀は……」
時斗はゆっくりと声の主に視線を向けた。
時斗「まさか、あんた達が出て来とるなんてな」
?「くくく……、俺達の事を知ってるなんて、さすが藤平のぼっちゃんだ」
時斗「俺やなくとも知っとるわ。鬼人の中でも最強と言われとる、四精鬼の事をな」
?「いいね。なら、俺が誰かもわかるよな?」
時斗「四精鬼の中で力を指す鬼人、豪鬼」
時斗の言葉を聞いた豪鬼は拍手をしながら言った。
豪鬼「正解だ。なら、質問だ。俺が誰かわかった上で、戦うか?」
時斗「けったいな選択やな。選択の余地もないわ」
時斗は豪鬼相手に、臨戦態勢をとった。
豪鬼「なるほどな」
それを見た豪鬼も、時斗に対し構えた。
時斗「待てよ。四精鬼のあんたがここにいるって事は、まさか、他の鬼門にも四精鬼が!?」
豪鬼「当然だ。まぁ、絶鬼に当たった奴には、多少、同情はするがな」
時斗(ちぃ! 四精鬼が来るとは予想外やった。兄ちゃんに真城の姉ちゃん、死ぬんやないで)
豪鬼「さて、始めるか」
//////真城家
紬「こんな……」
真城家に着いた紬は、その光景に言葉を失った。
辺り一面に散らかった死体。そのどれもを、紬は知っていた。
紬「みんな……許さない……」
紬の中に込み上げる怒りは、止める事など出来ずはずもなく溢れ出していた。
?「あら、可愛いお嬢様ね」
紬「―-!?」
その声を聞いた瞬間、紬は素早く距離をとった。
紬「誰!?」
?「ふふふ……」
女は紬の問いに答えず、不気味に笑っていた。
紬が女の姿を確認すると、両手は真っ赤に染まった上、身体も大量の返り血を浴び赤く染まっていた。
紬「――あなたが、殺ったのですか?」
紬の言葉には、強い怒りが込められていた。
?「だとしたら?」
紬「――貴方を殺します」
紬の側に黒い穴が現れ、その中から紬は自身の武器を取り出した。
?「あら、こわ~い」
紬「貴方に対し、私は何の慈悲も感じない」
?「ふふふ、そんなデカい獲物を振り回すの? 野蛮ね」
紬は女の言葉を最後まで聞かずに、地面を蹴った。
紬「はぁぁぁぁ!!」
ギィン!!
紬「な!?」
紬の攻撃は、女の目の前で弾き返された。
しかし、女の目の前には、紬の攻撃を遮る物など何一つなかった。
?「美しくないわね、お嬢様」
紬「何が起きたの?」
?「知らないまま、恐怖を感じながら死んでいく。それはまるで、生きたまま捌かれる人間の様に、残酷で美しい。お嬢様には、この四精鬼の美鬼が、死の美しさをプレゼントしてあげるわ」
紬「四精鬼!?」
紬はその名前を聞き、武器を構えようとした。
しかし、武器が……いや、自分の身体が、ピクリとも動かなかった。
紬「くっ!? な、何……身体が……」
//////安里家
優斗「ここが安里家か?」
初めて来たはずなのに、何故か妙に懐かしく感じた。
人の気配はまるでしなかった。
鬼人に襲われたと聞いていたが、その静けさは不気味と言う以外何もなかった。
いつの間にか、俺は持って来た刀を抜き身で握っていた。
優斗「時斗が言ってた鬼門ってのは何処にあるんだ?」
気が付くと、俺は先ほど通った場所と、よく似た場所を歩いていた。
優斗「ここはさっきも通った様な……」
しかし、些細な見間違いはよくある事だと、そのまま進んで行った。
すると、見るからに頑丈そうな扉が現われた。
優斗「ここか?」
俺が扉に手を掛けようとすると、不気味な重低音を響かせ、扉が開いていった。
優斗「何だ? 俺に中に入れって言ってるのか?」
俺は刀を握り締め、恐る恐る扉の中に入った。
優斗「これは!?」
扉の中には、見覚えのある光景が広がっていた。
むせ返る黒煙と炎の熱気の中、真っ赤な血を流し横たわる二つの死体。
その死体の側にいる小さな子供。
優斗「何であの時の……」
何であの時の光景が……
優斗「父さん、母さん」
俺は駆け出していた。
その瞬間、父さんと母さんは立ち上がった。
全身を流れ出た自らの血で真っ赤に染め、壊れかけたボロボロの刀を持って。
優斗「えっ!?」
そして、持っている刀を俺に向かって振り下ろした。
優斗「くっ!」
俺は咄嗟に持っていた刀で、それを受け止めた。
優斗「な、何するんだ、父さん、母さん!?」
しかし、俺の言葉など聞こえていないらしく、父さんも母さんも攻撃の手を緩める事はなかった。
優斗「止めてくれ! 止めてくれよ! 止めてくれー!!」
その瞬間、突然、目の前の景色が変化した。
優斗「……はぁ、はぁ……今度は何だ? 真っ暗で何も見えない」
//////安里家
?「ふぇ、ふぇ、ふぇ……、さぞ苦しかろうなぁ」
横たわる優斗を見下ろす、一人の老人がいた。
?「この絶鬼の幻術からは逃れられんよ」
優斗「うわぁぁぁ! 止めてくれ! 父さん、母さん!!」
優斗は突然、誰もいない場所に向かって、叫び声を上げた。
絶鬼「苦しいか? ん~、若者の苦痛の声とは、どうしてこうも気持ちえぇのかのう」
絶鬼は高ぶった気持ちを吐き出す様に笑い声をあげていた。




