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鬼人神鬼  作者: saku
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第拾捌話『中編04 神社/戦闘/片瀬 一(かたせ いち) 』

優斗「はぁ、はぁ……や、やっと着いた」

紬「優斗さん、急ぎましょう! 既に別の追っ手が来ているかもしれません」

優斗「あぁ、わかった」


 そして、俺達が走り出そうとした時、目の前に男が現われた。


?「来たか」

優斗「お前は!?」


 俺と紬は素早く臨戦態勢に入った。


?「神霊鏡は命の重みで輝きを増す」

優斗「何を言ってるんだ?」

紬「優斗さん、気をつけて下さい」

優斗「あぁ、わかってる。紬達みたいに相手の気はわからないけど、あいつがヤバいって事はわかる」


 俺達を無視するかのように、男は淡々と続けた。


?「まずは一つ」


 そう言って、男は錆付いた円盤の様な物を空に掲げた。

 すると、周りの緑の木々達が、瞬く間に枯れていった。


優「――!?」


 驚きのあまり、声が出せない俺とは対象的に、紬は冷静だった。


紬「優斗さん。恐らく、あの円盤の様な物が、木々の命を吸っているのです」

優斗「木々の命? あの錆付いた円盤がか?」


 俺は男の持っている円盤に視線を向けた。

 すると、先ほどまで錆付いていた円盤に、ほんの僅かであるが、輝きが見えた。

 あいつはさっき、命の重みで輝きを増すって……


優斗「まさか? 紬、あれだ!? あいつが持っている円盤が、最後の道具だ!!」

紬「あれが?」

優斗「間違ない。木々達が枯れた後、あの円盤に僅かだが輝きが戻った。つまり、やつの言ってた命の重みで輝きを増すってのは、生物の命を奪って作られる道具だって事だ!!」


 紬は円盤に視線を送った。


紬「優斗さんの考えが正しければ、そんな物、直ぐにでも破壊しなければ」


 そう言うと、紬は一歩前に歩み出た。


紬「優斗さん。下がって下さい」


 その瞬間、空中に黒い穴が開き、紬はその穴に手を入れた。


優斗「紬!?」

紬「心配ありません。これは異次元の倉庫の様なもの。害はありません」


 そう言って穴から引き抜いた紬の手には、身長の二倍程ある、斧の刃が片側についた槍が握られていた。

 紬は槍の矛先を男に合わせて構えた。


紬「あなたにこれ以上、それを使って命を奪う事はさせません」


 紬は地面を思いっ切り蹴った。

 超重量の武器を持っている事など、まるで感じられない様な速度で風を切って、男との距離を縮めた。


紬「はぁぁぁぁ!!」


 唸る様な風切り音を上げながら、紬の槍が男を襲った。


?「ちっ!」


 多少驚きながらも男は見事に躱していた。


?「厄介な武器だな。まずはそれを封じさせてもらおう」


 そう言った瞬間、男を中心に、半径数十メートルに結界が張られた。


紬「これは結界!?」

優斗「紬! 大丈夫か!?」

紬「私は平気です。優斗さんは!?」

優斗「俺も平気だ。何処も変わりはない」

紬「私達は二人共変わりない。一体、この結界は……?」


 結界に疑問を抱いた紬だったが、男の僅かな動きに反応し、攻勢に出た。


紬「はぁぁぁぁ!!」


 しかし、男は紬の攻撃を避けずに、自らの手に突き刺して止めた。


?「ぐっ……」

優斗「なっ!?」


 そして、紬の身体を男の拳が襲う。

 だが、男の拳に勢いはなく、紬にダメージはなかった。

 紬は一度、男との距離をとり、警戒をした。


紬「なんですか、今のは?」

?「これで一つ。この結界に新たなルールが生まれる」


 男がそう言うと、紬の持っていた武器が跡形もなく消えた。


紬「――!?」

優斗「紬の武器が消えた?」

紬「こ、これは!?」


 紬は先ほどの異次元倉庫の穴を開こうとするが、何も起こらなかった。


?「無駄だ。この結界は、発動者が結界内の発動者以外の者にダメージを与えた時、ダメージを与えた者に対し、結界内のルールが一つ追加出来る」

紬「結界内のルール?」

?「今、追加したルールは一つ。『その女の結界内での武器の使用を禁ずる』、だ」

紬「――ッ!? いけない!?」


 紬が男との距離を更に拡げ、俺の側に来た。


紬「優斗さん。一時退きましょう!」

優斗「どうしたんだ、紬?」


 紬の視線は明らかに危険を示していた。


紬「とにかく、早くこの結界の外に出るんです!!」


 紬は声と同時に俺の腕を掴んで走り出そうとした。


?「何処に行く?」

紬&優斗「!?」


 男への注意が散漫していた紬と俺は、不意を突かれて一撃を浴びた。


?「更に一つ。お前達が結界外に出る事を禁ずる」


 結界の外に? まさか!?

 俺は慌てて、結界の切れ目に向かって行った。

 しかし、見えない壁に跳ね返されて、外に出る事が出来なかった。


優斗「紬!?」

紬「こうなった以上、覚悟を決めて戦うしかなさそうですね」


 紬は懐から術札を取り出した。


紬「幸い、術はまだ封じられていません。戦えます」


 紬はそう言ってるが、状況は明らかに不利だ。

 相手は鬼人。

 武器を使えないで勝てる程甘い相手じゃないって事は、紬もわかってるはずだ。

 どうする? この場を切り抜けるには、どうする!?


?「では、続きを始めよう」

優斗「くっ!?」

?「――!?」


 突然、男は後ろに飛んで、俺達との距離を開けた。


優斗「あれは!?」


 先ほどまで男が立っていた場所には、数本の氷の刃が刺さっていた。


時斗「よぉ。久しゅうな。片瀬の旦那」

片瀬「お前は!?」


 声のした方に視線を向けると、朝、俺達の家に来た藤平 時斗の姿があった。


片瀬「夜鬼の犬か。何をしにきた?」

時斗「別にあんたに用はない。用があるんは、あんたの持っとるそれや。片瀬 一!」


 その瞬間、片瀬の周りを氷の刃が覆った。


時斗「俺が合図すれば、その刃はあんたを襲う。命が惜しかったら、持ってるもんを置いてけ」

優斗「――ッ!?」

 

 何だ? 朝の時とはまるで別人の様に、あいつから寒気のする殺気が溢れている。

 その殺気を感じ、俺の手の平にはじんわりと汗が滲んでいた。


片瀬「いい気なものだ。あの方に逆らうとは」

時斗「別にあないな奴、最初から相手にしてへんわ」


 そして、時斗が指を動かした瞬間、氷の刃が片瀬を襲った。


片瀬「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」


 何十本もの氷の刃を浴びた片瀬は、その場に倒れた。


時斗「立てや。あんたがそれくらいで殺られるはずないやろ?」

片瀬「ぐっ……」

時斗「さぁて、次はさっきより痛いで」


 すると、先ほどと同じ様に氷の刃が片瀬を取り囲んだ。

 だが、先ほどと違うところが一つある。

 氷の刃の数が倍以上に増えていた。


時斗「もう一度聞くわ。あんたの持ってるそれを渡せ」

片瀬「これは貴様らに過ぎた物だ」

時斗「そうか」


 時斗が指を動かそうとした時、俺達が上ってきた方から声が上がった。


紫苑「優斗! 紬!」

時斗「紫苑!?」

紫苑「時斗……何であんたがここに……?」


 時斗の注意が僅かにそれた瞬間、片瀬は身体を傷つけながら、氷の刃の包囲を脱出した。


片瀬「くっ……貴様、覚えていろ。この借りは必ず返す」


 そう言って、片瀬はその場から姿を消した。

 片瀬がその場からいなくなり、時斗の戦闘モードも解け、溢れていた殺気も消えていた。


時斗「あちゃ~、逃がしてもうた。タイミング悪過ぎやで、紫苑」

紫苑「そんなの知るか! それより、何であんたがここにいるのよ?」

時斗「ちょっとした野暮用や。それより、そこの兄ちゃんも姉ちゃんも弱いなぁ~。俺が来なかったら死んでたで」


 言い返す言葉もない。

 こいつの言っている事は事実だ。


時斗「さて、行くか。ほな、またな」

紫苑「あっ、時斗!?」


 時斗は森の中へ、姿を消した。


紫苑「あんた達、大丈夫?」

優斗「何とか」

紬「私も大丈夫です」

紫苑「まさか、紬まで殺られるなんて」

紬「油断しました。あの能力は一対一でしたら、最高クラスのものです」

紫苑「まっ、いいわ。話は帰ってからにしましょう。歩ける? ヤバそうだったら、運び屋さんを呼ぶわよ?」

紬「大丈夫です。戦鬼さんに悪いですから」


 紬は笑いながら、ゆっくりと立ち上がった。

 しかし、紫苑。最強の式鬼を運び屋とは……

 何はともあれ、俺達は一度、家に戻る事にした。



//////



紫苑「なるほどね……」


 俺と紬はあった出来事を一通り紫苑に説明した。


優斗「ところで、紫苑の方はどうだったんだ?」

紫苑「私?」


 紫苑は暫く思い出した後、身震いをした。


紫苑「考えたくない。あぁ~、気持ち悪い!」


 何があったのかは聞かない方が良さそうだな……


紫苑「それで、最後の一つ、神霊鏡はあいつらが持ってたのね」

紬「えぇ……でも、まだ完成はされていませんでした」

紫苑「さっき言ってた命を吸った分だけ、完成に近付くって事ね」

優斗「あぁ」


 俺と紬は小さく頷いた。


紫苑「神霊鏡が完成するまで、どれだけの命が犠牲になるか……考えたくもないわね」

優斗「……探そう……奴等を探して、神霊鏡って奴を使う前にぶち壊そう!!」


 俺の言葉に紫苑は大きなため息を吐いた。


紫苑「はぁ~……、あんたねぇ、意気込みは良いけど、どうやって奴等の居場所を探すのよ?」

優斗「そ、それは……」


 考えてなかった。などとは言えないよな。

 すると、紬が話に割って入った。


紬「紫苑さん。確か、藤平に伝わる秘術で、離れた場所でも、まるでその場にいるかの様に見える術があると聞いています。藤平と交流のあった紫苑さんでしたら、何かご存じではありませんか?」


 紬の言葉を聞いて、紫苑は考える様に間を置いた。


紫苑「そうか。確かにそれなら見つけられるかもしれない」

優斗「よし! じゃあ、すぐに頼みに行こう!」

紫苑「そうね。少しでも早い方がいいわね。――でも、行くのは私だけ」

優斗「一人でか?」

紫苑「優斗は紬とここに残るの」

優斗「なんでだよ!? 俺達も一緒に……」

紬「待って下さい!」


 紬が話に割って入った。


紬「優斗さん。ここは紫苑さんに任せましょう」

優斗「紬……そ、そりゃあ、俺だって紫苑の強さは知ってるけど、もし複数で襲われたら」

紫苑「それなら大丈夫」

優斗「大丈夫って?」

紫苑「大丈夫だから、大丈夫なのよ。それよりもあんたは自分の心配をしなさい。もし、時斗の奴が本当に敵なら、私達の居場所はバレてるはずよ。その秘術ってやつでね」


 そうか!?

 あいつは藤平って言ってたから、あいつも使えるって事か。


紫苑「だから、最悪、ここが襲われかねない。その時は、あんたがあの子を守るのよ」

優斗「わかったよ、紫苑。気をつけろよ」


 紫苑は頷いた後、紬に視線を向けた。


紫苑「あとを頼むわね」

紬「頼まれました。紫苑さんもお気をつけて」

紫苑「ありがと。じゃあ、行って来るわ」


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